片頭痛治療のしおり 前編

片頭痛治療のしおり
前編
慢性頭痛を理解するために
目次
はじめに
7
第1章
頭痛を理解するために
8
国際頭痛分類第3版(β版)では
8
第2章
頭痛診療の現場では
13
痛み「頭痛」とは何か・・慢性頭痛とは
16
慢性頭痛は「生体のリズムの乱れ・歪み」によるものです
17
慢性頭痛の生涯経過
17
慢性頭痛の発症様式
19
慢性頭痛の”共通した病態”
21
薬剤乱用頭痛
22
片頭痛は遺伝するのか???
26
片頭痛はどのようにして発症するのでしょうか
29
緊張型頭痛と片頭痛は連続したものです
29
いきなり片頭痛から発症することも
29
緊張型頭痛の起こり方
30
-1-
第3章
第4章
片頭痛の起こり方
31
次々に追加される悪化要因
36
根底にはストレートネックが存在します
37
根本的に解決するには
38
緊張型頭痛がひどくなると片頭痛になる?
41
片頭痛が緊張型頭痛に化ける?
41
片頭痛と緊張型頭痛の多くは症状は重複
41
片頭痛の本質は「エスカレーシヨン」
(Cady )
42
片頭痛とはどのような頭痛でしょうか
片頭痛は 15 億年前の因縁?
46
片頭痛は”多因子遺伝”疾患
47
それでは、”環境因子”は何か?
48
片頭痛の病態(メカニズム)
49
片頭痛における痛みの発生機序
52
トリプタン製剤について
55
トリプタン製剤の使い方
56
トリプタン製剤はなぜ効くのか
58
片頭痛はなぜ起きる?
61
慢性頭痛の病態
69
その1
ホメオスターシス・・ストレスとの関係から・・
69
健康保持のメカニズムはこころと体・ホメオスタシス!
69
ホメオスターシスとは
72
具体的にどのように働いているのでしょうか
72
ストレスによる影響
76
-2-
(1)ストレスと脳内セロトニン
76
(2)ストレスとマグネシウム
78
(3)ストレスと活性酸素
80
慢性頭痛とストレスはどう関与するのでしょうか
(1)緊張型頭痛の場合は・・
(2)片頭痛では
83
83
85
その2 腸内環境の関与
86
人生は腸で決まる!?
86
腸の役割ってそもそもナニ?
87
小腸の絨毛
87
便秘の理由ワースト3
88
腸は人の体で最大の免疫器官
89
腸内の免疫の主な働きは 3 つ
89
とっても大事な腸内細菌って何?
90
腸が悪いと体調も悪い!?
92
腸が元気で体も元気
93
腸内環境の悪化の原因
93
頭痛や肩こりは便秘による腸内環境の悪化が原因
94
自律神経の働きが狂う
95
ビオチンとは
97
その3 生理活性物質としてのエイコサノイドの関与
102
局所ホルモン(エイコサノイド)
102
プロスタグランジン
103
オメガ3とオメガ6のアンバランスを引き起こす原因
105
-3-
現代人の深刻な「オメガ3脂肪酸欠乏」
106
生理痛に関連して・・プロスタグランジン
111
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
117
油の摂取のしかた
123
酸化ストレスを悪化させる危ないやつ!
124
健康によい油
124
その4 セロトニン神経系の関与
「セロトニン神経系」とは
126
126
脳内セロトニンの働きとしては
131
ミトコンドリア働きが悪いと、
134
脳内セロトニンと片頭痛
135
片頭痛とアロデイニア
135
「セロトニン生活」の効果が現れるまでは最低3カ月は必要です
「脳内セロトニンを低下させる要因
その5
138
142
(1)「セロトニン神経系」はどうして衰えて
142
(2)ストレスによる影響
143
(3)疲れなどで、体に乳酸が溜まったとき
143
(4)基礎代謝が低いことや、生活のリズムが乱れ
147
(5)生理周期との関連
150
(6)食事に関連して
151
(7)運動不足
154
体の歪み(ストレートネック)の関与
155
すべてはS字カーブがあってこそ
155
6キロの頭を支える首の筋肉が疲労すると
156
首と腰はつながって動いている
157
-4-
それでは、ストレートネックとは
158
脊柱のS状湾曲の形成過程
163
小児のストレートネック
164
ストレートネックと閃輝暗点の関係は???
167
自律神経機能との関連について
169
体の歪み(ストレートネック)を来す要因
175
パソコン作業による”前かがみ””うつむき”が元凶
175
頭を打ったり首を痛めたりした経験はありませんか?
177
その他のストレートネックの原因
179
歯の噛み合わせの悪さ
179
足病変との関連
180
慢性的セロトニン不足
182
ミトコンドリアの関与
183
その6 ミトコンドリアの関与
187
60 兆個の細胞が活動することで人は生命を維持
187
細胞内のミトコンドリアがエネルギーを生み出す
188
スムーズに効率よく、たくさんのエネルギー産生へ
189
脂肪からエネルギーが産生される仕組み
190
L-カルニチンのパワーは CoQ10 なしでは発揮されない!
191
コエンザイム Q10 と片頭痛
192
結局、ミトコンドリアとは?=“細胞のエネルギー生産工場”196
ミトコンドリアが不調になると・・・
197
活性酸素
197
「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)の形成過程
身の回りの活性酸素を生み出す要因
「酸化ストレス」
198
199
199
片頭痛において「酸化ストレス・炎症体質」を形成するもの
-5-
202
ミトコンドリアの働きを悪化させる要因
1.睡眠不足の問題
203
203
エネルギーの生産には休息が必要です
204
睡眠は脳の疲労を回復する栄養剤
206
睡眠中に分泌されるホルモンの役割
207
2.マグネシウムの問題
209
マグネシウムの役割
209
マグネシウム不足が加わると・・
216
それではマグネシウム不足の原因はなんでしょうか? 215
細胞内のカルシウムイオン濃度の異常
219
肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎの弊害
221
インスリン過剰分泌
224
3.有害物質・・活性酸素の問題
227
身の回りは活性酸素を生み出す要因だらけ
227
環境ホルモン
230
デトックスとは
232
4.薬剤による影響
235
-6-
はじめに
現在、片頭痛は”遺伝的疾患”であり、”不思議で・神秘的な頭痛”とされ、一生”トリ
プタン製剤のお世話になりましょう”とされております。
しかし、現実には、多くの患者さんは自分で工夫を凝らして片頭痛を改善・克服され、
さらにネット上では「片頭痛改善マニュアル」が公開され、これを実行することによって、
片頭痛が改善されたと喜びの声が多数掲載されます。
私は、こういった方々の考え方を総合して以下のように考えております。
以下のような点を「基本理念」として本書を作成しております。
まず、片頭痛と緊張型頭痛は連続した一連のものです。
さらに、慢性頭痛の基本的病態には「体の歪み(ストレートネック)」が存在します。
片頭痛は”ミトコンドリアの機能障害による頭痛”です。
そして、片頭痛の大半は、”多因子遺伝”です。
その”環境因子”として、以下の5項目を現段階において”暫定的”に考えております。
今後、新たな知見が出てくれば、さらに追加されることになります。
1.ミトコンドリアの関与
2.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
3.体の歪み(ストレートネック)の関与
4.ホメオスターシスの関与・・免疫(腸内環境)の関与
5.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
本書では、このような考え方で慢性頭痛についての「臨床頭痛学」を構築しています。
このように片頭痛という頭痛を論じ、そして「片頭痛はあくまでも予防すべき頭痛」と
私は考えております。片頭痛を治す特効薬はありません。上記の環境因子を改善・是正し
さえすればよいことです。そして、”治そうという意志”を持たれることです。
-7-
第1章
頭痛を理解するために
皆さんは頭痛を感じた場合、まず心配になることは、この頭痛の原因が何かということ
です。
このように、頭痛を起こす原因はさまざまあります。こうしたことから頭痛の専門家は
国際頭痛学会が作成した「国際頭痛分類第3版 β版」を使って、頭痛を分類しています。
国際頭痛分類第3版(β版)では、
第1部: 一次性頭痛
1
片頭痛
2
緊張型頭痛(TTH)
3
三叉神経・自律神経性頭痛
4
その他の一次性頭痛
4.1 一次性咳嗽性頭痛
4.2 一次性運動時頭痛
4.3 性行為に伴う一次性頭痛
-8-
4.4 一次性雷鳴頭痛
4.5 寒冷刺激による頭痛
4.5.1 外的寒冷刺激による頭痛
4.5.2 冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛
※ (アイスクリーム頭痛)
4.6 頭蓋外からの圧力による頭痛
4.6.1 頭蓋外からの圧迫による頭痛
4.6.2 頭蓋外からの牽引による頭痛
4.7 一次性穿刺様頭痛
4.8 貨幣状頭痛
4.9 睡眠時頭痛
4.10 新規発症持続性連日性頭痛(NDPH)
第 2 部: 二次性頭痛
5.
頭頸部外傷・傷害による頭痛
6.
頭頸部血管障害による頭痛
7.
非血管性頭蓋内疾患による頭痛
8.
物質またはその離脱による頭痛
9.
感染症による頭痛
10. ホメオスターシスの障害による頭痛
11. 頭蓋骨、頸、眼、耳、鼻、副鼻腔、歯、口あるいはその他の顔面・頭蓋の構成
組織の障害に起因する頭痛あるいは顔面痛
12
精神疾患による頭痛
そして、「片頭痛の分類」として、この「分類」では、以下のように示されます。
1. 片頭痛
1.1 前兆のない片頭痛
-9-
1.2 前兆のある片頭痛
1.2.1 典型的前兆を伴う片頭痛
1.2.1.1 典型的前兆に頭痛を伴うもの
1.2.1.2 典型的前兆のみで頭痛を伴わないもの
1.2.2 脳幹性前兆を伴う片頭痛
1.2.3 片麻痺性片頭痛
1.2.3.1 家族性片麻痺性片頭痛(FHM)
1.2.3.1.1 家族性片麻痺性片頭痛 I 型 (FHM1)
1.2.3.1.2 家族性片麻痺性片頭痛 II 型 (FHM2)
1.2.3.1.3 家族性片麻痺性片頭痛 III 型 (FHM3)
1.2.3.1.4 家族性片麻痺性片頭痛,他の遺伝子座位
1.2.3.2 孤発性片麻痺性片頭痛
1.2.4 網膜片頭痛
1.3 慢性片頭痛
1.4 片頭痛の合併症
1.4.1 片頭痛発作重積
1.4.2 遷延性前兆で脳梗塞を伴わないもの
1.4.3 片頭痛性脳梗塞
1.4.4 片頭痛前兆により誘発される痙攣発作
1.5 片頭痛の疑い
1.5.1 前兆のない片頭痛の疑い
- 10 -
1.5.2 前兆のある片頭痛の疑い
1.6 片頭痛に関連する周期性症候群
1.6.1 再発性消化管障害
1.6.1.1 周期性嘔吐症候群
1.6.1.2 腹部片頭痛
1.6.2 良性発作性めまい
1.6.3 良性発作性斜頸
この分類は、あくまでも「頭痛 300 種類以上」の分類であり、皆さんが頭痛を訴えて医
療機関を受診されますと、この国際分類に従って、頭痛診断が行われることから、場合に
よっては、一人の患者さんが”4つも5つも頭痛”を持つことも当然あります。このよう
なことから、現実的ではなく、以下のように大雑把に考えるべきです。それは・・・
頭痛を引き起こすものには大きく分けて、2つの原因があります。
それは、”脳の中に異常のある頭痛”と原因が”脳のなかに異常のない頭痛”です。
- 11 -
脳の中に異常のある頭痛は、医学用語で「二次性頭痛」と呼ばれています。この中には、
クモ膜下出血や脳腫瘍や脳出血、慢性硬膜下血腫などの命にかかわる頭痛もあります。こ
のため、こうした致命的な頭痛を見逃さないため
に、まずこれを検査で確認する必要があります。
こうしたことから、皆さんが頭痛を訴えて医療
機関を受診されますと、CTとかMRIといった
画像検査がされることになります。こうした二次
性頭痛は、頭痛の起こり方に特徴があり、突然起
こり、今までに経験したことのないような激しいのが一般的です。これ以外には、脳炎と
か髄膜炎のようなものもあります。これらは頭痛以外に発熱があったり、嘔吐したり、意
識がおかしくなったりすることもあります。これも起こり方は急激に頭痛が起きてくると
いう特徴があります。また、風邪による頭痛、二日酔いによる頭痛、薬の飲み過ぎによる
薬剤乱用頭痛があります。これについては後ほど述べる予定です。
これに対して、”脳のなかに異常のない頭痛”があります。
医学用語では「一次性頭痛」
(慢性頭痛)と呼ばれています。
このような頭痛は、これまで経験されておられ、お分かり
とは思いますが、決して、このために命を落とすことはない
のが特徴です。このため軽視されがちな頭痛です。しかし、辛い頭痛であることは間違い
ない事実です。本書は、こうした慢性頭痛について述べたものです。
頭痛の専門家が使っている「国際頭痛分類 第3
版β版」という国際頭痛学会が作成した診断分類で
は、先程も述べましたが、この「一次性頭痛」は4
つに分類されています。
緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛、その他の一次性
頭痛です。
一次性頭痛のなかには、インドメタシンという鎮痛薬が極めて有効な頭痛があります。
- 12 -
絶対的に有効な頭痛としては、発作性片側頭痛と持
続性片側頭痛です。
有効とされる頭痛としては、一次性穿刺様頭痛、一
次性咳嗽性頭痛、一次性運動時頭痛、性行為に伴う一
次性頭痛、睡眠時頭痛、貨幣状頭痛があります。
これらは、「その他の一次性頭痛」のなかに分類される
ものです。
そして、発作性片側頭痛、持続性片側頭痛、一次性穿
刺様頭痛、貨幣状頭痛の4つの病態は、いまのところ詳細には分かっておらず、全く不明
とされ、これらはひとまず別格のものとして、よけておくことにします。頻度的にも極め
て少なく(9%前後)、このようなものがあるとして、あくまでも症状の上から診断し、イ
ンドメタシンを投与することにします。
頭痛診療の現場では
まず、頭痛診療を行う場面において、二
次性頭痛を除外することです。一次性頭痛
と思われても、場合によっては二次性頭痛
が含まれる可能性があるからです。
(殆どは、
二次性頭痛は問診の段階で疑われますが・・)こうしたことから、まず、最初は、CTも
しくはMRIといった画像検査で、二次性頭痛を除外しておくことが重要と考えます。
このようにして、一次性頭痛としての診断をまず下します。先程のインドメタシンが有
効な頭痛は、症状の上で特徴があり、この症状だけは念頭においておきます。
このように一次性頭痛と診断が下されてからが最も大
切になってきます。多くの頭痛外来では、医師とあなた
とのコミュニケーシヨンの手段として「頭痛ダイヤリー」
が利用されます。(左図のように)
錯綜とした頭痛の”謎解き”には確かに便利なツール
のようですが・・
- 13 -
しかし、頭痛診断は、ただ単に”頭痛とい
う痛み”さえとれば、済むものではないはず
です。たちまちは頭痛を取り払うことも大切
ですが・・・。これも必要です。
最も大切なことは、頭痛の根本原因を探り
当て、この原因をなくしてしまうことです。
このための手がかりとされるものは、これ
までの”あなたの頭痛の経過です。あなたの
記憶にない一番最初に”自覚した頭痛”から
”現在の頭痛”に至るまでの経過が大切とな
ってきます。ここまでに至るまでに何か生活
習慣・環境に変化がなかったかどうかという
ことです。
医師を目の前にすれば、咄嗟には思い出すことはまず不可能ですので、あらかじめ医療
機関を受診される前に整理して、これをきちんと医師に伝えることが最も重要になってき
ます。
これが明確になりさえすれば、”十分な手がかり”が得られることになります。
これが最も大事なことです。忘れずに、必ず実行しましょう。
一次性頭痛の大半(9割)は緊張型頭痛と片頭痛で占められています。そして、頭痛の
専門家は、これら3つを厳密に区別しなくてはならないとされます。
しかし、緊張型頭痛と片頭痛の境界領域にあるものが存在し、この3つが明確に区別で
きません。
そして、現実に、”同一の”一次性頭痛(慢性頭痛)の患者さんを詳しくみてみますと、
緊張型頭痛の要素、片頭痛の要素、群発頭痛の要素を混在しています。このように考えれ
ば、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛も一連の連続したものと考えるのが妥当と思われ、こ
うしたことから、機能性頭痛一元論という考え方をされる頭痛の専門家もおられるほどで
す。私は、このような”機能性頭痛一元論”を支持し、本書を作成しております。
- 14 -
単純に言えば、”生活に支障を来せば”片頭痛であり、”生活に支障がなければ”緊張型
頭痛であり、そして、一次性頭痛と診断に至れば、緊張型頭痛であれ片頭痛であれ、共通
した病態が存在しているということです。
- 15 -
痛み「頭痛」とは何か・・慢性頭痛とは
痛みとは、そもそも、体が、異常を私たちに知らせるために発するものです。
もし、人間に痛みというものが無ければ、発病にはなかなか気づかず、気がついたとき
には、もう手遅れということばかりになってしまうでしょう。
痛みは、大事なサインであり、警報なのです。痛みの根本原因を突き止められず、元々
の原因の是正もせず、痛みだけを和らげることは、警報の電源だけ切って、それで”よし
”、とするものです。警報が知らせる深刻な事態は、そのまま放っておくのですから、ます
ます悪化してしまうことになります。
たとえば、火災が起きたときの火災警報が”痛み”に当たります。火災警報だけを止め
てどうするのかということです。頭痛の大半を占める筋肉が原因の緊張型頭痛では、筋肉
がもうこれ以上、無理できないというので頭痛という警報を出しているのです。この警報
だけを止めると、筋肉にはさらに無理な力が加わって、治すことがますます困難になりま
す。(緊張型頭痛は中には、筋肉が原因でない精神的な要因が関与しているものが存在しま
すが、これは脳内セロトニンの低下によって起きてくるものです)
それでは、片頭痛の場合は、何のための危険信号なのでしょうか?
片頭痛は、何らかの引き金により、最初に脳の一部に小さな興奮が起こり、徐々に周囲
に拡大します(閃輝暗点など)。そのままでは脳に障害が起こります。そこで、脳周囲の血
管が拡張し血流が増加します。脳に酸素と栄養を供給している血管が、脳への架け橋のグ
リア細胞を介し脳を守ると考えられます。”脳の血管拡張”は”強い痛み”を起こしますが、
脳の障害を必死に守り、また危険信号を発しているとも考えられます。
こういったことから、拡張した血管を収縮させる作用のある”トリプタン製剤”の服用
を専門家は勧めています。
しかし、”何らかの引き金”によって、頭蓋内で起きた現象を抑える目的で、痛み止めの
代わりに”トリプタン製剤”が使われただけに過ぎません。
その作用機序そのものは、”鎮痛薬と大差はなく、多少効果のある薬剤”でしかなく、結
局は”対症療法”に過ぎません。
本書の目的は、この”何らかの引き金”が何かを明らかにすることです。
- 16 -
先程も述べましたが、片頭痛と緊張型頭痛は、明確に区別できるものではありません。
その境界に、どちらの特徴を持っていて、どちらとも区別できない頭痛があります。
慢性頭痛は「生体のリズムの乱れ・歪み」によるものです
「脳の中に異常のない頭痛」の一次性頭痛(慢性頭痛)は、「生体のリズムの乱れ・歪み」
から生じてきます。生活のリズムは恒常性(ホメオスターシス)によって維持されていま
す。恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の 3 つの働きが深くかかわっております。
自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が関与し、
内分泌系はホルモンと”生理活性物質”が関与し、免疫系
には”腸内環境”が重要な位置を占めております。
緊張型頭痛は、環境因子の色彩の濃い頭痛です。この発
症には、身体的ストレスと精神的ストレスが関与します。
身体的ストレスは「体の歪み(ストレートネック)」が
関与してきます。精神的ストレスは、「脳内セロトニンの
低下」が関与します。
片頭痛は、「ミトコンドリアの機能障害」による頭痛であり、その大半は、遺伝形式は”
多因子遺伝”によるものであり、遺伝素因を基盤として、これに”環境因子”が加わって
発症してくるものです。この環境因子として、”ミトコンドリア”、”脳内セロトニン”、”体
の歪み(ストレートネック)”これらの働きを悪くする要因があります。
こういったことが、慢性頭痛を理解するための基本となるものです。
慢性頭痛の生涯経過
片頭痛は、約3割が自然に治癒し、約4割が症状は変わらず、残りの3割が慢性化して
増悪するとされます。緊張型頭痛は、ごくありふれた取るに足らないものとされます。
片頭痛が緊張型頭痛と連続したものであり、緊張型頭痛→片頭痛→慢性片頭痛(トリプ
タン乱用による薬剤乱用頭痛)と考えますと、緊張型頭痛は、専門医に言わせると取るに
足らない頭痛ということから”健康”の段階に位置するものであり、片頭痛は東洋医学で
いう”未病”に相当し、”慢性片頭痛(トリプタン乱用による薬剤乱用頭痛)”に至って、
- 17 -
初めて「病気としての頭痛」となるということです。
このことは即ち、自然治癒した3割
は、ホメオスターシス、すなわち”恒
常性を維持するための「環境に対する
適応力」により治癒したものと思われ
ます。
恒常性(ホメオスターシス)には自律神経、内分泌系、免疫系の 3 つの働きが深くかか
わっており、それはストレスなどに大きく影響されます。
こうした、3 つの相関関係は「ホメオスターシスの三角形」と呼ばれます。
そして、この3つがバランスをとりながら相互に作用しています。
このなかの、”セロトニン神経系””生理活性物質””腸内環境”の問題点が持続して存在
すれば、「ホメオスターシスの三角形」の”歪み”が継続され、4割の方々が、症状が変わ
らない状態が持続することになります。東洋医学でいう”未病”ということです。
そして、ミトコンドリアの問題、脳内セロトニンの低下、さらに体の歪み(ストレート
ネック)等々の慢性化の要因が加わることによって「ホメオスターシスの三角形」が”崩
れる”ことによって、2~3割の方々が慢性化に至るということを意味しています。ここ
でやっと”病気”になります。このような段階に至れば、もはや改善は至難の業となって
くることになります。
東洋医学でいう「未病」を病気に進みつつある状態
と捉えるならば、はやい段階で「未病」のサインを認
識し、しかるべき手を打てばその進行を抑え、本格的
な病気に移行することを防ぐことができます。
中国最古の医学書「黄帝内経」の中において「未病
を治す」という表現がありますが、未病は病気ではな
いのに、「治す」というのはどういうことなのでしょ
う。
これは、健康であろうと病気であろうと、つねに自らの生活習慣に気を配り、より本来
の姿に近い心身の状況にもっていこうとする、生き方の姿勢をあらわしている表現なので
- 18 -
す。
この人間本来の姿を、東洋医学(漢方)の世界では「中庸」と呼んでいますが、これは
すなわち、健康と病気のまん中あたりのことを意味しています。
つまり、健康すぎても、また病気だらけでも、いけない。
からだの状態とは、どちらか一方向への偏りがないのが一番よいのだ、ということを意
味しているのです。
こういうことから未病の段階にある「片頭痛」で治すべきとされています。
このように段階を踏まえて”慢性頭痛”には対処しなくてはならないということです。
慢性頭痛の発症様式
緊張型頭痛では、デスクワーク、特にパソコンを使って仕事をすることにより、うつむ
き姿勢を長時間とると、首の後ろ側の頭半棘筋が
緊張し、その筋肉を貫くように走っている「大後
頭神経」が圧迫され頭痛が起こり、緊張型頭痛は
明らかに首疲労からもたらされる病気で、首疲労
を治療することによって、痛みがきれいに消えてしまいます。
ところが、明らかに片頭痛と考えられる予兆や前兆を持っていて、片頭痛に有効なイミ
グランなどのトリプタン製剤を飲んだら、頭痛がぴたりと止まることから、典型的な片頭
痛と他院で診断された患者さんに対して、頸筋の異常を治療したら、片頭痛が起きなくな
るものが、片頭痛の一部に存在します。こうなると、片頭痛と緊張型頭痛という分類自体
が怪しくなってきます。
頭半棘筋にこりが出ると、それが大後頭神経を刺激し、その刺激が三叉神経に伝わりま
- 19 -
す。大後頭神経は、頭痛をもたらす神経です。大後頭神経と三叉神経は脳のなかで繋がっ
ていますので、大後頭神経の刺激は、三叉神経にも伝わります。
大後頭神経と三叉神経が同時に痛くなる現象は、よく知られています。これが、片頭痛
を誘発・増悪・慢性化に関連しています。
要するに、緊張型頭痛も片頭痛も一連の連続したものであるということです。
緊張型頭痛も片頭痛も一連のものであり、緊張型頭痛が慢性頭痛の発症の起点となるも
ので、これに”ミトコンドリア”、”脳内セロトニン”
、”体の歪み(ストレートネック)”の
3つが付け加わることによって(遺伝素因を基盤に)片頭痛にまで進展していきます。
さらに、この根底にはホメオスターシスの乱れ(免疫・・腸内環境の悪化)や脂肪酸摂取
の問題による生理活性物質のアンバランスが存在します。
そして、以下のような5つの病態から「臨床頭痛学」は構築されなくてはなりません。
1.ホメオスターシスの関与・・免疫(腸内環境)の関与
2.生理活性物質との関与・・脂肪摂取の問題
3.体の歪み(ストレートネック)の関与
4.セロトニン神経系の関与・・脳内セロトニン
5.ミトコンドリアの関与
- 20 -
慢性頭痛の”共通した病態”
これら5つの病態は全く別個のものではなく、お互いが相互に関連しあっています。
例えば、ミトコンドリアの働きが悪ければ、同時にセロトニン神経系の働きも悪くなり
ます。そして、この両者が存在すれば、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの
悪さは、”筋肉そのもの”へ関与し、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、
関与することによって、体の歪み(ストレートネック)を引き起こしてきます。
また、ストレスが持続すれば、ホメオスターシスの乱れを生じ、マグネシウムの低下を
引き起こすことでミトコンドリアの機能を悪くさせます。その結果として、さらに「脳内
セロトニンの低下」がもたらされることになります。
また、必須脂肪酸の摂取の仕方に問題があれば、生理活性物質のバランスを乱すことに
なり、痛みを起こしやすくさせます。さらに必須脂肪酸が細胞膜を構成していることから
細胞全体の機能のバランスを崩すことになり、ミトコンドリア・セロトニン神経系の機能
低下がもたらされます。
このように、この5つは全く別個のものではなく相互に関係しています。
問題は、個々の慢性頭痛患者さんで、どの病態が優位に関与しているかということです。
片頭痛にしても、純粋な片頭痛から緊張型頭痛の混在したものもあり、その混在する程
度もひとそれぞれであり、さらに主としてミトコンドリアの働きが悪いために起きたもの
であったとしても、そのミトコンドリアの働きが悪さの程度も、患者さんそれぞれマチマ
チ・さまざまということになります。場合によっては、「体の歪み」のみで片頭痛を起こさ
れた場合には、脳内セロトニンの低下を補填させる”トリプタン製剤”が全く効かない(ト
リプタン・ノンレスポンダー)こともあり得ることです。
このように、片頭痛に移行するまでに負荷される要因は、人それぞれということです。
このようにして発症する片頭痛患者の根底にある病態の関与の仕方はすべて一律ではな
いということです。同じ片頭痛といっても、その要因は各人さまざまです。
本書では、このような基本的な病態について述べるとともに、どのようにして改善・是
正するのかについて解説し、片頭痛を予防する方法を述べていきます。
- 21 -
薬剤乱用頭痛
皆さんは、頭痛の際に服用される頭痛薬が頭痛の原因となる
ことをご存じでしょうか。信じられないかもしれませんが、こ
の”頭痛薬”には、皆さんが手軽に服用される市販の鎮痛薬、
さらに病院で処方される非ステロイド性抗炎症薬(NSAID
s)、エルゴタミン製剤、さらに片頭痛で現在最も多く使われる
トリプタン製剤も含まれています。こういったことから、病院
で処方される”おくすり”だからといって決して安心してはな
りません。
それでは、どうしてこうした”頭痛薬”で薬剤乱用頭痛が起きてくるのでしょうか?
まず、市販の鎮痛薬ですが、これらの鎮痛薬には、大半のものはアセトアミノフェン、
とカフェインが含まれています。皆さんがよくご存じのカロナールが代表的なものです。
このカロナールは、現在では発売中止となったセデスGの後釜です。セデスGは私の片
頭痛時代にはいつも愛用していた程、麻薬並みの鎮痛効果がありました。セデスG中止後
は、これに代わって”SG配合顆粒”となりましたが、
これは以前のセデスGと比較すれば、何も効かないと
いうのが私の感想です。これに類似したものがカロナ
ールです。これも同様で、大して変わりはないようで
す。これは”十分な薬効量が含まれていない”ためで
す。こうしたことから、本年2月からアセトアミノフ
ェンを1錠中 500mg が含まれるものが発売されるよう
になりました。私も片頭痛の患者さんに試して頂きま
したが、従来のものよりは格段に効果があるとのことでした。こうしてみますと、”1錠中
500mg”が鍵を握っているようです。しかし、皆さんが購入されるものには、このような
有効量は含まれず、大半は、この半分以下しか含まれておりません。こうしたことから、
服用しても服用しても効果がないため、つい錠数が増えてくることになります。これらに
- 22 -
はカフェインが同時に含まれますので、カフェイン中毒になるため、薬剤乱用頭痛を作っ
てしまうことになります。また、市販の鎮痛薬のなかには、最近は少なくなったようです
が、アスピリンを含むものがあります。このアスピリンはミトコンドリアの働きを悪くさ
せるために、片頭痛の方々が服用されますと、益々、頭痛を悪化させ、薬剤乱用頭痛に至
ってしまいます。
このような市販の鎮痛薬でなく、人によっては風邪薬を常用される場合もあります。こ
の理由は、”咳止め”を目的としたリン酸コデインが風邪薬に配合されており、オピオイド
という麻薬のような成分が含まれており、”オピオイド乱用頭痛”となってきます。
また病院で処方される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)があります。最近では、
市販薬としても販売されています(ロキソニン)。必須脂肪酸のオメガ3とオメガ6の摂取
バランスに問題があれば、その効き目を十分に引き出すことができず、つい服用回数が増
えることになって薬剤乱用頭痛を作ることになります。
現在のトリプタン製剤が販売される以前は、エルゴタミン製剤が片頭痛治療薬の主流で
した。エルゴタミン製剤は前兆のある片頭痛の場合、制吐剤をうまく併用することによっ
て抜群の効果を発揮していましたが、問題は前兆のない片頭痛の場合、服用のタイミング
が極めて難しく、患者さんはつい”先手””先手”で服用せざるを得なくなって、知らぬ間
に過剰服用となって薬剤乱用頭痛を引き起こしていました。
現在では、エルゴタミン製剤はクリアミンとして残っておりますが、クリアミンの効能
書きには、”頭痛治療薬”と銘打たれ、緊張型頭痛にも片頭痛にも保険適応となっているこ
とから、一般開業医は頭痛診断がどうであれ、安易に処方され、極端な場合は1日3回毎
食後、延々と処方され、薬剤乱用頭痛を量産させていることも忘れてはなりません。
そして、現在のトリプタン製剤ですが、片頭痛の場合、効くひとには麻薬並の絶大な効
果を発揮するため、つい飲み過ぎにつながってきます。トリプタン製剤は、大半は有効時
間が短いため、片頭痛発作の持続時間が長いと、1回の服用で頭痛を抑制できずに、服用
回数が増えざるを得ないという宿命にある薬剤で、市販の鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症
薬(NSAIDs)、エルゴタミン製剤より以上に ”薬剤乱用頭痛を引き起こしやすい薬剤
”とされていますので注意が必要です。
この薬剤乱用頭痛の発生機序に関しては、頭痛専門医の見解では、このように薬で頭痛
を抑えていると、脳の中にある”痛みを抑制させる中枢”がサボって働かなくなるために
- 23 -
起きるとされますが、実際には以下のように考えるべきです。
こうした薬剤すべては、人体にとっては害(有害なもの)になるのです。これらを解毒
する際に、活性酸素が発生し、このためにミトコンドリアの働きを悪くさせることによっ
て、頭痛を増強させます。また、これら薬剤はい
ずれも”化学的ストレス”となって、脳内セロト
ニンを低下させ、痛みの閾値を下げるため痛みを
感じやすくさせるために、薬剤乱用頭痛を引き起
こしてくることになります。このようにミトコン
ドリアと脳内セロトニンの2つの観点から考えな
くてはなりません。これが根本的な原因となっています。
このような薬剤乱用頭痛の特徴は、飲んでも飲んでも効果がなく、かえって頭痛を酷く
させることになります。そして、目が覚めた朝方から頭痛を訴えてくることになります。
こういったことから、頭痛治療は、”薬剤乱用頭痛との戦い”といっても過言ではありま
せん。このような”頭痛薬によって頭痛が引き
起こされてくる”というジレンマがあることを
理解しなくてはなりません。
薬剤乱用頭痛を引き起こさないためには、こ
うしたお薬を”月に 10 回以内”に抑えること
が重要となりますが、そう簡単にはいかないの
が実情です。このように「お薬を月に 10 回以内に抑える」ためには、どのようにすべきか
を考えなくてはなりません。
ここが重要なことでありながら、「お薬を月に 10 回以内に抑える」ための手段として頭
痛専門医は”予防薬”を使うことを勧めます。しかし、こうした予防薬の効果にしても、
的確なものは何一つないのが現状であるにも関わらず、このようなことを勧めます。
このように予防薬の効果が発揮される以前の段階で薬剤乱用頭痛を引き起します。
先程も述べましたように、予防薬といえども人体には有害なものであり、化学的ストレ
スとなるものです。
ここで、改めて「トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛」について述べます。
- 24 -
頭痛専門医は、片頭痛の場合、一般の鎮痛薬で痛み
を抑えていると、一部の脳の活性が高まり、そこにつ
ながる血管が異常拡張して、痛みが生じ、血管の異常
拡張がさらに脳の活性をもたらし、それが再び血管の
異常拡張へとつながり、つまり、悪循環が終わらなくなると宣われ、それによって常に片
頭痛がある状態になり、血管の拡張が繰り返されると、血管自体に炎症やむくみが残って、
さらに頭痛を起こしやすくなるとされます。
こういった見解を一部の先生方は述べられ、極めて軽い片頭痛発作でも「トリプタン製
剤」を使用すべきと勧めておられます。(これが薬剤乱用頭痛につながってきます)
しかし、片頭痛診療の重鎮とされる名古屋の寺本純先生は、このような薬剤乱用頭痛の
治療の難しさをこれまで訴えてこられ、特に”トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛”を改
善させる難しさを強調され、”従来の予防薬”では全く効かないとされ、最近ではボトック
ス治療による方法を提唱されます。そして、先生は、トリプタン製剤による薬剤乱用頭痛
からの脱却にはボトックス療法しか現状ではないとさ
れます。そして、その有効率は、1年以内で 80 %で
あり、残りの 20 %は脱却できないとされています。
このように、一旦、トリプタン製剤による薬剤乱用頭
痛に陥れば、運が悪ければ、一生、頭痛で苦しむこと
を余儀なくされてしまうことを意味します。まさに、
頭痛地獄の絵図そのものということです。
参考までに、寺本先生の提唱される「ボトックス治療」は現在、保険適応はなく、トリ
プタン製剤による薬剤乱用頭痛から脱却する唯一の方法でありながら、簡単に・身近な医
療機関では受けることは出来ないのが現在の日本の状況です。
ですから、一旦、トリプタンによる薬剤乱用頭痛に至れば、治すことは至難の業です。
トリプタン製剤は、効くひとには絶大な効果があるため、つい飲み過ぎになってきます。
しかし、このような”トリプタンによる薬剤乱用頭痛”に至れば、脱却は極めて困難に
なるということを認識しておく必要があります。こういったことから、発作時にトリプタ
ン製剤を服用せざるを得ないことも事実ですが、必ず平行して「生活習慣の改善」を同時
に行っていくことが絶対条件となってきます。
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こうしたことから、「生活習慣を改善」させることなく、安易にトリプタン製剤を服用す
べきでないということです。
以上のように頭痛を改善させるとされる”頭痛薬”は
すべて薬剤乱用頭痛を起こします。
薬剤乱用頭痛を引き起こさないためには、このような
お薬を月に 10 回以内に抑えることが重要となりますが、
そう簡単にはいかないのが実情です。このように「お薬を月に 10 回以内に抑える」ために
は、どのようにすべきかを考えなくてはなりません。
このように考えてみれば、薬剤乱用頭痛に至る原因は、各種の諸々の薬剤によって、た
だ単に”頭痛という痛み”さえとれば、これで解決したと考えることにあります。
慢性頭痛とは、私達の生体の生活のリズムの歪み(乱れ)すなわちホメオスターシスの
乱れから起きてくる頭痛です。この「生活のリズムの歪み(乱れ)」の原因を突き止めるこ
とが最も重要になってきます。
先程も述べましたが、片頭痛と緊張型頭痛は、明確に区別できるものではありません。
その境界に、どちらの特徴を持っていて、どちらとも区別できない頭痛です。
このことは、片頭痛は緊張型頭痛から連続して起きてくるということを意味しています。
慢性頭痛がどのような発症様式をしているのかを知れば、あとは何をどうすればよいか
が理解されるはずで、簡単なはずです。このことはこれから述べていきます。
片頭痛は遺伝するのか???
