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二〇一五(平成二七)年度
五月九日(土)午後二時より
声と再現性
七号館
一〇一教室
真鍋 昌賢
広瀬 正浩
〒二四〇―八五〇一 横浜市保土ケ谷区常盤台七九番一号
橫浜国立大学 教育人間科学部講義棟
第五六回 昭和文学会 研究集会
会場
日時
特集
【研究発表】
声優が朗読する「女生徒」を聴く
一九三〇年代のメディアと口頭芸
鷲谷 花
―― 声と実在性の捉え方 ――
一九五〇年代の「幻灯/スライド」
司会 鬼頭七美 早川芳枝
幻灯『松川事件 一九五一』
(一九五一年) 製作:人民幻燈協会、
(日本労農救援会)
福島大学松川資料室所蔵オリジナルプリントから複製したニュープリントを上映
―― 教育・啓蒙から運動へ ――
※参考上映
【企画趣旨】
黙読文化が浸透したと目される近代以降も、文字媒体の文学作品と〈声〉の文化は緊密な関係を保ってきた。
落語や講談が言文一致体の生成に与えた影響や、物語を底流する浄瑠璃や歌舞伎の水脈など、とくに明治期の
文学作品を検討する上で文字文化と音声文化の連関性は重要なトピックの一つである。
それでは、昭和以降、物語と〈声〉の文化はいかなる関係を結んできたのか。そのことについて考える際、
音声の録音送信技術の進展を無視することはできない。たとえば、国産レコードの流通やラジオの登場といっ
たメディア革新の波は、新たな聴取者共同体と文化を生み出した。このような新興メディアの台頭に伴う〈声〉
をめぐる想像力の再編は、 浪花節のような既存の口頭芸にどのような影響を与え、また漫談のような新しい口
頭芸を生み出したのか、 また声優文化やボーカロイド文化など今日のポップカルチャーとどのように接続して
いるのだろうか。メディアの変化によって生まれた〈声〉は、
〈声〉の持ち主である演者とその口演のあり方、
あるいは 文字文化と音声文化の関係性にどのような変化をもたらしたのか。またそのような〈声〉と結びつく
ことで、物語の受容のあり方はどのような変化を遂げたのか。本例会では広瀬正浩氏と真鍋昌賢氏に、メディ
アの再編に伴う〈聴き手〉と〈語り手〉のありかたの変容についてご発表いただく。また、鷲谷花氏に昭和二
〇年代のフィルム式幻灯を実演していただき、複製された〈声〉の文化の浸透が進むなかで肉声によるナレー
ションや合唱に独自性を見せた幻灯というメディアについてご発表いただく。それぞれ異なる角度から〈声〉
の文化にアプローチしていただくことで、昭和以降の物語と音声文化の関係を問い直す契機としたい。
【発表要旨】
声優が朗読する「女生徒」を聴く ――声と実在性の捉え方――
広瀬 正浩(ひろせ・まさひろ)
近年、人気声優が朗読する近代日本文学の名作のCDやCD付き書籍が多数発売されている。声優の存在に注目が集まる
今日のアニメ文化の広がりを、そこに見ることができる。この中に、花澤香菜が朗読した「女生徒」
(二〇一二年)がある。
周知のように、
「女生徒」
(太宰治、一九三九年)はこれまで様々な視点から〝実在性〟が問題とされてきた。語り手である
少女の非実在性・虚構性が話題になった。また、この小説が、実在した女性の日記からの大幅な引用によって構成されたと
いう事実を受け、男性作家・太宰治の表現の政治が問われるようにもなった。ただ、声優という独特な発話主体のその声を、
音響装置等を通じて聴き取ることができる立場にある今日の私たちは、
「女生徒」をめぐる実在性の問題に、従来とは別の仕
真鍋 昌賢(まなべ・まさよし)
(椙山女学園大学)
方で接近することができる。本発表では、音響装置と私たちの想像力との協働によって立ち上がる身体に着目し、女生徒の
実在性について再考する。
一九三〇年代のメディアと口頭芸
一九二〇年代後半から一九三〇年代は、現代に続くメディア状況の基盤ができあがっていく時代である。電気吹込み時代
