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世代エネルギー・社会システム実証事業成果報告
【平成26年度】
ο事業者名
事業者名
:株式会社キューヘン
株式会社キ
ン
ο補助事業の名称:Ⅰ-1-1 エネルギーマネジメントシステムの構築
D.産業部門での実証・その他(CEMSとの連携のもと)(北九州市)
『電圧調整装置を活用した太陽光連系実証』
ο全体の事業期間:平成24年10月~平成27年3月
実証事業の目標・目的
再生可能エネルギー、特に太陽光発電は、安心・安全なエネルギーとして普及が進んできている。
しかし、これらのエネルギーは不安定電源という側面も有しているため、配電線の電圧調整は必須な
ものとなる。北九州東田地区においても積極的に再生可能エネルギーを取り入れ、且つ効率的に利用
することを目標の1つに挙げている。
そこで、本実証では、CEMSと連携した各種電圧調整装置を設置することで、太陽光発電などの新エ
ネルギーの大量導入にも対応できる配電系統を構築し、コミュニティ内の効率的なエネルギー利用と
設備コストの低減を目指す。
事業の概要
北九州市の東田地区は、CEMSを中心にBEMSやHEMS、DP等のデマンドサイドマネジメントを実行
している。また、系統電圧の直接的な制御は、コミュニティ型蓄電池で行うシステムである。
しかし、新たに太陽光発電が複数箇所で連系された場合、現状の蓄電池やデマンドサイドマネ
ジメントだけでは電圧上昇を抑えきれなくなる可能性がある。
そこで、このシステムに低コストの電圧調整装置を付加し、CEMSと連携させることで、コミュ
ニティ全体のエネルギー管理を効率的に行うものである。
そのために新方式の電圧調整装置を
開発し、これらを管理する電圧管理シ
ステムとCEMSが連携した制御ロジック
を構築する。
具体的には、太陽光発電の逆潮流に
よる電圧変動に対し、各電圧調整装置
が適正に動作することを検証する。
併せて、コミュニティ全体では、太
陽光が大量に導入された時を想定して、
CEMSと蓄電池、及び各種電圧調整装置
が協調し、配電系統の電圧を規定値内
に制御することを確認する
に制御することを確認する。
太陽光発電
発電量
電圧
電流
CEMS
電圧
指示
制御
スマート 可変
ポール リアクトル
充放電
指示
蓄電池
電圧
電流
制御
電圧管理システム
当社実証範囲
SVR
実証スケジュール
弊社の実証は、H24年度~H26年度までの3ヶ年とし、具体的な内容は以下の通り
である
である。
H24年度
■技術調査
(実証設備設計)
о配電線電圧調査
о実証系統検討
о装置機器設計
оシステム設計
■インフラ工事
о太陽光システム設置
(140kW)
H25年度
H26年度
■インフラ工事
(試験環境の完成)
оスマートポール
о可変容量リアクトル
оSVR
о電圧管理システム
■各種実証試験
о低圧系太陽光連系実証
о高圧系太陽光連系実証
о電圧調整装置と蓄電池
との協調運転
■実証試験
оCEMSとの連携による
電圧調整装置の制御
検証
о電力品質の確認
■評価
■まとめ
H24・25年度の成果
■ H24年度は、実証箇所の
日鉄エレックス線の電圧状
況や需要家負荷などの調査
及び実証試験設備として太
陽光発電システム140kWの設
置を完了した。この太陽光
発電システムは、低圧系
20kWは家庭用、高圧系120kW
はメガソ ラ を模擬して
はメガソーラーを模擬して
いる。
■ H25年度は、各種電圧調
整装置の設置や管理システ
ムの構築、配電線敷設等を
行い、実証試験を開始した。
連系試験では、スマート
ポールによるPCS出力抑制の
ポ
ルによるPCS出力抑制の
回避と可変容量リアクトル
による電圧変動の抑制効果
を確認した。
PVシステム
H24年度
中園工
業所
ワタキューセイモア
NS-
TEXENG
実証設備
H25年度
新設配電線
H25年度
SVR
H25年度
蓄電池
新設
既設
SVR
可変容量リアクトル
電圧調整装置
スマートポール
H26年度の成果
H26年度は、CEMSとの連携による電圧調整装置の制御検証を実施し、太陽光発電連系時の電圧
変動が、目標の3%に収まることを確認した。
変動が 目標の3%に収まることを確認した
また、可変容量リアクトルと蓄電池の協調運転制御により、蓄電池システムの容量が10%の裕
度を確保できることを確認した。設備コストについても、20%以上の低減になることを確認した。
実証事業全体の成果
■太陽光発電のエネルギーロスの削減
低圧系(模擬家庭用PV)20kWにおいてはスマートポール、高圧系(模擬メガソーラー)におい
ては、SVR、可変容量リアクトルよる電圧調整で太陽光発電の出力抑制の回避ができることを確
認した。
■新方式の無効電力補償装置の開発
〇可変容量リアクトル
無効電力補償装置としてSVCに代わる可変容量リアクトルを開発し、動作検証を実施。
CEMS連携において、問題がないことを確認した。
設備コストはSVC 150kVar との比較で、40%低減可能。
■CEMSとの連携による効率的なエネルギー運用方法の確立
〇SVRの集中制御
配電線の末端に太陽光発電が連系され、SVRの自律制御では逆動作が生じるケース等に
お