皆さんは、片頭痛が、”遺伝する
病気”と思い込んで諦めておられな
いでしょうか。
片頭痛は、あたかも「遺伝」して
いるような「印象」はあります。
しかし、その遺伝の様式は、メンデ
ル型”の”単一遺伝子異常”の優性遺伝でなく、”多因子遺伝”の様式で、親や祖父母から
- 26 -
受け継がれます。この”多因子遺伝”とは、複数(3つ以上)の関連遺伝子をもとに、こ
れに環境因子が加わって病気が発症してくるものを言います。
ということは、”遺伝的素因”が存在しても、これに”環境因
子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということで
す。これにはミトコンドリアDNAが関与しています。
このことは、”遺伝素因”が同一であるはずの一卵性双生児
の場合、必ずしも2人とも片頭痛を発症することはありません。あなたの兄弟姉妹がすべ
て片頭痛を発症しているのでしょうか。もし、
そうであれば極めて特殊なケースと考えるべ
きです。あなたの家族全体の食生活・食習慣
に問題があるものと推測されます。
このような”多因子遺伝”をする病気とし
ては、身近なものとして、生活習慣病である
Ⅱ型糖尿病があります。Ⅱ型糖尿病は、糖尿
病になりやすい素質(遺伝素因)をもっている人に、”環境因子”として、食べ過ぎや運動
不足による肥満、アルコール、精神的ストレス、年をとること、その他多種多様の要因が
加わって発症します。
こうしたことから、糖尿病の治療方針として、この環境因子の是正に努めるべく「食事
療法」と「運動療法」がまず行われ、これに「薬物療法」が追加されます。
これに対して、片頭痛の大半は、その遺
伝素因である「ミトコンドリア活性の低
さ」に、”環境因子”として、食生活が原
因で「さらに、ミトコンドリア機能の低
下」を来して「酸化ストレス・炎症体質」
(片頭痛体質)を形成することにより引
き起こされる生活習慣病と考えられてい
ます。
さらに片頭痛の”環境因子”として「ミトコンドリアを弱らせる”環境因子”」「脳内セ
ロトニンを低下させる”環境因子”」「体の歪み(ストレートネック)を引き起こす”環境
- 27 -
因子”」の3つがあります。
これらの”環境因子”の係わり方は人それぞれです。このよ
うな”環境因子”としてどのようなものがあるかを知ることが片頭痛改善・予防のための
必須の項目になりますので、本書ではこの点を解説するのが目的でもあります。
片頭痛という頭痛は、皆さんのこれまでの生活習慣とくに食生活・姿勢等の問題が原因
となり、謂わば、あなたの”生き方(ざま)”すべてが関与して起きてくるものです。これ
らは、いずれも日常生活を送る上で、”
何気なく無意識に”行ってきたことが
原因となっていることを意味していま
す。このために、あたかも”遺伝的疾
患”であると誤解された理由でもあり
ます。
このため、先ほど述べた「ミトコン
ドリアを弱らせる”環境因子”」「脳内
セロトニンを低下させる”環境因子”」
「体の歪み(ストレートネック)を引き起こす”環境因子”」の3つがどのように環境因子
として係わっているかを知る必要があります。この点を一緒に、勉強していきましょう。
以上のように、緊張型頭痛の段階から対策を講じて、片頭痛へと移行させないことです。
すでに、片頭痛へ移行しておれば、ミトコンドリアの問題、脳内セロトニンの低下、さ
らに体の歪み(ストレートネック)の慢性化の要因を改善すべきということです。
片頭痛は、あくまでも予防すべき頭痛であり、そのためには決して後手にまわることな
く、先手・先手と対策・工夫をこらすべきです。
- 28 -
第2章
片頭痛はどのようにして発症するのでしょうか
片頭痛
big(true)migraine
連続体
緊張型頭痛
緊張型頭痛
small migraine
(脳内セロトニンの関与)
緊張型頭痛と片頭痛は連続したものです
片頭痛発症の当初は”緊張型頭痛”のような状態から、ある一定期間を経過して片頭痛
を発症してきます。子供さんの片頭痛は、大人の片頭痛と異なり、緊張型頭痛のようなパ
ターンを示すことが多く、そして痛む時間も4時間以下であることがほとんどです。
こうした点は、片頭痛の発症様式を典型的に示しているといえます。
受診前の頭痛が極めて軽いため患者さんの意識にはないことが多いためです。
このことは、まず、頭痛を引き起こしやすい誘発要因の存在によって頭痛発作を起こし
たことがあったかどうかを思い出してみることです。人混み,疲れのあと,寝過ぎ,映画
のあとなどに頭痛を経験したことがなかったかどうかというように、とくに、前屈みの姿
勢を長時間とった後には頭痛をよく経験される方々も多いようですが、こういった頭痛は、
しばらくすれば軽快してしまうために患者さんの記憶に残っていないことがほとんどです。
このようなことは、医療機関を受診し、医師の前では思い出すことは到底不可能なことで
あるため、受診前にあらかじめ”想起する”ことが大切になってきます。
そして、この最初に”自覚された頭痛”が”現在の頭痛”に至るまでの経過が重要とな
り、悪化してきた場合は、悪化するまでの間に生活習慣・環境の変化がなかったかどうか
を冷静に想起することが重要で、ここに”現在の頭痛”の発症要因の鍵が潜んでいます。
これが、今後の片頭痛改善・予防の鍵を握ってくることになるからです。
いきなり片頭痛から発症することも
- 29 -
しかし、なかには、いきなり片頭痛の様式から発症してくる場合もあります。これは重
要な点であり、忘れてはなりません。これは「生まれつき存在する”ミトコンドリアの働
きの善し悪し”」で、このような発症様式をすることがあるということです。
「生まれつき存在する”ミトコンドリアの働きの善し悪し”」の程度は千差万別であり、
これが極端に悪ければ、これと同時に「セロトニン神経の働き」も悪くなり、このために
「脳内セロトニンが低下」し、「脳過敏」や「体の歪み」を同時に引き起こしてくるため、
発症時期も早くなってきます。こうした方々が、”遺伝的疾患”であるかのごとく思わせる
原因でした。このように「ミトコンドリア」「脳内セロトニン」「体の歪み(ストレートネ
ック)の3つが最低重なり、これに「有害物質の摂取」の要因が加わることにより、改善
に至るまでには相当根気を要することになります。
結局、片頭痛は”全身的なミトコンドリアの働きが悪い”ことに原因があり、これによ
って当然のこととして「セロトニン神経の働きが悪くなります」この両者が原因となり「体
の歪み(ストレートネック)」を引き起こしてきます。さらに食生活の問題・有害物質の摂
取により、ミトコンドリアの働きをさらに悪化させてきます。
緊張型頭痛の起こり方
人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈して
います。人間は直立位を保っていますから、
背骨が一直線ですと、全体重が下の背骨にか
かることにより、すぐに下の背骨がダメにな
ってしまいます。こうしたことにならないよ
うにS状の湾曲を呈しています。ということ
は頸椎は前に湾曲を示していることになりま
す。ところが、頸椎が一直線で、なおかつ前
に傾斜しておれば、後頸部の筋肉に張力が常
に加わることになり、これが肩こりに繋がり、
この”こり”が上部へと拡がることによって鈍い痛み、締め付けられるような痛みとなっ
- 30 -
てきます。
片頭痛の起こり方
このようにして、日常生活を送る際の”何気ない姿勢(とくに前屈みの姿勢)や動作”
などが原因となって形成される「体の歪み(ストレートネック)」を基盤として、まず、緊
- 31 -
張型頭痛が引き起こされ、片頭痛になる可能性のある方は、生まれつき「ミトコンドリア
の働きの悪い」”遺伝素因”があり、頭痛を訴える度に、アスピリンを含んだ鎮痛薬を服用
し続けたり、ミトコンドリアをさらに弱らせる抗生物質の服用・マグネシウム不足を来す
生活習慣等によって、さらに「ミトコンドリアの働きが悪く」なって来ます。これとは別
に“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれば「脳内セ
ロトニンが低下」することにより、これがさらに増強されてきます。こうした「ミトコン
ドリアの働きの悪さ」があるところに、さらに「マグネシウム」が不足してきますと、「脳
過敏」を引き起こしてきます。そして先ほどのストレートネックが持続すれば、頸部の筋
肉が絶えず刺激を受けることになり、この刺激は三叉神経核に絶えず送られることによっ
て、さらに「脳過敏」を増強させます。これに生活習慣の不規則・ストレス・生理周期に
より「脳内セロトニンの低下」の要因が追加されて、「脳過敏」を増強させ、さらに症状を
多彩なものとさせます。
「ストレートネック」→首や肩の筋肉からの侵害刺激情報
↓
↓
↓
脊髄を介して三叉神経脊髄路核
↓
↓
↓
中枢性痛覚過敏(central sensitization, CS)
↓
↓
↓
脳の過敏性、頭痛の慢性化
↓
自律神経失調症状 →
交感神経機能低下→頚性神経筋症候群
(慢性頭痛)
尾側亜核で三叉神経と頚神経が収束する
ストレートネックのために、頭半棘筋に凝りが出ると、それが大後頭神経を刺激し、そ
の刺激が三叉神経に伝わります。大後頭神経と三叉神経は脳のなかで、三叉・頚神経複合
体を形成していて、つながっていますので、大後頭神経の刺激は三叉神経にも伝わります。
- 32 -
これまでの当医院の調査では、ストレートネックの確認率は、男性で 52 %、女性では 68
%と圧倒的に多く、緊張型頭痛では 84 %、片頭痛では 95 %に、群発頭痛では全例に、ス
トレートネックが確認されています。
- 33 -
このような結果をみますと、少なくとも、ストレートネックが「片頭痛の誘発・増悪因
子」となっているものも存在することが推測されます。
片頭痛も緊張型頭痛も共通して「頸部筋肉群の疲労」を基盤として発症すると考えられ
ます。この根拠として、両頭痛に共通してストレートネックが認められる点です。
片頭痛の遺伝素因(ミトコンドリアの活性低下)のない場合は、首の筋肉のこりは、大
後頭神経に痛みのみ起きることによって、「緊張型頭痛」を発症します。
片頭痛の遺伝素因(ミトコンドリアの活性低下)があれば、片頭痛の場合は、「セロトニ
ン神経が働きが悪くなって「痛みの感じやすさ」が存在するところに、首の筋肉のこりの
刺激が、大後頭神経から三叉神経に絶えず刺激が送られ続けます。このため、「痛みの感じ
やすさ」がさらに増強され、常時、脳の過敏性が高まった状態が継続していきます。
片頭痛の基本的な病態は「脳過敏」
(脳がちょっとしたことで反応しやすくなることです)
にあるとされます。このように「脳過敏」を引き起こす要因が次々に追加されることによ
って、”緊張型頭痛”から”片頭痛”にまで進展していくことになります。だいたいこうし
た時期は、女性の場合、初潮を迎える 13 歳頃に一致します。この点に関しては、女性は健
常男性より 約 52% 脳内セロトニンを産生する能力が低く、またセロトニンの前駆物質で
あるトリプトファンが欠乏すると、女性では脳内セロトニン合成が男性の 4 倍減少する、
と言われています。
女性ホルモンのエストロゲン
(卵胞ホルモン)とプロゲステ
ロン(黄体ホルモン)は、月経
周期でその分泌量は大きく変わ
ります。
特にエストロゲン(卵胞ホル
モン)が減ると、それに伴って
神経伝達物質であるセロトニン
も急激に減ります。
その時に頭の中の血管が拡張することで片頭痛が起こると考えられています。
- 34 -
このエストロゲンが減少するのが排卵日や生理の初日前後です。
つまり排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するためにセロトニンも減少→
頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすいということなのです。
以上のように、だいたいこうした時期は、女性の場合、初潮を迎える 13 歳頃に一致しま
す。こうした年代に女性の場合は、片頭痛を発症してきます。
そして、発症当初は、発作の程度も頻度も少ないのですが、これが結婚を契機として出
産・育児を経験することになり、これまでの生活習慣は一変します。具体的には、睡眠時
間が、育児に際して、十分に確保できなくなることを意味しています。片頭痛の場合、睡
眠時間が確保できませんと、ミトコンドリアの働きを悪くさせ、ひいてはセロトニン不足
に繋がってきます。根底にあるストレートネックは経験的に 30 歳までに改善させませんと、
- 35 -
固定化してきます。こうしたことから、概して女性の場合、30 歳を超えてきますと、とた
んに頭痛の頻度も増え、程度も酷くなってきます。
次々に追加される悪化要因
このため 30 ~ 40 歳代の苦難の時期を迎えてしまいます。さらに特に女性の場合、さまざ
まなストレスが加わることにより、「脳内セロトニン」不足が持続することになります。
こうした時期になると、鎮痛薬やトリプタン製剤の服用も月に 10 回を超えるようになり、
これがさらに「化学的ストレス」となって(見方を変えれば、鎮痛薬やトリプタン製剤も私
達の体には異物です。異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程で
も、活性酸素が発生してしまうのです。このため発作を起こりやすくします)、益々「脳内
セロトニン」低下を倍増させてきます。これに対して抗てんかん薬(特に、デパケンは注
意が必要です)を追加されることにより、一時的には発作回数は軽減されることはありま
すが、長期間連用しますと今度は「ミトコンドリア」を弱らせる結果、さらにトリプタン
製剤の服用を減らすことができなくなるといった”泥沼の状態”を引き起こしてきます。
まさにエンドレスの状態に至ってしまいます。さらに、更年期を過ぎてきますと、若い頃
のように血管の”しなやかさが失われ”反応性も乏しくなり、片頭痛本来の拍動性頭痛で
なく、緊張型頭痛のような鈍い頭痛に変化してきます。これは、ストレートネックがその
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まま持続しているためです。そして、頭痛に加えて、イライラ、不眠、めまいなどの不定
愁訴が加わってきます。これが、東京女子医科大学脳神経外科の清水俊彦先生が提唱され
る「脳過敏症候群」そのものであり、東京脳神経センターの松井孝嘉先生の提唱される「頸
性神経筋症候群」に相当します。こうしたことから、うつ状態・めまい・冷え性等々のさ
まざまな”共存症”を合併することになります。
男性の場合は、ストレートネックに加えて、食生活の問題から「ミトコンドリアの働き」
が悪くなり、これに生活習慣の不規則により、また仕事上のストレスが重なることによっ
て「慢性的な脳内セロトニンの低下」が引き起こされることによって、片頭痛へと発症し
ていきます。
根底にはストレートネックが存在します
このように、慢性頭痛発症の根底には、まず、体の歪み(ストレートネック)が存在す
るということを考えなくてはなりません。このストレートネックは早い人では子供の頃か
ら既に存在します。遅い場合は、前屈みの姿勢を強いられる作業環境に置かれ続けた場合、
後天的にも形成されてくることになり
ます。こうした方々は、片頭痛の発症
時期は当然遅くなってきます。30 歳
以降に発症してくることも多いように
思われます。
また、ムチウチの事故に遭遇します
- 37 -
と、その後、ストレートネックが形成・増悪してきて、このために緊張型頭痛・片頭痛・
群発頭痛のいずれの形でも頭痛が引き起こされてきます。しかし、国際分類では、ムチウ
チ後7日までに出現しませんとムチウチとの関連性は否定されます。しかし、現実には、
ムチウチ後、かなり時間が経過してからムチウチと同じ症状が出現してくることは日常茶
飯事ですが、この点は、国際分類では極めて曖昧な形になっています。これは、頭痛と頸
椎病変に関する取り決めが極めて曖昧なことによります。こういう点から、ムチウチから
ストレートネックが形成されてくるという松井孝嘉先生の主張を頭痛専門医は全く受け入
れることなく、片頭痛の”慢性化の治療不可能な要因”として”頭部外傷・頸部外傷”を
挙げています。これは余談ですが・・
また、群発頭痛の場合、最初は片頭痛のようなパターンをとりながら、ある時期から群
発頭痛へ移行したり、片頭痛と群発頭痛との間を行ったり来たりする場合も経験されます。
群発頭痛は「体内時計」の乱れによって起きてくることが従来から指摘されています。
体内時計は、ミトコンドリア、セロトニンと関係があります。こうして考えれば、緊張型
頭痛・片頭痛・群発頭痛の慢性頭痛は、一連のものと考えなくてはなりません。
根本的に解決するには
このように慢性頭痛の発症には、
「体の歪み(ストレートネック)」
「ミトコンドリア」
「セ
ロトニン」の3つの要因が関与しています。根本原因は、「ミトコンドリアの働きの悪さ」
にあり、この3つがお互いに、密接に関与し・影響しあっています。
この3つが片頭痛の”環境因子”となっていて、これらの関与の仕方の比重は各人・各
様であり、どの要因のスペクトラムが色濃く関与しているかの違いと思われます。
こうした観点から予防・治療の対策を考えなくてはなりません。そして、根底には「酸
化ストレス・炎症体質」が潜在的に形成されていることから、このような体質にならない
よう配慮するとともに、これを改善しませんと根治には至らないということです。
このような基盤ともとにして、これまで言われてきたような、誘因(引き金・・トリガ
ー)が加わって、容易に、「片頭痛」発作が引き起こされるものと思われます。
この際、トリガーとなるものが、どの程度重なるかで、片頭痛発作の程度が決まってき
- 38 -
ます。
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- 40 -
緊張型頭痛がひどくなると片頭痛になる?
「日常的に肩こりを自覚していて,疲れたり睡眠不足になると肩から後頭部に重い感じの
痛みが上がってくる。後頭部の鈍痛で終わるときもありますが,我慢していると頭仝体が
ガンガン痛んで吐き気も出現し,ひどいと嘔吐する。ガンガン痛いときには,家族の話し
声もうるさく感じて,静かな部屋で暗くして横になると少し楽になる」といった患者さん
はよく遭遇します。ひどい頭痛はおそらく片頭痛と診断して問題はないでしょう。後頭部
の鈍痛に関しては、緊張型頭痛と診断される場合が多いと思われます。このように緊張型
頭痛で始まり、程度が強くなると拍動性の頭痛を伴うものを、オーストリアのランス Lance
は緊張・血管性頭痛 tension-vascular headache と命名しました。このように一連のものです。
片頭痛が緊張型頭痛に化ける?
「20 歳ころから時々片頭痛発作を起こし結婚後片頭痛発作が頻繁になるが、40 歳ころ
から緊張型頭痛が加わってきて、50 歳を過ぎると寝込むようなひどい頭痛発作は起こらな
い代わりに、だらだらと重く締め付ける感じの頭痛が続くようになった。」このような患者
さんは古い分類で混合性頭痛としていた典型例です。国祭頭痛学会分類では、以前のもの
は片頭痛で、中年以降の頭痛は緊張型頭痛と診断されるでしょう。このようなパターンを
片頭痛が加齢とともに変化したということで、米国の Mathew は変容性片頭痛という概念
を提唱しています。ただ国祭頭痛学会分類の範疇としては現在のところ認められていませ
ん。一方、片頭痛の治療に鎮痛薬などを乱用していますと頭痛が発作性の型から、連日性
になっていくことがあります。いわゆる薬物乱用による慢性連日性頭痛ですが、これも 変
容した片頭痛の一種と考えられています。
片頭痛と緊張型頭痛の多くは症状は重複
片頭痛と緊張型頭痛の症状の多くは重複していて、個々の症状のみで診断することは困
難です。たとえば、軽度~重度の頭痛、両側性および片側性の頭痛は両者に認められます。
また、片頭痛、緊張型頭痛ともに拍動性でないことが多く、さらに、緊張型頭痛の特徴
- 41 -
と認識されることの多い「肩こり」も多くの片頭痛で随伴しています。
片頭痛因子(血管症状)
拍動痛
片側性
高度頭痛
悪心・嘔吐
緊張型頭痛因子(筋症状)
締め付け感
圧迫感・頭重
後頭部の頭痛
肩こり
片頭痛の本質は「エスカレーシヨン」(Cady )
次頁の図は片頭痛を理解する上で、重要です。
まず神経系の変調があると予兆を、神経活性物質変化で前兆を、さらに、三叉神経が感
作されますと(軽度の頭痛)緊張型頭痛が引き起こされます。
血管が賦活されますと神経血管系感作を引き起こし(中等度~重度の頭痛)片頭痛へ、
中枢感作が起きますと、ひどい片頭痛(重度の頭痛)が起きてきます。
すなわち、片頭痛は三叉神経の脱抑制により緊張型頭痛が起こり、さらに神経血管系が
活性化されて初めて片頭痛が起こり、この過程が次の図のようになります。
エスカレーシヨンの程度によって、緊張型頭痛~強弱さまざまな片頭痛が出現すること
が理解されることと思います。このように一連したものということです。
天気に喩えますと、片頭痛は「雨」、緊張型頭痛は「曇り」に相当し、両者には明瞭な差
- 42 -
があります。雨は曇り空から降り出します。つまり、緊張型頭痛が先行します。雨の降り
方もさまざまであり、片頭痛の臨床症状の”多彩さ”と一致します。
Cady は片頭痛と緊張型頭痛は”共通の病態生理”を持つと考えられるとして,一次性頭
痛一元説(Convergence Hypothesis)について述べています。
片頭痛の発生過程は,まず患者の”遺伝素因”にホルモン状況の変化や睡眠時間の変化,
アルコール摂取などの”環境因子”が加わることで,片頭痛が起こりやすくなること,す
なわち脳の感受性が高まることから始まります。
次いで,気分や食欲の変調,肩こり,感覚や意識の変化,疲労などの前駆症状があり,
症例によっては眼がチカチカするなどの前兆を伴って頭痛が出現します。ここまでが前駆
期で,次の頭痛期は一般的に軽度の頭痛で始まり,病状が進行すると中等度〜重度となり,
光過敏や音過敏が増強,悪心・嘔吐などを伴って国祭頭痛学会分類診断基準を満たすこと
になります。そして頭痛が頂点に達すると,中枢性のアロディニア(異痛症)を呈するこ
とになります。
つまり,一次性頭痛一元説では,頭痛が軽度の段階でおさまる場合は緊張型頭痛とみな
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しています。ひどくなれば片頭痛へ移行するということです。
頭痛が起こり始めた時、この頭痛がどこへ行くかはミステリーなのです。緊張型で終わ
るのか、緊張型頭痛経由片頭痛なのか、片頭痛直行なのか。これは患者さんにも分かりま
せんし、医者にはもっとわかりません。(引き金がどの程度重なるかで左右されます。)
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頭痛体操やストレッチ、階段の上り下りをしてみても見極めがつかない場合は、飲み慣
れた使いやすい鎮痛剤を飲んで戴いて、30 分後に頭痛が悪化してくるようならトリプタン
系薬剤を飲んで下さい。また、朝から痛い場合は片頭痛と考えられますし、ご自分の経験
上片頭痛だとわかる場合には、最初からトリプタン系薬剤を服用して下さい。
以上のように、緊張型頭痛も片頭痛は明確には、現実に区別できないということがお分
かり頂けたかと思います。その理由は、緊張型頭痛も片頭痛も共通して、頸椎レントゲン
検査で、ストレートネックを高頻度に認めます。このため、このように臨床症状には、重
複するものが多いということです。
緊張型頭痛のところでも述べましたように、片頭痛は緊張型頭痛と連続したものです。
緊張型頭痛から、片頭痛へと移行して発症してくるということです。
ただ、なかには、ミトコンドリアの働きが極端に悪いような場合は、いきなり片頭痛の
タイプから発症してくる場合も当然あります。この点も重要な点です。
このように、片頭痛にしても緊張型頭痛の場合も、どのような”症状”があるかという
ことで「国際頭痛分類 第3版β版」という国際頭痛学会が定めた基準に従って診断されて
いますが、これまでも述べてきましたように、クリアカットには区別できません。この理
由は緊張型頭痛と片頭痛が連続したものであるからに他ならないからです。
単純な表現をすれば、日常生活を送る際に、支障を来す程の激しい頭痛の場合は、片頭
痛であり、支障を来す程でない軽い場合は緊張型頭痛ということになります。ということ
は、この中間に位置するものが当然存在するということに他なりません。
こうしたことから、実際に頭痛が起きた場合、今回はどちらの頭痛なのかを、その都度、
自分で判断する必要があります。ここが実際の対処の仕方の難しい点です。
多くの片頭痛の方々は、「典型的な片頭痛」の経過で図示しましたように、「予兆期」に
”生あくび”が出たり肩が異常に凝ってきたりというように”頭痛信号”を自覚されてお
られるようです。こうしたことから、自分の「片頭痛の経過」を、あらかじめ把握してお
くことが大切になってきます。そして、間違いなく「片頭痛の発作」であると判断できれ
ば、即座に「トリプタン製剤」を服用することです。こうして、たちまちの発作に対処し
ましょう。こうしておいてから、予防・改善のための工夫をしていくべきです。
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第3章
片頭痛とは、どのような頭痛でしょうか
片頭痛は 15 億年前の因縁?
1996 年に間中信也先生が開設さ
れたネット上に「頭痛」の老舗とも
いうべきHP「頭痛大学」があり、
ここに、この当時から、以下のよう
な記載があり、引用致します。
右は細胞の中に含まれるミトコン
ドリアの電子顕微鏡写真です。
ミトコンドリアは、細胞のエネルギーを産生する「発電所」のはたらきをしています。
それは約 15 億年前のことでした。当時酸素がきらいなのんびりやの単細胞生物”A”が
おりました。
当時増えつつあった酸素を利用してエネルギッシュな好気性生物”B”もいました。”A
”が”B”に提案しました。
「Bさん僕と結婚しよう。僕のウチに住んでいいよ。そのかわり君のエネルギーを僕にわ
けて頂戴」。
プロポーズが成功して、”A”と”B”の同棲生活が始まったのでした。
片頭痛には、このミトコンドリアが関係しています。
片頭痛では、ミトコンドリアの”酸化燐酸化の障害”があり、これによる代謝の異常が、
神経機能障害を引き起こし、それが”脳過敏”を強めて片頭痛発作を発現させます。
ミトコンドリアの代謝機能を是正すれば、片頭痛にならないということになります。
ミトコンドリアの働きを助ける物質にビタミンB 2 があります。実際ビタミンB 2 をと
ると片頭痛になりにくいのです。
とすれば、15 億年前に細胞AとBが同棲しなければ、片頭痛という病気は生まれなかっ
たかもしれません。
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このミトコンドリアの一部が異常をきたし、機能低下する事で起こる”ミトコンドリア
病”があります。このミトコンドリア病のほとんどの患者さんには、片頭痛が存在します。
このようなことから、これまで片頭痛が”ミトコンドリアの機能障害による疾患である”
という考え方が生まれました。
すなわち、片頭痛は、”ミトコンドリアのエネルギー代謝異常あるいはマグネシウム低下
によって引き起こされる脳の代謝機能異常疾患”であると考えられています。
こういったことから、片頭痛は全身的な”ミトコンドリアの機能障害”による疾患と考
えられています。
片頭痛は”多因子遺伝”疾患
(重要なことですので、敢えて繰り返します)
以上のように片頭痛は「ミトコンドリアの働きの悪さ」によって起きてくる頭痛です。
この「ミトコンドリアの働きの悪さ」が”遺伝素因”として、代々引き継がれます。
1990 年代に、それまで鳥取大学医学部神経内科のグループは、片頭痛の遺伝子研究から、
以下のような考え方を示されていました。
片頭痛は、あたかも「遺伝」して
いるような「印象」はあります。
しかし、その遺伝の様式は、メンデ
ル型の”優性遺伝”でなく、”多因
子遺伝”の様式で、親や祖父母から
受け継がれます。ということは、”
遺伝的素因”が存在しても、これに
”環境因子”が加わらないことには、片頭痛は発症しないということです。
このことは、”遺伝素因”が同一であるはずの一卵性双生児の場合、必ずしも2人とも片
頭痛を発症することはなく、また、同一の母親から生まれた兄弟姉妹がすべて片頭痛を発
症するわけではないことからも容易に理解されます。
”遺伝素因”として「ミトコンドリアの働きの悪さ」が、生まれつきあると推測され、
この”環境因子”として、鳥取大学の下村登規夫先生は、ミトコンドリアと脳内セロト
ニンの関与を指摘されて来られました。
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このように、片頭痛は”多因子遺伝”のため、この「ミトコンドリアの働きの悪さ」と
いう遺伝素因に、環境因子が加わって、始めて片頭痛を発症させます。ということは、遺
伝素因があっても、必ずしも片頭痛を発症してこないということ意味しています。
それでは、”環境因子”は何か?
最近、平成 25 年 2 月に、分子化学療法研究所の後藤日出夫
先生によって、医師の立場を離れて工学博士の眼で、分子化学
の立場から、片頭痛の大半は、遺伝素因である「ミトコンドリ
ア活性の低さ」に、”環境因子”として、食生活が原因で「さ
らに、ミトコンドリア機能の低下」を来して「酸化ストレス・
炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患であり、
生活習慣病の一種とされました。
この「ミトコンドリアの働きの悪さ」があるために、当然「セロトニン神経系」の働き
も悪くなり、結果的に「脳内セロトニンの低下」を来すことになります。この「ミトコン
ドリアの働きの悪さ」と「脳内セロトニンの低下」があれば、当然、「体の歪み(ストレー
トネック)」を併発して来ます。そして、日常
の食生活の問題から、
「ミトコンドリアの働き」
と「脳内セロトニンの低下」が増悪されるこ
とになります。
いろいろな生活習慣により”ミトコンドリ
アの働きがさらに悪化する”につれて、「活性
酸素」を過剰に発生させてくる「片頭痛体質(酸化ストレス・炎症体質)」を形成すること
になります。この過剰に発生した活性酸素が引き金となって片頭痛発作を誘発してきます。
これらについて、これから述べていくことにします。
このように、片頭痛の根本原因は、ミトコンドリアの働きの悪さにあります。
片頭痛はミトコンドリアの機能低下による頭痛であることを片時も忘れてはなりません。
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片頭痛の病態(メカニズム)
興味のある方はご覧下さい。飛ばしても結構です。
現在、頭痛の専門家は以下のように片頭痛のメカニズムを考えています。
片頭痛の病態仮説は多数提唱されています。セロトニン説、血管説、神経説は古典的な
病態仮説で、これらの学説に基づいて片頭痛の研究が進められてきました。現在もっとも
広く支持されているのは、これらの仮説を発展、統合した、皮質拡延抑制と三叉神経血管
説です。前者は閃輝暗点を、後者は片頭痛の疼痛を明快に説明することができます。
・三叉神経血管説
三叉神経と頭蓋内血管、とくに硬膜血管とその周囲の三叉神経終末の神経原性炎症を重
視した学説です。”なんらかの刺激”により血管周囲の三叉神経が活性化されCGRPなど
の血管作働性ペプタイドが放出され肥満細胞の脱顆粒、血漿蛋白の血管外への漏出と血管
拡張が起こります。神経原性炎症は三叉神経を刺激して、神経興奮の順行性伝導は中枢に
伝達され頭痛として感じられます。神経興奮は逆行性にも伝導して、ほかの部位の三叉神
経を活性化しCGRPなどを放出することにより神経原性炎症が拡大していきます。順行
性の興奮伝導は、脳幹の三叉神経核を活性化させ、悪心、嘔吐などの自律神経症状を発現
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させ、視床から大脳皮質に伝達されて痛みとして認知されます。この過程で、末梢の三叉
神経が感作され順行性にも逆行既にも過剰な信号を伝達する現象が末梢性感作です。さら
に三叉神経核や視床における中枢感作が成立しますと、硬膜血管の拍動が、三叉神経から
脳幹、視床の神経経路を介して激しい拍動痛や持続痛として認知されます。
・皮質拡延性抑制
皮質拡延性抑制とは、神経細胞とクリアの脱分極、および、引き続いておこる神経活動
の抑制が、大脳皮質を 2 ~6mm/分の速度でゆるやかに拡延する現象です。実験モデルで
観察される現象として、Leao が 1944 年に記載しました。片頭痛の前兆のひとつにギザギ
ザの光が視野のなかを拡大してゆく閃輝暗点があります。
閃輝は視覚刺激の入力がないのに光が見えるという陽性の症状であり、閃輝か消失した
後もしばらく同部位に視覚刺激の入力があっても見えないという陰性症状が暗点です。こ
れが後頭葉視覚野における皮質拡延性抑制を反映した現象と考えられています。最近、高
磁場機能性MRI(fMRI)を用いて、片頭痛患者の視覚前兆が後頭葉の皮質拡延性抑制で
あることが直接的に示されました。皮質拡延性抑制を促進する多くの因子が興奮性、脱分
極性の事象であることから片頭痛患者では脳の興奮性が高まっており、皮質拡延性抑制が
おこりやすい状態にあると考えられています。
皮質拡延性抑制と三叉神経血管系の神経原性炎症の上流に頭痛発生器の存在を推定する
学説も提出されているが議論も少なくありません。さらに、皮質拡延性抑制が三叉神経血
管系の神経原性炎症を惹起するとのデータも示されています。皮質拡延性抑制が片頭痛前
兆をおこし、三叉神経血管系の神経原性炎症が頭部の疼痛をおこしているのは確実ですが、
皮質拡延性抑制、神経原性炎症を惹起するものや、その関係については今後の研究成果を
待つ必要があります。
以上のようにな考え方が一般的です。
これとは別に鹿児島の田村脳神経クリニックの田村正年先生は以下のように「片頭痛の
骨組み」のなかで、片頭痛の病態について述べておられます。
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その病態には、セロトニン、ノルアドレナリン、一酸化窒素等、様々な生体内物質が関
与する可能性が考えられています。中でも、セロトニンについては、片頭痛発作中のセロ
トニンの減少、発作後の尿中セロトニン代謝物の増加、セロトニンを減少させるレセルピ
ンの投与による片頭痛様発作の誘発等が報告され、片頭痛発作に深く関わっていることが
確認されています。
セロトニンによる片頭痛発作誘発の機序については、血小板等からセロトニンが過剰に
放出されて脳血管が収縮し、放出されたセロトニンが MAO-A によって代謝されて枯渇す
ると、今度は血管の拡張が起こり、頭痛が発現するとの説がよく知られています(血管説)。
また、最近では、三叉神経終末から CGRP、サブスタンス P 等の神経ペプチドが遊離さ
れ、これらによって血管壁の透過性亢進、肥満細胞の脱顆粒等が起こり、局所の血管周囲
の炎症から頭痛に至るとの説も有力となっています(三叉神経血管説)。
セロトニンは血管に作用するだけではなく、三叉神経からの CGRP の遊離を引き起こす
ことも報告されており、これに対しては、5-HT1B、5-HT1D とともに、5-HTF 受容体が関
与する可能性が指摘されています。スマトリプタンは、5-HT1B、5-HT1D とともに、5-HTF
受容体に対してもほぼ同等の親和性を示すことが 試験管内の実験により報告されており、
新たな作用点として注目されています。
片頭痛発生器
まず、片頭痛を考える上で重要なポイントは、発作の元が生じた時に、その発作が増強
されやすくなる特性を、もともと片頭痛患者が有している可能性があります。
これは、一部の遺伝性片頭痛患者において Ca2+ チャネル異常による神経細胞機能の変
調が存在する事や、片頭痛患者において発作間欠期に交感神経系の機能低下の存在するこ
とと一致する。
このような片頭痛を増強しやすいと考えられる母体に、何らかの原因で脳幹に存在して
いると考えられている“片頭痛発生器”が活性化され、皮質拡延性抑制や三叉神経血管系
の異常な活性化により頭痛が生じると考えられます。
つまり、全てのヒトに片頭痛発生器があり、それが活性化することはあるのですが、一
部の人に、その刺激を増幅してしまう“体質”があり、それが臨床的な“片頭痛”として
現れます。その片頭痛発生器ですが、片頭痛発作発生源として脳幹の縫線核、青斑核およ
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び、中脳水道周囲灰白質 (periaqueductal gray mater
: PAG)が候補に挙げられています。とくに 中脳水
道周囲灰白質 PAG は前頭葉や視床下部から入力を
受け、三叉神経脊髄路核や脊髄後角へ投射する下
行性痛覚抑制系の神経回路を形成する一部であり、
高解像度 MRI により片頭痛患者で 中脳水道周囲
灰白質 PAG における鉄含有量の増加が認められた
ことと合わせ、注目されています。
また、中脳水道周囲灰白質 PAG の血管奇形からの出血で慢性片頭痛となった症例が報
告されており、この系の疼痛抑制の障害により頭痛発作が助長された可能性が考えられて
います。
片頭痛発生器への刺激、すなわち、前頭葉や視床下部へは、ストレスやいろいろな刺激
・食物などが原因となります。
このなかで、「Ca2+ チャネル異常による神経細胞機能の変調が存在する」は、片頭痛患
者さんは、ミトコンドリアの働きの悪さがあり、ここにマグネシウム不足が加わったこと
に起因するものと考えるべきです。
さらに、「その発作が増強されやすくなる特性を、もともと片頭痛患者が有している可能
性があります」「発作間欠期に交感神経系の機能低下の存在」に関しては、東京脳神経セン
ターの松井孝嘉先生が提唱される「頸性神経筋症候群」の観点から説明可能と思われます。
このようにこれらは、「体の歪み(ストレートネック)」に関連したものです。
片頭痛における痛みの発生機序
「片頭痛体質(酸化ストレス・炎症体質)」を基盤として、ちょっとしたことで(ストレス
など何らかの理由で)「活性酸素」や「遊離脂肪酸」が過剰に発生することによって血小板
から血管外へセロトニンが放出され、血管を収縮させます。その後、役割を果たしたセロ
トニンは減少しやがては枯渇し、今度は逆に血管は拡張します。
血管が拡張することによって血管に絡みついた三叉神経が刺激され、頭痛が起きます。
- 52 -
さらに、三叉神経が刺激されると、サブスタンスPやCGRPなど炎症を起こす物質が放
出され、血管を刺激して痛みが出てきます。この二つによって、片頭痛が起きてきます。
酸化ストレス・炎症体質を基盤として
↓
(シャワーには 1D)
活性酸素・遊離脂肪酸の発生
→
↓
(サブスタンP、CGRP)
血小板凝集
↓
↓
セロトニン放出
三叉神経末梢から、血管拡張性の神経ペプチドを放出
(血管には 1B)
→
血管透過性の亢進、血漿成分の漏出
神経源性炎症
このように血管の収縮と拡張に大きく影響しているセロトニ
ンですが、最初の引き金となる「セロトニン」は”生理活性物
質”としての作用です。片頭痛発作時には、「脳内セロトニン」
が不足した状態にあります。トリプタンという薬は、脳内セロ
トニンと同じよりに、血管には 1B という鍵穴があり、トリプタ
ンはこの鍵穴に作用して、血管を収縮させ、拡張によって三叉
神経が刺激されるのを防ぎます。
さらに血管の周囲から「痛み物質」が、シャワーのように血
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管に降り注いで、血管の拡張と炎症が起こっており、シャワーには 1D という鍵穴があっ
て、トリプタンはこの鍵穴に作用して、「痛み物質」の放出をとめます。ここでもセロトニ
ンの代わりにトリプタンが三叉神経に取りつき、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛
みが出るのを防ぎます。
- 54 -
ここで、現在、片頭痛治療上の第一選択薬とされるトリプタン製剤について説明します。
トリプタン製剤は片頭痛に非常に効果のある頭痛専用の薬で、日本では 2000 年に販売
が許可されました。トリプタン製剤の登場によって片頭痛の治療は画期的に進歩しました。
トリプタン製剤が出る前、頭痛で医者に来る患者さんに対しては、鎮痛剤か、片頭痛の
治療薬としてただ一つだけあったエルゴタミン製剤という薬を処方するのがせいぜいで、
あまりひどい場合は痛み止めの点滴をしたりしましたが、これといって効果的な治療法は
ありませんでした。
エルゴタミン製剤という片頭痛薬は、使い方がとても難しい薬です。痛くなってから飲
んだのでは効かないので、痛くなる前に飲まなければなりません。患者さんは痛くなると
大変だからと、頻繁に飲むようになります。すると薬物乱用頭痛を起こしてしまいます。
また、ある程度痛くなってから飲むと、頭痛が治まらないばかりか悪心嘔吐を起こします。
エルゴタミン製剤を使っていた片頭痛の患者さんたちの悪心嘔吐は、そのかなりが薬のせ
いだったと言われているほどです。
また医療機関が処方する鎮痛薬は、市販のものよりは多少強いのですが、片頭痛には効
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かない場合も多く、忙しい中わざわざ医者に行っても、たいして効かない鎮痛剤をくれる
だけなら市販の薬でも同じ、医者に行っても無駄だ、と、頭痛持ちの患者さんたちを医者
から遠ざける原因にもなっていたように思います。
ところがトリプタン製剤は、片頭痛を持つ”多くの”(すべてではありません)患者さん
に対して、非常に効果があります。エルゴタミン製剤のように悪心嘔吐を起こしたり、飲
むタイミングがとても難しいということもありません。午前中を潰して病院に行くだけの
価値は絶対にありますので、片頭痛で悩んでおられる方は是非一度は試してみて下さい。
トリプタン製剤を治療で使う場合、口から飲む経口薬(頓服)、シュッと鼻から吸収する
鼻吸入タイプ、皮下注射という3つの方法があります。注射が最も効き目が早く、打って 10
分もすると頭痛が治まってきます。次に早いのが鼻吸入タイプで 15 分ほど、頓服の場合
は1時間ほどで効き目が現れます。
注射器タイプのトリプタンをいつも持っていて、痛くなったら自分で注射する患者さん
もおられます。
片頭痛ではほとんどの場合、痛くなったときにすぐに飲むことができるよう、経口タイ
プの頓服を処方します。激しい頭痛で吐き気があり、口から飲むことが難しい場合などは、
鼻吸入タイプのものを使うこともあります。
頓服は水で飲みますが、水がなくても口にいれると溶けるタイプのものもあります。
トリプタンという薬は現在、4つの製薬メーカーから5種類発売されており、いずれも
「○○ トリプタン」という一般名がつけられています。
この5種類のトリプタンは、どれも片頭痛に効果がありますが、飲んで素早く効果の出
るもの、効きめが長く持続するものなど、それぞれ少しずつ異なります。さまざまなトリ
プタンがあれば、それだけ各患者さんの痛みの質に合わせて選ぶことができますので、患
者さんにとっても非常に便利です。
トリプタン製剤の使い方
トリプタン製剤は市販薬ではありません。医療機関を受診し、片頭痛という診断をされ
て初めて、処方される薬です。片頭痛の痛みには非常に効果的ですが、使い方を間違える
と治る頭痛も治らず、薬物乱用頭痛になりかねません。
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単に片頭痛だからトリプタン、群発頭痛だからトリプタンというのではなく、医師に自
分の頭痛の様子や頻度などをきちんと話し、これまでの自分の生活習慣を見直し、”間違っ
た生活習慣を是正”しながら、正しく使用することが必要です。これが、トリプタン製剤
による薬剤乱用頭痛を防止するための絶対条件になってきます。
トリプタン製剤は、これは明らかに片頭痛である、という頭痛が起きたときに飲みます。
風邪をひいたときの頭痛に飲んでも効果はありません。必ず、片頭痛のときに服用します。
またトリプタンも有効率 100 %ではありませんので、体調などさまざまな状況によって、
効かないときもあります。一度飲んで、2時間経ってもまだ痛みがあるか、ひどくなって
いる場合には、もう一度飲むことができます。1日に飲んでも良いと言われている個数は
トリプタンの種類によって異なり、2つまでのものと4つまでのものがあります。
市販の鎮痛薬には、かなりの量のカフェインが含まれていて胃を荒らすことがあり、ま
た1日に何度も飲むことはできません。それに比べるとトリプタン製剤は体にとって優し
い薬と言えます。
ただし、頭痛が起きるかもしれない、と思って予防がてら毎日1錠ずつ何日か続けて飲
む、というのは避けなければいけません。他の薬と同様、薬物乱用頭痛を起こすことがあ
ります。1カ月に6回以上激しい頭痛が起きてトリプタン製剤を飲むようであれば、主治
医と相談して予防薬を飲むべきでしょう。予防薬と併用することで頭痛の頻度が減り、ト
リプタン製剤の効き目も良くなります。
またトリプタン製剤にも副作用があります。服用してしばらくすると、胸の辺りが少し
キュッと締め付けられるようになることがあります。これはトリプタン製剤の副作用で、
患者さんの心電図などをすべて確認しても異常がないことがわかっており、全く安全なの
で心配ありません。5分か 10 分すると症状は消えます。
もう一つ注意が必要なのは、トリプタン製剤服用のタイミングです。服用のタイミング
を間違えると、本来なら効く頭痛も効かず、長い時間苦しむことになりかねません。
トリプタン製剤は、明らかに片頭痛だと思われる頭痛が始まったらすぐに服用するのが
最も効果的です。日本人の場合、痛みにできるだけ耐えることを美徳とする傾向があり、
痛みが始まってもなかなか鎮痛剤を飲まない患者さんも多いのですが、頭痛がひどくなっ
てからでは、さすがのトリプタン製剤も効果が出ない場合があります。
初めてトリプタン製剤を処方された患者さんで、効かない、と訴える人によく話を聞い
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てみますと、痛みをさんざん我慢して我慢して、もうダメだ我慢できない、というときに
なってやっと飲んだ、という場合がほとんどです。トリプタン製剤は痛みを止めるための
薬、痛みを我慢しなくても良いための薬なのですから、始まったな、と思ったらすぐに服
用して下さい。
また片頭痛には前兆のある方もいらっしゃいますが、トリプタン製剤は前兆時に服用し
ても全く効果がありません。また痛みが引く頃になって飲んでも効きません。あくまでも
「痛み」が始まったときに服用します。
トリプタン製剤は、「明らかな片頭痛の痛みが始まったら即座に」という最も効果的な正
しい服用のタイミングを理解して戴き、患者さんは、我慢せずに、痛みが始まったらすぐ
に飲むこと。これが、患者さんの苦しみを減らし、決して安くないトリプタンという薬を
有効に活用するためには、大切なことなのです。
トリプタン製剤はなぜ効くのか
トリプタン製剤が片頭痛に効果があるのは、頭痛が起きる仕組みの根幹部分に作用してい
るためです。片頭痛にはセロトニンという物質が大きくかかわっています。セロトニンは
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神経伝達物質のひとつで、感情のバランスを安定させる役割を持ち、血管を収縮させます。
ストレスなど何らかの理由でセ
ロトニンが分泌され、収縮した
血管は、役割を果たして減少す
るにつれて今度は拡張します。
血管が拡張することによって血
管に絡みついた三叉神経が刺激
され、頭痛が起きる、というの
が一つ。
さらに、三叉神経が刺激され
ると、サブスタンスPやCGR
Pなど炎症を起こす物質が分泌
され、血管を刺激して痛みが出
てくる、というのが一つ。
この二つが片頭痛が起きるメ
カニズムです。
このように血管の収縮と拡張
に大きく影響しているセロトニ
ンですが、トリプタンという薬
は、セロトニンと同じような作
用を持っています。そのためセ
ロトニンの代わりに血管を収縮
させ、拡張によって三叉神経が
刺激されるのを防ぎます。
さらにセロトニンは三叉神経
に取りついて、痛み物質のサブ
スタンスPなどが分泌されるの
を抑制する役割がありますが、
ここでもセロトニンの代わりに
トリプタンが三叉神経に取りつ
- 59 -
き、サブスタンスPなどの分泌を抑制して痛みが出るのを防ぎます。
このようにトリプタンは脳の中でセロトニンとして働き、血管を収縮させ、サブスタン
スPなどの分泌を抑制する、という2つの役割を果たすことにより、片頭痛の起きる原因
そのものを排除します。つまりトリプタンは、片頭痛という病気のより本質に近いところ
に作用して痛みを取るため、効果が高いというわけです。
トリプタン製剤が出る前に使用されていた鎮痛剤や市販の鎮痛薬は、本質的な痛みの部
分に作用しているのではなく、痛みの伝達を途中でブロックして感じなくしているだけで
す。
そのため、痛みが強いと効果がなかったり、薬を飲んだときには少し良くなっても、し
ばらくして薬の効果が薄れてくるとまたすぐに痛くなったり(痛みはずっと続いているた
め)することがあります。
基本的に、片頭痛発作時には、セロトニンと呼ばれる神経伝達物質が減少あるいは機能
が低下しており、片頭痛発作の時に、脳内セロトニン様作用をもつトリプタンを投与する
ことによって、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップしています。
そして、片頭痛発症の根幹には「酸化ストレス・炎症体質」というものが存在し、この
ために、活性酸素や遊離脂肪酸が過剰に産生されやすく、このため血小板凝集が引き起こ
され、これが引き金となって血小板から”生理活性物質”であるセロトニンが放出される
ことによって、片頭痛発作につながっていきます。
現在では、このように、神経伝達物質である「脳内セロトニン」の低下を補填するため
にのみ片頭痛治療の主眼が置かれ、トリプタン製剤が第一選択薬とされています。
本来、片頭痛予防の焦点は、「脳内セロトニン」をいかにして増やすか、さらに、「酸化
ストレス・炎症体質」をどのようにして防止するかに置くべきです。
こうした考え方で本書は構成されております。
トリプタン製剤は、あくまでも片頭痛発作時に減少した「脳内セロトニン」を補填して
いるに過ぎないことを肝に銘ずるべきと考えております。これだけでは、不適切な治療と
しか言えないはずです。もっとすべきことがあり、これが「生活習慣の改善」です。
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分子化学療法研究所の後藤日出夫先生は、片頭痛の「発生機序」に関して以下のよ
うに述べておられます。
片頭痛はなぜ起きる?