に入ったレコード、新興メディアのラジオ・トーキー、さらには雑誌などの出版が複雑にからまりあう複製技術時代とは、
それまでにない勢いでメディア空間が再編成されていく時代であった。本発表では、一九三〇年代における口頭芸演者に求
められた実践感覚について述べるなかで、メディア連動を前提とした声の流通・消費の在り方について論じていく。具体的
には浪花節(浪曲)と漫談をとりあげる。浪花節(韻律をともなう語り物、明治期の新興ジャンル)
、漫談(とりとめなく拡
散するハナシ、昭和期初頭の新興ジャンル)―――対極的にみえる二つをながめるなかで、声の表現をなりわいとする者に
鷲谷 花(わしたに・はな)
(北九州市立大学)
とって一九三〇年代がどのような時代であったのかについて考えてみたい。特に漫談については、草創期を支えた大辻司郎
に焦点を当てる予定である。
一九五〇年代の「幻灯/スライド」 ――教育・啓蒙から運動へ――
一七世紀にヨーロッパで発明されたスクリーンに静止画像を拡大映写する映像装置(「 Laterna Magica
」〔羅〕、「 Magic
」〔英〕)は、一八世紀に日本に輸入されて以来、幕藩期にはもっぱら「写し絵」(関西では「錦影絵」)、明治期
Lantern
には「幻灯」、そして一九六〇年代以降は「スライド」と呼ばれてきた。幕藩期の「写し絵」の大衆的な娯楽性・見世物性
に対し、明治初期の再輸入に際して新たに命名された「幻灯」は、学校、社会、家庭における教育・啓蒙のメディアとして
の役割をもっぱら担ってきた。その一方、「幻灯」は、社会問題への認識を促し、その解決を呼びかける「運動」のメディ
アとしても独自の歴史を辿ってきた。とりわけ一九五〇年代に興隆した労働運動をはじめとする社会運動においては、運動
の当事者による幻灯の自主製作・自主上映が盛んに行われ、多くのユニークな記録や創作を生んでいる。本発表では、松川
(早稲田大学演劇博物館招聘研究員)
事件救援運動の一環として製作された幻灯『松川事件 一九五一』を実演し、「運動のメディア」としての幻灯のポテンシャ
ルについて考察を試みる。
※ 研究集会終了後、シャルシュ(横浜国立大学大学会館二F カフェテリア)にて懇親会を予定しております。予約は不
要、当日受付にてお申し込みください。
橫浜国立大学 アクセスマップ
※ 会場へは、
「南通用門」をご利用ください。
「正門」から会場までは、坂道で距離もあります。
和田町駅……相鉄線「橫浜」駅より約8分(各駅停車をご利用ください)
。
「和田町」駅下車後、北口を出て南通用門まで徒歩約20分。
橫浜駅西口バスのりば(10、11、14のりば)……バス停「橫浜新道」
(約15~20分乗車)下車後、南通用門まで徒歩
3分。
橫浜市営バス 循環外回り202系統「橫浜駅西口」行。
橫浜市営バス 循環内回り201系統「橫浜駅西口」行。
橫浜市営バス 急行329系統「橫浜駅西口」行。
神奈中バス 01系統「中山駅」行。
相鉄バス 浜10系統「橫浜駅西口」行。
和田町駅から徒歩の場合
和田町駅北口より 「和田町商店街」 を通りぬけ、 「国道16号線」 に出ます。 横断歩道を渡り、
「横浜銀行」 右脇の
道に入ります。
「青葉幼稚園」 の園庭手前を右に曲がり、真っ直ぐ進むと 階段(約130段)があるので登ってください。
登りきると正面右手に「峰岡3丁目公園」が見えます。3つに分かれた道を左へ進んでください。
坂道を3分ほど登ると 右手に「常盤公園」 の入り口が見えるので道路を渡り、
「常盤公園」 の右側に沿って真っ直ぐ坂
を下ります。
坂を下ると左手前角に 「サンクス」のある交差点(5差路)に来ます。
正面が「南通用門」です。
和田駅北口より南通用門までの地図
橫浜国立大学 キャンパスマップ
大学会館(懇親会場)
教育人間科学部講義棟七号館(研究集会場)
南通用門
バス停「橫浜新道」