おいて、CEMSからの集中制御により正常に動作することを確認した。
ら 集中制御 より正常 動作す
とを確認 た
〇蓄電池と可変容量リアクトルの協調制御
蓄電池用PCSの無効電力制御を可変容量リアクトルと分担することで、同等の電圧調
整が可能であることを確認した。
この場合、蓄電池単独のシステムに比べ、必要容量を10%低減することが出来た。
設備コストでは、20%以上の低減になることを確認した。
(*鉛蓄電池10kWh,PV100kWの場合)
■電力品質
太陽光発電の系統連系時においても、電圧調整機器による電圧調整により、系統内の電圧
変動が3%以内に収まることを確認した。
〔別紙1〕
1.実証インフラの構築
実証イ
ラ 構築
実証系統は、エレックス線の末端を拡張し、電圧調整機器として、SVR、可変容量リア
クトル、及びスマートポールを設置し、運転を行うものである。また、電圧変動要因とし
て模擬家庭用PV(20kW)、模擬メガソーラーPV(120kW)、模擬負荷(0~200kW)、及
び模擬線路を設置した。
電圧管理システムは、CEMSと連携し、各電圧調整機器の状態取得、設定値変更、及び遠
隔制御を実施する。さらに、これらのデータはデータ収集システムにより、当社(株式会
社キューヘン本社)内サーバにデータを蓄積する仕組みを構築した。
社キューヘン本社)内サーバにデータを蓄積する仕組みを構築した
CEMS
電圧管理
システム
可変容量リアクトル
(0~150kVar)
コミニュティー
蓄電池
(300kW)
模擬メガソーラPV
(120kW)
模擬家庭用PV
(20kW)
SVR
スマートポール
模擬線路
(20k 相当)
(20km相当)
データ収集システム
電圧管理システム
模擬負荷(0~200kW)
〔別紙2〕
2.低圧系太陽光連系実証
~スマートポールによるPCS出力抑制の回避~
ポ
出力抑制
避
太陽光発電の出力に伴い連系点電圧が上昇し、
PCSの出力抑制を招くが、スマートポールの
電圧調整機能によりPCSの出力抑制が回避さ
れ、スマートポールが有効に機能していること
を確認できた。また、スマートポールが動作す
ることで、PCS連系点電圧を約10V押し下げ、
出力抑制を回避しPCS出力電力が約10kW増加した。
スマートポール
スマートポール動作
④
①
③
①PCS出力により
系統電圧が上昇
が
②系統電圧上昇により
PCS出力が抑制
②
③ スマートポール動作により系統電圧降下
④ 系統電圧降下によりPCS出力増加
20kW PV動作
〔別紙3〕
3.高圧系太陽光連系実証
~可変容量リアクトルによる連系点電圧変動の抑制~
変容量
連系点電 変動 抑制
今回開発した可変容量リアクトルの電圧調整機能
により、模擬メガソーラPVの発電に起因する配電線
の電圧変動が3%以内に抑制されることを確認した。
模
模擬メガソーラーPVの出力と配電線の電圧変動は以
出
線
下の通りで、配電線の電圧変動は最大で5.4%であっ
たものが、可変容量リアクトルの動作により、目標
値の3%以内(2.4%)に改善した。
可変容量リアクトル
〔太陽光連系時における電圧変動データ〕
可変容量リアクトル動作なし
可変容量リアクトル動作あり
〔別紙4〕
4.CEMS連携による電圧制御実証
~SVRとのCEMS連携制御~
と
連携制御
SVRの自律制御ではカバーできない部分
の電圧調整がCEMSと連携することで可能に
なることを確認した。その1例を以下に示
す
す。
夜間ピークカットを行う住宅地域での昼
間を模擬した実証である。
昼間に蓄電池で充電を行うケースで,
SVRは順潮流であるが、太陽光発電の連系
により配電線は逆潮流になっている。SVR
の自律運転では,順潮流とみなし制御する
ため末端電圧は電圧上限逸脱する可能性が
あるが、CEMSからの降圧指令により、SVR
が動作して配電線電圧を管理範囲内に収め
る。
蓄電池で放電した有効電力を全て負荷で
消費するという状態であり,SVR設置点には潮
末端電圧
潮流の状態
流が流れ
流が流れていない状態である。次の状態③におい
な 状態 ある 次 状態③にお
ては,蓄電池を100kWの放電とし,負荷は状態②と
同じ50kWと設定した。これによりSVR設置点には
50kWの逆潮流が発生する。最後の状態④におい
ては,蓄電池は状態③と同じ100kWの放電とし,負
荷は100kWと設定した。すなわち,SVR設置点には
制御前
潮流が流れていない状態である。この状態④は,
基本的に図2‐10に示した潮流状態と同じであり,
SVRが自端制御している場合は動作しない。一方,
系統末端電圧は負荷により降下することになり,系
統末端電圧は電圧下限逸脱する可能性がある。
本ケースの実証結果として,図2‐24に系統末端電
圧の時間推移を,図2‐25に有効電力の時間推移を,
に図2‐26SVRタップ位置の時間推移を,図2‐27にリ
推
,
アクトル及び蓄電池無効電力の時間推移を示す。
制御後
〔別紙5〕
5.CEMSとの連携による電圧制御実証
~蓄電池と可変容量リアクトルの協調制御~
蓄電池と 変容量
協調制御
CEMSとの連携により蓄電池と可変容量リ
アクトルを協調制御することで、従来の蓄
電システム単独での電圧制御よりも安価な
インフラモデルを構築可能なことを確認し
た。
。
蓄電池・リアクトル出力状態