いくつか代表的な説があるのですが、いずれも「なぜ片頭痛を起こす体質になるの
か、なぜ片頭痛を起こす人とそうでない人がいるのか?」については明らかにされて
ぃません。
そしていずれの説も、「何かよくゎからない原因」によって片頭痛は起きるとされて
います。
また、マグネシウムやビタミンB2を多量に投与すると片頭痛が改善されることか
ら、「ミトコンドリアの代謝障害が片頭痛の発症にかかわっている」という説もありま
す。
片頭痛を発症する「体質的な原因」はよくゎからないものの、片頭痛が発症すると
体にどのような変化があらわれ、どんなメカニズムで頭痛や嘔吐などが起きるのか、
どんな薬が症状の抑制に必要なのかといったことはほぼわかっています。
近年、片頭痛の痛みや発作を抑える特効薬が開発されましたから、薬さえ適切に使
用すれば、ずいぶん凌ぎやすくなったことは確かです。
片頭痛の発生要因は2つ
さきほど、代表的な説がいくつかあるものの、いずれも「片頭痛の原因は何だかよ
くわからない」と述べました。
私の研究の結果を結論として先に申し上げると、片頭痛の原因となるのは「活性酸
素」と「遊離脂肪酸」であり、それらが発生する要因としては、「ミトコンドリア活性
の低さ」と「酸化ストレス・炎症体質」であると考えています。いずれも聞いたこと
がある言葉かもしれません。ここからは、これらについてわかりやすく解説していく
ことにしましよう。
活性酸素と遊離脂肪酸については、皆さんも何度か目にされたり、聞いたりしたこ
- 61 -
とがあるのではないでしょうか。どちらも健康を害するものとして、またはエイジン
グ(老化)を進める原因として、健康関連の本や雑誌で盛んに取り上げられているも
のです。
要は、これらを取り除き、改善することができれば、「片頭痛体質を治すことも夢で
はない!」ということがわかつてきたのです。
見方を変えると、片頭痛体質を改善することは、アンチエイジングや健康な体をつ
くることにもつながるということです。まさに一石二鳥にも三鳥にもなるというわけ
です。
片頭痛は暴れるホース!?
片頭痛は次のプロセスを経て起きると考えられます。
①脳の血管内にセロトニンという物質が増え、脳血管が収縮する
↓
②脳に血液が充分に供給されなくなり、炎症性物質を生じるとともに、脳の表面に脱
分極(神経細胞の電気的変化)が起きる
↓
③血管が拡張し、血液が勢いよく流れるときに痛みをともなう
これをわかりやすくいいますと、最初は脳の血管が収縮して血流が減り(片頭痛前
兆期)、しばらくするとその反作用として脳血管が拡張し、多くの血液が脳に流れるよ
うになります。そのとき発生する炎症性生理活性物質により、心臓の鼓動に合わせて
強い痛みを生じるのです。
たとえるなら、水の流れているホースを踏みつけて流れを悪くしたあと、それをパ
ツと放した状態。ホースは暴れるようにして勢いよく水をほとばしらせます。このホ
ースの暴れている状態が片頭痛だと考えられるのです。こうした状態が数時間から長
い人で数日ほど続くわけです。
- 62 -
片頭痛の原因「活性酸素」の呼び水は”ストレス”
片頭痛は暴れるホースの水-この原因となるのが、脳血管内のセロトニン濃度の変
化を引き起こしたり、脳表面の脱分極を引き起こしたりする「活性酸素」や「遊離脂
肪酸」です。これらはなぜ発生するのでしょうか?
人は精神的なストレスを受けると、アドレナリンというホルモンを分泌し、血圧が
上がり、心拍数が増えて血糖値が上がります。これは、緊張状態に備えるための体の
変化です。
このとき、体内を循環している血液は、おもに心臓や肝臓、筋肉に集中し、脳への
血流は低下(虚血)します。
脳細胞への血液が不足すると、細胞内にあるミトコンドリアで産生されるエネルギ
ー発生物質(ATP)も減少します。脳は、体の各器官に指令を送るときに、カルシ
ウムなどのイオンの濃度調整によって伝達物質を送り出して指令を伝えます。
しか
し、ATPが不足すると、脳細胞内のミネラルイオン濃度を調整するポンプが正しく
機能しなくなり、いわゆる”機能停止状態”になってしまいます。
その後、ストレスから解放されると再び脳血管への血液の供給がよくなり(再潅流)、
機能停止状態になっていたミトコンドリアは急速に機能を回復させます。このとき、
過剰な活性酸素を発生させます。これは長いあいた正座をしたあとに立ち上がろうと
して、足がしびれたり痛みを感じたりするのと似たような現象です。
ミトコンドリア活性が低い=酸化ストレス体質が片頭痛を招く
私たちの体は食事などで体内に取り込んだ脂肪や糖分といった燃料分を燃やしてエ
ネルギー(ATP)を作り出すときに「酸素」を使います。車のエンジンが、ガソリ
ンに酸素を加えて爆発させることによってエネルギーを得ているのと同じです。
こ
れと同じことが細胞内のミトコンドリアでも起きています。このときに発生するのが
「活性酸素」なのです。
じつは、活性酸素にはウイルスなどの外敵を撃退してくれる働きもあるのですが、
活性酸素が過剰に産生されると、体を傷つける悪い働きをしてしまいます。同様に、
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脳血管や脳細胞に作用して、片頭痛の発作や痛みを引き起こす生理活性物質を発生さ
せる原因となります。このように、活性酸素が人体に有害な影響を及ぼす状態のこと
を「酸化ストレス」といいます。
こうした状態になっても、通常人体は活性酸素を打ち消すための抗酸化物質を適度
に産生します。また、食事によって抗酸化物質を体内に取り込むことも可能です。
しかし、片頭痛持ちの人はもともとミドコンドドア活性が低いため、健康な人なら
ばほとんど問題にならないような血流の変化や、ちょっとした血流の増加であっても、
活性酸素が過剰に発生してしまうのです。
以上のように述べておられます。
片頭痛の引き金となる活性酸素
健常人では問題となることのない血流の変化であっても、片頭痛持ちの人は元来ミトコ
ンドリア機能の活性が低く、わずかな血流の増加であっても活性酸素を発生しやすい状態
になっています。
同じようなことは、運動をすることや飲酒、入浴などによって急に血行が良くなる場合
や、早朝の自律神経の切り換えにともなう血流の変化やホルモンの分泌量の変化にともな
う僅かな血流の変化も片頭痛持ちの人では活性酸素の発生の要因となってしまいます。
低気圧や人ごみ(酸素濃度のわずかな低下)や季節の変化(寒暖にともなう血流の変化)
もミトコンドリア機能の活性が低い片頭痛持ちの人ではミトコンドリアの代謝機能の低下
と、それに引き続きおきる血流の回復により過剰の活性酸素が発生してしまうことになり
ます。
また、小麦などに含まれるタンパク質の成分であるグルテンに過敏な人では免疫系のマ
クロファージ(白血球の一種)がグルテンを異物として排除するときにも多くの活性酸素
を発生することになり、片頭痛の発作の原因となります。
風邪を引いた場合にも同様に風邪ウイルスに対する免疫系からの過剰な活性酸素が発生
し片頭痛の引き金となることもあります。
なお、風邪ウイルスは直接的に筋肉細胞や血管細胞を攻撃し、片頭痛の発作や痛みを引
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き起こす生理活性物質をも発生させます。
このようにして、ストレスや運動、飲酒、入浴、風邪などの要因が活性酸素を発生させ
片頭痛を引き起こしていくことになります。
しかし、このような片頭痛発症要因に曝(さら)される片頭痛持ちの人であっても、仮に
「ミトコンドリアの活性の低さ」を改善し、「酸化ストレス・炎症体質」を改善すれば活性
酸素も異常に発生することはなくなりますので、片頭痛の発症へとは進まないということ
になります。
いわゆる、片頭痛持ちの人は常に活性酸素が発生しやすく炎症を起こしやすい体質「酸
化ストレス・炎症体質」であることと、細胞の活力を支配する「ミトコンドリアの活性の
低さ」に問題があります。
活性酸素が発生しやすい「酸化ストレス・炎症体質」に加え「ミトコンドリアの活性の
低さ」が重なれば非常にわずかな刺激であっても活性酸素が過剰に発生されてしまうので
す。
片頭痛に女性間の家族性が高いのはこの「ミトコンドリアの活性の低さ」が母性遺伝す
ることも一因であるといえます。
しかし、「酸化ストレス・炎症体質」や「ミトコンドリアの活性の低さ」については日々
の食生活のあり方などにより誘発されるものですから、それらを改善することにより片頭
痛は発症しなくなります。
また、「酸化ストレス・炎症体質」では体内で過酸化脂質が生成されやすく、過酸化脂質
も活性酸素を過剰に発生させる原因物質となります。
ただし、過酸化物質については実際に体内で脂質が酸化され生成されること以上に加工
食品などの過酸化脂質をすでに含む食品を摂ることの方が現実の問題としては大きいよう
に思われます。
遊離脂肪酸はどのようにして生じる?
精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃度)
は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離脂肪酸が生成されるようになり
ます。
本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げた
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りする時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと
考えられます。
通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足
分を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用され
ます。
しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊
張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となりま
す。ストレスから開放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を
高めるだけの結果となってしまうのです。
その結果、血小板に直接作用して血小板の凝集を促進することや脳血管壁を傷つけ活性
酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
このため、ストレスを受けている時に発症するのではなくストレスから開放された時に
片頭痛を発症しやすくなるのです。
また、植物油(リノール酸)の摂りすぎやトランス脂肪酸を摂ると、体内での脂質代謝が
遅延することになりますので、血液中の遊離脂肪酸濃度をいつも高い状態にしてしまうこ
とになります。
このように、血液中の遊離脂肪酸濃度が常に高い状態であれば、ストレスなどのわずか
な刺激であっても血小板の凝集や活性酸素の発生が起こり易くなると考えられます。
一方、糖飲料などを飲みすぎにより急激に血糖値が上がりすぎますと、血糖の急激な上
昇を抑制するためにインスリンが過剰に分泌されることになります。
過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げすぎることになります。
血糖値が下がりすぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとするからだの仕組みが働き、
体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。
体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費がバランスしていれば問
題を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまうと血
液中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。
特に片頭痛持ちの人はミトコンドリアの活性が低く(冷え性や低体温症など)、ブドウ糖
の生成とその消費のバランスは乱れやすい傾向にあります。
糖飲料の摂りすぎ以外にも、過激な運動や絶食(長い間の空腹)なども糖への代謝とその
消費のバランスを乱しますので血液中の遊離脂肪酸の濃度を高めることになります。
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このようにして放出された遊離脂肪酸が血小板に直接作用して血小板の凝集を引き起こ
すことにより脳血管内のセロトニン濃度が上昇することで片頭痛を発症すると考えられま
す。
または、遊離脂肪酸が脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させ、その活性酸素が三叉神経
や脳細胞を傷つけることにより片頭痛を発症させると考えることもできます。
脂質のとり過ぎが活性酸素の発生原因に!
ところで、「酸化ストレス’炎症体質」の人は、体内で過酸化脂質が生成されやすく、
これが活性酸素を過剰に発生させる原因物質となっています。
過酸化脂質というのは、コレステロールや中性脂肪が活性酸素によって酸化されてでき
たものです。これらは体内で作られるのですが、それ以上に、そもそも過酸化脂質を多く
含む加工食品などを過剰にとる食習慣のほうに問題があると考えられます。
ポテトチップスなどのスナック菓子、インスタントラーメン、ピーナッツ、マヨネーズ、
マクロの缶詰(缶を開けたあと)、黒くなった古い油分には注意が必要です。また、新しい
ものでもチキンフライなどの揚げ物を電子レンジで加熱すると、とがった部分や角の部分
が過酸化されることがあります。
精神的なストレスを受けてアドレナリンが分泌されると、血糖値(血液中のブドウ糖濃
度)を高めるために体脂肪が分解されます。このとき、体脂肪から遊離脂肪酸が生成され、
血液中に溶け出して全身に送られます。
通常、体脂肪は空腹時のエネルギー不足を補うために分解されます。ところが、精神的
なストレスからアドレナリンが分泌されて遊離脂肪酸が生成されると、エネルギーとして
消費されることがほとんどありませんので、その後ストレスから解放されると、血中の遊
離脂肪酸濃度だけが高くなった状態になってしまうのです。この遊離脂肪酸は、血小板の
凝集を促進したり脳血管壁を傷つけたりしますから、これが活性酸素を発生させる原因と
なってしまいます。
遊離脂肪酸には細胞毒性(細胞を傷つける性質)が強いという特徴があります。通常は
血液中のアルブミン(Lカルニチン)というタンパク質成分と結合して毒性が弱められた
状態で存在しているのですが、遊離脂肪酸が毒性を発揮して細胞を傷つけるということは、
アルブミンとの結合可能な限界量(間値)を超えてしまっているということです。
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このような状態を招く原因は、間違った日々の食習慣なのです。特に、植物油(リノー
ル酸)やトランス脂肪酸を多くとり過ぎると、体内での脂質代謝が充分に行われず、血液
中の遊離脂肪酸濃度が高い状態になることがわかっています。
このような状態になれば、ストレスなどのわずかな刺激であっても、片頭痛の引き金と
なる脳血管内の血小板凝集が起きてしまいます。
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第4章 慢性頭痛の病態
その1
ホメオスターシス・・ストレスとの関係から・・
健康保持のメカニズムはこころと体・ホメオスタシス!
健康は、ホメオスタシスという健康保持のメカニズムが様々な機能を発揮して、健康が
保たれています。脳科学の急激な発達により、多くのエビデンスに基づく研究発表のもと、"
体の健康とこころの健康"は切り離して考えられない、という具体的な研究結果も発表され
ています。
こころの健康を保持増進するためにも、こころと体の仕組みについて理解が必要です。
●生体リズムと規則正しい生活
規則正しい生活を送りましょう。幼い頃から、何度も聞いた言葉ではないでしょうか?
規則正しい生活とは、生まれつき体に備わっている生体リズムに沿った生活という意味
で、最も自然で健康的な生活と言えます。
しかし、現代の生活環境は、健康的な生
活を崩す要因が多く、24 時間営業の飲食店
や夜通しの娯楽、コンビニやテレビ・パソ
コンなどの普及により急激に変化していま
す。このような変化により、体の生体リズ
ムにも悪影響が及んでいます。
生体リズムを無視した不規則な生活を送
ると、様々な不調を感じるようになります。生体リズム、自律神経、ホルモンはすべて連
帯しているため、生体リズムが乱れると自律神経やホルモンバランスにも悪影響が及んで
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ホメオスタシス機能を乱すのです。
●生体の恒常性、ホメオスタシス
様々な環境の変化に対応して行くための自律神経という調整機能がホメオスタシスとし
てあります。
たとえば、自動車には必ずアクセルとブレーキとが備わっています。アクセルしかない
車、ブレーキだけしかない車では運転し続けることはできません。同じようにアクセルと
ブレーキの働を受け持つのが自律神経です。アクセルにあたる交感神経とブレーキにあた
る副交感神経です。
自律神経は無意識のうちにホメオスタ
シスによって、夜眠っているときにも心
臓が動き、呼吸が途絶えたりしないのも、
自律神経が働いているためです。
日中は交感神経が優位になって血管を
収縮させ、脈拍が上がり、呼吸数も増え、
仕事や勉強に精を出すことができます。
逆に、睡眠や食事をしているときには副
交感神経が優位になって血管を拡張させ、脈拍や呼吸数を減らし、消化を促します。
自律神経がホメオスタシスによりバランスよく働くことで、毎日の生活を健康で元気に
送ることができるのです。
人間の体は一定の生体リズムに沿って、一定の収縮(活動)と弛緩(休息)を繰り返し
ていますが、社会環境の変化、不規則な生活習慣やストレス状態が続くと生体のリズムの
誤差が大きくなりホメオスターシスの修正ができず不調を感じたりして、健康維持が難し
くなってきます。
ホメオスタシスは、異常を正しくする防衛力で、活性酸素の害やストレスにより乱され
る自律神経の調整、免疫の働き、やる気や睡眠を誘導する脳内ホルモンの分泌等さまざで
す。生体リズムを正し、ホメオスターシス機能を発揮して、健康が保てる生体リズムを誤
差範囲内にとどめることが大切です。
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ストレスなどによって自律神経が乱がれても、ホルモンバランスや生体リズムに悪影響
が及びます。
どれかひとつでも乱れが生じれば、連鎖的に他の2つにも影響が出て、ホメオスタシス
の機能が崩れてしまうのです。
●免疫細胞の活性酸素制御と生活習慣が密接な関係
免疫系の貧食細胞やNK細胞が細菌などの病原性微生物を排除するために出す活性酸素
は体にとって有益に働いていますが、活性酸素が過剰発生になると各細胞に炎症を起こし
たり、動脈硬化の引き金になったりと老化の最大要因にもなりうるのです。
活性酸素制御はストレスや喫煙習慣のよう
な生活習慣のなかでは、免疫系の機能に混乱
がおき、多量の微生物を貧食しても少しの活
性酸素しかでないため感染症が治りにくい、
反面、少量に微生物しか貧食していないにも
関わらず、多くの活性酸素を出すことになる。
余分な活性酸素は各種の炎症のの引き金になってしまいます。
体の生体リズムを乱す生活は、健康を維持のメカニズムである体の仕組みを無視した生
活をしていることになります。
下記の症状に思い当たるものが多い方は、3 つのバランスがくずれてホメオスタシス機
能が保てない可能性があります。ストレスによる症状があらわるのです。思いあたる症状
はありませんか?
肩こり、頭痛、腹痛、腰痛、疲労感、冷え、下痢、便秘、めまい、不眠食欲不振、体重
減少、呼吸困難、咳、動悸、息切れ、息苦しさ、むくみ背中の痛み、発汗、微熱、嘔吐、
不整脈、左胸の痛み、月経痛、月経不順など。
しかし、症状が気になっても診断などで
は、異常が見つからないなどのケースも多いようです。
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ホメオスターシスとは
外部の環境変化にかかわらず、体温や血圧、血糖値など、体内環境を常に最適な状態に
保つ仕組みを恒常性(ホメオスターシス)と呼びます。さまざまな変動は、この恒常性を
維持するための「環境に対する適応力」といえます。
恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の 3 つ
の働きが深くかかわっており、それはストレスな
どに大きく影響されます。
例えば自律神経を失
調させるストレスは内分泌を乱し、免疫力も低下
させてしまいます。3 つの相関関係は「ホメオスタ
ーシスの三角形」と呼ばれます。
自律神経系の調節には、”セロトニン神経系”が
関与し、内分泌系は”ホルモン”と”生理活性物
質”が関与し、免疫系には”腸内環境”が重要な
位置を占めております。
具体的にどのように働いているのでしょうか
免疫系・内分泌系・神経系の三つ巴天秤の維持システムをホメオスターシスと呼び、体
の中では常にこのホメオスターシスによって書ききれないほどの維持機能を常にバランス
よく保ちながら生涯にわたって健康を司っています。
何らかの原因があり、体のどこかでわずかな維持機能の狂いが起こってもホメオスター
シスの3つのシステムが、常に、必ず正しい均衡に戻そうとしてくれます。
ですから少々のことでは病気になって現れることはありません。
↓
しかし、こうした狂いの積み重ねにホメオスターシスが対応仕切れなくなると
やがて病気となって発現してきます。
↓
- 72 -
ですから目先の症状を抑えても、ホメオスターシスの狂いを修正しなければ、再発・余
病なども含め、完治に至らないことがあります。
↓
このホメオスターシスを常に理想的に維持することが大事になってきます。
免疫力・・・注目される言葉ですが、栄養と免疫力は、ホメオスターシスによってコントロ
ールされ切り離せない関係にあることから、免疫力は栄養によって強くも弱くもなります。
免疫力(免疫細胞)は、ホメオスターシスの一部にしか過ぎませんから内分泌系や神経系
が密かに低空飛行を強いられている時は三つ巴のバランスが崩れていることを意味してい
るため免疫細胞が、独断で、且つ突出して働くことが出来る環境も望みにくくなります。
このことが、免疫力を引き上げるだけでは、健康を取り戻しにくい理由です。
・・・たとえば
免疫力を落とす感染症の陰に内分泌
系や神経系の不具合が隠れていると免
疫力 UP の手段だけでは、ホメオスター
シスは思うように動いてくれないこと
があります。
望みを託したい免疫細胞と言えども
ただの細胞です・・・。
栄養失調や周辺環境のサポートなしには働けません。
免疫細胞は、互いに情報交換をするといった勉強もしなければなりませんし、合図を送
ったり、合図を受けて行動に出たり、仲間を増やすことも必要です。
ビタミンとミネラル補給をすることで、「免疫力が上がった!」と実感することは
不思議でもなんとも無いことです。
そこには<ビタミンとミネラルに支えられた正しい代謝>という過程を経ることで
<免疫細胞が働くことが出来る環境づくりが整う >という関連性があるわけです。
- 73 -
身体に必要な様々な栄養素が<代謝>を通じて備わることで
・交感神経と副交感神経(両方で自律神経と呼びます。)は正しく働き、
↓
・臓器を正常に動かすことが可能になります。
↓
・各臓器が正しく働くことで、漸く必要なあらゆるホルモンが分泌され
↓
・栄養は効率よくそれぞれの細胞にエネルギーの元として取り込まれ
↓
・これらを受け取った細胞たちは、代謝を重ね、不要物質を放出し
↓
・元気になり、活躍し
↓
・さらには正しい遺伝子を持つ細胞の生まれ変わりを可能にします。
不要なもの(外部からの侵入や老廃物の排泄)を徹底して排除できる体内環境を整える
ことが出来るのも、十分な栄養があってこその技であり、力であって、健康は・・・元気
な細胞の正しい働きなくしては得られません。
食から見たホメオスターシスに大事なのものは・・・
代謝の原動力になる栄養素と代謝を促進させる補酵素であり、水分と共に有害物質を排
泄に導くことに尽きます。
*新鮮で十分な水
*ミネラル
*ビタミン
*必須アミノ酸群
*3 大栄養素
タンパク質、脂肪、炭水化物
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*4 番目の栄養素と言われる2つの食物繊維
*有害物質の除去は言うまでも無く・・・です。
これら必要なモノを体が求める場所に送り込む為には、口から入るご飯の質と量はもち
ろんのことですが、前提である<有効に取り入れる腸環境>が無くてはなりません。
ご飯に見合うだけの(内分泌に不足する)消化酵素*も必須です。
そして、害になるものは、そこから一歩も中には通さないという強く、且つ柔軟な腸そ
のものを、各種栄養で作り上げることが必要です。
理想はあくまで理想であって・・・
しかしながら、時には栄養摂取自体が厳しくなる場合も起こります。
その時には『命を支える強い何かの力』を求めざるを得ませんが・・・
健康な時期よりも病気を抱えている時期ほど、沢山の必須アミノ酸郡とビタミンとミネ
ラルが必要であり、これらを使って健康な時期よりも高い代謝効率を経て必要エネルギー
レベルを確保し、かつ解毒を促進させ強い&正しい遺伝子を持つ新しい細胞を生み出し
ホメオスターシスから底上げを図らなければれ、健康は取り戻せません。
本来は、病気になる前に必要なことです。
内分泌に不足する消化酵素
<代謝を促すための触媒の働き>を
受け持つ酵素は、体内合成が出来るも
のとそうでないものがあり、体内合成
出来るものであっても生涯における量
は限られています。
もし、外から供給されなければ、生
合成に頼る以外に手段はありません。
結果として、ホメオスターシスの内分泌系は疲弊することになります。
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健康を維持するには、消化と吸収を助ける意味でも、腸管免疫を守る意味でも、ホメオ
スターシスの疲弊を遠ざける為にも、食品から摂取できるものは、積極的に取り入れるこ
とが重要です。
このようにして人の体はコントロールされているのですが、それがストレスにさらされ
ることでバランスを崩し、頭痛に繋がっていくことになります。
ストレスによる影響
(1)ストレスと脳内セロトニン
ストレスを受けると、脳にある視床下部が
それを感知し、副腎から副腎髄質ホルモン(カ
テコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチ
ゾールなど)の分泌を促します。また間脳の橋
の青斑核にあるノルアドレナリン神経からは
ノルアドレナリンが、交換神経末端からはア
ドレナリンが分泌されます。
さらに、ストレスが続くと交感神経が過敏
となり、アドレナリンやノルアドレナリンの
分泌が高まります。セロトニンは過剰に分泌
されたこれらのホルモンを抑制して、自律神
経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快
を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌され
ます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌
にブレーキをかけます。
脳の中で”快・不快”を感じるのは大脳辺縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の
中枢である「海馬」や、情動を感じる「扁桃体」があります。扁桃体の刺激は視床下部と
いう場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質が出て自律神経を刺激します。幸せな気分は
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セロトニンやエンドルフィンが放出され、不快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリ
ンが放出され交感神経の働きを強めます。
嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・
恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激
は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアド
レナリンが放出されます。アドレナリンは血
管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が
減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老
廃物を外へ運び出せなくなります。このため
筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩
こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされます。
このようにして、体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために
副腎皮質ホルモンが分泌されます。
副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝わっていく時にセロトニン回収口を塞い
でしまいます(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程度は回収しながら溜まりを
作り、一部だけを神経の伝達に使う仕組みになっています)。
副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増える
のですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことに
なります。
このようなことが繰り返し起きますと、セロト
ニンの再回収口は完全に機能を失い、慢性的なセ
ロトニン不足を招きます。
縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロ
トニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシナプス接
続して、痛みを抑制します。
以上のことから、慢性的にストレスに晒されることによって、脳内セロトニン不足を来
すことによって、痛みを制御ができなくなって、頭痛を感じやすくなります。
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(2)ストレスとマグネシウム
通常、ストレスがかかるとアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンによって心拍数が上がって、血圧上昇、血管収縮、筋肉収縮が起こります。
こうやって外部からのストレスに身体が対処しようとするわけです。しかし、こういった
作用には必ずマグネシウムが必要で、ストレスがかかる状況が続けば、マグネシウム欠乏
に陥ります。
ストレスの研究で有名な、ハンス・セリエによれば、身体の短期的な闘争反応、逃避反
応から、慢性的ストレスに移行する際にもマグネシウムが
消耗されると言います。また副腎(ストレス調整臓器)は、
コルチゾールやストレスホルモンであるノルエピネフリン
を作り出しますが、ノルエピネフリンはアドレナリンに似
た作用を示し、同じくマグネシウム不足を生じさせます。
またストレスによる副腎の酷使は、マグネシウム不足を
生みますが、体内のマグネシウムレベルが低い時にストレ
スにさらされると、より多くのアドレナリンが放出されて
しまうのです。
アドレナリンは、イライラや怒りっぽさ、短気、感情の
爆発などを作り出すので、まさに悪循環の流れが出来上が
るわけです。こういった悪循環をストップさせるのには、
マグネシウムレベルを回復させることが重要になってきます。
またストレス反応が続く間は、アドレナリンの放出を促進するのにカルシウムが必要と
されますが、元々カルシウムが過剰になっているとアドレナリンが溢れかえってしまいま
す。しかし十分にマグネシウムがあれば、余剰カルシウムを抑えてくれ、通常レベル以下
にしてくれるので、ストレス反応が抑制されます。
ストレス状態にある人の尿に含まれるマグネシウム濃度を測ると通常時に比べてマグネ
シウムの排泄量が増えています。
これは、ストレスに対する防衛反応として、ノルアドレナリンというホルモンが分泌さ
れるときにマグネシウムが消耗されたためです。
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強いストレスを感じると体内のマグネシウムがどんどん使われ益々ストレス状態が悪化す
るという悪循環に陥ります。
マグネシウムはストレスによって奪われます。
ストレスにより起こる現象で、例えば甘いものを食べることも体にとってはストレスに
なります。
甘いもの=ストレス
ちょっと結びつかないないかもしれませんので、どういうことか説明します。
まず、甘いものや小麦を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えるためにインシュリン
が分泌され、今度は血糖値が大幅に下がります。すると、今度は血糖値を上げるために副
腎からアドレナリンが放出されます。人体には低血糖に対し数段階の回避システムが用意
されています。
血糖値が約 65-70mg/dL に低下すると、
血糖値を上げるホルモンであるグルカゴ
ン、アドレナリンが大量に放出され始めま
す。
血糖値が約 60-65mg/dL に低下すると、
三番目の血糖値を上げるホルモン、 成長
ホルモンが放出されます。
最後に血糖値が 60mg/dL をきるようになると、 最後の血糖値を上げるホルモン、コル
チゾールの分泌が亢進します。
血糖値を上げるために分泌されるホルモンの順番は、①グルカゴン、アドレナリン②成
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長ホルモン③コルチゾール です。
血糖値を上げるためのアドレナリンは、他にも心臓のポ
ンプ機能を速めたり、 筋肉を活性化させたりします。アド
レナリンは闘争反応、逃避反応を刺激します。
すると、マグネシウムはアドレナリンによって緊張状態になった筋肉や臓器を弛緩させ
るために消費されます。
このため、アドレナリン由来のこういった機能亢進にはすべてマグネシウムが必要にな
り、消費されます。
「ストレス⇒アドレナリン放出⇒マグネシウム消費」という流れがあるわけです。
このように、マグネシウム不
足は、脳過敏を来たし、頭痛を
悪化させます。
この点については、後に詳し
く述べることにします。
(3)ストレスと活性酸素
ストレスがたまると活性酸素が増える
活性酸素を増やす要因には、食生活の乱れやタバコや大量の飲酒、過激なスポーツ、紫
外線など、さまざまな要因があります。しかしそれだけではなく、ストレスも重要な要因
のひとつです。代表的なメカニズムには、次のようなものがあります。
1.ストレスを受けると、ストレスに対抗する「副腎皮質ホルモン」が分泌される。この分
泌と分解の過程で、活性酸素が発生します。
2.ストレスは、「抗酸化ビタミン」ともいわれるビタミン C を大量に消費します。
3.緊張が続くと血管が収縮し、一時的に血流が阻害されます。その後、血管が拡張したと
きに、血液が勢いよく流れますと、大量の活性酸素が発生します。
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4.ストレスがあると高血糖になりやすい。この状態も、活性酸素が増える一因となります。
イヤな仕事や勉強、人間関係などのストレスも、体内で活性酸素がドッと増えます。よ
く、ストレスから胃潰瘍、十二指腸潰瘍になった、とききますがこれも活性酸素が犯人で
す。ストレスにより血管が強く収縮し血流障害がおき、虚血状態に陥った後、血流が再開
する時大量の活性酸素がドッと洪水のように発生するのです。
ストレスホルモンの一種であるコルチゾルが免疫機能の重要な役割をになう NK 細胞の
機能を停止させ、生成時に活性酸素も発生させます。
ストレスが体にダメージを与える理由は、
体内のあらゆる栄養素が消耗し、瞬間的に血
管が収縮して血行が悪くなります。この血流
が再開されるときにドッと大量の活性酸素が
発生するのです。
体内のあらゆる栄養素が血液中に動員され、
筋肉や副腎といったストレスとの闘いで活躍
する組織に優先的に送られるのです。その一
方、そのほかの組織は逆に栄養を絞りとられ
る結果となります。ストレスに対処するのに直接関係しない臓器(消化器や皮膚など)に
送られる血液量が最小限に絞られます。
ストレスが解消されると、これらの臓器にも血液が戻ってきます。このときにも、活性
酸素が大量に発生すると考えられています。現在のように繰り返しじわじわとストレスが
続く状況では、体にとって大きな負担となります。例えば、ストレスがかかると心拍数や
血圧が上がるのは、身に迫る危険に対抗するために自律神経により様々な臓器が調整され
た結果です。身に迫る危険に対抗するための、体の仕組みになっています。
もう少し詳しく説明しますと、精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、
血糖値(血液中のブドウ糖濃度)は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離
脂肪酸が生成されるようになります。
本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げたり
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する時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと考
えられます。
通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足分
を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用されま
す。
しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊
張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となりま
す。ストレスから開放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を
高めるだけの結果となってしまうのです。
その結果、血小板に直接作用して血小板の凝集を促進することや脳血管壁を傷つけ活性
酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
このため、ストレスを受けている時に発症するのではなくストレスから開放された時に
片頭痛を発症しやすくなるのです。
このようにして放出された遊離脂肪酸が血小板に直接作用して血小板の凝集を引き起こ
すことにより脳血管内のセロトニン濃度が上昇することで片頭痛を発症すると考えられま
す。
または、遊離脂肪酸が脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させ、その活性酸素が三叉神経
や脳細胞を傷つけることにより片頭痛を発症させると考えることもできます。
免疫系の貧食細胞やNK細胞が細菌などの病原性微生物を排除するために出す活性酸素は
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体にとって有益に働いていますが、活性酸素が過剰発生になると各細胞に炎症を起こした
り、動脈硬化の引き金になったりと老化の最大要因にもなりうるのです。
活性酸素制御はストレスや喫煙習慣のような生活習慣のなかでは、免疫系の機能に混乱
がおき、多量の微生物を貧食しても少しの活性酸素しかでないため感染症が治りにくい、
反面、少量に微生物しか貧食していないにも関わらず、多くの活性酸素を出すことになり
ます。余分な活性酸素は各種の炎症の引き金になってしまいます。
体の生体リズムを乱す生活は、健康を維持のメカニズムである体の仕組みを無視した生
活をしていることになります。
慢性頭痛とストレスはどう関与するのでしょうか
(1)緊張型頭痛の場合は・・
精神的なストレスと、身体的なストレスの両方で起こります。
緊張型頭痛は、筋肉や精神の緊張をうまく解消できない人に起こりやすいのです
・
「身体的なストレス」
前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長時間続けるような生活習慣などによる筋肉へ
のストレスにより、頸や頭の周りを取り巻く筋肉が収縮して凝り固まる結果重圧感を生じ
ます。
ストレートネックを生み出す最大の原因は、前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長
時間続けるような生活習慣にあります。原因の 99% は、ここから来ていると言っていいで
しょう。
パソコンの画面に釘付けになっている時間がとても長くありませんか?パソコンを使っ
ていなくても、デスクワークをしていたり、携帯電話・スマホやゲームの画面を見ていた
り、座って本を読んでいたり、車を運転したり・・・。1日のほとんどの時間を前かがみ
やうつむきで過ごしているという人も少なくないのではないでしょうか。そういう毎日の
生活習慣が、ストレートネックをつくる”大もと”になっているのです。
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人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈しています。人間は直立位を保っていますから、
背骨が一直線ですと、全体重が下の背骨にかかることにより、すぐに下の背骨がダメにな
ってしまいます。こうしたことにならないようにS状の湾曲を呈しています。ということ
は頸椎は前に湾曲を示していることになります。ところが「ストレートネック」になって、
頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜しておれば、
後頸部の筋肉に張力が常に加わることになり、こ
れが肩こりに繋がり、このこりが上部へと拡がる
ことによって鈍い痛み、締め付けられるような痛
みとなってきます。
・
「精神的なストレス」
ストレス、不安、抑鬱などが長時
間続くと、「精神的なストレス」がた
まります。
すると神経や筋肉の緊張が高まり、
痛みに敏感となり、頭痛が起こりま
す。
これは先程述べたことですが、嫌
なことを経験しますと、海馬が”嫌
な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃
体では不快・恐怖・緊張といった反
応が起こり、この刺激は視床下部に
伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させ
ますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運
び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、
緊張性頭痛が引き起こされます。
ストレスが持続すれば、慢性的な”脳内セロトニンの低下”を引き起こし、これが頭痛
の原因になります。
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(2)片頭痛では
片頭痛では、前屈みの姿勢を強いられることによる身体的なストレスから「体の歪み(ス
トレートネック)」を併発し、まず緊張型頭痛をスタートに、生まれつき「ミトコンドリア
の働きの悪い」ところへ、ストレスが持続することによりマグネシウム不足を起こしてき
ます。さらにストレスが持続することにより「脳内セロトニンの低下」が追加され、頭痛
を悪化させ、片頭痛へと移行してくることになります。
このように、ストレスは、ホメオスターシスの乱れを引き起こし、ミトコンドリアの働
きを悪化させ、さらにセロトニン神経系の働きまで悪くさせてきます。
そして、ストレスにより活性酸素が産生されることによって、片頭痛発作そのものの引
き金ともなってくることになります。
こういったことから、慢性頭痛を改善させるためには、ストレス対策がいかに重要であ
るかが理解されたと思います。
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その2 腸内環境の関与
人間の恒常性(ホメオスターシシス)には自律神経、内分泌系、免疫系の 3 つの働きが
深くかかわっており、その一角に免疫系があります。この免疫系は「腸内環境」が重要な
位置を占めております。
人生は腸で決まる!?
