財務三表で何がわかるか

コンサルティング 基礎講座
Consulting Basic Lecture
事業収支の組み方・考え方入門 ①
― 不動産コンサルティング営業に必要な基本的知識として ―
財務三表で何がわかるか
【新連載】
石垣 雄一郎
ダンコンサルティング株式会社 取締役
税理士
ポート、不動産戦略業務を行う。現在、不動産、相続、信託を中心とし
た不動産コンサルティング業務に従事し、大企業、中小企業向け不動産
戦略セミナー講師も務めている。
今回から基本的な事業収支の組み方・考え方を数回
かの判断がされると思います。また、投資にいくらかけ
にわたり、解説します。不動産コンサルティング及び
るのか、借入金の利払い・元本返済の条件はどうする
その営業活動に欠かせない知識だからです。また、特
のか、その投資の回収期間はどれだけか、税金はいく
に不動産賃貸事業に関わるとき、会計的な知識に基づ
らかかるのかなどの検討がなされ、最終的な判断がな
いた事業収支の基本を理解し、その応用次第で入手で
されるはずです。こうしたとき、不動産知識に会計知
きる情報や顧客に対して提案できる内容に違いが出て
識が加わることで専門家の提案力はより高まることが
くる可能性があるからです。
期待されます。
第 1 回目は簡単なケースを使い、事業収支を貸借対
不動産の投資判断がされるときは、日常的に事業収
照表と損益計算書と関係づけて、その基本的な仕組み
支シミュレーションが組まれることは多いと思います。
を理解することを目標にします。
例えば、アパート・賃貸マンション・賃貸オフィス、
1 事業収支を組む理由
賃貸倉庫等を新たに又は建替えにより建設する場合、
修繕(大修繕を含む)
、改修(大改修を含む)を行う
不動産仲介・管理の現場では公認 不動産コンサル
場合等と現状のまま推移した場合とを比較検討すると
ティングマスターなど不動産の専門家(以下、専門家)
きなどに事業収支を組むことになります。このとき前
による不動産オーナーに対するコンサルティング営業
提条件の設定内容が客観性をもった現実的なデータに
の実施は仕事の継続や業務拡大に大きく影響します。
基づいたものでなければなりません。そうでなければ
専門家はコンサルティングの実施を通じて、不動産オ
適切な判断や意思決定ができないからです。
ーナーの判断や意思決定をしやすくする役割を担って
います。これが顧客の成果となり、専門家の仕事とし
て評価されたときに、仲介・管理を一任されたり、コ
ンサルティングの報酬になるのです。
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[いしがき・ゆういちろう]ダンコンサルティング㈱で中小企業経営サ
2 貸借対照表、損益計算書と併せて
理解すべき事業収支
一般的に事業収支というと資金収支表(又はキャッ
コンサルティング営業を実施しても、不動産オーナ
シュフロー計算書、以下同様)のことを指していると
ーが専門家の伝える内容を具体的にイメージできなけ
思います。具体的には賃貸物件を建築する提案を受け
れば、話はそれ以上先に進まないことになるでしょう。
ている不動産オーナーの手もとには事業収支(資金収
反対に、イメージされると判断や意思決定を行うた
支)だけがわかるキャッシュフロー・シミュレーショ
めのコンサルティング受注につながる可能性は高まりま
ンが不動産会社から渡されていることを目にすること
す。このとき専門家に必要な知識の一つに会計知識が
があります。減価償却費等の考慮もされ、損益(損益
あります。投資判断をするとき、まずはその投資の目的
計算)とキャッシュ(資金収支)を調整するソフトが
は何か、必要な投資かどうか、又は妥当な投資かどう
使われており、所得税等も計算できるものもあり、賃
2015. 3 ◆ 不動産フォーラム21