実は私たちの健康と腸内の環境は本当に深くつながっているのです。特に近年、腸の免
疫機能が注目されています。というのも腸管に体の中で最も重要で最も大きな免疫器官が
あるからです。
腸は、毎日の食べ物や飲み物などを栄養を吸収してくれる大切な場所です。吸収された
栄養は、その人の血液の質や体質を決定するようになります。つまり、人の生命維持にか
かわる最も大切な器官なのす。また、腸は体の内側にある器官でありながら、外界と直接
接しているという特徴があります。というのも、腸は体に必要な栄養素だけを吸収し、細
菌やウイルスなど害のあるものは排除するという体を守る役割も果たさなくてはなりませ
ん。
一般的に腸の粘膜のヒダが健康なピンク色で、ポリープや宿便がない人は、肌にもハリ
があり、若々しく、健康な場合が多いようです。逆に腸がかたく、狭く、便の停滞がある
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人は見た目も年齢よりも老けて見え、 実際にも生活習慣病を抱えている場合が多いという
ことも納得できると思います。では、腸と免疫の関係をもう少し深く調べて見ましょう。
腸の役割ってそもそもナニ?
腸は「第二の脳」と呼ばれます。腸内に入ってきた物質を良いか悪いかを判断する以外
に、それをパターン化して記憶する仕組みのほか、実は脳内の神経伝達物質「セロトニン」
の95%が腸で作られているという報告もありま
す。またさまざまなホルモン(ペプチド性ホルモ
ン=脳内ペプチド)を生産し、多くの血管や神経が
集まっている腸の状態は全身に影響します。皆さ
んも経験があると思いますが、子供のころ試験前
や発表会などの前に緊張のあまり、急な腹痛や下
痢に襲われたりしたことが。このように頭で考え
ることと腸の活動は密接につながっているのです。
つまり腸が「第二の脳」と呼ばれる理由になるのです。.
さてそこで、皆さんは我々日本人と欧米人との間で腸の長さに違いがあることご存知で
すか?個人差はあるものの、日本人の大腸の長さが約1.5m、欧米人で約1m。そう、我
々の方が1.5倍も長いのです。昔から欧米人は、肉中心の脂肪分が多い食事でしたが、日
本人は野菜や穀物中心の繊維が多い食事だったことに関係があるといわれています。
小腸の絨毛
腸は、栄養分を吸収する小腸と水分を吸収す
る大腸の2つに分かれます。小腸は、約6m。
内側は、絨毛(じゅうもう)とよばれる無数の
ヒダに覆われそこから栄養分を吸収し毛細血管
を通じてその栄養素を全身へ送る役目をもって
います。大腸は、約1.5m。小腸で吸収仕切れ
なかった食べ物のカスや水分が吸収され最終的
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に便となり排泄されます。便秘などで排泄がたまると食べ物に含まる添加物などの影響で、
腸内の腐敗が進みます。これが大腸の粘膜に接し続けるとがんなど様々な病気の原因にな
るといわれています。
便は通常7,8割が水分、残り2,3割が食物繊維や消化されなかった食物や腸内細菌など
の死骸などが含まれています。理想的な便は色が黄土色~こげ茶色でバナナのような形と
熟した際の硬さを持ったものが良いといわれています。.
食物繊維が多く含まれている野菜類や海草、きのこ類などなどが、ある程度消化されな
いでカサとなって出てくることで良い便となり、スムーズな排泄が出来るのです。
逆に悪い便は、2種類あります。1つは水分90%以上の下痢状の便です。もうひとつ
はコロコロ丸くて硬い便です。これは、水分が50%以下でもっとも悪い便です。
最悪の理由は、本来、排出すべき便を長時間、腸内に留めている結果、水分が減少し、
硬くなるからです。普段から肉食が多い人はこの2つのタイプの便になることが多いよう
です。最近、便秘をする人が非常に増えています。特に女性は悩みが深く、子供も増加傾
向にあります。このままでは腸の健康がどんどん損なわれ
てしまう危険があります。
では、なぜ便秘になるのでしょうか?便秘には多くの原
因がありますが、まず見直すべきは、食事の内容であり、
特に動物性たんぱく質の取りすぎと食物繊維不足です。大
腸の長さの違いにもあるように、私たち日本人は、草食向
きに出来ている長い腸のため、ただでさえ便がたまりがち
なことに加え、急速に変化した食生活がさらに追い討ちを
掛けています。
便秘の理由ワースト3
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食生活に問題あり
睡眠不足・運動不足
・・・お肉や加工食品ばかり、過剰なダイエット
精神的なストレス
・・不規則な生活、運動もしない怠惰な習慣
・・・仕事場、学校、子育てなど家庭での悩み
また、大腸がんが、特に日本の女性に増えていることが大きな問題です。特に肉や加工
食品ばかりとり続けると腸や体内が酸化してきます。老化を早める原因である酸化は食べ
物が大きく関わってくるのです。大腸に送られた食物のカスは煽動運動によって結腸、直
腸に運ばれます。それが直腸に達した際にその刺激が脊髄を通して大脳に伝わり、便意が
もよおされる仕組みなっています。慢性的な便秘の場合、便意をがまんすることを繰り返
したために直腸から脳に伝わる刺激が弱くなったりします。また、睡眠不足、運動不足や
精神的なストレスなどの原因も多く見られ、便秘薬への過度な依存も良くありません。も
ちろん、大腸の病気の影響も考えられますので、便に血が混じったり、激しい腹痛を伴う
場合は早めに医師に相談しましょう。.
腸は人の体で最大の免疫器官
先ほども記載しましたが、腸は人の生命維持にかかわ
る最も大切な器官で、腸の粘膜の表面積は実に全身の皮
膚のおよそ 200 倍ともいわれています。腸は飲食物に含
まれる栄養分を吸収する一方で細菌やウイルスはその感
染を防ぐため吸収せず便として体外に排出しなければな
りません。従って血液中を流れるリンパ球といわれる免疫細胞の多くが腸に集まっており、
それら免疫細胞が腸の粘膜やヒダに集まってバイエル版と言うリンパ組織を形成していま
す。また、人の体の全免疫システム全体の 70%が腸に集中してと言われています。.
腸内の免疫の主な働きは 3 つ
腸内に入ってきたものを免疫細胞が認識
免疫細胞が腸内に入ってきたものの無害、有害を判断
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無害なものは受け入れ、有害な場合は免疫細胞が攻撃
なぜ腸管にこれほど多くの免疫システムが集まるのでしょうか?日々、口に入れられる飲
食物にも必ず多くの細菌やウイルスなどが含まれています。それらの有害物質は腸の粘膜
から最も侵入しやすいとされています。また、正常な人でも毎日 3,000 ~ 4,000 個発生する
と言われているがん細胞が生じる場所もほとんどが腸内の粘膜からといわれています。そ
のような病原菌や有害菌などの外敵を素早く感知し、攻撃し、排除するため、免疫細胞が 24
時間 365 日、常に腸を守り続けなければなりません。つまり腸が人の体で最大の免疫器官
である理由がここにあるわけです。そしてこの腸内の免疫と腸内細菌は密接な関係をもっ
ています。
とっても大事な腸内細菌って何?
人の腸の中には、約 500 種類、100 兆個の細菌が住み着いています。その細菌は「腸内細
菌」といわれるています。腸内細菌の種類は、乳酸菌を代表とする善玉菌と有害菌である
悪玉菌が存在しますが、さらに詳しく分けると、腸内の環境状態によって「善玉菌」にも「悪
玉菌」にもなったりする「日和見菌」という 3 種類に分類できます。健康な人の腸内環境は善
玉菌と悪玉菌それぞれが上手く保たれています。小腸から大腸にかけては、これらの腸内
細菌がびっしり存在し、まるで草むら(フローラ)のようであることから、腸内フローラと
も呼ばれています。腸内フローラのなかの細菌は、さまざまな働きで、人の健康に多大な
影響を与えているのです。
それぞれの代表的な例をあげてみましょう。
腸内細菌の 3 種類
善玉菌とは
腸内を酸性にし、病原菌をやっつけてくれたり、免疫力を高めてくれます。
食べ物の消化・吸収を促進し、ビタミン合成、腸管運動を促進などの働きをします。
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・乳酸菌、ビフィズス菌など。
悪玉菌とは
腸内をアルカリ性にし、腸内を腐敗したり、発がん物資や毒素のある有害物質を作り出
します。糞便・ガスの形成はもちろん体の抵抗力を弱め、下痢や便秘を引き起こします。
・ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌、バクテロイデスなど。
日和見菌とは
食べ物や体調によって善玉・悪玉どちらにも傾きます。
例えば、バイテロイデスという菌は、ビタミンを合成したり、病原菌感染を防ぐという有
用な働きを持つ反面、腸内の腐敗、発ガン物質の生産、腹部を膨張させるといった悪さも
します。
腸内細菌の主な役割は何?
有害なものが腸に感染するのを防ぐ
腸内に住み着いて壁面を覆うことにより侵入した病原菌や有害菌の増殖を防ぎ、感染か
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ら私たちを守っています。
免疫の働きを活性化する
腸の免疫の仕組みを刺激して免疫の
働きを活性化する。
消化を促進する
消化を助ける酵素を分泌して腸の働
きを活発にし、消化を促進する
また、コレステロールや中性脂肪な
どの脂質の消化、吸収をコントロールしたり、余分な脂質の排泄を促進する
これら非常に大切な腸内細菌ですが、常に一定の状態ではなく、様々な要因で変動しま
す。健康な状態では、善玉菌が増え、悪玉菌が減り、悪くなると勢力はその逆になります。
では、悪玉菌優勢になるとなぜ人体に悪い影響を与えるのでしょうか?
腸が悪いと体調も悪い!?
日本人の腸はもともと「低脂肪・ 高繊維」の食事に適応してきたのですが、近年急速に
「高脂肪・低繊維」の食事へと変化してきました。また加工食品やインスタント食品など
栄養バランスの悪い食事も多く摂取するようになってきました。このように腸に入ってく
るものの量・質・内容の変化により、腸内細菌のバランスに乱れが腸の免疫の乱れの大き
な原因となります。また、老化、ストレス、睡眠不足、過労、抗生物質の服用等などで腸
はダメージが溜まり、結果として善玉菌が減り、悪玉菌が増えるといった悪循環に陥りま
す。特にストレスは腸の免疫の乱れの大敵で、腸内細菌のバランスが崩れやすくなります。.
そして、腸内の免疫細胞が有害物質やウイルスなどを感知できなくなり、外敵が有害な
のか無害なのかの仕組みにエラーが発生したり、逆に無害なものまで攻撃してしまうとい
う異常などが発生したりすることで免疫力は弱っていきます。
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腸が元気で体も元気
元気な家族のイメージ
このように腸内細菌は腸
内の免疫に非常に大きな
役割を果たしており、体
に良いものと悪いものを
区別し、有害なものは排
除するといった仕組みは
腸内の細菌によって調整
されているといわれてい
ます。つまり腸内細菌の
バランスが保たれることによって免疫の仕組みが正常に働くのです。
逆に細菌の中の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れ、悪玉菌が増えると、免疫機能が低下
して病魔に侵されやすくなるわけです。理想的な腸内環境は、乳酸菌などの善玉菌がおよ
そ 90 %、大腸菌などの悪玉菌が 10 %というバランスだと言われています。
従って、腸内細菌を健常な状態に維持することは、健康を維持していくうえでも、病気
の予防や老化防止などに役立つで上でも大変重要な問題です。その為には善玉菌をできる
だけ多くし、日々、腸内細菌のバランスを整えてあげる必要があるのです。「腸内細菌」が
病気になると、私達も病気になるのです。「腸内細菌」に元気でいてもらわなければ困りま
す。
腸内環境はいろいろな原因で変化しますが、なかでも食生活は大きな影響を及ぼします。
欧米型の食事に偏り、肉や脂肪・砂糖などを大量に摂取すると、間違いなく腸内環境は
悪化します。食物繊維が不足した「不健全な食事」では、腸内細菌のよい働きを引き出す
ことはできません。高タンパク・高脂肪・低食物繊維の欧米型食事は、腸内環境にとって
最大の敵と言えます。
また「ストレス」や「過労」も腸内環境に深刻な影響を与えます。「運動不足」も問題で
す。さらには「抗生物質」などの化学薬剤も、腸内細菌に決定的なダメージを与えます。
抗生物質は病原菌をやっつけるだけでなく、よい腸内細菌まで殺し、腸内フローラを悪
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化させます。家畜に投与された抗生物質が肉を摂ることで体内に取り入れられ、有益菌を
弱らせるようなこともあります。
こうした食事やライフスタイルの間違いが、腸内細菌のバランスを崩し、人体にマイナ
スの働きを引き出すことになってしまいます。人間と共存・共生している細菌のトータル
的な働きを、よい方向に向けられるかどうかは、人間サイドの姿勢によって決まるのです。
特に食事のよし悪しは、腸の健康にとって決定的ともいえる重要性をもっています。高
タンパク・高脂肪の肉や牛乳などを減らし、野菜料理に漬物や納豆などの発酵食品を加え
た伝統的な日本食にすれば、“腸内フローラ”の崩れたバランスは回復し、健康を取り戻す
ことができるようになります。「食物繊維」の豊富な食事によって、腸内細菌をよい状態に
維持することができるのです。欧米型の食事をやめて、野菜や発酵食品を中心とした伝統
的な日本食にすることが、腸内細菌をよい状態に保つ強力な方法となります。腸の健康の
ためには、真っ先に「食事改善」に取り組まなければなりません。
頭痛や肩こりは便秘による腸内環境の悪化が原因
実は、便秘が頭痛の原因となることがあるというのを知っていますか。
便秘が慢性化すると、それが原因で頭痛が起こる場合があります。
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便秘が続くと、お腹が苦しくなったり痛くなったりするだけではなく、肌荒れでニキビ
や吹出物、口臭がくさいなど、いろいろな体の不調が起こってきます。
それは、便が腸内に留まることで腐敗し、有毒なガスを出すことによるものです。
便秘している腸内からは、インドール、スカトール、アンモニア、アミンなどといった
猛毒物質が発生しており、これらが腸から吸収され血液と一緒にあなたの身体中を巡りま
す。有毒なガスや腐敗した便は適度な時間に排出されないと、再吸収といって、有毒なガ
スや毒素が腸の壁から血液中に取り込まれ、毒素が体にまわってしまうことで、さまざま
な不調が起きると考えられています。
その症状のひとつに頭痛も挙げられ、便秘が解消すると頭痛が治る人は便秘が原因だっ
たということになります。
便秘が続くと、体がだるくなるという人も多いのではないでしょうか。
血液に有毒な物質が混ざって全身を巡ることで、筋肉にも毒素や疲労物質が溜まりやす
くなり、体のだるい感じや肩こり、腰痛などを起こすのです。
この筋肉の緊張によって緊張性頭痛を起こすと考えられます。
また、血行不良により脳に循環する血液量が減り、血管がストレスを感じることで拡張、
片頭痛のようにズキズキと頭が痛むということも考えられます。
便秘になるとイライラ・カッカしたりと怒りやすくなったり、不機嫌になるのは毒素の
せいでストレスを感じているからです。
自律神経の働きが狂う
また、自律神経が関係している場合もあります。便秘、頭痛ともに、大きく関係してい
るのが自律神経です。
自律神経は呼吸、体温調節や血液の循環、消化吸収など生命を維持するのに重要な機能
を司っています。ところが、便秘が慢性化して腸内環境が悪化すると、自律神経のバラン
スが乱れるのです。自律神経は、血管の収縮や拡張などもコントロールしていますので、
便秘によって自律神経が乱れたとき、血管の収縮・拡張のバランスも崩れてしまいます。
それにより片頭痛が引き起こされるという見方もあります。
悩む人が多い慢性便秘ですが、体内に老廃物を長期間留めている状態は宿便が溜まって
いる状態のことを指し、頭痛をはじめとする様々な症状を引き起こしてしまうのです。
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また、運動不足やセロトニン不足で腸の蠕動運動がにぶくなって便秘になりやすくもな
ります。このセロトニンが不足するとイライラしたり、キレやすくなったりします。
すぐ怒るようになったという人も含まれます。
セロトニンを増やすには睡眠をしっかりとると増え、運動であれば、リズム運動でも増
やすことができるといいます。
ちなみにリズム運動とは、一定のリズムで筋肉を緊張させたり、緩めたりを繰り返す運
動のことですが、一定のリズムとは、同じ速度で歩く、走る、泳ぐ、踊る、こぐ、階段の
上り下りなどをすることをいいます。
でも、運動する時間がないとか、運動はイヤという人や運動していてもセロトニンが不
足する、といった人などは、合わせて食事で補なうと良いです。
便秘を改善するためには適度な運動や食生活を心がけ、自律神経のバランスを整えるこ
とが大切です。
下剤で一時的に排便できても、便秘を根本的に改善しないことには自律神経の乱れも治
らず、頭痛の改善にはつながりません。
下剤にばかり頼っていると、下剤の副作用である大腸メラノーシスになる可能性があり、
大腸メラノーシスとは大腸の中が真黒くなることで、大腸の機能が低下するとともに
大腸ガン発症のリスクを高める症状です。
その場しのぎの方法では完治させることができないということです。
なので日頃から、腸内環境を整えるようにするために、何を取り入れ、何を止めるのか
をしっかり把握し、便秘も頭痛も根本治療しましょう。
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ビオチンとは
ビオチンは、昔はビタミン H とも言われていた、体内のエネルギーの代謝や生成に関係
のある栄養素です。基本的に、ビオチンは腸内で生成され、特に健康等に関連があるとは
思われていませんでした。
最近、ビオチンが健康に関係がある事がわかり、乱れた生
活習慣や慢性的な強いストレスによって、腸内環境が乱れる
ことでビオチンが不足する事がわかってきました。ビオチン
不足は、様々な健康障害の原因となり、白髪やしわなどの老
化を促進させて、代謝を悪化させて肥満などの原因にもなる
とされています。
また、肉体的な影響だけでなく、うつ病などの精神疾患の原因にもなる事も分かってい
ます。ビオチンの不足が体調不良の原因になるのは、代謝の異常も引き起こす事でエネル
ギー不足や血液中の老廃物の処理などが行えなくなることが、体調の悪化の原因とされて
います。
ビオチンの不足が老化や体調に悪影響を及ぼす事から、ビオチンをサプリメントで補う
傾向が強まっています。ビオチンは皮膚疾患の治療にも、高い効果を示すため治療にも積
極的に使用されています。
ビオチンは、先程のビタミン B 群の仲間で、パントテン酸と一緒に体内に酵素を作って、
脂肪酸やコレステロールの代謝を行い、活動に必要なエネルギーを作り出しているとされ
ています。ビオチンは、色々な食品に幅広く
含まれているので、基本的には不足する事は
ありません。
ビオチンはアレルギー症状を引き起こす
原因とされる、ヒスタミンの働きを抑えるこ
とがわかり、アトピー性皮膚炎の治療にもビ
オチンが利用されています。
ビオチンの摂り方
- 97 -
ビオチンに限らず、体内で働く様々な栄養素は、他の栄養素と相互作用で効果を高める
のが普通です。特定の栄養素だけを一緒懸命摂取するよりは、ビタミンやミネラルなど、
身体に必要な栄養はバランスよく摂取するようにしましょう。
ビオチンの場合、他のビタミン B 群が無いと、
体内で上手く機能することができないので、ビ
オチンの効果を引き出したい場合は、ビタミン
B 群も一緒に摂取するようにしましょう。
身体に必要とされる栄養素は、基本的に食事
から摂取するのが一番ですが、幅広く栄養を摂
取したい場合は、サプリメントを利用して効率
的に摂取していけるようにしましょう。
ビオチンは腸内で生成や合成が行われていま
すので、ビオチンの効果を上げる場合には、腸内環境を整えてあげる事が必要です。腸内
に環境を整えるとして、腸内細菌の状態を改善する酪酸菌を摂取するのがいいとされてい
ます。
ビオチンのサプリメントと一緒に摂取するのがいいとされているミヤリサンは、整腸生
菌成分の一つで酪酸菌が主成分の整腸薬です。ミヤリサンは、腸内の善玉菌の働きを高め
て腸内環境を改善し、ビオチンが好むように腸を整えてくれます。
特に、掌蹠膿疱症という慢性難治性の皮膚病の治療で、ビオチンを使用している場合は、
ミヤリサンで腸内環境を整えつつ、ビオチンを摂取するのがいいとされています。逆に、
皮膚疾患を患っており、ステロイドを使用している場合、ステロイドは免疫を抑制するの
でビオチンの働き阻害してしまいます。
ビオチンの不足
ビオチンは、腸内で生成されており、色々な食事にも多く含まれている事から、ビオチ
ンな不足することはほんどありません。ビオチンは健康を維持するのに必要不可欠で、腸
内で生成されるはずのビオチンが不足してしまう人が増えてきました。
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ビオチン不足の原因は、腸内環境の悪化が考えられています。食生活の偏りや、欧米化
した食事が原因となって、ビオチンの生成を抑制して、必要量が分泌されずビオチンの不
足を招きます。
ビオチンが特に含まれている食品は、レバーや大豆などの豆製品、また乳製品などに含
まれているので、バランスのよい食事が求められます。中には、先天的にビオチン量が不
足している人もいて、ビオチンを分離することが出来ないなどの異常が見られます。
また腸内環境を悪化させる抗生物質などを摂取していると、腸内環境を悪化させる原因
になり、ビオチンの生成が困難になるとも言われてい
ます。ビオチンは、腸内細菌によって合成や吸収が行
われているので、ビオチンの摂取だけでなく、腸内環
境を整えていくことも、ビオチンの不足を予防するの
に必要です。
ビオチンが不足すると、糖質サイクルや脂肪酸の合
成などが正常に行われなくなり、アミノ酸の代謝が滞ってしまい、新しく細胞を作ったり、
傷ついたり老化した細胞を入れ替えることができなくなってしまいます。
ビオチンはコラーゲンの生成にも関連があり、コラーゲンが減少する事で、皮膚炎など
を引き起こしやすくなるといった影響が、ビオチンの不足から生じます。
ビオチンの副作用
ビオチンには人間に活動に必要となる、エネルギーの代謝に深く関係しているので、ビ
オチンの取り過ぎによる影響よりも、不足する事で生じる被害の方が深刻です。ビオチン
は近年注目され始めた栄養素で、あまり世間で知られていないことから、謎の多い栄養素
であるとして、多くのひとが関心を示しています。
ビオチンが健康に与える影響が大きい事もあり、ビオチンの副作用について興味を示す
人が多いです。
しかし、このビオチンは以前はビタミン H と言われていたビタミン B の仲間で、水溶性
なので水に溶けやすく、過剰に摂取しても体内にとどめておくことが出来ず、尿などと排
出されてしまいます。
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このように、ビオチンは不足をする事で色々な影響は起きても、過剰摂取などで副作用が
生じる心配はほとんどありません。ビオチンは様々な食品にも含まれていますが、普通に
食事を行っている分には危険性はなく、これまで過剰摂取による障害などは報告されてい
ません。
ただ、ビオチンは他の薬との飲み合わせによっては、健康に影響を起こす可能性があり
ます。ビオチンは一部のビタミンと同時に摂取すると、効果を打ち消し合うとされており、
ビオチンをサプリ等で摂取する場合は、マルチビタミンは服用をやめましょう。
ビオチンを含む食事
ビオチンはビタミンB群に分類されるので、肉類をはじめ魚類や、野菜、乳製品など幅
広く多くの食品に含まれているので、基本的に意識しなくても普通の食事を行っていれば、
不足する栄養素ではありません。
ビオチンの 1 日の摂取量は、成人は 1 日あたり 45 μ g とされていますが、食事で過剰摂
取になる事はほとんど無いとされています。ビオチンは卵の卵黄にも多く含まれています
が、卵の卵白にあるアビジンというタンパク質は、ビオチンと結合する性質ももち、ビオ
チンが吸収されにくくなってしまいます。
この為、どうしてもたくさん卵を食べたい場合は、アビジンというタンパク質によって、
ビオチンが吸収を妨げられてしまう危険があるので、アビジンの影響を受けなくするため
に、加熱調理してアビジンのタンパク質を変性させて、ビオチンが阻害されないようにし
ましょう。
生卵の場合は、1 日に 6 個以上食べると、ビオチンの急性欠乏状態になり、脱毛や皮膚
炎、また倦怠感などの症状があらわれてきます。
ビオチンが特に多く含まれている食品は、レバーや卵黄に多く、イワシやチーズからも
多く摂取出来ます。また、ビオチンが多く含まれている食品でなくても、体内に合成され
るものなので、肌荒れが気になる人や、老化が気になっている人でなければ、それほど意
識して摂取しなくてはならない栄養素ではありません。
ビオチンを食事で摂取する場合には、ビオチンの効果を高めるために、ビタミン B6 と
一緒に摂取しましょう。
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ビフィズス菌とビオチン
腸内はたくさんの常在菌が存在しており、ビフィズス菌などの善玉菌と、大腸菌などの
悪玉菌の 2 種類が存在するとされています。
善玉菌であるビフィズス菌は、腸の働きを促して正常な排便を促しますが、アトピー性
皮膚炎などで炎症体質を改善するビオチンの生産を高める効果があるとされています。ビ
フィズス菌は、アレルゲンへの反応を緩やかにして悪玉菌を減らし、健康や美容面での改
善を行う働きがあるとされています。
ビフィズスはもともとが腸内に生息している乳酸菌で、人体と上手く共存している細菌
です。腸内に存在する細菌の中には、ビオチンを食べてビオチンが不足することで生じる
アレルギーを引き起こす物もいます。
食品に入っているビオチは、タンパク質と結合しているビオチン
で、食品中に含まれているビオチン、体内で炎症抑制の効果を行う
ことは期待できません。
体内にもともと存在するビオチンは、善玉菌が作り出すビオチン
だけで、善玉菌が不足すると、生成元が減少したビオチンも、必然的に不足してしまう事
になります。ビオチンの不足が起こると炎症体質になってしまい、アトピー性皮膚炎など
ビオチン不足が原因の症状があらわる
ようになります。
アトピー性皮膚炎を改善するには、
ビオチンを増やして炎症を抑制してい
くことが望まれます。ビオチンが不足
すると、炎症を防ぐ物質が作られなく
なってしまい、アトピー性皮膚炎はか
ゆみが増したり、皮膚炎が悪化して状
態が改善されません。
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その3
生理活性物質としてのエイコサノイドの関与
「ホメオスターシスの三角形」の一角に”内分泌系”があり、全身のさまざまな生理機
能を調節するもの(生理活性物質)には、「ホルモン」がありますが、特定の内分泌腺でつ
くられ、全身を支配しているのに対して、局所ホルモン(エイコサノイド)がこれとは別
にあります。こうした調節物質を、ここではまとめて「プロスタグランジン」と呼ぶこと
にしますが、プロスタグランジンは個々の細胞でつくられ、細胞レベルでの調節を行って
います。(そのため局所ホルモンと呼ばれています)しかし、その働きはきわめて重要で、
身体全体の機能に関係していると言ってもよいほどです。
局所ホルモン(エイコサノイド)は、必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6という脂肪酸
からつくられます。
必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6が体内で化学変化を繰り返し、各種の「プロスタグ
ランジン」が生成されていきます。(食物として体内に吸収されたオメガ3・オメガ6の大
部分は、他の脂肪酸と同じく燃焼に回されますが、細胞膜からピックアップされた一部が
- 102 -
プロスタグランジンに変換されます。)
プロスタグランジンは原料である脂肪酸の違いによって、3つのグループに分けられま
す。そして、そのグループ内でさらに複雑な変化をして数十種類のプロスタグランジンが
つくられます。
ここで大切なことは、プロスタグラ
ンジンは大きく3つのグループに分か
れ、グループごとに異なる働きをして
いるということです。なかでも「オメ
ガ3系のEPA」からつくられるプロ
スタグランジンと、「オメガ6系のア
ラキドン酸」からつくられるプロスタ
グランジンは、相反する働きをして細
胞機能のバランスをとっています。
もう少し詳しく見てみると、オメガ
6系からは2つのグループのプロスタ
グランジンがつくられ、互いに相反す
る働きをしています。現在、その材料となる「オメガ6」は大量に摂取されています。そ
のうえ大半の人々は、肉・乳製品・卵などの動物性食品を多く摂っていますが、そうした
食品には直接「アラキドン酸」が含まれています。そのためアラキドン酸由来のプロスタ
グランジンが大量につくられることになります。つまり1グループ目に比べ、2グループ
目のプロスタグランジンだけが過剰に生成され、細胞機能のバランスを欠くことになりま
す。
2グループ目のプロスタグランジンと、オメガ3系からつくられる3グループ目のプロス
タグランジンも、相反する働きをしています。しかもこの2つは、オメガ6系のグループ
同士より強力な競合関係にあり、一方が大量につくられると、他方はその分だけつくられ
なくなります。ということは、現在のような「オメガ3欠乏」の状態では、圧倒的に「ア
ラキドン酸」由来のプロスタグランジンが生成されることになるのです。
「オメガ6」と「動
物性食品」の過剰摂取から2グループ目のプロスタグランジンだけが異常に多く生成され、
「オメガ3」の欠乏から3グループ目のプロスタグランジンが極端に不足してしまってい
るということです。そのために細胞機能のバランスが大きく崩れ、ミトコンドリア機能に
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障害をもたらすことになり、さまざまな障害・病気が引き起こされているのです。
例えば“炎症”という作用の場合、それを抑制するプロスタグランジンが「オメガ3」
からつくられるのに対して、アラキドン酸由来の「オメガ6」からは炎症を激化させるプ
ロスタグランジンがつくられます。このように―「血栓を減らしたり、増やしたり」「発ガ
ンを抑制したり、促進したり」「子宮を弛緩させたり、収縮させたり」「血管を拡げたり、
狭めたり」して、互いに相反する働きかけをしています。車にたとえれば、アクセルとブ
レーキのようなものです。1つの生理作用に対して、それぞれ反対の働きかけをしながら
コントロールしているのです。多種類のプロスタグランジンが互いに関係をもちながら、
身体全体の機能を維持しているのです。
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「オメガ3」と「オメガ6」の脂肪酸は、単なるカロリー源や組織の構成成分となるだけ
でなく、細胞機能を調節するプロスタグランジンの材料となっています。プロスタグラン
ジンは、神経系・ホルモン系に続く「第3の調節系」と言われ、油の中でも最新の研究分
野となっています。1982 年には、欧州の3人の研究者がノーベル医学生理学賞を受けてい
ます。
オメガ3とオメガ6のアンバランスを引き起こす原因
では、どうしてこのような異常な事態を引き起こすようになったのでしょうか。「オメガ
3」も「オメガ6」も、植物性食品や植物油の中に多く含まれています。そして、その植
物油がアメリカや日本において大量に摂取されるようになったのは、1960 年以降のことで
す。食事が欧米型に向かい、油料理・揚げ物料理が多くなった時期ということです。
食事の欧米化の中で摂取量が増え続けてきた油と言えば、コーン油・大豆油・サフラワ
ー油(紅花油)などです。そして、それらをベースにしたマヨネーズやドレッシング・マ
ーガリンなどです。実は、こうしたどこの家庭でも毎日のように使う油には、
「オメガ6(リ
ノール酸)」が豊富に含まれているのです。
(一般に使われる油の中には、45 ~ 75 %もの「オメガ6」が含まれています。)
一方、「オメガ3(アルファ・リノレン酸)」を多く含む油としては、シソ油・エゴマ油
があり、欧米では亜麻仁油があります。しかし現代人のほとんどは、これらの油を料理に
使うことはありませんでした。(日本ではあまりなじみのない「亜麻仁油」ですが、食用に
用いられた歴史は古く、ギリシャ・ローマ時代からだと言います。北欧諸国では第2次世
界大戦の前まで、どこの家庭でも使われていました。)
また食品によっては、オメガ3を比較的多く含むものもあります。野菜(特に緑の濃い
冬野菜)・海藻・魚(背の青い大衆魚)などです。そしてこれらの食品は、昔の日本人は日
常的によく食べていました。そのためかつては、かなり「オメガ3」を摂取することがで
きていたのです。油料理をひんぱんに摂るような現代とは違って、オメガ3とオメガ6の
バランスは自然に良好だったのです。
現代人は、オメガ3の摂取源となる野菜・海藻・魚などをあまり摂らなくなっているの
に対し、オメガ6の摂取量は激増しています。食事が欧米型に傾けば傾くほど、
「オメガ6」
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だけが多くなってしまうのです。こうして必然的に、「オメガ3」と「オメガ6」のバラン
スは大きく崩れてしまいました。
現代人の深刻な「オメガ3脂肪酸欠乏」
食生活の欧米化が深刻な「オメガ3欠乏」を招いていますが、その一因としては、次のよ
うなことも挙げられます。一般に現代人は、寒い地域の食物より、温かい地域の食物を好
んで食べるようになっています。温室栽培や輸入によって、冬でも、トマトやキュウリ・
ピーマンなどの夏野菜が食べられるようになりました。実は、「オメガ6」が暖かい地域の
農作物に多く含まれているのに対して、「オメガ3」は寒い地域の農作物に多いのです。ホ
ウレン草・シュンギク・小松菜・白菜・ブロッコリーなどの冬野菜は、よいオメガ3の摂
取源となっています。
- 106 -
また精白技術の進歩が、オメガ3不足に拍車をかけています。穀類の胚芽にはオメガ3
とオメガ6がともに含まれているのですが、精白することで「オメガ3」が失われてしま
います。
さらにオメガ3不足の大きな原因として現代式の製油方法が挙げられます。食用油といえ
ば、かつては手絞り的な圧搾法「コールド・プレス(低温圧搾法)」で製造されていました。
しかし現代では、そうした方法でつくられているのは亜麻仁油・オリーブ油などの一部の
油のみです。それ以外のほとんどの食用油は、化学的溶剤で原料の中の脂肪を溶かし出し、
その後に溶剤を除去するといった方法でつくられています。そして最後の脱臭工程では、230
℃以上もの高温処理がなされています。取り出された油には、部分的に水素が添加されま
す。“水素添加”とは、不飽和脂肪酸の二重結合部分に、高温高圧下で強引に水素をつなげ
て油を飽和状態に変えてしまうことです。こうすると油は酸化しにくくなって日もちがよ
くなり、商品寿命が延びるからです。
こうした製油過程で真っ先に失われてしまうのが、水素と最も反応しやすい「オメガ3」
なのです。原料となる大豆やゴマなどの種子類には、わずかですがオメガ3が含まれてい
ますが、今述べたような製油方法では、ほとんどなくなってしまいます。そのうえ「トラ
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ンス型脂肪酸」という有害な脂肪酸が生成されることになります。
(
「溶剤使用」
「高温処理」
「水素添加」という現代式の製油方法の中では、オメガ3だけでなく、ビタミンなどの栄
養素も失われてしまいます。
このような原因が重なって、現代人の「オメガ3不足」は、きわめて深刻な状態になっ
ています。
そして、ミトコンドリアの働きまで悪化させることになります。
脂肪酸の種類の違い
脂肪酸は体を構成している約 60 兆個の細胞の膜と、細胞内のミトコンドリアなどの小器
官の膜をつくるのに使われています。体の働きを行う酵素は、細胞膜の助けを借りて働い
ています。また細胞膜は物質輸送の場でもあります。細胞膜には食べた脂肪酸がそのまま
使われますので、どのような種類の脂肪酸を含む脂質を食べたかにより、細胞膜の状態が
大きく異なり、細胞の働きが左右されます。
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例えばミトコンドリアで働く酵素はリノール酸型の脂肪酸により膜に支えられています
が、もし、これがリノレン酸型などの他の脂肪酸だと酵素は膜から離れてしまい、エネル
ギーをつくることができません。
神経細胞はナトリウムイオンとカリウムイオンを入れ換えることで神経を伝達していま
す。このナトリウムイオンとカリウムイオンを入れ換えるたんぱく質を挟み込むように固
定しているのが DHA や EPA です。もし、この脂肪酸がリノール酸型であれば、たんぱく
質は固定できず神経は伝達できません。
脂肪酸の種類によるもう一つの大きな違いは、膜の柔らかさです。融点が低い脂肪酸の
方が体温では柔らかいのです。これらの脂肪酸がさまざまな組合せで膜をつくるのですが、
その組合せにより膜の硬さ、つまり動きやすさが異なるのです。どのような組み合わせが
よいのかはそれぞれの細胞が決めます。
~必須脂肪酸について~
必須脂肪酸に含まれるものにはリノール酸、アラキドン酸、αリノレン酸、EPA、DHA
などがあります。これらは細胞膜のリン脂質の構成要素で、プロスタグランディン、ロイ
コトリエン、トロンボキサンなどのエイコサノイドを産生します。
「リノール酸」は成長、生殖生理や皮膚の状態を正常に維持するうえで必須です。摂取さ
れたリノール酸は人の体の機能を保つために必要なアラキドン酸に変換されます。しかし、
アラキドン酸が過剰になると血圧を上げ、血液の凝固を促進し、アレルギー症状を悪化さ
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せます。
「αリノレン酸」は学習機能や網膜機能を高く保つうえで必須です。αリノレン酸はリノ
ール酸系列の代謝を阻害し、アラキドン酸由来のエイコサノイドからの影響を和らげます。
αリノレン酸が EPA、さらに DHA に変換されると血小板凝集の抑制、血管拡張、アラキ
ドン酸作用を抑制します。DHA は脳、神経細胞の機能を働かせる作用を持っています。
「エイコノサイド」は細胞膜をつくっているリン脂質の多価不飽和脂肪酸からつくられま
す。そして材料になる脂肪酸の種類により正反対の指令を出すエイコサノイドになります。
大まかにいうと、リノール酸型(主にアラキドン酸)は血管の収縮や血液を固めるエイコ
サノイドを、リノレン酸型(主に EPA)はその逆の作用をするものをつくります。他にも
アレルギーに敏感にさせるのはリノール酸型で、ストレスも誘発します。
こうしてみるとリノール酸型は好ましくない脂肪酸のように見えますが、リノレン酸型
が多すぎると怪我をしたときに血が止まりにくくなり、内出血も止まりません。リノール
酸型とリノレン酸型の適度なバランスが重要です。
第6次改定栄養所要量の中で、リノール酸型とリノレン酸型の摂取比を4:1、さらに飽
和脂肪酸:オレイン酸:多価不飽和脂肪酸の比率を、おおむね3:4:3と推奨されてい
ます。
戦後の日本人の脂肪摂取量は1日 20 gぐらいであったものが、1960 年以降は約3倍に
増え、オメガ6系脂肪酸(リノール酸)も1日 5 ~ 6 gが 14 ~ 15 gに増えていますが、
オメガ3系脂肪酸(αリノレン酸)はそれほど増えていません。
~調理に使う油脂~
大きく分けて動物性脂肪の飽和脂肪酸(獣肉油脂、牛乳、卵に含まれる)、一価不飽和脂
肪酸、多価不飽和脂肪酸(野菜、種子、芋類、海藻、魚に含まれる)などに分かれます。
多価不飽和脂肪酸には、必須脂肪酸のオメガ(ω)6 系不飽和脂肪酸(リノール酸)とオ
メガ(ω)3 系不飽和脂肪酸(αリノレン酸)が含まれます。
①植物性油脂(不飽和脂肪酸)に人工的に水素を添加し固化させた硬化油脂(マーガリン、
ショートニング)、
②ヘキサンなどの溶媒を使った植物性油脂(市販の大豆油、コーン油、米油、ナタネ油、
綿実油など)、
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③高温の植物性油脂を使って調理した食品(揚げ物、フライ、天ぷら)、
④植物性油脂を含み高温で調理された食品(スナック菓子、冷凍食品など)
には、トランス脂肪酸が多く含まれていることがわかりました。
トランス脂肪酸は反芻動物の腸内細菌によってつくられ、反芻動物(牛、羊、馬、ヤギ
など)の肉や乳脂肪中に含まれますが、それ以外の自然な状態では存在しない脂肪酸です。
細胞膜をつくるためには不飽和結合部で折れ曲がった天然に存在するシス型の構造が必
要です。直線構造をしたトランス型では細胞膜は弱く、壊れやすくなります。
トランス脂肪酸の摂取量が多くなると、血管内皮、気道粘膜、消化管粘膜、皮膚などの
細胞を含め体内の細胞機能が障害されて生物反応が正常に行えなくなり、アレルギー症状
・神経系の症状・腸管の症状を悪化させ、病気を引き起こします。
生理痛に関連して・・プロスタグランジン
「生理痛」と「月経時片頭痛」の異同
生理痛とは
最近、興味あるブログを目にしました。それは「生理痛」に関するものです。それは、
「kaolune の Sweet Days 」(http://ameblo.jp/kaolune/entry-10582677361.html)です。kaolune
さんによれば、「生理痛」の原因として、10 の要因を挙げておられます。「冷え」「血液の
量」「血液の量」「骨盤の開閉」「カラダの歪み」「ストレスによるホルモン異常」「エストロ
ゲン過剰」
「毒素の排泄」
「マグネシウム不足」
「子宮が未成熟」です。
kaolune さんによれば、決して「ストレス」
だけが原因ではないようです。単純に述べれ
ば、マグネシウム・セロトニン・メラトニン
・有害物質の摂取(脂肪酸・環境ホルモン)
・生理活性物質の乱れを指摘され、まさしく
「生理痛」とは「片頭痛」そのもののような
錯覚を覚える程類似しているようです。
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質の悪い脂肪の多い食生活と冷えがプロスタグランジンを増やしている
生理痛の激痛の原因になっているのがプロスタグランジンです。
生理のときに子宮内膜をはがすのをはたらきかける物質ですが、必要以上に多くですぎ
てしまうことで、生理痛が激痛になってしまいます。
ですからのこのプロスタグランジンが必要以上に多くですぎる原因を知って、多くです
ぎないようにすることが生理痛を改善するうえでとても大切なポイントになります。
プロスタグランジンが多くですぎる原因は?
プロスタグランジンが多くですぎてしまう原因は主
に2つあります。
1.プロスタグランジンの原料となる脂肪が多く
なる食事
2.プロスタグランジンが生理のときに長く子宮
にはたらきかけてしまう「冷え」
それぞれに簡単に説明をしましょう。
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1.プロスタグランジンの原料となる脂肪が多くなる食事
あまり自覚がない女性も多いですが、女性は脂肪分が多いものが好きなんです。たとえ
ばケーキです。これにはたくさんの脂肪分が含まれているので、1個食べただけでも相当
な脂肪分を体に入れることになります。このほ
か日常的に食べるものでも脂肪分が多いのが菓
子パンやサンドウィッチなどのパン類です。
菓子パンにもサンドウィッチにも油が多い食
品が使われているので脂肪分がとても多いので、
しかも、こういいった食事に含まれている脂肪
は質が悪いです。
良質な脂肪としては、魚に含まれる油やアー
モンドに含まれる脂分が有名です。
これらの良質な脂肪は体にも必要なものなので適量を食べるのが望ましいですが、市販
のケーキやサンドウィッチ・菓子パン等に含まれる脂肪分はたいていが天然の脂肪分では
なく合成された質の悪い脂肪分なので、体に必要な脂肪分とはとても言えない成分になり
ます。
ですから、市販のパン類全般を常食し、間食はケーキのようなクリーム系の脂肪分が多
い食事が多い現代女性の食事中の脂肪分は過剰になっています。
といっても脂肪分も多く食べても、体の中できちんと消費されるか、食物繊維が絡め取
って便と一緒に体外へ出れば問題ありません。でも、パン類中心の食事はサラダを食べて
いたとしても食物繊維が圧倒的に少ないので体外に出す量も少なく、実際は過剰になって
す。中性脂肪としてたまってしまっているのが現状です。
そして、体の中で消費されずにたまって脂肪分は、プロスタグランジンの原料になりま
す。体の中には脂肪分があまっていますから、プロスタグランジンも多くつくられてしま
います。
そのため、多く作られたプロスタグランジンは、生理のときに必要以上に出すぎて、子宮
内膜に収縮しなさいと命令をたくさん送ってしまい、生理痛がひどくなってしまうのです。
ですから、脂肪分の多い食事にならないように調整すると、生理痛をやわらげることに
つながります。
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2.プロスタグランジンが生理のときに長く子宮にはたらきかけてしまう「冷え」
プロスタグランジンは生理のときにでてくる物質ですが、血液の中を通って子宮までた
どりつき子宮に収縮しなさいとはたらきかけます。
このときに、体が冷えているとプロスタグランジンが子宮のところで長居してしまいま
す。なぜ長居してしまうのかというと、冷えていると血液の流れが悪くなるからです。
血液の流れが悪くなることで、血液の中にあるプロスタグランジンが子宮に長くとどま
ってしまうのです。
プロスタグランジンが長くとどまれば、その間にずっとプロスタグランジンが子宮に収
縮しなさいとはたらきかけてしまうので、生理痛の痛みが長く続いてしまう原因になるの
です。ですから、体とくに子宮のある骨盤周辺を冷やさないようにするのが、生理痛をや
わらげるのにつながるのです。
ここで、子宮の筋肉が収縮・弛緩する仕組みについて、簡単にご説明します。
筋肉の収縮にはミネラルが関わっています。細胞内のカルシウム濃度が高くなると筋肉
がきゅっと収縮します。そのカルシウムはどこから来るかと言うと細胞外からと細胞内の
カルシウム貯蓄庫から の2パターンがあります。
- 114 -
大まかに言うと
脳からの指令を自律神経が筋肉に伝える
↓
細胞外からカルシウムが流れ込み細胞内では貯蔵庫からカルシウムを出す
↓
細胞内のカルシウム濃度が高くなる
↓
筋肉が縮む
という流れになっています。
逆に、弛緩させるためには細胞内のカルシウムの濃度を減らす必要があります。
どうやってカルシウムを減らすのかと言うと細胞膜にあるポンプで細胞外にカルシウムを
汲み出し細胞内の貯蔵庫にも貯蔵庫のポンプでしまい込むのです。
このポンプを動かすエネルギー源を作るのにマグネシウムが関わっています。
ここで
もしマグネシウムが足りないとポンプを動かすエネルギーがないため(いわば
バッテリー切れ状態)カルシウムを汲み出せませんし、貯蔵庫にもしまえません。
細胞内はカルシウムが多い状態が続き筋肉は収縮し続けることになります。
それからもう一つ、収縮を伝える神経伝達にもカルシウムとマグネシウムが関わってま
す。
カルシウムはメッセンジャーをたくさん出しますが、マグネシウムはメッセンジャーが
出過ぎないようにします。ということは、マグネシウムは神経伝達において「収縮せよ」
という信号が届きすぎないよう調節してくれているのです。
これらのことから、筋肉が収縮しすぎず弛緩するには
マグネシウムが必要であることが
理解されるはずです。
マグネシウム不足では、子宮筋層はギュ~っと収縮しっぱなし になります。
すると
子宮筋層の血行はもちろん悪くなり、細胞は酸欠を起こしますから
- 115 -
SOS 信号
である発痛物質がでてきますし、その状況を助けるために、プロスタグランジンが活躍す
ることになります。このために痛みが出てくることになります。
月経前に血中マグネシウムを骨や筋肉へと移行させるため、脳内のマグネシウムの割合
が低下します。その為、月経中に片頭痛を起こしてきます。
生理周期との関連
女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、
月経周期でその分泌量は大きく変わります。
特にエストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、それに伴って神経伝達物質のセロトニン
も急激に減ります。その時に頭の中の血管が拡張することで片頭痛が起こると考えられて
います。
このエストロゲンが減少するのが排卵日や生理の初日前後です。
つまり排卵日や生理の初日前後、さらに排卵日にはエストロゲンが減少するためにセロト
ニンも減少→ 頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすいのです。
月経周期に関係する片頭痛は、エストロゲンの変動の少ない妊娠中や閉経後には治まっ
てくる人も多くなります。
片頭痛を発症し始める年齢は生理が始まる 11 から 13 歳ごろが多いのも理解されると思
います。
セロトニン神経の起始核である縫線核にはエストロゲンの受容体が豊富であり、性周期に
伴う気分の変動についても、エストロゲン濃度の変動が影響していることが考えられます。
改めて、生理痛と片頭痛の関係
生理中の痛みの症状として、腹痛のほかに頭痛を挙げられる方は多いかもしれません。
頭痛を生理痛の延長と考える方が多いようですが、生理痛は、痛みがおこるメカニズムか
ら片頭痛そのものだ、ということがわかります。
生理がはじまる 1 ~ 2 日前や、生理がはじまってからの 2 ~ 3 日目に、片頭痛はよく
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起こります。
片頭痛は、「エストロゲン」という女性ホルモンの分泌と関係があるといわれています。
体を妊娠しやすい状態に整えるエストロゲンは、生理が終わるころから排卵の直前まで多
く分泌されます。エストロゲンは、卵巣で大きくなった卵の排卵を促し、子宮内膜を厚く
して妊娠の準備をします。そして、妊娠しなかった場合、エストロゲンの分泌が減り、い
らなくなった子宮内膜が体外に排出されます。その際、エストロゲンと一緒にセロトニン
の分泌が減ってしまうため、生理の際に片頭痛がおこるのです。
痛みの原因は、脳の血管が拡張して引き起こされた炎症だと考えられています。
そしてその血管拡張は、セロトニンという神経伝達物質の不足で起こるといわれています。
月経の際の片頭痛は、それ以外の時期のものに比べて、強い痛みが長く続くのが特徴です。
さらに、この時期の痛みには、鎮痛剤が効きにくいといわれています。
こうしたことから、月経時片頭痛をなくすためには、日頃からマグネシウム補充とプロ
スタグランデインを産生を抑える食生活(脂肪酸の摂取の問題点をクリアする)ことが重
要となってきます。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) ・・プロスタグランデインとの関連から
まず、「痛い」と感じている傷の場所では、どういう現象が起こっているのでしょうか?
1. 傷や熱、酸・アルカリの刺激を受けると、細胞が傷つきます。
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2. 傷ついた細胞から、カリウムが放出されます。それがきっかけとなり、痛みを感じや
すくするプロスタグランジンやロイコトリエンといった、体の働きを調節する物質が作ら
れます。
3. 神経からは、サブスタンス P という痛み増強物質が放出されます。サブスタンス P に
よって、傷の痛みや腫れ、赤みなどが増強します。
4. また、血液中の肥満細胞からはセロトニン、血小板からはヒスタミンといった、さら
なる痛み物質が誘発されます。
5. 痛みセンサーはますます興奮し、痛みが拡大します。
拡大した「痛み」情報は、体の損傷や不具合を脳に伝えられ、その対策を立てるよう脳
に促します。痛みがある時には、自然と安静を取り、冷やして炎症を抑えようとするのは、
痛みを感じ取った脳が傷を癒すアクションを起こしているからなのです。
組織が損傷を受けた時、細胞膜にあるリン脂質はアラキドン酸に変わり、シクロオキシ
ゲナーゼ(COX)の作用によってプロスタグランジンが生成されます。このプロスタグラン
ジンの作用によって引き起こされる「痛み、熱、腫れ」などの症状が引き起こされる現象
を炎症といいます。一方、組織損傷時に血漿から遊離したブラジキニンは、知覚神経を興
奮させることにより、痛みを発生させます。プロスタグランジンは、ブラジキニンと比較
して直接的な発痛作用は弱いのですが、ブラジキニンによる発痛を増強させます。このよ
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うに疼痛は両者の関わりから起こります。
発痛物質には、ブラジキニン、セロトニ
ン、ヒスタミン、アセチルコリンなどがあ
りますが、その中で最強とされるのはブラ
ジキニンです。
セロトニンは皮膚や筋肉に分布する痛覚受容器に作用して痛みを起こします。
セロトニン濃度が低いと、物理的刺激や他の発痛物質(たとえばブラジキニン)の発痛
作用を増強します。
セロトニンの濃度を急に低下させるものはすべて頭痛を起こし、その際、絶対的な濃度
よりも、減少のスピードが重要となってき
ます。
プロスタグランジンの合成量を左右して
いるのは細胞膜にある脂肪酸(リン脂質)
からのアラキドン酸の遊離の程度によりま
す。
細胞に物理的な刺激が加わった場合や炎
症などはアラキドン酸が遊離するきっかけ
となるため、いったんプロスタグランジンが産生され、炎症が起きると、アラキドン酸の
遊離が促進され更にプロスタグランジンが産生されるという悪循環が生じることになりま
す。
これは雪球を坂の上からころがした時にたとえる事が出来ます。、はじめは小さな雪球で
もころがっていくうちにだんだん大きくなっていきます。おそらく、小さなうちには簡単
に止めることが出来るのでしょうが、大きくなり勢いのついた状態では止めようとしても
逆に押し潰されてしまうかもしれません。
炎症の初期にプロスタグランジンの産生をしっかりブロックすることは、痛みを悪化さ
せないための重要なポイントです。プロスタグランジンの原料になるのは食物の中に含ま
れる脂肪です。脂肪は蛋白質、糖質と並んで重要な栄養素ですが肥満をはじめとして動脈
硬化や乳癌の発生に密接に関与していることが知られており、あまり良いイメージはない
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ようです。
このように、脂質というとダイエッ
トの大敵のイメージがありますが、実
際には体内で体の構造成分となったり、
ホルモンの原材料として重要な役割を
担っています。普段食べているバター、
サラダ油、豚や牛の脂肪、魚の油など
の油脂(中性脂肪)の栄養学的な性質
を決めているのは脂肪酸といわれる物
質です。「コレステロール上昇予防に植
物油がいい」という宣伝もこの脂肪酸
の種類のことを言っているのです。
脂肪酸には大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
その中でも必須脂肪酸は動物の体内ではほとんど合成がされず、食事から摂る必要があ
る栄養素です。必須脂肪酸が欠乏したネズミでは皮膚からの水の漏出、成長の停止、生殖
機能低下などが起きることが知られています。
動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれ、たくさん食べるとコレステロール値を上げ、
動脈硬化や心臓病の原因になることが知られています。不飽和脂肪酸は植物油や魚に多く
含まれ、コレステロール値を下げるので良い言われています。ところが植物油信仰も過信
しすぎると落とし穴があります。
植物性脂肪は不飽和脂肪酸を多く含むと述べましたが大きく分けて3つの系統に分類さ
れます。
一価不飽和脂肪酸
オレイン酸に代表されます。オリーブ油に多く含まれ、動脈硬化を促進する LDL を下
げ、動脈硬化を予防する HDL を上昇させる作用を持っています。
オメガ6系統多価不飽和脂肪酸
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リノール酸に代表されます。サフラワー油、紅花油、ひまわり油に多く含まれ LDL も HDL
も共に減らしてしまう作用があります。体内でアラキドン酸となり生理痛の原因物質であ
るプロスタグランジンの原料となります。またアレルギーや喘息発作に関与するロイコト
リエンの原料ともなると言われており、過剰摂取には注意が必要です。
オメガ3系統多価不飽和脂肪酸
α-リノレン酸→魚の脂肪に多く含まれエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン
酸(DHA)に代謝されます。EPA や DHA の動脈硬化、心筋梗塞予防効果はしばしばマスコ
ミでも耳にしますが、これらの n-3 系列の必須脂肪酸は n-6 系列の脂肪酸が細胞に取り込
まれるのを阻害したり、プロスタグランジン合成酵素の働きを邪魔することが知られてい
ます。
オメガ3系多価不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸、エイコサペンタエン酸はリノール酸、
アラキドン酸がプロスタグランジン、ロイコトリエンなどのエイコサノイドに変換するこ
とを競合的に阻害することが知られています。EPA 由来エイコサノイドは生理活性が弱い
ので、プロスタグランジンの産生過剰による症状を抑制すると考えられます。
プロスタグランジンがたくさん出来ないように工夫することは痛みの治療にとって重要
です。そのためにプロスタグランジンの合成を阻害する鎮痛剤やピルなども使用するので
すが、食生活を工夫することによってプロスタグランジンの過剰な産生をコントロールす
ることも有効と考えられます。具体的には魚を積極的に食事に取り入れる、衣の厚い揚げ
物は減らすなどを工夫を続ける事が良いと思います。
痛み止めの仕組み
普段、皆さんが病院や薬局で処方される痛み止めは、ほとんどが非麻薬性鎮痛薬(NSAIDs)
です。代表的な薬には、ロキソニン、ボルタレン、ロピオン、アスピリンなどがあります。
痛み止めの作用
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痛みセンサーを興奮させ、痛みを引き起こす痛み物質には、カリウム、セロトニン、ブ
ラジキニン、ヒスタミンなどがあります。一方で、痛みセンサーを直接には興奮させず、
痛み物質の作用を強める物質があります。サブスタンス P、ロイコトリエン、プロスタグ
ランジンなどがあげられます。非麻薬性鎮痛薬(NSAIDs)は、このプロスタグランジンを
作りにくくすることで、痛み止めの効果を発揮します。
シクロオキシゲナーゼ(COX)はアラキドン酸を原
料としてプロスタグランジンを合成します。
しかし、シクロオキシゲナーゼ(COX)によって
合成される物質はプロスタグランジン以外にもトロン
ボキサン A2(TXA2)という物質もあります。
このトロンボキサン A2(TXA2)の重要な作用と
しては血小板凝集作用があります。つまり、血液が固
まりやすくなります。
そのため、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害
することによってトロンボキサン A2(TXA2)の合成を抑制することができれば、血小板
凝集を抑えることができます。
このようにして、片頭痛の引き金となる”血小板凝集を抑える”ことができます。
非ステロイド性抗炎症薬 NSAID の主作用であるシクロオキシゲナーゼ(COX)活性阻
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害作用にあり、これによって鎮痛効果を発揮しています。
こうしたことから非ステロイド性抗炎症薬 NSAID の有効性を最大限に引き出すために
は、食生活を工夫することによってプロスタグランジンの過剰な産生をコントロールする
ことが重要であるということを意味しています。
このようにして、食生活上の問題から、非ステロイド性抗炎症薬 NSAID の効果を十分
に引き出させることなく、これが過剰な服用に繋がり、このような薬剤そのものは、本来、
私達の体には異物そのものであり、これを代謝・解毒させるには大量の活性酸素を発生さ
せ、このためにミトコンドリアの働きを悪化させることになります。
さらに、過剰に服用された非ステロイド性抗炎症薬 NSAID は”化学的ストレス”とな
り、「脳内セロトニンの低下」をもたらすことによって「痛みを感じやすく」させることに
よって、頭痛を誘発してくるものと考えるべきです。
油の摂取のしかた
あなたは「サラダ油」(植物油)を料理に使つていますか?
サラダ油というネーミング
は健康的なイメージがありますが・・・
いまから半世紀も前、「植物油はコレステロール値を下げる」という実験結果がアメリカ
で発表され、
「植物油=健康にいい」というイメージが先進各国に広まりました。ところが 30
年前、「植物油にはコレステロール値や心臓病の発生確率を下げる効果はなく、むしろがん
の発生確率を高める」という発表が、アメリカの国立がん研究所からあったのです。そう
した発表を受けて、各国でさまざまな規制が導入されました。サラダ油はカラダによいも
のではなかったのです。しかし、日本ではいまだに「植物油=健康にいい」と信じられて
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います。
酸化ストレスを悪化させる危ないやつ!
植物油に多く含まれるのが「リノール酸」です。リノール酸は「必須脂肪酸」で、わた
したちのカラダには欠かせません。でも、穀類や豆類中心の食事をしていれば、充分に必
要量がとれます。
リノール酸は、活性酸素の発生などを抑える「生理活性物質」(体内でのさまざまな生命
活動を調整したり影響を与えたりする)の原料になりますが、とり過ぎてしまうと逆にそ
れを抑制してしまいます。現代人の食生活は植物油を多くとり過ぎなので、むしろ活性酸
素を過剰に発生させてしまっているのです。
それから問題なのが「トランス脂肪酸」。これは天然の植物油(昔ながらの低温圧搾でつ
くられたもの)にはほとんど含まれません。
大量生産で工業的につくられる場合にできる副産物で、いわば人工的な有害物質です。
ですから、精製・加工された植物油には多くのトランス脂肪酸が含まれています。このト
ランス脂肪酸も酸化ストレス・炎症体質を悪化させます。
トランス脂肪酸は多くの国で使用が制限され、表示義務があります。ところが、日本で
はほぼ“Free”という状況です。ほとんどの人がその危険性をよく知りません。あなたは
知っていましたか?
トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングにもたくさん含まれています。マーガ
リンは即やめたほうがいいし、ショートニングを使っているお菓子なども、やはり気をつ
けたほうがいいです。そのほかでは、市販の揚げ物なども要注意です。何度も使い回しが
できる“持ぢのよい「硬化油」という植物油が使われていて、これにはトランス脂肪酸が
いっぱいです。
健康によい油
リノール酸は「生理活性物質」の原料になります。この生理活性物質には、①「炎症を
悪くする」、②「炎症を抑える」、③「両者の働きを調整してバランスをとる」の3種類が
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あり、リノール酸はとり過ぎると①になってしまいます。
大事なのは③です。「酸化ストレス・炎症体質」にならないようにコントロールしてくれ
るからです。その原料となるのが「α-リノレン酸」や「EPA・DHA」です。
サプリメントのCMで見たことがあると思いますが、EPAやDHAは青魚に多く含ま
れています。「α-リノレン酸」。α-リノレン酸は、体内でEPAやDHAに変わってく
れるのです。α-リノレン酸は「エゴマ油(シソ油)」や「亜麻仁油」に多く含まれていま
す。 αーリノレン酸やEPA・DHAは「オメガ3系脂肪酸」といいます。健康の決め手
はオメガ3です。
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その4
セロトニン神経系の関与
「ホメオスターシスの三角形」の一角に「自律神経系」があり、この「自律神経系」を
調節する働きをするものが「セロトニン神経系」です。
「セロトニン神経系」とは
「セロトニン神経系」とは、セロトニンを含有し、神経伝達物質として”セロトニン”
を用いる神経細胞群とその標的細胞の受容体からなります。
神経伝達物質とは、神経細胞のニューロ
ン間で、信号をやり取りするための物質の
ことです。この細胞のシナプスからは、特
定の神経伝達物質が放出され、受容体で受
け取られるという仕組みがあり、この情報
伝達が神経へとつながっているのです。
この細胞膜にある特定の受容体は、その
器官ごとに受容体が異なっており、各部位に分布しています。
「セロトニン神経系」は、脳の中心にある「脳幹」の、さらに中央に位置する「縫線核」
という部分にあります。そして、大脳皮質や大脳辺縁系、視床下部、脳幹、小脳、脊髄な
ど、あらゆる脳神経系と結合し、脳の広い範囲に影響を与えている神経系です。
- 126 -
B1 淡蒼縫線核
延髄縫線核群として、脊髄前角運動ニューロンへ(抗重力筋の増強)、脊髄中間外側核
※ 1 の交感神経節前ニューロンへ(交感神経興奮)
※ 1
胸髄の前角後側方の側角に交感神経節前ニューロンの細胞体の集合である中間外
側核がある。
B2 不確縫線核
B3 大縫線核
脊髄後角へ(下行性抑制による鎮痛)
B4 舌下神経前位核の背側
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B5 橋縫線核
B6、B8
正中縫線核
海馬に投射→記憶情報処理
B7 背側縫線核
上行性に投射、大脳皮質(覚醒)、側坐核(衝動的行動)、前脳基底部(覚醒)、視床下部
核群(睡眠、体温調節、摂食、内分泌)に投射
B9 線状核
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最初にお話しておきたいことは、「神経伝達物質」は、実は 100 種類以上あるということ
です。そのなかでも主要なものは 10 種類ほどに絞られますが、脳内のいろいろなところに
影響を与えるという点では、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリ
ンなどがよく知られています。
ドーパミンは、体の動きを調整する神
経の機能と、心の領域として「舞い上が
るような心地よさ」を感じる「快の情動
回路」といわれる神経の機能とがありま
す。セロトニンと深く関わりがあるのは、
後者の機能です。このドーパミン神経を
活性化させるのは「報酬」です。人間社
会において、私たちが「試験で良い点数
を取る」
「試合で勝つ」
「高い給料を取る」などの目標を持つと、ドーパミン神経は興奮し、
私たちに一種の「渇望したストレス状態」を作り出します。この状態ではドーパミン神経
が活性化しているので、私たちはちょっとしたストレスでも努力するようになるのです。
そして目標が達成されると「舞い上がるような心地よさ」を感じることができます。です
からドーパミン神経は、意欲の神経なのです。
達成されないことで一番問題になるのは、ドーパミン神経が暴走し始めることです。実
際に、世の中は上手くいかないことが多いわけですが、上手くいかないことが続くと「何
が何でも達成するぞ!」と異常行動を起こし始めるのです。いわゆる依存症で、周囲に迷
惑をかけてしまう。これはドーパミン神
経の悪い面です。
ドーパミン神経には興奮した際、良い
面と悪い面があるわけですが、このドー
パミン神経にコントロールをかけること
ができる神経回路がセロトニン神経であ
る、ということです。
ノルアドレナリンはストレスに関係す
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る神経になります。不快なストレッサーが、外部から人間の内部に加わった場合、最初に
反応するのがノルアドレナリン神経です。わかりやすく言えば、脳内の危機管理センター
です。危機を察知すると、体の面では即座に血圧を上げたり、心の面では不安を感じさせ
たりするわけです。
ノルアドレナリン神経も重要な神経ですが、暴走するとどうなるかといいますと、大し
たことではないにもかかわらず、「大変だよ!」と興奮してしまうのです。いわゆる「パニ
ック障害」です。
ドーパミン神経をコントロールするのと同じく、セロトニン神経がコントロールすること
ができます。ですから、ドーパミン神経の「快」で舞い上がることと、ノルアドレナリン
神経の「不快」で落ち込むこととの両方を抑えるという点で、セロトニン神経を活性化さ
せることは重要だと言えます。
要約しますと、セロトニンは心の面では、
クールな覚醒、つまり平常心を保つはたらき
をします。セロトニン以外にも心の状態を演
出する神経には、快感や陶酔感を増幅する「ド
ーパミン神経」と、様々なストレスによって
覚醒反応を引き起こす「ノルアドレナリン神
経」があります。セロトニン神経は、この2
つの神経に対して抑制作用を及ぼし、興奮と
不安のバランスを図り、心の状態を中庸に保
つはたらきをするということです。
セロトニン神経の活動レベルは一日の中で絶えず変化していますが、その活動が活発で
あればセロトニンの分泌が多くなり、弱くなれば分泌が少なくなります。
分泌が多ければ、それだけ情報も伝わりやすくなるというわけです。
セロトニン神経が働くのは、おもに覚醒時です。
朝起きてから夜寝るまで、セロトニン神経は休むことなくインパルスを出し続けていま
す。つまり、起きている間中、セロトニンの分泌は行われています。
そして、睡眠中には、そのインパルス活動が弱くなり、セロトニンはほとんど分泌され
- 130 -
なくなります。そのため脳内のセロトニンの濃度が下がり、脳全体を覚醒する作用もなく
なります。
脳内セロトニンの働きとしては
1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
2.自律神経調節する
3.筋肉へ働きかける
4.痛みの感覚を抑制する
5.心のバランスを保つ
1.大脳皮質を覚醒させ、意識のレベルを調節する
セロトニン神経は、大脳皮質を覚醒させ、意識のレベ
ルを調節する役割をしています。
大脳皮質には、意識のレベルを調節するという
働きがあります。ここに作用しているのが、セロ
トニン神経です。
人は眠っている間意識がなくなりますが、朝起
きると覚醒します。
朝起きて、意識がスッキリして爽快な時もあれ
ば、ぼんやりしている時もあります。
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意識と一口にいっても、「スッキリ」「ぼんやり」「イライラ」などさまざまなレベル、状
態があります。
セロトニン神経が作り出しているのは、起きている時の「スッキリ爽快」な意識の状態
です。
2.自律神経を調節する
先程述べた「ホメオスターシスの三角形」の一角に「自律神経系」があり、この「自律
神経系」を調節する働きをするもので、最も重要な働きをしています。
セロトニン神経は、自律神経を調節する役割を担っています。
自律神経は心臓機能、血圧、代謝、呼吸などを司っており、交感神経と副交感神経とい
う 2 つの神経によって成り立っています。
交感神経は起きて活動しているときの神経で、副交感神経は眠っているときの神経です。
朝起きると自律神経のバランスが変わり、副交感神経から交感神経にシフトします。
シフトしたら、片方の神経の活動が全
くゼロになるわけではありません。
交感神経と副交感神経は、互いにシー
ソーのようにバランスを保ちながら、強
くなったり弱くなったりを繰り返してい
ます。
セロトニン神経は自律神経に対し、こ
のシフトがうまくいくよう働きかけてい
ます。
朝起きると、交感神経の方が優位にな
らなければなりません
そこで、セロトニン神経は交感神経を適度に緊張させ、体をスタンバイ状態にします。
しかし、この働きがうまくいかなくなると、寝起きが悪くなったり、自律神経失調症な
どになる場合があります。
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3.筋肉へ働きかける
セロトニン神経は、筋肉へ働きかける役割を担っています。
セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることで、影響を与えて
います。セロトニン神経が働きかけるのは、抗重力筋です。抗重力筋とは、重力に対して
姿勢を保つために働く筋肉のことです。まぶたが開き、首が立ち、背筋が伸び、歩いたり
できるのは、この抗重力筋のおかげです。セロトニン神経が活性化していると、まっすぐ
な姿勢や生き生きした表情になることができます。反対にセロトニン神経の働きが弱まる
と、背中が丸まったり顔の表情がどんよりしてしまいます。
このため、セロトニンが不足してきますと、「体の歪み」を引き起こしてきます。
4.痛みの感覚を抑制します
セロトニン神経は、痛みの感覚を抑制する役割を担っています。
セロトニン神経が活性化されていると、鎮痛効果が現れます。
痛み自体がなくなるのではなく、セロトニン神経の活性化により痛みの感覚をコントロ
ールすることで、痛みを感じにくくなります。
反対にセロトニン神経が弱まると、ささいなことで体の痛みを感じるようになります。
脳内セロトニンが低下すれば、頭痛が出現しやすくなってきます。また片頭痛における
- 133 -
アロデイニアと関連しています。
5.心のバランスを保つ
セロトニン神経は、心のバランスを保つ役割を担っています。
人の心は外側、内側の両方から影響を受け、絶えず変化しています
嬉しいことがあれば気分も高揚しますし、悲しいことがあれば気分が沈みます
人の心はそうやってできていますので、そういった変化が起こることは決して悪いこと
ではありません。
しかし、その振り幅が大きすぎると問題が
生じます。
自分で自分の気持ちがコントロールできな
くなり、日常生活に支障をきたしてしまいま
す。セロトニン神経は、そういった状態にな
らないよう心のバランスを保ってくれる作用
があります。自律神経と同様、セロトニン神経はちょうどいいバランスをとってくれる効
果があるのです。このようにして、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンがバラン
スを取り合っています。これは重要な点です。
とくに、セロトニン不足は、慢性頭痛とくに緊張型頭痛の発症要因となってきます。
ミトコンドリア働きが悪いと、セロトニン神経の働きを悪化させます
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ミトコンドリア働きが悪いと、脳の神経細胞の場合、「セロトニン神経」が選択的に「ミ
トコンドリアの働き」の影響を受けやすく、セロトニンを産生しにくく、セロトニンの合
成やその合成のための酵素も充分な量を生成できなくなってしまいます。その結果、「脳内
セロトニン不足」が引き起こされてきます。
脳内セロトニンの低下は、
「衝動性、過敏性、こだわり、緊張」が強くあらわれ、視覚、
聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの五感すべてが過敏になり、わずかな刺激にも敏感に反応し
てしまい、さまざまな自覚症状を訴えるようになります。
この「脳内セロトニン低下」が「脳過敏」を引き起こす要因となっています。
“小麦、乳・乳製品、肉食に偏った食事”をとり続け、“運動不足”が重なれば益々「脳
内セロトニンが低下」することになります。さらに生活習慣の不規則・ストレス・生理周
期により「脳内セロトニンの低下」の要因が追加されて、「脳過敏」を増強させてきます。
このことは、これから述べていきます。
片頭痛の場合、生まれつき「ミトコンドリアの働き」が悪いため、同時にセロトニン神
経系の機能まで悪くしています。
脳内セロトニンと片頭痛
片頭痛発作の時はセロトニンと呼ばれる脳内物質が減少あるいは機能が低下することが
知られています。片頭痛発作の時に、セロトニン様作用をもつトリプタン製剤がよく効く
のは、機能低下状態に陥っているセロトニンをバックアップするためです。
また、片頭痛の共存症としてうつ病、パニック障害、不眠症、冷え性、睡眠時無呼吸症
候群、肥満、等々が挙げられますが、これらはいずれもセロトニンに関連したものです。
「脳内セロトニンの低下」により脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛みと感じる
アロディニア(異痛症)が、片頭痛発症後5年くらい経過して出現することがあります。
さらに、緊張型頭痛の場合にも、脳内セロトニン低下が関与しています。
このように慢性頭痛とセロトニンには密接な関係があります。
片頭痛とアロデイニア
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「脳内セロトニンの低下」により脳が過敏になり、本来は痛くない刺激を痛みと感じる
アロディニア(異痛症)が、あります。
片頭痛患者が示す症状の中には、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快、
髪を結んでいるのがつらい、くしやブラシが痛くて使えないといったものがありますが、
これらは頭部アロディニアと呼ばれています。さらに脳が過敏になると、頭部だけではな
く、手足のしびれや腕時計、ベルトが不快になることもあり、これらは頭蓋外アロディニ
アに分類されます。
日本では片頭痛の患者さんの 60 ~ 80%ぐらいが、アロディニアを伴うといわれていま
すが、発症 5 年以上たたないと、アロディニアは出てこないことが多いようです。
頭部アロディニア
顔に風が当たると痛い
髪の毛がピリピリする
髪の毛を結んでいるのが辛い
ブラシやくしが痛くて使えない
眼鏡、イヤリングが不快
痛い側が枕に当たると寝ていられない
頭蓋外アロディニア
手足のしびれ感
ピリピリ感
腕時計が不快
ベルトがきつい
布団や毛布が体に触れると不快
顔の知覚を脳に伝える三叉神経が片頭痛によって刺激されると、顔や頭皮など頭部の末
梢が過敏に知覚して頭部アロディニアが起こります。この末梢感作を通過して、片頭痛の
情報が視床(中枢神経)に到達すると、感覚神経の痛覚需要の領域が拡大し、頭痛側と反
- 136 -
対側の上肢を中心とした違和感が生じてきます。これが頭蓋外アロディニアです。
片頭痛患者の約7割に認められるというアロディニアですが、アロディニアが形成され
ると、トリプタン製剤は効きにくくなると言われています。
Burstein による報告では、アロディニアの有無でトリプタン服薬2時間後の頭痛消失率
を比べたところ、アロディニアがない患者では 93 %と極めて高い頭痛消失率が認められま
した。一方で、アロディニアのある患者の頭痛消失率は 15 %であり、顕著な差が認められ
ました。
片頭痛発症 20 分以内にはアロディニアの出現はないとされているため、アロディニア発
現前の早期の段階でトリプタン製剤を服用することが勧められます。アロディニアがある
患者においては、服薬タイミングが重要であるされています。
このアロディニア症(異痛症)は、「脳内セロトニンが減少している」ため”痛みを抑制
することが出来ず”に容易に痛みが出現しやすくなるということです。
逆に考えれば、アロデイニアがあるということは「脳内セロトニン低下」を意味します。
こういったことから、アロデイニアが出現してくる以前の段階で対処しなくてはなりま
せん。このように先手、先手と対処しなくてはならないということです。
ということは片頭痛は、あくまでも予防すべき頭痛であるということです。
「脳内セロトニンを増やす」ための6つのポイントとしては・・
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(1.)早寝早起きの規則的な生活を心がける
(2.)太陽の光を浴びる
(3.)リズミカルな運動をする
(4.)食事をする際に、よく噛む
(5.)グルーミングという「人とのふれあい」
(6.)食事によって増やす
以上のような「セロトニン生活」が有田秀穂先生によって提唱されますが、この具体的
なことは後ほど述べることにします。
「セロトニン生活」の効果が現れるまでは最低3カ月は必要です
こうした「セロトニン生活」の効果が現れるまでは最低3カ月は必要です。決して焦ら
ずに行うことが大切で、多くの方々はその効果が出現するまで諦めているのが実情です。
セロトニン神経は各細胞のセロトニン受容体に向けてセロトニンを送るのですが、
自分自身に対してもセロトニンを分泌しています。脳の神経系細胞は末端から軸索と
いうケーブルを使って他の神経細胞と繋がっており、データの伝達を行います。この
軸索を通して戻ってきたセロトニンを受け取るのがセロトニンの自己受容体で、受容
体の数が多いとセロトニンの放出を抑えようとする働きがあるのです。
もう少し、詳しく言えば、セロトニン神経にはオートレセプター(5-HT1A 自己受
容体)という機構が備わっています。セロトニン神経が興奮すると、オートレセプタ
ーを介して自己にネガティブフィードバックをかけ、増えた活動を抑えてしまうとい
う、やっかいな特性です。このため、簡単にはセロトニン神経の活動レベルは高く維
持し続けられません。
このオートレセプターの数が多いと、普段からセロトニン神経は抑えられる傾向に
あり、逆に、オートレセプターが少なければ、セロトニン神経の活動レベルが高く維
持されることになります。したがって、オートレセプターの数を調整することが、セ
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ロトニン神経を弱めたり、鍛えたりする時に、大切なポイントとなります。オートレ
セプターは一種の蛋白ですから、遺伝子の発現を変えるような持続的な変化が加わり
続ければよいわけです。
どうするのかといえば、オートレセプターを絶えず繰り返し刺激し続けてやると、
やがてオートレセプターの数が適応性に
減少していきます。オートレセプターを
形成する遺伝子の発現にオフの調整がか
かった結果と考えられます。このプロセ
スが完成するには、数週間から数ヶ月を
要します。この点は重要なことです。
このことは、坐禅が一朝一夕には極め
られないこと、また、やり続けなければならないという経験則、すなわち「只管打坐」
に対応します。毎日坐禅を繰り返し実践すれば、セロトニン神経が繰り返し賦活され、
オートレセプターも繰り返し刺激を受け続けます。数週間もすると、オートレセプタ
ーの数が減少して、セロトニン神経の活動レベルが普段から高いレベルに安定すると
いうことになります。坐禅はただひたすら継続してこそ意味がある、すなわち、道元
のいう「只管打坐」ということは、セロトニン神経の自己抑制回路によって説明可能
なことを示しています。
それでは、坐禅の呼吸法と関連づけて、セロトニン自己受容体の増減を考えてみま
しょう。坐禅の呼吸法がセロトニン神経を活性化することは、これまで証明されて来
ました。
この活性化を「絶えず」継続していると、セロトニン自己受容体が繰り返し刺激さ
れることになります。その結果、自己受容体を発現させる遺伝子にフィードバック制
御がかかり、オフの側にスイッチされます。やがて、セロトニン自己受容体の数が減
少し、それは、自己抑制機能の減少につながります。このような構造的な変化の結果、
セロトニン神経の活動レベルが恒常的に高く維持されることになります。
このことを道元は「只管打坐」の仏法として我々に伝えています。ただひたすら坐
禅を毎日継続すること、それだけで良いし、それ以外に最良の道はない、と説いてい
ます。また、坐禅をやめれば、元の木阿弥ということになってしまいます。この経験
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的に得られた真理は、セロトニン自己受容体の遺伝子によるオンオフ制御ときわめて
よく対応します。只管打坐はセロトニン自己受容体の遺伝子をオフにし、自己受容体
の数を減少させ、結果として、セロトニン神経の活動レベルを恒常的に高いレベルに
維持させることになります。これが、道元の「只管打坐の仏法」に関する神経科学的
な解釈です。
毎日30分が基本
絶えずセロトニン自己受容体を刺激し続けるということは、二十四時間連続して、
という意味では決してありません。三十分間のリズム運動を毎日、継続することが必
要で、かつそれで十分なのです。継続して刺激し続ければ、必ず、自己受容体にフィ
ードバックがかかります。それは、興奮を抑制に逆転させますから、むしろ、期待し
た効果とは反対になってしまう可能性があります。やりすぎは禁物。頑張りすぎは疲
労によるマイナス効果も招きます。三十分という時間は、呼吸法時の脳波測定から、
セロトニン神経を活性化する最適の時間と判定されました。それ以上では、逆に自己
抑制のフィードバックが出現して、反対
の効果になると考えられます。したがっ
て、早朝にお線香一本分が燃え尽きる時
間、坐禅をすれば十分なのです。ただし、
それを毎日繰り返すことが、セロトニン
神経をきたえるのには不可欠です。そし
て、約 100 日継続すれば、やがてセロト
ニン神経に構造的な変化が現れ、恒常的
に高い活動レベルが維持されるようにな
ります。
このように、「セロトニン神経を活性
化」させる方法は「座禅」だけではあり
ません。今回は、座禅という方法で説明しました。毎日”セロトニン活性の行為”を継
続すると、セロトニンの分泌量は徐々に増えていきます。具体的なイメージとして、
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初めは「3」であったのが、やがて「5」や「7」まで増えて維持できるようになります。
それには 3 ヶ月ほどの継続が必要となります。ですから、継続しないと意味がありま
せん。
以上まとめますと、セロトニンの合成量はオートレセプターといって、ある範囲内にセ
ロトニン量を治める体の仕組みがあり、たとえ急激にトリプトファン量が増えたからとい
っても直ぐにセロトニンの合成量が増えるのではありません。
ですから、トリプトファンのサプリメントを摂ったからといっても、また、血液脳関門
を通過できるセロトニンの中間体(セロトニンを増やすサプリメントとして市販されてい
る)を摂ったからといっても、直ぐに脳内セロトニンが増加するということではありませ
ん。むしろ、一時的にはオートレセプターの逆作用によってセロトニンの合成量が減少し
てしまうことになります。
少し、わかりにくいお話かもしれませんが、要は、脳内セロトニンを増やすというサプ
リメントなどを飲んだからといって、短期間、且つ容易に脳内セロトニンの合成量を増や
すことはできないということなのです。
焦らないことが肝要とされています。根気強く行っていきましょう。
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「脳内セロトニンを低下させる要因
(1)「セロトニン神経系」はどうして衰えてしまうのでしょうか?
「セロトニン神経」には、歩行、呼吸、咀嚼などの基本的なリズム運動によって活性化
されるという特性があります。毎日の生活の中で、こうしたリズム運動を自然に繰り返し
ていれば、セロトニン神経は正常レベルに保たれます。したがって、こうした運動を極端
に抑えた生活を継続することは、セロ
トニン神経の減弱を招きます。例えば
以下のような生活習慣には要注意です。
日光を浴びることが少ない
朝は出かける直前まで寝ている
昼夜逆転生活になっている
固いものをあまり食べない
階段を使わずエレベーターやエスカレーターを使う
30 分以上続けて歩くことができない
運動不足である
デスクワークが多い
朝食をとらない
ごはんやパンなどの炭水化物をあまり食べない
魚より肉をよく食べる
ダイエットのため食事制限をしている
また、加齢による身体機能の衰えも運動不足に繋がります。セロトニン神経の活性には
太陽の光も影響しますから、インドア指向の最近の子供たちの生活、とくに連日、息をつ
めてゲームをやり続けるという習慣などは、セロトニン神経が減弱しやすくなるのです。
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(2)ストレスによる影響
慢性頭痛の方々は、特に女性の場合、家族・夫
婦間および職場でのストレスによって、頭痛の頻
度や程度が増悪されることが日常茶飯事に経験さ
れます。それでは、どうしてなのでしょうか?
この点は、第4章
その1で「(1)ストレス
と脳内セロトニン」で述べました。
こちらをご覧下さい。
慢性的にストレスに晒されることによって、脳
内セロトニン不足を来すことによって、痛みを制御ができなくなって、頭痛を感じやすく
なります。
(3)疲れなどで、体に乳酸が溜まったとき
乳酸とセロトニン
疲労状態の時、体内には乳酸が蓄積しています。セロトニンの分泌を妨げるのが疲労で
す。乳酸はセロトニンの分泌を抑制します。
セロトニン神経が神経末端からセロトニンを
シプナス間隔に放出しますと、それは標的細胞
のセロトニン受容体に作用して、興奮や抑制を
起こします。余ったセロトニンは、再利用ため
に、放出側の神経端末に再取り込みされます。
その運搬役がセロトニン・トランスポーターで
す。
この運搬役の働きは、乳酸によって促進されます。再利用のためにせっせとリサイクル
機能を高めてくれるわけで、このこと自体はけっして悪いことではありません。ところが、
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再取り込みだけが、必要量を上回るほど進んでしまうと問題です。セロトニン放出が標的
細胞に十分な影響を与えることなく、直ちにもとの神経端末
に戻ってしまいます。セロトニン神経のインパルス発射およ
び放出はたとえ正常でも、再取り込みが進みすぎるために、
標的細胞には十分に届かないことになります。
これでは、セロトニンが貯蔵庫に蓄えられるだけで、有効
に活用されないことになります。セロトニンのデフレ状態で
す。
活発化したトランスポーターは必要以上にセロトニンを取
り込んでしまい受容体と結びつく量を減らしてしまうのでセ
ロトニンは役割を果たすことができず、身体はセロトニン不足と同じ状態になってしまい
ます。
心身の疲労により生産された乳酸が血液に蓄積すると、脳をはじめ身体の機能が低下し
てきます。
こうしたことから、「疲労はセロトニン神経の大敵」とされています。
<乳酸と疲労>
疲労を感じるのは、脳の特定の神経回路が関係しています。運動したり激しく活動する
と、筋肉中に乳酸という疲労物質が溜まり、疲労物質が体内に増えた状態であると、疲れ
や倦怠感の原因となります。疲労による倦怠感は、このような体内に蓄積する乳酸の影響
である事が多く、乳酸の量を減らす事で疲れをとる事ができ、倦怠感も無くなります。乳
酸は、入浴によって血液の循環を促すことで、血中の乳酸が老廃物として回収されて、浄
化されるためとされています。
筋肉や血中に乳酸が溜まるほかに、セロトニンという物質も疲れによる倦怠感や、だる
さに影響するとされています。激しい運動をすると、乳酸が増加するのに対し、セロトニ
ンが減少することが解明されています。セロトニンは、自律神経の交感神経と副交感神経
の働きを制御していると考えられており、セロトニンは減少する事で2つの自律神経がバ
ランスが崩れます。この為、交感神経が活性化していると、緊張状態が続く事になります。
緊張した状態が続いて副交感神経に切り替わりにくくなると疲労して倦怠感が引き起こ
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され、身体はだるくなって、冷えや肩こり、また腰痛や頭痛といった症状を招きます。疲
労とは、必ずしも肉体的なものでは無く、頭脳労働や精神的な心労も含むと考えます。し
たがって、運動していないのに体がだるい時は乳酸と全く無関係とはいえません。
「乳酸」は疲労物質 !?
乳酸は、実は疲労を引き起こす物質ではなく、むしろ疲労を緩和させるために現れる物
質だということが分かっています。確かに激しい運動や重労働の後に体がへとへとになり、
腕を上げたり歩いたりすることができなかったりしたとき、筋肉中には乳酸が溜まってい
るのは事実です。
筋肉を動かすとき、人の身体は酸素を燃やすことでエネルギーを作り出し、そのエネル
ギーを使います。しかし、その運動が激しすぎると体への酸素の供給が追い付かなくなり
ます。「乳酸が溜まった筋肉はうまく収縮できないため痛みや炎症が起こる」と、長い間誤
解されていたのです。無酸素運動を続けると血液中に乳酸が増えるのは事実ですが、この
乳酸のせいで疲労するわけではありません。むしろ乳酸は、“細胞の疲労を保護する”働き
があり、疲労を回復させるためのエネルギーとして使われているのです。
実際の疲労の原因は、「脳内セロトニン」の不足と、「血中還元型コエンザイム Q10」の
不足なのです。
実は乳酸は疲労回復する
疲労は乳酸の蓄積によるものと言われていますが、実は今では乳酸はむしろ筋肉の疲労
を抑えて脳神経活動のエネルギー源となる疲労回
復物質だという見解があります。
冤罪の乳酸に代わり、疲労の真犯人と見なされ
ているのは「活性酸素」です。ヒトは呼吸し酸素
を炭酸ガスに変える経路で、食事由来の糖からエ
ネルギーを生み出しています。
その過程で毒性
の強い活性酸素が産生されますが、普通は抗酸化
システムが速やかに始末しますので問題にはなりません。ところが、身体活動や脳の酷使
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が過ぎますと大量の活性酸素を処理し切れなくなり、細胞や神経細胞がキズつきます。そ
の結果、エネルギー代謝や中枢神経系に異常が生じます。さらに細胞の損傷が引き金とな
り、脳に疲労を伝える「TGFβ」という物質が増加します。気分や判断力に関係する神
経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンの代謝に異常が生じ、脳が「疲れた」と感じ
るのではないか、と推測されています。
疲れの原因物質
TGF-β
肩こりは、筋肉がこわばっている状態を言いますが、この状態の時は血管が圧迫されて
いる状態で、すなわち血行が悪くなっています。血行が悪いと、酸素不足を起こしていま
す。この時、筋繊維の細胞は、グリコーゲンからエネルギーを作る時に通常なら、2%の
活性酸素を発生するところ、酸素不足の状態だと5~10%もの活性酸素を発生します。
この為、細胞がダメージを受けやすく、細胞修復のためにTGFーβなどの免疫物質が
出されます。この為、疲れを感じます。
疲れの原因物質は、TGF―βなどの免疫物質
筋繊維中の細胞では、グリコーゲンがエネルギーに変えられ、その過程で酸素を作り出
しています。しかしそれと同時に活性酸素も作られ、これが細胞にダメージを与えます。
このダメージを修復するために免疫細胞は、多くの免疫細胞を集める合図を出します。
この合図がTGF-βなどの免疫物質で、この合図によって免疫細胞が集まり傷ついた細
胞を修復します。TGF-βなどの免疫物質は、傷を修復している間中出続けます。
しかし、TGF-βなどの免疫物質が疲れの原因物質と言われるのは、合図をするだけで
なく、脳に影響するところにあります。特に自律神経中枢に影響を及ぼし機能を低下させ
ます。自律神経の機能は、血圧や体温、睡眠、日内リズムを調節する働きをしています。
このため、TGF-βなどの影響を受けるとこれらの副交感神経系のリズムが崩れ体調
の異常が起こります。
脳の自律神経中枢へTGF-βなどが送られる経路は、血流によってあるいは、末梢神
経の神経伝達により脳で感知されると考えられています。TGF-βは、代謝によって消
えるので、血行を良くすることが疲れを解消することにもなります。
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疲労の見張り番とセロトニンの効果
脳には、疲れの見張り番がいて、丁度目の奥、眉間の奥辺りの脳幹にあります。これが
疲れを感知すると、脳幹に脳を休ませるよう命令します。脳幹の縫線核は脳のあちこちに
セロトニンを出し、脳をリフレッシュさせます。
しかし、セロトニンは合成量に限界があるため、やがて疲れを感じてもセロトニンが出
なくなります。疲れていても休ませることができずに脳が働き通しになり疲労が解消でき
ません。
また、TGF-βは、セロトニンを阻害する物質でもあります。疲労状態が続けば、脳
をリフレッシュするセロトニンも阻害され、余計に疲労解消ができないことになります。
(4)基礎代謝が低いことや、生活のリズムが乱れ自律神経が乱れること
一般的に朝起きると筋肉や神経の働きを高めるために体温は高くなり、夜に向けて体温
は上昇し、就寝前にもっとも高くなって就寝後に体温は低下を始めます。この変化は、セ
ロトニンの分泌量変化とほぼ一致しています。
縫線核はセロトニンの産生とともに、血液の温度センサーとしての働きがあります。
セロトニンが少ないと血液の温度を感知しても体温を調整する温熱中枢に充分な刺激を
与えられず、温熱中枢を活性化できなくなります。その
ため、セロトニンが少ない人は1日中体温が低いままで
冷え性になりやすく、体の機能をいつまでも活性化でき
ないことになります。
また、セロトニンが不足すると食後の満足感を得るこ
とができませんので、常に食欲が旺盛な状態となり、食
べることにブレーキが利かなくなります。さらに血糖の
エネルギーヘの代謝までもが阻害されますから、肥満や
糖尿病になりやすくなるのです。
逆に、脳内のセロトニンが充分にあれば、食後に満足
感や充実感を得られますから、肥満は解消していくことになります。さらに、セロトニン
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が増すことによって各組織の機能が活発になるため、基礎代謝が上がり、脂肪を効率よく
燃焼させることができるようになります。
一見すると痩せているように見えても、セロトニンが不足していると、内臓脂肪がたっ
ぷりついてしまうことが起こり得ます。
慢性的にセロトニンが不足すると、基礎代謝が低下して、脂肪が蓄積しやすくなるとも
言われています。
これはセロトニン不足が体温低下の原因である事と関連しています。
体温が 1 ℃下がると基礎代謝は 12 %減少するからです。
慢性的なストレスを受けていると、ストレスホルモンのコルチゾール が慢性的に高い状
態になってしまい、セロトニン不足を招いたり、 数々の悪影響を通して脂肪蓄積に結びつ
いてしまいます。
基礎代謝を上げたいのならば、自律神経の乱れに気をつけましょう!
自律神経が乱れて、朝方に副交感神経が活発なままだと体温が上がりません。体温が上
がらなければ基礎代謝が下がりますので、自律神経を整えて基礎代謝を上げる事を心掛け
ましょう!
近年の研究で「なぜ太るのか?なぜ痩せられないのか?」という問題に対して、脳の問
題が大きく関わっている事が分かってきました。
その鍵となるのが「セロトニン」という物質です。セロトニンは、交感神経のバランス
コントロールする神経伝達物質です。
セロトニンは、映画を観て感動したり、恋人が出来たりして満ち足りた気分になると、
脳内に分泌される神経伝達物質(ホルモン)で、精神を安定させて脳を元気にする働きがあ
ります。
ダイエットをするにあたって、基礎代謝を下げないようにする為には、寝起きの悪さを
改善して基礎代謝を上げる事を心がける事が必要になります。
何故?寝起きが悪いのでしょうか?
結論から言いますと、自律神経が関係しています。寝起きが悪いという方は自律神経が
乱れている可能性があります。
自律神経とは、自分の意思ではコントロール出来ない自動的に働く神経の事を言います。
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そして自律神経は更に2種類の神経に分類されます。
1 つめは活動を司る交感神経、2 つめは休息を司る副交感神経です。
睡眠は副交感神経が密接に関係しています。もし、睡眠を心掛けようと意思を働かせて
も、眠れないのは休息を司る副交感神経が上手く働いていないからなのです。
自律神経とは交感神経と副交感神経がバランスよく入れ替わる事で、人間の身体の恒常
性を保っています。
そして、なんらかの要因でこの自律神経に乱れが生じると交感神経と副交感神経がバラ
ンスよく入れ替わる事が出来なくなります。
眠りたくても、眠れないのは交感神経が副交感神経と上手く入れ替わっていないからで
す。そして、寝起きが悪いのは副交感神経と交感神経が上手く切り替わってはいないから
です。
副交感神経が働いている時は、交感神経が働いている時よりも体温が下がります。
体温が低ければ、基礎代謝も下がりますので、起床したら体温を上げなければなりませ
ん。
その為にも、自律神経の乱れを防ぐ事が必要になります。
基礎代謝を上げる為には、朝方の生活を心掛けましょう!
自律神経のバランスをコントロールしているのは、セロトニンという神経伝達物質が深
く関わっています。このセロトニンが少なくなると自律神経のバランスが崩れる要因にな
ります。
セロトニン不足を防ぐ事が基礎代謝を下げないようにする事にも関係してきます。セロ
トニン不足を防ぐ為には朝日を浴びる事が効果的です。
また、朝日を浴びる事によって、メラトニンというホルモンの分泌をストップさせます。
このメラトニンというホルモンは「天然の睡眠薬」と呼ばれています。
朝日を浴びる事によって、メラトニンの分泌をストップさせて、その時から約 14 時間後
に再分泌され、分泌開始から 2 時間後がピークになります。
ですので、基礎代謝を下げない為にする事として、自律神経を乱れを防ぐセロトニン不
足を避ける為に朝日を浴びる事。それを効率よく行う為にもメラトニンの分泌を正常に働
かせる事が大切になります。
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以上を心掛ける事によって、自律神経がバランスよく働き、寝起きでもスグに交感神経
が活発化して、体温が上がります。
体温が上がれば、基礎代謝も上ります。
(5)生理周期との関連
女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は、
月経周期でその分泌量は大きく変わります。
特にエストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、それに伴って神経伝達物質であるセロト
ニンも急激に減ります。
その時に頭の中の血管が拡張することで片頭痛が起こると考えられています。
このエストロゲンが減少するのが排卵日や生理の初日前後です。
つまり排卵日や生理の初日前後にはエストロゲンが減少するためにセロトニンも減少→
頭の中の血管が拡張して片頭痛が起こりやすいということなのです。
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以上のように、だいたいこうした時期は、女性の場合、初潮を迎える 13 歳頃に一致しま
す。こうした年代に女性の場合は、片頭痛を発症してきます。
女性は健常男性より 約 52% 脳内セロトニンを産生する能力が低く、またセロトニンの
前駆物質であるトリプトファンが欠乏すると、女性では脳内セロトニン合成が男性の 4 倍
減少する、と言われています。
エストロゲンが低下することでセロトニン神経の機能が低下し、脳内セロトニン濃度が
低下すると考えられています。
(6)食事に関連して
1.食事はバランスが大事で、偏食は「脳内セロトニン低下」の原因になります
セロトニンを増やすためは、セロトニン合成にかかわる酵素、補酵素やビタミンB3(ナ
イアシン)、ビタミンB6、およびマグネシウム、亜鉛の不足を起こさないことが大切です。
トリプトファンはセロトニンの原料であると同時に、ナイアシンの原料でもあり、ナイ
アシンの合成が優先されます。
そのため、ナイアシンが不足していますと、折角、脳内に取り込まれたトリプトファン
もナイアシンの合成に使われてしまい、セロトニンの合成へはまわってきません。
ナイアシンは魚介類や肉類などの食品に含まれており、腸内細菌により産生もされます
ので、適量の魚介類・肉類を摂食し、腸内細菌を健全に保っている限りにおいて、ナイア
シンの摂取不足を起こすことはありません。
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この条件が整った状態で、セロトニンはトリプトファンを原料として、ビタミンB6、
亜鉛、マグネシウムなどを補酵素として合成されます。
ビタミンB6は、ニンニク、唐辛子、マグロ、カツオ、レバーなどに多く含まれています。
亜鉛の多い食品は牡蠣が有名ですが、牛肉にも多く含まれます。
マグネシウムは非常に不足しやすいミネラルですので、ニガリやマグネシウム水溶液か
ら日常的に摂るのが好ましいでしょう。
これらのビタミン剤やミネラルはサプリメントである栄養素を多く摂ったからといって
効果が上がるというものではなく、全ての栄養素の不足を起こさないというのが改善のた
めの基本となります。
一つでも成分が不足しますと、一連の反応は進まなくなります。
特に偏食も無く、平均的な食事をしていても、マグネシウムは最も不足しやすい栄養素
です。
ビタミンB6
食品・腸内細菌
↓
トリプトファン
(60個)
⇒
⇒
⇒
↓
⇒
⇒
ビタミンB3(ナイアシン)
↓
優先
(1個)
↓
→
→
→
→
セロトニン
↑
ビタミンB6
亜鉛
マグネシウム
2.肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎは、「脳内セロトニン低下」の原因
「セロトニンを増やすためには、トリプトファンをたくさん含んでる食べものをとればO
K」と思われている人も多いと思われます。
セロトニンは「トリプトファン」というアミノ酸を原料としてカラダのなかでつくられ
ます。腸や血液に含まれる大部分のセロトニンは、脳に入っていきません。つまり、単純
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にトリプトファンが多い食べもの、たとえば「牛レバーやバナナをせっせと食べよう」な
んて本や雑誌を見かけることがありますが、実際にそうしたからといって脳内セロトニン
が単純に増えるわけではありません
腸内や血液中のセロトニンは脳に入っていきませんが、トリプトファンはちゃんと脳に
入っていくことができます。ですから、トリプトファンをたくさん取り込むことができれ
ば、脳内セロトニンも充分につくることが可能になります。
しかし、トリプトファンが通る場所に問題があってここは、ほかの必須アミノ酸も通っ
ていく場所でもあるのです。この必須アミノ酸というのは、「フェニルアラニン」とか「口
イシン」というものですが、食品によってはトリプトファンよりもこれらの必須アミノ酸
のほうが多く含まれるものがあるのです。これらの必須アミノ酸がトリプトファンの邪魔
をするため、トリプトファンが通過しづらくなってしまうのです。その代表的な食べもの
が、肉類や乳・乳製品なのです。……。
つまり、牛レバーにはトリプトファンよりも
ほかの必須アミノ酸が多いため、実際には思っ
たほどトリプトファンがとれないのです。
私たちのカラダの筋肉や骨などはタンパク質
で出来ていて、このタンパク質を構成している
のは 20 種類のアミノ酸です。そのうち、9 種類
は必須アミノ酸と呼ばれる体内では合成できないアミノ酸。その必須アミノ酸の中でもバ
リン、ロイシン、イソロシンは総称して BCAA と呼ばれる持久系のアミノ酸で、大切な栄
養素です。
この持久系アミノ酸 BCAA は、まぐろの赤身、肉や卵などの食品に含まれているほか、最
高の栄養といわれる母乳にも含まれています。
このように BCAA が多い環境では脳への取り込みが阻害され、脳内セロトニンがあま
り増えないことがありますので注意が必要です。
BACC は動物性蛋白質に含まれており、食品では牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉などが挙げ
られます。食べ物はバランスが大事なので、極端に摂取を制限すると逆に体調不良の原因
になるので注意です。牛乳、鶏卵、マグロ、牛肉の摂りすぎは逆に「脳内セロトニン」不
足を招くことに繋がりますので、注意が必要です。
- 153 -
(7)運動不足
この脳内セロトニンの低下を来す要因として、運動不足が挙げられています。
「脳内セロトニン不足」の要因としての「運動不足」のタイプ
固いものをあまり食べない
階段を使わずエレベーターやエスカレーターを使う
30 分以上続けて歩くことができない
運動不足である
デスクワークが多い
セロトニン不足の要因の一つである運動不足タイプは、上記のようなものが挙げられます。
現代人にとって運動不足は大きな問題となっており、セロトニン不足の大きな一因にもな
っています。
一定のリズムで同じ動作を繰り返す「リズム運動」がセロトニン神経を活性化させます。
リズム運動をすると、セロトニン神経が活性化し脳内のセロトニンが増えます。
代表的なリズム運動としては「歩行」「咀嚼(そしゃく)」「呼吸」が挙げられます。
しっかり歩いて、しっかり噛んで食べて、しっかり呼吸をする、基本的なことですが現
代生活ではおろそかになりがちかと思います。
デスクワークが中心の生活の人は、運動
する時間を設ける、なるべくエレベーター
やエスカレーターではなく階段を使う、な
ど工夫して生活の中にリズム運動を積極的
に取り入れて、脳内のセロトニンを増やし
ましょう。
激しい運動をする必要はありません。
- 154 -
その5
体の歪み(ストレートネック)の関与
「体の歪み(ストレートネック)」は、日常生活を送る上で、前屈みの姿勢をとる状態が
極めて多いことに原因があり、これが「肩こり」につながってきます。皆さんが、最初に
頭痛を自覚された際に問題となるのは、「体の歪み(ストレートネック)」に至る以前の段
階で長時間にわたって”前屈みの姿勢をとる状態”にあります。これが、慢性頭痛発症の
起点ともなるものであり、極めて重要な位置を占めています。
すべてはS字カーブがあってこそ
人体の中心には、頭蓋骨から骨盤まで、脊椎が通っています。
脊椎は7個の頸椎、12 個の胸椎、5個の腰椎で構成されています。
脊椎がS字状にゆるやかに湾曲しているのがお分かり頂けると思
います。このS字カーブは、荷重負担や衝撃をうまく分散させる
ようにできています。このカーブも一種の免震システムのような
ものです。1カ所に強い力が加わっても、それをしなやかに受け
止めて、衝撃や負担をうまく緩和させることができる非常に合理
的なデザインなのです。このゆるやかなカーブがあってこそ、私
たちは重い頭を乗せながらも、直立して活発な活動をしたり、さ
まざまな運動をしたりすることができるわけです。では、もしも、
このS字カーブが崩れたり、なくなってしまったりしたら、どう
なるのでしょうか?
そうなると、荷重負担を分散させることができないため、約6
キロもある頭の重みがまともに脊椎にかかってきてしまいます。
そして、脊椎のまわりの筋肉などの組織にも大きな負担がかかる
ことになります。とくに脊柱起立筋という、頭や体を倒したり起
こしたりする筋肉が緊張しっぱなしになり、首、肩、腰などにこ
りや痛みが生じることになるのです。なかでも、頸椎のカーブが
失われると、首や肩のこりや”頭痛”へと直結します。
- 155 -
6キロの頭を支える首の筋肉が疲労すると
ところで、みなさんは自分の「頭」がどれくらいの重さなのか、ご存じですか?
正解は6キログラムほどです。2リットル入りのペットボトルなら、約3本分に相当し
ます。これは、買い物カゴや袋に入れて手に持っても、かなりズシッとくる重さですよね。
このズシッとくる重いかたまりを「首」はいつも支えているわけです。
しかし、いつも直立姿勢で首の上にのってくれていればいいのですが、そうとは限りま
せん。前かがみやうつむきの姿勢をとったとき、首の後ろ側の筋肉にかかる荷重負担は、
直立姿勢をとっているときに比べ、なんと約3倍になると言われています。
そこで、みなさん、胸に手を当てて考えてみて下さい。
前かがみやうつむき姿勢をとっている時間が、いかに多いかということを。
いかがでしょう。今は、1日中パソコンの前に座って仕事を仕事をしているような人も
決して珍しくはありませんし、仕事を離れても、携帯電話・スマホやゲームなどの画面に
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釘付けになっている人がたくさんいらっしゃいます。
要するに、日々の生活において、前かがみやうつむきの姿勢をとっている時間が非常に
長くなったお陰で、首の筋肉がコチコチにこり固まってしまっている人がとても増えてき
ているのです。
6キロもある頭を日々支え続けているうえ、3倍もの負担がかかる姿勢を何時間も続け
られたら、首としてもたまったものではないでしょう。そんな習慣を毎日続けていたら、
首の筋肉が悲鳴を上げるのも当たり前です。首こりや肩こりに悩む人が増えるはずです。
このように首の筋肉に負担をかける習慣を続けていると、たび重なる筋肉の緊張から次
第に頸椎のカーブが失われ、
「ストレートネック」と呼ばれる状態に陥りやすくなるのです。
この「ストレートネック」になると、こりや頭痛がいっそうひどくなりますし、首・肩周
囲の骨や関節にもいろいろな悪影響が出やすくなります。そして、頸椎症に移行しやすく
なってしまうのです。緊張型頭痛をはじめとする慢性頭痛を起こす根源となってきます。
そして、前屈みで仕事をされておられる方は、毎日、引き起こされた「筋肉疲労」はそ
の日のうちに是正・改善させていくことが極めて重要です。絶対に日々蓄積されていく「筋
肉疲労」をため込まないことです。この帳尻が合わないと、いつの間にか、ストレートネ
ックを形成させてしまい、頸部筋肉からの刺激を取り除くことができません。
このためには、体操・ストレッチ・エクササイズを日常生活に取り入れ、習慣化させて
下さい。このようなことは自分でする必要があります。誰もしてくれません。
いずれにしても、ストレートネックがどのようにして形成されるかをまず理解して、日
常生活を送る際に”意識して”注意することが重要になってきます。
首と腰はつながって動いている
脊椎と骨盤とは非常に深い関係で結ばれています。
仙腸関節を触りながら頭を動かすと、仙腸関節も動い
ているのがわかります。つまり、脊椎と骨盤にある仙
腸関節とがコンビを組んで、お互いに連動しながら、
頭や体の重みを支えているのです。
このコンビは運命共同体のようなものです。すなわち、仙腸関節に異常があれば頸椎や
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腰椎にも異常が出ますし、頸椎や腰椎に異常があれば、仙腸関節にも異常が生じます。で
すから、首や肩の不調の原因に仙腸関節が関係している場合は大変多いのです。また、仙
腸関節の異常から、首痛と腰痛の両方に悩まされているという方も多くおられます。
仙腸関節の機能異常を解消する決めては、やはり仙腸関節ストレッチです。
仙腸関節への関節内包矯
正は、仙骨の位置を調整す
ることによって行います。
この仙骨は、脊椎を一番
下で支えている土台のよう
なものですから、仙腸関節
を開いて、これを的確に動
かすことにより、腰椎や頸
椎の微妙なバランスの歪み
を正すことができるのです。
言ってみれば、仙腸関節
を動かすことによって、腰
椎や頸椎を動かしているということです。仙腸関節に仙腸関節ストレッチを行うと、スト
レートネックの人も元のカーブのある状態に戻りやすくなりますし、頸椎症や頸椎椎間板
ヘルニアなど、椎間板の症状も解消させることができます。
なお、仙腸関節に対するケアは自分でもできます。
とにかく、この仙腸関節は、首から遠く離れていても、首に与える影響はとてつもなく
大きいのです。例えば、腰痛の治療目的で、仙腸関節ストレッチを行いますと、肩こりま
で解消する場合が多く経験されます。首と腰とはいつもつながって動いています。
どちらかのバランスの崩れは、必ずもう一方のバランスの崩れへとつながります。
それでは、ストレートネックとは
先程述べましたように、日々の生活において、前かがみやうつむきの姿勢をとっている時
間が非常に長くなり、このように首の筋肉に負担をかける習慣を続けていると、たび重な
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る筋肉の緊張から次第に頸椎のカーブが失われてきます。
そして、さらに日常生活を送る上で、・
◎ イスに座るとつい脚を組んでしまう
◎ ヒールの高いクツを長時間履いている
◎ 立っている時はたいていどちらかの足に体重を乗せている
◎ 横座りをする
◎ 立ち仕事や中腰の姿勢でいることが多い
◎ いつもどちらかを下にして横向きに寝ている
◎ または、うつ伏せになって寝ている
◎ 長時間座りっぱなしの仕事
◎ イスやソファーに浅く座ってしまう
◎ バックなどはいつも同じ方の肩にかける
◎ 重たいモノを持つ仕事をしている
◎ 赤ちゃんをダッコしていることが多いなど
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このような体の使い方をしていると、知らず知らずのうちに仙腸関節がズレ、骨盤の歪
みから脊椎( 背骨)の歪みが生じてきます。
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仙腸関節のズレは、脊柱に影響が及びひいては頸椎にまで及んで、ストレートネックを
最終的に引き起こしてきます。
このようにして、体の歪み(ストレートネック)が形成されてきます。
ストレートネックは、文字通り首の骨が真っ直ぐになっている状態ですが、カーブを描
いているのが正常ですので、真っ直ぐであることは、「歪んでいる」ということです。
頚椎(首の骨)は、少し前にカーブしているのが正常なのですが、何らかの原因により、
まっすぐになってしまう状態をストレートネックといいます。また、進行すると、逆に反
る 頚椎後弯変形(後方ネック) になる場合もあります。
重い頭を細い首で支えるには、適度なカーブにより重心をとらえる必要があります。頚
椎のカーブは、衝撃を吸収する役割もあり、とても大切なのです。
そのカーブが失われてしまうと、頭を首の筋肉だけで
支えることになり、慢性的な肩こり・首のハリが起こり、
いろいろな症状が現れます。
ストレートネックは、パソコン作業のようなデスクワ
ークの人に多く発症しており、座っている時の姿勢が大
きく影響していると考えられます。
また、ゲームや勉強を長時間続ける子供たちにもストレートネックが増えています。
左の頚椎は正常なカー
ブを描き、頭部は頚椎で
しっかり支えられていま
す。
右のストレートネックを
見ると正常なカーブは失
われ、頭は頚椎より前に
来ています。
ストレートネックの場合、頭部や重心線が背骨より前に来てしまう為に、重い頭(約4
~5kg)を首の筋肉で支えなければなりません。
ですので、慢性的に首や肩がこり、それらの筋肉の緊張から頭痛などのトラブルを引き
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起こします。
ストレートネックの方というのは、 いわばサスペンションの効かない車に乗っているの
と同じ状態です。
常に頭の重さは周囲の椎間板や筋肉や神経に過剰なストレスを与え続けていますので、
そういった期間が長期間続いてくると、結果的に頚椎ヘルニアや慢性的に繰り返す寝違え
や頚椎症の原因になってきてしまいます。頭痛の原因にもなってきます。
ストレートネックは全身の歪み
脊柱(背骨)全体を見て下さい。
正面からは
脊柱は頚椎・胸椎・腰椎・仙椎(仙骨)とい
う構成になっています。
頸椎(首)は、その脊柱の一部分です。
病院へ行くと、首だけをレントゲン撮影します。レントゲンの結果、首が本来のカーブ
でなくなっている(位置がずれている)とストレートネックと診断されます。
レントゲンは、骨や軟骨を診るには一番です。骨と骨のすき間を見ることや骨や軟骨の
変形は診れます。しかし、骨や軟骨には神経がありません。
レントゲンで写らないものは、関節包・ 骨膜・ 靭帯・ 筋肉・ 皮膚で、これらには、
神経があります。痛みの原因となるものは、レントゲンには写らないのです。
また、結果と原因は違います。頸椎(首)が真っ直ぐ(ストレートネック)になってし
まう原因は、身体のいろいろな部分が関係しているのです。
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ストレートネックの人は、100 %、身体の生理的湾曲(S字カーブ)が崩れています。
「からだ」全てが正常に機能する為には正常
な骨格でなければなりません。
骨格には筋肉が付いていますので、骨格の
位置のずれにより筋肉も正常に機能できなく
なります。
ストレートネックの人は、頸椎に歪みがあ
るので、胸鎖乳突筋や肩甲挙筋に影響します。
脊柱のS状湾曲の形成過程
生後、脊柱はC状のカーブを示しているだけです。それから3、4ヶ月に入り、寝返り
や首をもたげる動作を始めると、頚部は前方凸のカーブを示してきます。お座りができる
ころには、腰部にわずかながら前方凸のカーブができ始めます。生後1年後くらいして、
立ち上る練習を繰り返しているうちに、腰の前方凸カーブが完成され、S字状の脊柱カー
ブ、つまり人間特有の背骨(大黒柱)ができあがります。しかし、まだ完成された形では
ありません。
立ったり、歩いたり、人間としての動
きが繰り返されているうちに、股関節や
膝の関節も真っ直ぐになり、筋肉も立位
を維持し、活動していけるように強化さ
れ、一人前の人間の姿が完成されるので
す。つまり、上体を垂直にして立つ人間
は、頚部と胸部と腰部に、交互に凹凸の
カーブをつくり、力学的な負荷を軽減す
る構造になっているのです。
こうして、二本足で立つ人間の腰には、前方凸のカーブができるべくして出来あがった
わけですが、ゴリラや類人猿、あの北京原人でさえ腰のカーブをつくり、脊椎起立筋群は
歩くことによって強化されていきます。現代のように歩くことが少なくなると、こうした
筋群は弱対化し、あるいは退化してしまいます。文明の発展とは逆に、今度は腰や体の弱
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体化が進んでいくのです。腰痛はこうした必然性のもとにどんどん増え続けるに違いあり
ません。
また、脊柱にかかってくる負荷や背骨の故障は、脊柱が末梢神経を脊髄から分枝してい
るため、すぐに神経のトラブルにもなるのです。人間は立っていること自体、すでに骨格
や筋肉に生理的な緊張を強いています。それに加えて社会環境や労働環境のストレス、老
化という身体の退行性があります。
文明の発展とは逆に、今度は腰や体の弱体化が進もうとしています。
また、活性酸素を発生させる生活環境によって、ここ 50 年間の間のうちにミトコンドリ
ア自体の働きが人間界において、悪化していることから、脳内セロトニン低下と相まって、
体の歪み(ストレートネック)を引き起こしやすい状況にあります。
すなわち、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”へ
の関与、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
こういったことから、現代では、ストレートネックが日常茶飯事にみられるようになっ
てきました。
小児のストレートネック
整体師の鈴木勝己さんによれば、以下のように述べておられます。
「片頭痛がある子どもは、肩こりや自律神経失調症を合併している場合がほとんどで、体
のバランスの崩れも影響していると考えられます。
当院に頭痛で来院される患者さんの多くに、姿勢の乱れによる首の緊張が診られます。
首は、重い頭を支えているので、少しの体のバランスの崩れが影響する部位です。
首(頸椎)は、脊柱の上から7つ目までの骨で構成されていて、それぞれがスムーズに
動くことによって、首を前後左右に動かすことが出来るようになっています。
脊柱は、横から見るとゆるい S 字カーブを描いていて、これを生理的湾曲と呼ぶのです
が、このカーブの乱れが、首や体のいろいろな部分に不調をもたらします。
子供は脊柱の形成が未発達であり、脊柱の生理的湾曲(S 字カーブ)が完成されていま
せん。更に運動不足による筋力の低下により、S 字カーブがきちんと形成されないばかり
か、姿勢を維持する事が出来ない子供が増えています。
- 164 -
脊柱は、長い年月をかけて作りあげられます。S 字カーブの形成の乱れが、いろんな病
気に波及しますので、子供の姿勢を以下の点からしっかりチェックする必要があります。
• 正座がきちんとできるか。
• あぐらがかけるか。
• まっすぐに立っていられるか。(傾いていないか。)
• 首の回旋がきちんとできるか。(前後左右に均等に動かせるか。)
猫背などの姿勢の悪さは、体全体の
歪みですので、できるだけ早いうちに
バランスを整えることが大切です。」
以上のように述べ、小児の片頭痛で
も「体の歪み」との関連性を指摘され
ております。
また、歯科医の内田信友先生は、以
下のように指摘されておられます。
子どもが片頭痛を起こしやすい原因としては以下の理由が考えられます。
• 長時間、変な姿勢でゲームをやっている
• 小型のゲーム機などを長時間やっている
• 食生活(栄養バランス)に偏りがある
• ストレスを溜め込んでいる
• 首の骨が歪んでいる
最近の子どもはゲームやパソコンを長時間続けてやっている子が増えてきています。ま
た、ゲームだけでなく変な体勢で本を読んだり、テレビを観ている子も要注意です。
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姿勢が悪いと、肩こりや体の筋肉が緊張してしまい頭痛を引き起こす原因となります。
子供の姿勢には注意が必要です。
そして、「背骨伸ばし」のストレッチで、大半の小児片頭痛が軽快すると述べておられま
す。
以上のように、小児の片頭痛でも、大人と同様に片頭痛とストレートネック及び「体の
歪み」との関連を指摘されております。
しかし、整体師の方々のホームページを点検しますと、ごく「当たり前」のように記述
されております。これは、何を意味しているのでしょうか?
整体師の方々は、多くの小児片頭痛に「体の歪み」を指摘され、歯科医の先生は、小児
の片頭痛が”背骨伸ばし”のストレッチだけで、軽快しているとの報告をみますと、まさ
に奇異な感じを受けます。
ところが、これまでの片頭痛の成書には、小児の片頭痛と「体の歪み(ストレートネッ
ク)」 に関する記載は、まったく存在しません。
今後、これらの小児期に見られるストレートネックと成人に見られるストレートネック
が全く別のものなのか、それともその延長線上にあるのか、その異同を1例ずつ確認して
いく作業が必要と思われます。
それは、小児期にみられるストレートネックが、生まれつき「ミトコンドリアの働きの
悪さ」のために形成されるものなのか、発育途上のためなのか、あるいは成人のストレー
トネックと同様に後天的に「姿勢の悪さや体の歪み」によって形成されてくるものなのか
という点です。
- 166 -
これらをひとつずつ明らかにすることによって、ストレートネックが片頭痛の誘発・増
悪因子となりうるものかの解明の一助となるからです。
ストレートネックと閃輝暗点の関係は???
閃輝暗点は片頭痛の前兆として訴えられる特徴
的な症状です。視野の中心あたりに小さな光って
見えにくい部分が現れ、徐々に波紋状に拡がりま
す。半円状に辺線がジグザグ模様に輝いて拡大し
ます(陽性徴候)が、そのあとを追うように見え
にくい部分(陰性徴候)が続きます。
通常、20〜30分かけて片側の視野の辺縁まで拡大して視野の外に消えます。そ
の後に、視野の対側に拍動性の頭痛が始まるのが典型例です。
片頭痛患者で前兆のあるものは約2割です。これらの方々は、前兆のない発作の時も
あり、毎回出現するわけではありません。
若い時には、視覚性の前兆があらわれ、これが消えるとともに激しい頭痛がおこっ
てきていたのが、年齢とともに、前兆だけは現れるのに、それにつづく頭痛がおこら
なくなってしまいます。
ところが日本人では、このようなケースよりも、若い時には片頭痛はなかったのに、
中年以降に視覚性の前兆だけがあらわれるようにな
った、という人のほうが多いのです。若い時には前
兆と頭痛があったが、あとで前兆だけになったとい
うのなら理解できます。しかし、中年以降に前兆だ
けがあらわれるようになった場合には、ぽんとうに
これも片頭痛の『仲間』といえるのでしょうか?
本心では私も、疑わしいと思うことがあります。
発症年齢が高いだけでなく、通常の「前兆のある片
頭痛」の前兆と比べて、前兆のつづく時間がかなり短く、10 秒前後のことが多いから
です。
- 167 -
このような患者さんに対する検討は以前よりときどき報告されており、片頭痛であ
るという説以外に、脳虚血によるものではないか、あるいは、てんかんと類似の現象
ではないか、といった説などが唱えられています。しかし、原因はこれだという決め
手がないために、『前兆だけで頭痛を伴わない片頭痛』という病名で呼ぶしかないのが
実情です。
現在、片頭痛は前兆を起こす神経系と頭痛を起こす血管系との連結した病態による
と考えられています。
閃輝(輝く部分)暗点(見えにくい部分)が
連続して拡大する現象は脳皮質に起こる cortical
spreading depression(皮質拡延性抑制)が原因と
考えられています。大脳皮質の一部の神経細胞
に始まる興奮と抑制が、周囲に伝播する現象が
実験動物のみでなく片頭痛患者の前兆期にMR
Iなどで画像化されています。
こうした眼の症状を初めて経験しますと、誰でも驚愕されるようです。
これまで私は、60 歳以上の方で、若い頃、片頭痛の既往のない方で「閃輝暗点」の
みを訴えて来院された方々を 15 例経験していますが、これらの方々全員にストレート
ネックを認め、同様に「ストレートネックの改善」のみで、「閃輝暗点」は消失してい
ます。
これとは別に、若い世代の「閃輝暗点」を伴う片頭痛の場合も、当然「ストレート
ネック」を伴っておられる方々に「ストレートネックの改善」を行わせますと、前兆
である「閃輝暗点」がまず消失してから片頭痛が改善されていくという経過をとって
います。
こうしたことから、「閃輝暗点」とストレートネックは何らかの因果関係があるので
はないかと考えています。(ミグシス等の薬剤は一切使用しておりません)
こうしたことは、ストレートネックが存在する以上、常時、三叉・頚神経複合体
(cTNC)が刺激される状態が存在するものと考えるべきです。ということは「三叉・
頚神経複合体(cTNC)」という経路は、通常、問題とならない”解剖学的な”経路でし
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かないはずです。
しかし、このようなストレートネックが常時・存在する以上、このような”経路”が
メインルートになる可能性を考えております。こうした状況が”前兆とされる「閃輝暗
点」”の準備状態を作っているのではないかと思われます。
自律神経機能との関連について
首にはたいへん多くの神経や血管が集中しています。首の筋肉や関節の異常などによっ
て、これらの神経や血管が圧迫されると、自律神経の働きが乱れ、さまざまな不定愁訴が
起きることが多いのです。その症状は、頭痛、吐き気、耳鳴り、めまい、イライラ、不眠
など、実に様々です。ときには、こうした不調が自律神経失調症やうつ病など、こころの
病気にまで発展することもあります。
ストレートネックが長期間、放置されて引き起こされる病態が「頚性神経筋症候群」で
す(東京脳神経センターの松井孝嘉先生による)。結果として、さまざまな自律神経失調症
状が引き起こされ、片頭痛にストレートネックを伴う場合には、頭痛発作が「天気」によ
って左右されたり、光が異様に眩しく感じられたり、めまいが頭痛発作と関係なく出現し
たり、不眠、不安障害、パニック障害やうつ状態にまで発展することもあります。(これら
は片頭痛の共存症とされています)
こういったことから、慢性頭痛がこじれた状態になったり、ムチウチの場合にも同様で
すが、頭痛をはじめとする色々な訴えが出てきます。その代表的なものは、「気象の変化。
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低気圧」によって頭痛が出現したり不定愁訴が増悪し、あたかも「天気予報士」のように
天候を言い当てる方々もおられ、”気象病”の代表的疾患とされるほどです。
それでは、このような自律神経失調症状は、ストレートネックとどのように関与してい
るのでしょうか?
これに対して、2つの考え方があるようです。
胸鎖乳突筋の関与
自律神経と脊柱は深い関係にあります。背骨の調節を行い機能を正常にすることによっ
て、自律神経のバランスが整い、片頭痛の改善が期待できます。特に首の上部(上部頚椎)
が重要で、上部頚椎に問題が見られることが多いようです。
ストレートネックが存在しますと、体中至る所に様々な緊張が不自然な歪みや血行不良
を起こします。こうした機能低下の引き金となっている重要な筋肉があります。
それが胸鎖乳突筋と呼ばれる筋肉です。ちょうど頭の付け根(耳の後ろあたり)から、
首筋(くびすじ)、鎖骨にかけて首の両側に付いています。
この筋肉の緊張は頭痛やめまい、耳鳴り、難聴などの引き金になる原因筋と考えられ、
おおかた自律神経を司る筋肉とみるカイロプラクターもいるほどです。
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緊張型頭痛・片頭痛に悩む方の多くは、この筋肉の影響によって、首の至るところに突
っ張りやコリ・鈍痛を感じるのが特徴でもあります。(一度、首や肩を色々と押してみてく
ださい。痛みやコリを感じる部分があるはずです)
そういったことから、この胸鎖乳突筋の緊張を和らげることが、緊張型頭痛・片頭痛の
ひとつの改善ポイントになってきます。
以上のようにカイロプラクター・整体師・鍼灸師の方々は考えて、「体の歪み(ストレー
トネック)」の施術をされて実績を挙げておられるようです。
頸椎そのものが関係??
この考え方は酒井慎太郎先生によるものです。
不定愁訴を伴う症状は「頭と首の境目」が治療のカギ
ここでポイントになるのは、首の後ろ側の上部。後頭骨と第1頸椎の間です。この部分
をゆるめておくことが、首の健康をキープするうえで、大変重要になってきます。
後頭骨は、頭蓋骨の一番下の骨であり、第1頸椎は、7個ある頸椎の一番上の骨です。
つまり、「頭」と「首」の境目にあたるところ、この部分をを用いて広げたり、レーザーな
どを当てて温めたりすると、非
常に治療がうまくいくことが多
いのです。首、肩のこりや痛み
ばかりではありません。この部
分への治療が威力を発揮するの
は、首や肩の不調に加えてさま
ざまな不定愁訴を訴えている場
合です。首にトラブルが起こる
と、同時多発的に頭痛やめまい、
吐き気、耳鳴り、イライラといった症状が起こることが少なくありません。首を痛めた後、
体のあちこちに不調が現れ、自律神経失調症のような症状(バレリュウ症候群)が出るこ
- 171 -
ともあります。そういった数多くの不定愁訴が現れるタイプの不調にもこの部分をゆるめ
ることが大変有効です。
実は、なぜ、この「頭と首の境目」を緩めると、こうした好成績の治療ができるのか、
そのメカニズムについては、よくわかっていません。ただ、この部分は脳と首の接点であ
り、大脳と体をつなぐたくさんの神経や血管が集中しているところです。この重要な部分
の隙間が狭くなると、自律神経系や血流などにさまざまな影響が出るのではないかと推測
されています。神経や血管が圧迫されると、大脳から体の各器官への指令がうまく伝わら
なくなってなってくる可能性があります。それで、肩や首の不調とともにさまざまな不定
愁訴が現れてくるのではないかと思われます。
私は、この「頭と首の境目」の部分が、首や肩の状態を左右する非常に大きなカギなの
ではないかと思っています。
このカギが閉まってしまっているか、開いているかは、首・肩の健康に大きな違いが出
てきます。カギを開けてちょっとゆるめてあげるだけで、それまで堰き止められていたい
ろいろな”流れ”が回復するような気がします。恐らく、ここを緩めることで、脳から体
へ向かう血液の流れや、脳脊髄液の流れ、神経伝達の流れなどが一斉に回復するのではな
いでしょうか。
当医院には、首・肩こりや痛みはもちろんのこと、さまざまな不定愁訴に悩まされ続け
た方がたくさん来院されています。そういう大多数の患者さんが、「頭と首の境目」にレー
ザーを当てたり、関節包内矯正を行ったりすることによって実際に治っているのです。
ですから、いろいろな不定愁訴を伴う首こりや肩こりも、決してあきらめることはあり
ません。
「頭と首の境目」のポイントに狙いを定め、脳と体の連絡をよくする治療を行えば、
すっきり治すことが可能なのです。
「脳と体の連絡をよくすること」は自分でもできる
私は、「後頭骨と第1頸椎の間」が狭くなってくるのには、やはりストレートネックが
関係しているのではないかと考えています。
頸椎が7個の骨で構成されていることは先に述べましたが、ストレートネックでカーブ
が失われるのは、5番、6番、7番などの「下のほうの頸椎」です。ただ、これらの支障
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は、当然ながら「上のほうの頸椎」にも影
響を及ぼしています。すなわち、頸椎の1
番から4番はもちろんのこと、後頭骨にも
影響しているはずです。
つまり、”下”が悪くなれば”上”も悪
くなる。おそらく、カーブが消失して頭の
重みを支えきれなくなった「下のほうの頸
椎」が、負担を「上のほうの頸椎」へ押し
返すことで「頭と首の境目」を狭くしてしまっているのではないでしょうか。
ですから、原因を突き詰めれば、やはり、前かがみやうつむきなどの生活習慣の問題に
行き着くのだと思います。逆に言えば、日頃、そういった悪い姿勢を長く続けていれば、
誰でも不定愁訴などの厄介なトラブルに見舞われ
る可能性があるということです。
常日頃から姿勢に気をつけ、ストレートネック
を防ぐとともに、「頭と首の境目」に対しても細
心のケアを心がけておくべきです。”ちょっとし
た工夫”をしているかいなかで、首や肩のトラブ
ルにどれだけ悩まされるか大きく変わって来ま
す。
私は「首の問題からさまざまな不定愁訴に悩ま
される人」はもちろんのこと、「ひどい首や肩こりに悩まされる人」「そんなにひどくはな
いけど、首や肩がこっている人」「今は健康だけど、仕事でうつむき作業の多い人」など、
いろいろなレベルの方々に、このケアを行うことをお勧めしています。
これを習慣にすれば”脳と体の連絡”がよくなって、首や肩の症状以外にも、さまざま
な不調に対する予防効果が期待できます。
首という部分は、脳と体をつなぐ唯一の架け橋です。
ですから、その連絡橋の”流れ”を滞らせたり狭くしてしまったら、あちこちに不調が
出るのは当たり前です。連絡橋の”流れ”をいつもスムーズにしておくことは、極めて大
切なことです。
- 173 -
肩をすぼめがちな人は「第1肋椎関節」に注意しよう
ちょうど鎖骨の下側に「第1
肋骨」があります。この第1
肋骨のつけ根、胸椎と接する
部分が第1肋椎関節なのです。
ここは、首から胸部へ向かう
血管や神経が密集している場
所です。しかし、狭い場所に
あまりにたくさんの血管や神
経が通っているため、この関
節が固まっていると、それらの血管や神経が圧迫されやすくなります。この圧迫によって
肩こりや手のしびれが引き起こされやすいので
す。「胸郭出口症候群」にも、ここの関節の可動
域が狭いことが関係しています。
ですから、関節内包矯正によってこの第1肋椎
関節を動かして、血管や神経への圧迫をとると、
それだけで肩こりや手のしびれがウソのようにき
れいになくなるということが少なくありません。
ちなみに、日頃から肩をすぼめている人は、こ
の第1肋椎関節部分が狭くなる傾向があります。また、パソコン作業が多い人には、前か
がみで両腕を前に出し、肩をすぼめながら作業をしている人が多いので、この部分を狭く
してしまいがちです。
以上のように述べておられます。
ところが、「頭痛専門医は、片頭痛持ちが歴史を動かす!? 卑弥呼・信長と片頭痛(富永
喜代 All About)」でも示されるように、卑弥呼、織田信長を例に挙げて、以下のような
見解を示されます。
- 174 -
”片頭痛の方々は、気圧の変動を誰よりも早く察知し、低気圧の到来を予見すること
ができます。片頭痛には低気圧に反応するタイプがあります。特に、これから低気圧
が近づいて天候が悪化するタイミングに反応するタイプが多いようです。
片頭痛を持つ人の脳は、片頭痛がない人の脳より興奮性が高く、その働きが良すぎるの
です。そのため小さな変化にも脳が反応し、それを神経の痛み信号に変換して頭痛を起こ
す、と考えられています。”
このように、片頭痛は「神秘的で・不思議な病気」ということのようです。
体の歪み(ストレートネック)を来す要因
パソコン作業による”前かがみ””うつむき”が元凶
ストレートネックを生み出す最大の原因。
それは、前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長時間続けるような生活習慣にありま
す。原因の 99% は、ここから来ていると言っていいでしょう。
- 175 -
みなさんも、日頃、いかに前かがみやうつむきでいることが多いか、ご自分の生活を振
り返ってみて下さい。このため、ストレートネックにならないように注意が必要です。
パソコンの画面に釘付けになっている時間がとても長くありませんか?パソコンを使っ
ていなくても、デスクワークをしていたり、携帯電話・スマホやゲームの画面を見ていた
り、座って本を読んでいたり、車を運転したり・・・。1日のほとんどの時間を前かがみ
やうつむきで過ごしているという人も少なくないのではないでしょうか。そういう毎日の
生活習慣が、ストレートネックをつくる”大もと”になっているのです。
とくに、パソコン作業を長時間続けていると、座りっぱなしのまま、知らず知らずのうち
に前かがみやうつむきになってしまいます。なかでもノートパソコンを使っていると、画
面の位置が低く、目線が下向きになってしまうため、前かがみ・うつむきになりがちです。
ひどい人になると、猫背になって、顔とあごを前に突き出すような姿勢で作業をしていた
りします。
このように前かがみ・うつむきの姿勢を長時間続けると、首や肩の筋肉が緊張しっぱな
しになって、こりが進んでしまいます。そして、こうした「筋肉が緊張しっぱなしになる
状態」が日々積み重なると、ガチガチに緊張した筋肉に常に頸椎が引っ張られるかたちと
なって、本来のカーブが少しずつ消失していってしまうのです。
なお、こういったストレートネックの症状は、基本的には長い月日をかけてジワジワ進
むものです。しかし、なかには急速に進むこともあります。たとえば、四六時中、前かが
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みになって根をつめるパソコン作業を行うような日々
を続けたとしたら、ほんの2,3週間ほどでカーブが
消失してしまうことも少なくありません。また、とき
には車の追突事故などでムチウチになり、ストレート
ネックが一気に加速することもあります。
とにかく、頸椎とは、非常にナイーブにできている
ところなのです。
前に述べたように、人の頭は6キロほどあり、それ
がうつむき姿勢をとったときには、首にかかる荷重は
3倍にもふくれあがるのです。
ですから、うつむきっぱなしで首に疲労をため込んだり、首に大きな衝撃を加えたりし
てはいけません。
いいかげんに現代人は首を酷使する毎日から脱却しなくてはなりません。そして「首を
いたわる生活習慣」を身につけるべきなのではないでしょうか。
頭を打ったり首を痛めたりした経験はありませんか?
ストレートネック、すなわち、首疲労を起こすもう一つの原因があります。
それは、過去に「ムチウチなどの外傷」を負った経験があり、首の筋肉組織を痛めたこ
とによってさまざまな不調が起こる場合です。
みなさんも、子供の頃から現在に至るまでの
自分の過去を振り返ってみれば、頭を強く打っ
たり首を痛めたりした経験は何度かあるのでは
ないでしょうか。
いちばん多いのは、車の追突事故をはじめと
した交通事故で首を痛める場合です。
そのほかにも、子供の頃、鉄棒やジャングル
ジムなどから落ちたりしたことがあったかも知
れませんし、自転車やオートバイで転んで頭部
- 177 -
を打ったことがあったかもしれません。また、学生時代、ラグビーやサッカー、格闘技な
どの激しいスポーツをしていて、頭や首を痛める場合も多いのではないでしょうか。
じつは、そういうふうに強い衝撃を受けた際に生じた「首の筋肉の損傷」は時間が経っ
てもなかなか治らないことが多いのです。なかには、子供の頃に首を痛めて以来、何十年
も不調を引きずっているような場合もありますし、何年も前に首を痛めた影響が今頃にな
って出てくるような場合もあります。首の筋肉は常に働いて頭を支えていかなくてはなり
ませんから、他の筋肉と違って損傷が治りにくく、小さなトラブルが尾を引きやすいので
す。また、頭部外傷でも首の筋肉を痛めて、ムチウチと同じ症状が現れることがあります。
頭部に外傷を受けて脳神経外科を受診しますと、頭の検査だけをして「異常ありません」
と帰される場合がほとんどです。けれど、外傷を受けたあとしばらくして、ムチウチと同
じ症状が出て困っている人は非常にたくさんいます。
ちなみに、このような患者さんの首のレントゲン撮影をしてみますと、たいていの場合、
7個並んだ頸椎がまっすぐになってしまっています。本来は下のほうへ向かうにつれ、頸
椎がゆるやかにカーブしているはずなのですが、そのカーブが失われてしまっているので
す。これは「ストレートネック」といって、首の筋肉が本来の働きを果たせなくなること
で起こる現象です。首の筋肉が硬くなり、伸びなくなっているために、そのしわ寄せが頸
椎に及び、並びがだんだんまっすぐになっていってしまうのです。
これは、首疲労から不定愁訴を起こしている患者さんには、ほとんどの場合、このスト
レートネックが見られます。
過去に頭や首を痛めた経験のある人、また、整形外科などで、「ストレートネック」を指
摘されている人は、首の筋肉のどこかに通常の働きができなくなっている部分がある可能
性が大きいのです。その分、首疲労に陥る危険が高いことになりますので注意が必要です。
ムチウチに対する治療で、事故後、よく患部をカラーで固めたり、牽引治療を行ったりす
る人もいますが、私はこうした治療は逆効果だと考えております。カラー固めるのは首の
筋肉のこりを固まらせて治癒を遅らせますし、牽引で無理に首を引っ張ると、傷ついた患
部組織にさらに新しい外傷を加えることになり、いつまでも症状を長引かせる原因になり
ます。これまで、このような治療が行われてきたため、ムチウチの方々を長年苦しませる
結果となっていました。
- 178 -
ストレートネックの原因
これまで、ストレートネックを引き起こす原因として、
パソコン作業などによる”前かがみ””うつむき”姿勢
ムチウチなどの外傷
の2つを挙げましたが、これ以外にも原因があります。
歯の噛み合わせの悪さ
これまで、片頭痛と歯科的問題との関連を指摘するものが多く、ネット上で紹介されて
います。その代表的なものは、内田信友先生の「N.H.R.頭痛解消法」です。歯のかみ合わ
せの悪さが「ストレートネック」を起こして頭痛の原因となるとされます。
このため、先生独自の提唱する「体操」と「テンプレート療法」を行うことによって、
- 179 -
片頭痛が改善されると述べておられます。
また、歯のかみ合わせの悪さが、咀嚼する度に三叉神経核に異常な刺激を送り続け、こ
れが「脳の興奮性」を高め、これが片頭痛の原因となるとも考えられています。
足病変との関連
笠原厳は、「外反母趾、指上げ足(浮足)、扁平足など足裏の異常があると、足裏が不安定
- 180 -
になり、重心が踵の方へ移動して歩き方も悪くなってしまい、そして、悪い歩き方は時間
経過に伴い、首に過剰な衝撃波やねじれ波という有害なストレスを歪みの多い首へ繰り返
し伝えてしまうため、何倍もの負担を加え続け、次第に変形(歪みや微細な疲労骨折)を起
こして頭痛を発症させてしまう。」と述べておられ、ストレートネックの原因の一つとされ
ています。
ですから足裏のバランスを整えて、重力の上に効率よく立ち、そして正しい歩行をする
ことが重要だと述べています。
- 181 -
慢性的セロトニン不足
セロトニン神経は、筋肉へ働きかける役割を担っています。
セロトニン神経は直接体を動かすのではなく、筋肉を緊張させることで、影響を与えて
います。セロトニン神経が働きかけるのは、抗重力筋です。抗重力筋とは、重力に対して
姿勢を保つために働く筋肉のことです。まぶたが開き、首が立ち、背筋が伸び、歩いたり
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できるのは、この抗重力筋のおかげです。セロトニン神経が活性化していると、まっすぐ
な姿勢や生き生きした表情になることができます。反対にセロトニン神経の働きが弱まる
と、背中が丸まったり顔の表情がどんよりしてしまいます。
このため、セロトニンが不足してきますと、セロトニン本来の働きである「正しい姿勢の
保持」が、困難となり、「体の歪み」を招来し、結果的に「ストレートネック」を引き起こ
します。
さらに、セロトニン不足を引き起こす「不規則な生活習慣・食事・睡眠不足」等が日常
的になって来ますと、精神的に「うつ状態」となり、これに伴って姿勢も悪くなり「スト
レートネック」を引き起こす原因となっています。
しかし、最近の考えでは、どちらが原因か分からないという意見もあります。
これらの原因のうち、大半は、姿勢の問題か「体の歪み」を引き起こす体の使い方に問
題があって、後天的に形成されるものが多いようです。
ミトコンドリアの関与
脊柱の両側には直立姿勢に重要な脊椎起立筋が姿勢をガードしています。
- 183 -
背骨を支える「脊柱起立筋」という筋肉は、体の中で最も長い骨を支えるため、赤筋が
最も多く存在している筋肉です。持久力のある筋肉は、まさにミトコンドリア系の赤い筋
肉です。このように全身を支え、姿勢を整える筋肉グループ「抗重力筋群」に、ミトコン
ドリア量が多い事がわかっています。
こういったことから、ミトコンドリアの働きが悪くなれば当然のこととして「体の歪
み(ストレートネック)」引き起こされることは明らかです。
以上、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”への関
与、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
片頭痛の場合、「ミトコンドリアの働きの悪さ」に「脳内セロトニン低下」が加わること
によって、姿勢保持が困難となり、容易に体の歪み(ストレートネック)を形成してくる
ことになります。すなわち、ミトコンドリアの働きの悪さと脳内セロトニン低下が存在す
れば、
1.前屈みの姿勢や俯きの姿勢などを長時間続けるような生活習慣
2.「ムチウチなどの外傷」により、首の筋肉組織を痛めたりする
- 184 -
ことによって、容易に、体の歪み(ストレートネック)が作られてくることになります。
現代社会では、活性酸素に満ちあふれた生活環境に置かれていることを考える限り、こ
こ 50 年間の間のうちにミトコンドリア自体の働きが人間界において、悪化していることか
ら、脳内セロトニン低下と相まって、「体の歪み(ストレートネック)」を引き起こしやす
い状況にあります。
すなわち、脊椎起立筋群に対して、ミトコンドリアの働きの悪さは、”筋肉そのもの”へ
の関与、さらに脳内セロトニンは、”神経系の要因”として、関与しています。
こういったことから、現代では、ストレートネックが日常茶飯事にみられるようになっ
てきました。
しかし、現在、頭痛専門医は、この「体の歪み(ストレートネック)と頭痛」の関係に
ついては、全くエビデンスなし、とされ、即ち「関係なし」とされております。
それを”あからさま”示すものは、専門医が遵守される「慢性頭痛診療ガイドライン」
です。ここでは、「体の歪み(ストレートネック)」に着目して治療を行われるカイロプラ
クター・整体師・鍼灸師の方々の施術に対する評価が推奨ランクCとされ、まったく評価
されていない現実があります。しかし、こうした方々の施術により片頭痛の多くの方々が
改善されてこられた事実があります。
現在、頭痛専門医が、この「体の歪み(ストレートネック)と頭痛」をエビデンスなし、
とされる根拠は、2点です。
その1点は、「体の歪み(ストレートネック)」は、現代では、”日常茶飯事にみられる
所見”であり、特別取り立てて論ずることでない、とされます。
もう1点は、2004 年の「国際頭痛分類 第2版」にあります。この改訂以来、それまで
頭痛と頸椎の関与を考慮されておられた、寺本純先生以下大半の先生方は、
”右へ習え”で、
口を揃えてエビデンスなし、とされるようになりました。
それを証明するものは、第 38 回の日本頭痛学会総会における、東京脳神経センターの松
井孝嘉先生の御指摘を、まったく問題とせずに現在に至っております。
このように、現在の頭痛専門医は、「体の歪み(ストレートネック)と頭痛」をエビデン
スなし、とされています。ところが、片頭痛のセルフケアのなかの指導項目として「姿勢
を正しくしましょう」という事項が歴然としてあります。これは、「体の歪み(ストレート
- 185 -
ネック)」に関連した指導項目のはずです。こうした矛盾を矛盾として認識されません。そ
して、頸椎X線検査上みられるストレートネックの診断基準がありません。
頭痛と関連のあるストレートネックが、どのようなものかが理解されておらず、すべて
”一緒くた”に、混同して考えていることに問題があります。
そして、
「頭痛と関連のあるストレートネック」に対する治療手技がまったくありません。
こうしたことから、慢性頭痛の方々の多くが、医療機関を敬遠され、カイロプラクター・
整体師・鍼灸師の方々の施術を求めて、受診される現実があります。
最も大切な点は、慢性頭痛の起点(スタート)は、
1.前屈みの姿勢や俯きの姿勢などを長時間続けるような生活習慣
2.「ムチウチなどの外傷」により、首の筋肉組織を痛めたりする
にあり、これから「体の歪み(ストレートネック)」を来すことにあります。
当然のこととして、これに「ミトコンドリアの働きの悪さ」と「脳内セロトニンの低下」
が関与してくることは言うまでもありません。
こうしたことから、「体の歪み(ストレートネック)」をエビデンスなし、とされること
によって、慢性頭痛の起点(スタート)を見失うことになり、挙げ句の果ては、「慢性頭痛
すべて」が原因不明とされ、何時までも頭痛研究が進展しない理由となっています。
- 186 -
その6
ミトコンドリアの関与
片頭痛はミトコンドリアの機能障害によってもたらされる頭痛です。
私達の体を構成する細胞の中には、多数のミトコンドリアという小器官があります。
ミトコンドリアは、ほとんどす
べての生物(ヒト、動物、植物、
菌類など)の細胞に在り、酸素を
取り込み、生きる為に必要なエネルギーを作り出していて、車のエンジンや発電所の発電
機のような働きをしています。
エネルギーを常時たくさん使う細胞であるほど、ミトコンドリアの数が多くなります。
ミトコンドリアは、私たちの”活力源”ともいえるものなのです。
60 兆個の細胞が活動することで人は生命を維持
片頭痛のひとつの要因として、新陳代謝やエネルギー代謝など代謝の低下があげられま
す。この代謝の低下を引き起こし、また、片頭痛を悪化させるひとつの要因と考えられて
いるのが、エネルギー産生能力の低下です。
私たちの体は、およそ 60 兆個にものぼる細胞から成り立っています。これらの細胞は、
私たちが日々生活を送るために必要なエネルギーをつくり出しています。
- 187 -
心臓を例にとると、心臓を構成するひとつひと
つの細胞がエネルギーをつくり出し、そのエネル
ギーによって心臓を取り囲む丈夫な筋肉である心
筋は、24 時間休むことなく働き続けることがで
きます。もしエネルギーが十分につくられなくな
れば、心筋の働きは低下。息切れや動悸といった
症状が現れることになります。
各細胞内では、食物から摂取した栄養素を酸素
が燃焼させてエネルギーを生み出しています。
栄養素をきちんと補給してそれを燃焼させるというサイクルをしっかり回さなければ、細
胞はエネルギーを生み出せなくなり、人は生きていくことができません。また、私たちの
体のほとんどの部分では、常に新しい細胞が生まれ、古い細胞と入れ替わっていますが、
こうした細胞の入れ替わりのサイクルも、生命維持には欠かせない仕組みです。
細胞はひとつの生命体です。細胞自体がいつも元気に活動することでエネルギーが生ま
れ、新しい細胞もつくられていきます。(これを新陳代謝といいます)
細胞内のミトコンドリアがエネルギーを生み出す
エネルギーは、細胞内に存在するミトコンドリアという小器官の中で、栄養素が酸素で
燃焼されることによって生み出されます。ひとつの細胞に含まれるミトコンドリアは 50 か
ら 200 ほどです。
ミトコンドリアによるエネルギー産出量は、私たちが必要
とする全エネルギーの 95 %にものぼるため、ミトコンドリ
アは「生命のエネルギー工場」と呼ばれています。骨格筋や
心臓、肝臓、腎臓、脳などエネルギー代謝の盛んな臓器・器
官の細胞ほどミトコンドリアの数は多く、それだけたくさん
のエネルギーをつくり出すことで、神経・筋肉を動かしたり、
心臓を働かせているわけです。
そのためエネルギーをつくり出す能力が低下すると、さまざまな形で人の活動は支障を
来します。筋肉を動かす力が衰えると、歩いているときに物につまずきやすくなる。心筋
- 188 -
の働きが低下して、すぐに息切れする。肝臓の働きが弱くなって、若い頃には酔わなかっ
たお酒に酔いやすくなる…。いずれもエネルギーをつくる能力が低下することが、ひとつ
の大きな原因になっていると考えていいでしょう。
こうしたことが起こらないよう、エネルギーを生み出す能力をできるだけ維持・向上さ
せることが大切になります。
エネルギー産生の元となる ATP をつくるうえで欠かせないコエンザイムQ(CoQ10)
エネルギー工場の働き手として欠かせないのが CoQ10 です。
私たちが生きていくうえで必要なエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれ
る物質が元となって生み出されます。ATP はミトコンドリア内で生成されますが、ATP の
生成に欠かせない物質が CoQ10 です。
CoQ10 は、体内の酵素の働きを助ける役目を担って
います。酵素は化学反応によって体内の物質を分解し
たり合成するものですが、CoQ10 はこの酵素の働きを
サポートする「補酵素」としてミトコンドリア内に存
在しています。また、ビタミンと同じような役割を果
たすため、「ビタミン Q」との別名もあります。
た
だし、ビタミンが体内で生合成されないのに対して、
CoQ10 は体内でつくり出すことができることから、正
しくは「ビタミン様作用物質」のひとつです。
エネルギー工場であるミトコンドリアでは、数多く
の CoQ10 が日夜エネルギーをつくり出し続けていま
す。CoQ10 はいわばエネルギー産生に欠かせない戦力
です。この戦力が休んだり足りなくなると、エネルギ
ーは生み出されなくなります。
スムーズに効率よく、たくさんのエネルギー産生へ
ミトコンドリア内におけるエネルギー産生の仕組みを、もう少し詳しく見てみましょう。
- 189 -
「ミトコンドリア工場」では、酸素と三大栄養素(糖質・たんぱく質・脂質)をエネル
ギーをつくるための主な材料として仕入れます。このうちもっとも重要なのが糖質(炭水
化物)です。ベルトコンベアに乗せられた炭水化物はすぐにブドウ糖に分解され、3 つの
工程を経て、エネルギーをつくる元となる ATP をつくり出します(【図 2】)。
ATP は第一・第二工程で少量がつくられます。しかし、もっとも大量に生成されるのが、
第三の工程です。この工程=電子伝達系で必要不可欠な働き手が CoQ10 です。第二工程で
発生した電子を交通整理して、効率的・スムーズにかつ大量に第三工程に送り、ATP をつ
くり出しています。
こうした役目を担うことから、CoQ10 はエネルギー産生に欠かせない物質と呼ばれるわ
けです。
脂肪からエネルギーが産生される仕組み
- 190 -
体についた脂肪は、そのままでは燃えません。まず、燃えやすい遊離脂肪酸に変化し、
血液の中に流れ出します。そして、各細胞内のミトコンドリアへと流れていきます。ミト
コンドリアは、エネルギーを生み出す場所です。遊離脂肪酸を燃料としてエネルギーを生
み出すのです。こうして、脂肪は燃焼します。ところが、遊離脂肪酸は”L-カルニチン”
がないと、ミトコンドリアの中に入ることができません。つまり、L-カルニチンがミトコ
ンドリアの鍵を開けることで、はじめて遊離脂肪酸はミトコンドリアに入ることができる
というわけです。
L-カルニチンは遊離脂肪酸をミトコンドリアに運ぶ役割を果たしています。つまり、Lカルニチンが不足していては、体に
ついた脂肪を燃やしてなくすことは
できないのです。
L-カルニチンには、もう一つ重
要な働きがあります。それは、健康
な脳機能を維持することです。L-カ
ルニチンが不足すると、脳のアセチ
ル-カルニチンが不足します。
ア
セチル-カルニチンが不足すると、
脳の細胞が壊れやすくなり、痴呆症になりやすくなります。このことは、数多くの臨床研
究から明らかにされています。L-カルニチンは、ボケ防止にも役立つというわけです。
L-カルニチンは、ミトコンドリアの中で脂肪を燃焼して肥満を防止し、脳の中でアセチ
ル化してボケを防止してくれる、私達には欠かせない物質なのです。
L-カルニチンのパワーは CoQ10 なしでは発揮されない!
肥満を解消したいからと、いくら L-カルニチンを摂っても、それだけでは効果はあまり
期待できません。その優れた体脂肪の燃焼効果を発揮させるためには、CoQ10 が欠かせな
いのです。
L-カルニチンだけがたくさんあっても、CoQ10 が不足していては、脂肪はうまく燃焼さ
れません。逆に、CoQ10 だけがたくさんあっても、L-カルニチンが不足していては、脂肪
はうまく燃焼されません(L-カルニチンと CoQ10 の脂肪代謝のメカニズムについては、下
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の図及び解説をご覧ください。)つまり、この二つの相乗効果で、肥満が解消でき
るというわけなのです。
L-カルニチンは CoQ10 と一緒にしっかり摂ってこそ意味があるのです。
コエンザイム Q10 と片頭痛
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コエンザイム Q10 は抗酸化作用、疲労回復、美容成分として知られる栄養素です。 サプ
リメントや化粧品の成分として広く利用されています。
もともとはビタミン(=必須栄養素)と考えられていましたが、体内で他の栄養素から
作り出せることから、名称をコエンザイム Q10 へと変更しました。
必須栄養素と考えられるほど体内では非常に重要や作用をする栄養素であるものの、体内
での合成量は 20 代をピークにどんどん低下していきます。
そのため、年齢が上がるほどその量が不足しがちとなり、 コエンザイム Q10 の摂取効
果が高くなります。
加齢とともに体内の量が減少
健康維持には体内に十分なコエンザイム Q10 があることが重要ですが、年齢を重ねるご
とに、その量は減っていきます。酸化ストレスの増加などが原因で、体のコエンザイム Q10
を作る能力が低下するためです。体の場所によってコエンザイム Q10 の量が減少する比率
は違いますが、特に皮膚では、70 代では 20 代の約1
/3まで減ってしまうという研究結果もあります。
加齢だけでなく、喫煙などの生活習慣、うつ病、
心筋症、片頭痛などの病気も体内のコエンザイム Q10
を減らす原因として注意が必要です。
コエンザイム Q10 が減ることで、体内のエネルギ
ー生産量が減り、細胞の活力がなくなります。つま
り、元気や健康を維持する力が失われ、老化が進んだり、病気になりやすくなるのです。
女性の場合は、更年期を迎えると心身ともに不調を感じることが増えてきますが、それ
は女性ホルモンのエストロゲンだけでなく、コエンザイム Q10 も減少しているためと考え
られます。
不定愁訴や更年期障害などで悩んでいる人も、コエンザイム Q10 を摂取することで、症
状を軽くすることができるでしょう。
また、コエンザイム Q10 のもうひとつの働きに、抗酸化作用があります。活性酸素は
毒物やウイルスなどを分解する酸素ですが、増えすぎると正常な細胞まで傷つけてしまう
ことが。抗酸化作用により増えすぎた活性酸素を無力化して取り除くことで、細胞が元気
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でいられます。
還元型と酸化型の違いは?
ところでコエンザイム Q10 には、
「還元型」と「酸化型」という2つの種類があります。
従来のコエンザイム Q10 は酸化型で、コエンザイム Q10 の基本構造に酸素がくっついた
状態です。酸素と反応して酸化しているので、体の中に入った時に、もともとの形である
還元型に変換する必要があるのですが、人によっては加齢などでうまく変換できず、あま
り効果が実感できないこともあります。一方で、最近よく見かける還元型というのは、酸
化作用を受けていないものです。技術の進歩で、人間の体内にあるコエンザイム Q10 と同
じ状態に開発されたものが、還元型コエンザイム Q10 です。
還元型コエンザイム Q10 は、体内での変換過程を経ずにダイレクトにミトコンドリア
に作用するため、素早く効きめを感じやすく、人による効果の当たり外れも少ないとか。
コエンザイム Q10 は若さと健康のキープに欠かせないだけに、加齢に伴い不足する分を
意識的に補うことが大切です。
イワシ、豚肉、オリーブオイル、ブロッコリーなど、コエンザイム Q10 を多く含む食品
を積極的に食べることです。忙しくてそれができない人は、還元型コエンザイム Q10 の含
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量を強化したゼリーやチョコレ
ートなどの食品やサプリメント
がお手軽です。還元型コエンザ
イム Q10 を上手に摂取して、細
胞レベルから元気になりましょ
う。
コエンザイム Q10 と片頭痛
コエンザイム Q10 の経口摂取により、片頭痛の発生頻度と発生期間の減少に効果がある、
との報告があります。
コエンザイム Q10 摂取により片頭痛を予防する効果を示唆する学術文献もあります。
それでは、なぜコエンザイム Q10 が片頭痛に効果があるのでしょうか?
1.抗酸化作用・活性酸素除去
コエンザイム Q10 は抗酸化作用があり、体内の活性酸素を除去する効果があります。
活性酸素が身体に悪いのは、細胞を破壊・損傷し、DNA の改ざん、老化など様々な悪影
響の原因となるためです。
(※活性酸素の働きは全てが悪い作用ばかりではありません。)
人間にはこの活性酸素を除去するシステムがもともと備わっており、 その一つがコエン
ザイム Q10 です。
その他に、ビタミン A、ビタミン C、ビタミン E、αリポ酸などが抗酸化作用のある物
質ですが、これらがお互いに作用しあって活性酸素の除去を行います。
これらの中でコエンザイム Q10 はその構造から電子を放棄し、ほぼ完全に脂質の生成を
防止し、酸化を阻害します。
また、抗酸化に利用されたビタミン E を修復します。
大きくはこの2つの働きによってコエンザイム Q10 が活性酸素の除去に効果があるとさ
れています。
- 195 -
ある研究では、運動前にコエンザイム Q10 を摂取したところ、 酸化ストレスマーカー
(8-OHdG)の増加を抑える効果があったしています。
2.エネルギーの産生
コエンザイム Q10 は人間の活動の元となるエネルギーの産生に寄与します。
TCA 回路(クエン酸回路)からエネルギー(ATP)を作り出す最後の栄養素がこのコエン
ザイム Q10 です。
そのため、TCA 回路が適正に機能していても、コエンザイム Q10 がなければエネルギー
が作られません。
しかし、コエンザイム Q10 の体内での量は 20 代をピークにその量は減っていきます。
食事から直接摂取する量そのものが減ること以外に、チロシン、フェニルアラニンなど複
数の栄養素を摂取しないと体内で作られないため、バランスの良い食事をしていないと、
体内で作られる量も減ってしまいます。
サプリメントとしてコエンザイム Q10 を摂取したところ、疲労感と憂うつ感の低下、活
動度の増加が認められたという報告や、 コエンザイム Q10 を 100mg、10 日間摂取したと
ころ、69 %で疲労回復の効果を感じられたとする報告もあります。
結局、ミトコンドリアとは?=“細胞のエネルギー生産工場”
以上のように、ミトコンドリアは“細胞のエネルギー生産工場”とも言われ、グルコー
ス(糖)・脂肪を原料として、
“生体のエネルギー通貨”と呼ばれる「アデノシン三リン酸(A
TP)」を合成しています。ATPは
体内で日に延べ 50 ~ 100 kg が作られ
ていますが、そのうちの約 95 %はミ
トコンドリアによって作られていま
す。また、ATPをつくる過程では水
がつくり出されており、その水は「代
謝水」と呼ばれ、身体の水分保持にお
いて重要な役割を果たします。
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ミトコンドリアが不調になると・・・
ミトコンドリアの機能が低下すると、ATPが不足するほか、ATPがうまくつくられ
ないことにより活性酸素が増加し、その結果、身体にはさまざまな不調があらわれます。
身体を元気に健康に保つためには、ミトコンドリアを元気にすることが大切なのです。
ミトコンドリアの数が少なく弱ってくると、細胞が適正に活動するために必要なエネル
ギー量が不足し、細胞や組織はその役割を充分に果たせなくなります。私達が元気でいら
れるのは、ミトコンドリアが充分エネルギーを供給してくれるからです。そのため、ミト
コンドリアの数が少なく活力が無ければ、そのヒトの活力もなくなってしまうということ
です。
片頭痛もミトコンドリアが弱ることで起きる病気ですので、ミトコンドリアをいかに元気に
することができるかが片頭痛を改善させる最大の“鍵“となります。
活性酸素
酸素は地球上のほとんどの動物にとっては、なくては生きていけない大切なものです。
しかしその酸素が呼吸によって体内に取り入れられると、その一部が「活性酸素」とい
- 197 -
われる不安定な状態になり、近くの物質と結びつ
こうとします。物質が酸素と結びつくことを”酸
化”といいますが、鉄がさびたり、空気に触れた
りんごの切り口が茶色になったり、あるいは雨ざ
らしのゴムホースがぼろぼろになったりするよう
に、活性酸素が体の中でさまざまな「さび」の状
態を作るのです。
活性酸素が過剰になると、物質が酸化によってぼろぼろに壊れてしまうのと同じ現象が、
人体の中でも起こってきます。その結果、
がんや動脈硬化、脳梗塞、心疾患、糖尿
病、白内障などの生活習慣病を引き起こ
してきます。また、活性酸素はしみやし
わなどの原因になり、老化の最大の原因
であることも分かってきました。
現在の研究では、活性酸素は全疾患の 90 %以上に何らかの形で関っていると言われてい
ます。片頭痛も同じように、この活性酸素が関係しています。
この活性酸素はミトコンドリアと切っても切れない関係にあります。
活性酸素とはミトコンドリアがエネルギーを作り出す際に生み出されるものです。
「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質)の形成過程
細胞内小器官である「ミトコンドリア」は私達に生きるエネルギーを与えてくれますが、
反面、活性酸素を最も多く発生する細胞内小器官でもあります。
ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミト
コンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する
機能も高まります。しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰
の活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪
循環が始まります。
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身の回りの活性酸素を生み出す要因
活性酸素は、
「呼吸をする」、
「食事をとる」、
「運動をする」など、ごく普通の生活をし
ているときにも発生します。酸素を取り込
み、エネルギーを作る過程で必ず発生する
からです。そのほか、白血球が細菌を殺傷
するとき、生理活性物質が作られるとき、
有害物質(過酸化脂質、残留農薬、食品添
加物、抗がん剤、アルコール、タバコ、大
気汚染物質など)を解毒するとき、止まっていた血液が再び流れ出すとき(再濯流)、紫外
線や電磁波(レントゲンなど)を受けたとき、強い精神的ストレスを受けたときなど、さ
まざまな要因により発生します。
「酸化ストレス」
最初にも述べましたように、ミトコンドリアが酸素を取り込み、エネルギーを作る過程
で活性酸素は必ず発生します。この活性酸素は、「呼吸をする」
、「食事をとる」、「運動をす
る」など、ごく普通の生活をしているときにも発生します。
もちろん活性酸素が体の中で増える一方ですと、人間はたちまち死んでしまいます。
そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
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ただ、この手段では手に負えない量の活性酸素が発生したとき、活性酸素の発生が”抗
酸化作用(抗酸化力)”より常に優位な状態が、いわゆる「酸化ストレス」になります。
「酸化ストレス・炎症体質」とは活性酸素の発生が除去しきれないほど発生してしまう状
態のことで、これらが原因で細胞が傷つけられ、さまざまな病気(炎症)を引き起こしてし
まう状態のことをいいます。
たくさんのミトコンドリアが余裕を持ってエネルギーをつくる態勢だと、活性酸素はそ
れほど問題になりませんが、少ないミトコンドリアが必死にフル回転でエネルギーをつく
ろうとすると、活性酸素がたくさん排出されてしまいます。
そして、さらに重要な点は、生まれつき受け継がれた「ミトコンドリアの働きの悪さ」
は各人・各様で千差万別です。極端な表現をすれば、極端に悪い状態であれば「ミトコン
ドリア病」となり、その対局に「正常人」があるとすれば、片頭痛の方々は、「ミトコンド
リア病」まで至っていない状態で、さらに「正常人」以下の中間に位置するものと考えて
下さい。
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この「生まれつき存在する、ミトコンドリアの働きの悪さ」の程度は、片頭痛の方々で
は一様でないということです。極端に悪ければ、改善までに時間を要することになります。
こうしたことから、片頭痛の方
々の「セルフケア」の場面での生
活指導の内容が患者さん個々で異
なっており、一律に述べることの
難しさがあった理由です。
しかし、このような表現で片付
けることは決して許されることで
はありません。
ここでは、こういった状況に対
して、どのように対処すべきかを
述べていきます。
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ぼろぼろに錆びた金属にたとえられる、「錆び体質」といわれるものです。
「酸化ストレス・炎症体質」は片頭痛発症の根底にある体質ということだけでなく、ほ
とんどの現代人が抱える、さまざまな慢性病や生活習慣病の根底にある慢性病の源となっ
ているものです。
「酸化ストレス・炎症体質」は長い間の生活習慣などにより起こり、特効薬を飲んだか
らといって直ぐに治るようなものではありませんし、特効薬などはありません。
このように、片頭痛は、遺伝素因である「ミトコンドリアの働きの悪さ」に、”環境因子
”として、生活習慣(とくに食生活)が原因で、エネルギーを生み出す際に生する活性酸
素によって自分のミトコンドリアを傷つけることによって「さらに、ミトコンドリアの働
きを悪く」させて「酸化ストレス・炎症体質」を形成することにより引き起こされる疾患
と考えられています。
片頭痛において「酸化ストレス・炎症体質」を形成するもの
以上、「酸化ストレス・炎症体質」を改善するためには、その根底にある次のような問題
を解決する必要があります。
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1)毎日の食事とともに摂取される有害物質をとらない
2)乱れた腸内環境を整える
3)解毒(デトックス)および解毒代謝能力を向上させる
4)生理活性物質(エイコサノイド)のバランスの乱れを正す
5)インスリンノ過剰分泌を抑える
これらの根本的原因を解決しない限り「酸化ストレス・炎症体質」(片頭痛体質ともいい
ます)を改善することはできません。
生活環境により、さらに毎日食事とともに摂取される有害物質、さらに食事の摂取のし
かたから、腸内環境が乱され、さらに有害物質が体内に蓄積することにより「酸化ストレ
ス・炎症体質」が作られてくることになります。このため、腸内環境を整え、デトックス
を日々意識して行っていく必要があります。
この部分を解決しないことには、片頭痛を根本的になくしてしまうことは不可能です。
ミトコンドリアの働きを悪化させる要因
ミトコンドリアの働きを悪化させる要因としては、以下のようなものがあります。
1.睡眠不足の問題
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2.マグネシウムの問題
3.有害物質・・活性酸素の問題
4.薬剤による影響
1.睡眠不足の問題
慢性頭痛を改善させる際に、まず最初に念頭におくべきことがあります。
片頭痛の方々は、基本的に「ミトコンドリアの働きの悪さ」が存在します。このミトコ
ンドリアを元気にさせるためには、重要な点は睡眠を十分にとることが必要です。
また、緊張型頭痛では、脳内セロトニンの低下が存在します。セロトニン神経の活性化
には、早寝、早起き、十分な睡眠が基本原則となっています。
それでは、どうして「睡眠」が大切なのでしょうか?
この点をよく理解され、十分に
睡眠をとられませんと、以後行われるどのような方法も慢性頭痛を改善に導くことはあり
ません。それ程、十分な睡眠は、慢性頭痛治療上、極めて重要な位置を占めています。
エネルギーの生産には休息が必要です
これまで述べてきましたように、生物の細胞の中にはミ
トコンドリアという細胞小器官があります。
私たちが食物からとった、炭水化物(糖)や脂肪は代謝
されて、ミトコンドリアの中でTCAサイクルに放り込ま
れて酸素を消費しながら、活動していくのに必要なエネル
ギーに変えられています。
糖にはTCAサイクル以外に、酸素を使わずミトコンド
リア以外の場所でエネルギーを生産するシステム(解糖系)もあります。
この場合は乳酸ができますので、激しい運動(無酸素運動)をした時などは、筋肉内に
大量の乳酸がたまることになります。
しかし、このエネルギーの作り方では効率が良くないので、解糖系で分解した糖も、酸
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素が十分にある場合は、途中からミトコンドリアの中でTCAサイクルに渡されて、エネ
ルギーに変えられることになります。
つまり、ミトコンドリアは体温や生体が活動するエネルギーを生産するにはなくてはな
らない場所なわけです。
そして、ミトコンドリアは生体がちゃんと休息をとらないと働けなくなってしまうので
す。ですから、ちゃんと睡眠時間を確保することが大切になります。
地球の重力に逆らって動物が立ったり、座ったり、動いたりするには、相当なエネルギ
ーの消耗があり、眠らなくても重力に逆らわないように横になっているだけでも休息をと
っていることになります。
直立2足歩行は人間に大変な重労働を課
しています。
生物が水の中で暮らしていた頃は水の浮
力によって1/6Gの重力しかなかったのが
陸にあがって1Gに変わり、なおかつ5キ
ログラムもある頭を 150 ~ 180 センチの高
さに保つには相当なエネルギーが必要です。
血圧を例にとると、4足歩行の 45 キロ位
の大型犬で血圧は 90 ミリHgほどです。人間は 120mmHg なければ 160 センチの位置にあ
る頭の活動を生き生きと保つことが出来ません。しかし、横になれ
ばイヌと同じ血圧 90mmHg でも細胞レベルの呼吸は十分維持できま
す。
体重を支える骨には大きな負荷がかかります。骨が体重を支えて
いるときはただ柱のようにさせているのではなく、酸素を消費し、
骨の中のリン酸を消費しエネルギー使って支えています。ここで重
要なのは骨は体を支えるだけではなく造血もしているということで
す。立っているときは体重を支えることでエネルギーが消費されて
しまい、エネルギーが不足して造血したくても出来ません。だから新陳代謝は睡眠中に行
われます。1晩で1兆個の細胞がリモデリング(新陳代謝)しています。つまり、睡眠を
とらないと新陳代謝というプロセスが行われないということです。
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睡眠は脳の疲労を回復する栄養剤
太古から人類は、日の出とともに狩猟や農耕に精を出し、日が沈むとともに体を休め眠
りにつく一日を過ごしていました。睡眠とは、重力に逆らい二本足で昼間活動していた人
類が、疲れを取るために横になって眠る時間です。重力の影響は大きいので、横になって
体を休め、その影響を解除しないと骨髄の造血機能が働きません。骨休めという言葉の意
味でもあります。
眠っている間は副交感神経が優位になり、成長ホルモンが最も多く分泌され、細胞の成
長や修復を行ったり、脂肪を分解させたり、病気をもたらすウィルスなどの体内への侵入
防ぐ免疫力も高めたりします。
また、睡眠は体ばかりでなく、何よりも脳の疲労を回復させてくれます、長い時間運動を
続けていると、筋肉に疲労物質がたまって、充分な力が発揮できなくなるように、脳でも
同様のことが起こります。脳は働く時間と量に比例して、睡眠促進物質プロスタグランデ
ィンやサイトカイン、神経ペプチドなどがたまってきてしまいます。
睡眠促進物質が増えすぎると脳が壊れてしまうので、睡眠促進物質の生産を止め、これを
分解するために、脳の働きを止めて眠る必要があるのです。そのため大脳が疲れてくると
自然に眠くなり、眠ることによって脳の疲労を回復して定期的なメンテナンスを行ってい
ます。
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嫌なこと、辛いことを眠って忘れると言うように睡眠
中には心の修復、記憶(情報)の整理までもが行われ
ています。
睡眠中に分泌されるホルモンの役割
夜、眠りについてから朝起きて活動を始めるまでに、
体の中ではさまざまなホルモンが分泌され、大切な働
きをしています。
ノンレム睡眠中には、新陳代謝を活発にする成長ホルモンや免疫細胞同士の情報伝達の役
割をするサイトカインなどが活発に分泌され、病原菌に対する抵抗力が強化されたりしま
す。成長ホルモンは 22 時頃から活発になり 2 〜 3 時頃にピークを迎えます。「寝る子は育
つというように」、睡眠の深い子ども程たくさん分泌され、子どもの成長に重要なホルモン
ですが、大人にとっても体の修復に欠かせません。たんぱく質や骨などを合成する働きの
促進、疲労回復、リンパ球の働きを活発にさせて傷の修復、お酒を飲んで代謝に使われた
肝臓細胞の再生など、細胞を活性化させ、体全体のダメージを回復するホルモンです。
女性にとってもこの 4 時間は、お肌のゴールデンタイムといわれ、肌の生まれ変わりが最
も活発になり、熟睡によって皮膚の新陳代謝が促進され、肌がみずみずしく、つやつやし
ていきます。
レム睡眠中には、生命維持に不可欠なホルモン、コルチゾールが分泌され、睡眠中のエ
ネルギー供給のために脂肪を燃やしたり、肝臓にあるグリコーゲンをブドウ糖に分解して
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血糖値を高めてすぐに活動できるよう
にします。
不規則な就寝時間や浅い睡眠は、ホ
ルモンの分泌時間や量を乱し働きを低
下させた体温調節ができなくなりま
す。ホルモンや免疫から考えると、遅
くても午前 0 時には入眠するのが望ま
しいでしょう。
それでは、睡眠時間に関して最近一
番よく聞くのが、6 時間半~ 7 時間半くらい、つまり平均して 7 時間くらいが良いという
ことです。従って 11 時頃就寝し、6 時頃起床するのが理想的と言われています。この点に
関しては、本人にとって適正な時間であれば十分であり、それよりは起床時間と就寝時間
を一定にさせることが最も大事な点です。
適切な睡眠時間は、各人によって異なっていることを理解され、睡眠時間を適正に確保
し、起床・就寝時間を一定にすべ
きです。これが最低限必要とされ
ています。
とくに、仕事の関係で十分な睡
眠時間が確保できない状況におい
ては、最低限、朝の起床時間を一
定にする必要があります。
以上、睡眠は、片頭痛治療上、
極めて大切であるかが理解して頂けたかと思います。
しかし、問題は職業柄夜勤だけの場合です。ガードマン、夜警などの方々は、このよう
な考え方では睡眠がとれません。このため、このような方々の慢性頭痛のコントロールに
は難渋していることは事実です。こうしたことは、睡眠が十分に確保できないとどのよう
になるかを証明していると言えます。
経験的に、睡眠時間の問題が解決しなければ、いかなる手段を用いようとも、慢性頭痛
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を改善させることは不可能といえる程、重要な位置を占めております。
慢性頭痛に「不眠」があれば、その不眠の原因・背景を探ることを出発点にすることが
大切になってきます。ここから、慢性頭痛の発症要因を探る手がかりになることもありま
す。
このように睡眠は、ミトコンドリアを元気にさせるために絶対的に必要なものです。
2.マグネシウムの問題
マグネシウムの役割
1.緊張状態から解放してくれます
筋肉の動きは、筋肉細胞内のカルシウム量の増減で決まり
ます。カルシウムの量が増えると筋肉が緊張(収縮)し、カ
ルシウムの量が減ると筋肉が弛緩します。
じつは、カルシウムの量を減らすときにマグネシウムが使
われています。イメージでいいますと、細胞にカルシウムを
出し入れするポンプがあって、マグネシウムはこのポンプが
カルシウムを汲み出すときに欠かせないのです。ですから、
マグネシウムが不足すると筋肉が収縮した状態を解消できな
くなります。神経も過敏になるために痛みも感じやすくなります。
マグネシウムは「抗ストレスミネラル」と呼ばれ、スト
レスによって激しく消費されてしまうので、イライラ感が
増したり、怒りつぽくなったりもします。こうした状況が
長く続き、もしも心臓で激しい緊張状態が起こったら……
心臓は麻痺を起こしてその動きを止めてしまうことになる
わけです。これが突然死です。
寝ているあいだに足がつる、まぶたがピクピクとけいれんするといった症状も、筋肉が
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緊張した状態が続くために起こります。こういう症状があらわれやすい人はマグネシウム
不足です。
また、片頭痛の前兆として「肩がこる」という人もたくさんいますがこれも同様です。
心当たりのある方は、すくに「マグネシウム液」を水に溶かしたものを飲んでみてくださ
い。ちょつと多めに 4 ~5 cc ほど。効果はバツグンです!
マグネシウムの不足によって緊張型頭痛を起こすという研究報告もあり、不足したマグ
ネシウムを補うことで頭痛を改善に導いてくれます。
マグネシウムが役に立つのは、肩こりなど筋肉の緊張から来る筋緊張性頭痛です。マグ
ネシウムは、筋肉の緊張を解いてくれます。また血管の筋肉をリラックスさせることで血
流が増え、血行が良くなるからです。
マグネシウムを大量摂取することで血液の循環がよくなり、また筋肉の収縮も抑えるの
で、緊張型頭痛にも効果があります。
2.こんなに大事なのに・・・
!?
ところで、マグネシウムつてあまり“健康ネタ”には登場しない成分だと思いませんか?
というのも、マグネシウムは比較的簡単にとれるものだと思われてきたからです。
しかし、実際はそう簡単ではありません。
ストレスに弱い女性のほとんどが、じつはマ
グネシウム不足です。たぶんその原因の1つ
には、カルシウムが多くてマグネシウムが少
ない「乳・乳製品」(ケーキ含む!)のとり
過ぎがあると思います。女性はみんな大好き
ですから。
乳・乳製品には、カルシウムが多く含まれ
ています。あなたも小さい頃、「丈夫な骨や
歯をつくるために牛乳を飲もう!」といわれ
たでしょう。でも実際のところ、カルシウムをたくさんとってもほとんどが吸収されずに
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排泄されてしまうし、それだけならまだしも、マグネシウムなどほかの大事なミネラルを
道づれにしてしまいます。「小食だけど乳製品は死ぬほど好き!」という女性は、超ヤバイ
かも知れません!?
カルシウムとマグネシウムの摂取バランスは、カルシウム「2」に対してマグネシウム
「1」が理想的だといわれてます。それが牛乳だと《10: 1》
、チーズにいたっては《20
~ 30:1》というバランスの悪さです。
サプリメント(錠剤)でとるから大丈夫と思っても、ほとんど
吸収されないので無意味です。マグネシウムは薄くして飲むのが
いちばんいい方法です。毎日コツコツつづけて、マグネシウム不
足を起こさないようにするしかありません!
マグネシウムは生命活動に必要な”代謝”の原動力となる、300 種類の「酵素」のサポ
ーターでもあります。
3.女性・みんなのお悩みの「生理痛」
生理痛には個人差がありますが、わずらわしいのは誰でも同じです。
生理痛は時期によって原因と症状が異なります。
月経前
前回の月経後、分泌量を増してきた「エストロゲン」(女性ホルモン)が排卵とともに急
激に低下し、それに代わって「プロゲステロン」
(黄体ホルモン)が増加します。このとき、
受精卵が着床しなければ、分泌量が一気に減少します。こうしたホルモンの分泌量の大き
な変化が月経前症候群(PMS)の原因となり、自律神経のバランスが乱れて、乳房の張
りや痛み、のぼせ、頭痛、胃痛、カラダのむくみ、便秘、イライラ、眠気、不眠などの不
調を引き起こします。これらは脳内セロトニン低下が関与します。
月経前半・後半
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月経前半、経血を体外に排出するために子宮収縮が起きて痛みをともないます。これは
「プロスタグランジンF2α」という物質の過剰分泌が原因です。この量が多すぎると子
宮の収縮が強くなり、キリキリとした痛みが生じます。
プロスタグランジンには血管収縮作用があるため、頭痛や肩こり、腰痛、だるさ、冷え
がひどくなったり、吐き気や下痢の原因になったり
します。
月経後半には、冷えなどにより骨盤を中心に血流
が悪化するため、プロスタグランジンが骨盤内で滞
り、下腹部の鈍痛や腰回りの重苦しい感覚を引き起
こします。
じつは早産や流産にもプロスタグランジンの過剰
分泌が関与していて、必要以上に激しい子宮収縮が早産や流産の原因となるのです。子宮
の収縮を伝える神経伝達にもカルシウムとマグネシウムが関わってます。
カルシウムはメッセンジャーをたくさん出しますがマグネシウムはメッセンジャーが出
過ぎないようにします。ということは、マグネシウムは神経伝達において「収縮せよ」と
いう信号が届きすぎないよう調節してくれているのです。
これらのことから筋肉が収縮しすぎず弛緩するには
マグネシウムが必要であることわ
かりますね。マグネシウム不足では子宮筋層はギュ~っと収縮しっぱなし になります。
すると子宮筋層の血行はもちろん悪くなり、細胞は酸欠を起こしますから SOS 信号である
発痛物質がでてきますし、その状況を助けるためにプロスタグランジンが活躍することに
なります。結果的に痛みが発現することになります。
生理痛は、子宮筋のいわば痙攣ですから、マグネシウムの不足している状態でもありま
す。実際、適切なマグネシウムの補給で、生理痛がなくなる人もいます。
こういった理由からマグネシウムが必要になってきます。月経時に頭痛が酷い場合に大
切な点です。月経時に片頭痛はいつもより頭痛が激しい人はマグネシウム補充が必須です。
4.「むくみ」との関連
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マグネシウムが不足すると、筋肉などの細胞中のカルシウム濃度が高まり、細胞が“緊
張状態”になります。この状態が続くと、血圧が上がったり、筋肉が動かなくなったり、
細胞内のミトコンドリア(エネルギーをつくる)が死んでしまったりと、かなり“マズイ
状況”になります。
そのため、カラダを守ろうとする仕組み
が働いて、細胞内に水分を取り込み、カル
シウム濃度を下げようとするのです。これ
がいわゆる「水ふくれ(水太り)」の状態
です。
このとき、マグネシウムが適正に補給さ
れれば、細胞から余分な水分が排出されて
正常な状態に戻ります。
健康ジュースやマグネシウム液による補
充を始めると、一時的に尿の量が増えるこ
とがあるのですが、これは細胞内の余分な
水分をとり除いてくれるからです。水分が減る分、体重も減少します。
さらに、寝起きの顔がむくんでしまうのは、寝ているあいた、筋肉をほとんど使わない
ことが原因です。
動脈の血液は、心臓のポンプにより全身に行き渡ります。反対に静脈の血液の“戻り”
は(リンパの戻りも)、筋肉の働き、特にインナーマッスルの働きに左右されます。夜、寝
ているあいだは筋肉が活動しないので、末端組織はもろにその影響を受けて戻りが悪くな
るのです。ところが、朝起きて筋肉を使い始めると、末端組織にたまっている水分も抜け
ていき、まぶたのはれも次第に引いてくるというわけです。
ミトコンドリアの働きの悪さに、マグネシウム不足が加わると・・
マグネシウムイオンは細胞内小器官(ミトコンドリア)の膜構造ならびに細胞膜構造に
おいて膜の安定性を保つ役割をしています。
細胞膜にはミネラルイオンが通過できる小さな「穴」があり、透過できるイオンの種類
によって、「ナトリウムチャネル」とか「カルシウムチャネル」といった名がつけられてい
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ます。これを使って必要なミネラルを自在に出入りさせることで細胞内のミネラルイオン
濃度の調整をするのです。ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に
調整する作用があります。
マグネシウムイオンが不足すると細胞内
小器官(ミトコンドリア)の”膜構造なら
びに細胞膜構造”のイオンポンプの力が弱
くなり、細胞内小器官であるミトコンド
リア膜の透過性も亢進し、ミトコンドリ
ア内に入り込んだカルシウムイオンは、
ミトコンドリア外へ出ていけません。カ
ルシウムはミトコンドリア内に少しずつ
蓄積してきます。ミトコンドリア内カル
シウムイオンの増加が起こります。それを薄めるために細胞浮腫、つまり水ぶとりの状態
になります。
細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎると、ミトコンドリアの調整機能
は破壊されてしまいます。調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまいます。
ミ
トコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には、ミトコンドリア内のカ
ルシウムイオン濃度が強く係わっており、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症にも非常
に大きな原因となります。
このようになった細胞に、適量のマグネシウムが供給されると、溜まっていたカルシウ
ムイオンなどが排出され、それにつづき、水分も排出されますが、この水ぶとり状態も限
度がありカルシウムイオンがある量を超えると、その細胞は不必要となり見捨てられます。
そして、後にはカルシウムイオンなどで一杯になった固まりだけが残されます。
これが
石灰化した細胞のことです。動脈硬化の原因の一つです。結果的に、この細胞は死滅して
しまいます。
細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出するカル
シウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続くことに
なります。片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の収縮は、脳血管細胞内のカルシ
ウム濃度の高まりによっても生じます。それはつまり、マグネシウム不足がもたらす結果
でもあるのです。
- 214 -
このようにして、マグネシウムイオンの低下はミトコンドリア内カルシウムイオンとナ
トリウムイオンの増加およびカリウムの喪失による細胞内でのカリウムイオンの低下を招
きます。同じくマグネシウムイオン感受性のATP依存性カルシウムポンプの活性低下を
招くことになり、細胞は興奮しやすくなります。これが「脳過敏」を引き起こしてきます。
このようにしてマグネシウムイオンの減少はミトコンドリアの好気的代謝異常をきたし
て、神経細胞を興奮しやすくすることになります。
これらは片頭痛の根本的原因として考えられているものです。
片頭痛では、ミトコンドリア代謝異常が生まれつき存在するために、ミトコンドリアは
マグネシウムイオンの減少による影響をさらに受けやすくなることになります。マグネシ
ウムイオンの低下は片頭痛発作の結果でなく発作の始まる前から存在しているのです。神
経細胞の”興奮性の亢進”はマグネシウムイオンの減少の結果あるいはミトコンドリアの
代謝異常の結果として生じているものです。このようにして、「脳過敏」が形成されること
になります。
片頭痛とてんかんは密接な関係にあって,「片頭痛は本質的にてんかんの一種である」こ
とが強調されていますが、”脳の興奮性の亢進”は、上記のことを示すものです。
そして、マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせるこ
とに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。これが「脳過敏症
候群」の本態です。市販の鎮痛薬の服用が原因ではありません。間違えないようにして下
さい。この点は極めて重要なことで、忘れてはなりません。
それではマグネシウム不足の原因はなんでしょうか?
マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに
悪くさせることに繋がることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”
にもなってきます。
それではマグネシウム不足の原因はなんでしょうか?
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・アルコールの飲み過ぎ
アルコールの多飲により
尿中にマグネシウムを排泄する量が増加します
・毎日の牛乳摂取
カルシウムばかりが多い牛乳を いつも飲むことで
2
:1が望ましいカルシウム:マグネシウムのバランスが
狂い、マグネシウムの相対的欠乏を招いてしまいます
・ストレス
ストレス対応ホルモンがマグネシウムの排泄を促してしまいます。最初で、その機序は
説明しました。
・激しい運動や暑すぎる環境
マグネシウムは
汗とともに大量に排泄されます。
・食材のマグネシウム含有量が低い
日本の土壌は火山灰土でミネラルが少ないため
その土壌で育った作物はあまりミネラ
ルを含まないのです。
さらに農薬の使用で土壌が枯れ
以前より含有率は低下していると言われています。
・白米小麦粉など精製食品の摂取
精製過程でミネラル分がそぎ落とされてしまっています。
・白砂糖の摂取
- 216 -
消化分解にマグネシウムが大量に消費されます。
・加工品や清涼飲料水の摂取
これらに多く含まれるリンにより
マグネシウムの吸収が妨げられます。
・食品添加物や農薬等の摂取
有害物質を解毒するために肝臓でマグネシウムを消費します。
・エストロゲン過剰(環境ホルモン含む)
本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはず
ですが、肉・乳製品・環境ホルモンの摂取でエス
トロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内
濃度は低下します。
肉・牛乳・乳製品、これらにホルモン剤(エス
トロゲン様環境ホルモン)が含まれている可能性
がある事をご存知ですか?
例えば乳牛は、早くから、そして大量にお乳を
出させるために、遺伝子組み換え牛成長ホルモンというのが投与されている事があります。
日本では規制も表示義務もないですが)
アメリカでは、逆にこのホルモン剤を「投与してません」と書くと、投与している牛乳
の販売を妨害する、と裁判が起こり、区別してはいけないようになっています。
ホルモン剤投与でたくさんお乳を出す牛さんは、ママさん達ならわかると思いますが、
乳腺炎を起こしやすくなります。その乳腺炎防ぐために、抗生剤も投与されているのです。
肉牛にもホルモン剤は使われており、日本では4種類のホルモン剤投与が認可されてい
るようです。(EU では一切禁止されていますが・・)
ホルモン剤に抗生剤をお肉や牛乳・乳製品から取っているかもしれない、なんて、普通
- 217 -
は気付きませんので注意が必要です。
・食の欧米化
洋食より和食の方がマグネシウムを多く含む献立ですが、食の欧米化によりマグネシウ
ムの摂取量は低下しています。
・生理時には・・
特に更年期以前の女性は、月経前に血中マグネシウムを骨や筋肉へと移行させるため、
脳内のマグネシウムレベルが低下してきます。
などなど。。。
こういったことから容易に、マグネシウム不足に陥ってしまいます。
このため、マグネシウムを不足を防ぐするには? 以下の点に注意しましょう。
・アルコールも牛乳も程々に
・ストレスをためない
・なるべく無農薬で精製されていない物を摂取
・加工品
清涼飲料水
食品添加物を避ける
・環境ホルモンを避ける
・洋食よりも和食でマグネシウムを補給
マグネシウム不足が持続すれば、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせることに繋が
ることになり、片頭痛を悪化させる”元凶”にもなってきます。
そして先程の「マグネシウム不足の原因」でも述べましたように、いろいろな状況
で容易にマグネシウム不足が引き起こされてきます。特に、女性の場合はこの傾向が
著しく、月経時の片頭痛がいつもの片頭痛よりも激しくさせる根源ともなっています。
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現在、普通の人でもマグネシウムが不足しやすい生活環境にあります。とくに先程も述べ
ましたように、片頭痛の方々はマグネシウム不足が指摘されています。このため、日常的
に「マグネシウム」を摂取することを意識する必要があり、油断すればすぐに不足してし
まうことになります。
このマグネシウムの摂取量は、それぞれの年齢によって推奨摂取量があります。これを
満たすように、毎日摂取することが大切です。マグネシウムの補充は片頭痛治療の”要”
となっていますので、このことを常々念頭におく必要があります。
”生理時にいつも片頭痛が起き、激しい”といった場合は、マグネシウム不足を疑うく
らいに大切なことです。こうした場合は、必ず、是正に努めて下さい。
細胞内のカルシウムイオン濃度の異常
先程も述べましたが、細胞の代謝には、細胞内外に存在するカルシウムやナトリウム、
カリウムやマグネシウムといったミネラルイオンが大きくかかわっています。
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皆さんは高血圧の治療薬として用いられる
「カルシウム措抗薬」というのをご存知でしょ
うか? 細胞膜にはミネラルイオンが通過でき
る小さな「穴」があり、透過できるイオンの種
類によって、「ナトリウムチャネル」とか「カ
ルシウムチャネル」といった名がつけられてい
ます。これを使って必要なミネラルを自在に出
入りさせることで細胞内のミネラルイオン濃度の調整をするのです。カルシウム措抗薬に
はカルシウムチャネルをふさぐ働きがあり、カルシウムイオンが細胞内へ流入するのを防
ぎます。
ミトコンドリアには、細胞内のカルシウムイオン濃度を適正に調整する作用があります。
ところが、細胞内のカルシウムイオン濃度が異常に高くなり過ぎると、ミトコンドリアの
調整機能は破壊されてしまいます。調整機能が壊れたミトコンドリアは死滅してしまうの
です。
このように、ミトコンドリアのエネルギー産生やミトコンドリア自体の生死には細胞内
のカルシウムイオン濃度が強くかかわっており、カルシウムイオン濃度は片頭痛の発症に
も非常に大きな原因となります。
マグネシウムとカルシウムの関係
カルシウムには筋肉を「収縮させる」作用があります。マグネシウムは筋肉細胞内のカ
ルシウムをポンプで汲み出すように排出することから、収縮した筋肉を「緩める」作用が
あります。カルシウムとマグネシウムは、このように常に相反的に作用し、通常はカルシ
ウムイオン濃度が適正に維持されています。
しかし、細胞内のマグネシウムが著しく不足すると、カルシウムイオンを細胞外に排出
するカルシウムポンプの調整機能が働かなくなり、筋肉は収縮状態(緊張した状態)が続
くことになります。その結果、こむら返りを起こしたり、瞼がピクピクと痙學したりする
などの症状があらわれます。
さらにマグネシウムの不足が進むと、筋肉細胞内のカルシウム濃度が高くなり過ぎて筋
肉の伸縮ができなくなります。もしそれが心臓で起きれば、心臓の機能停止(死)といっ
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た重篤な状態に陥ることになるわけです。
片頭痛の前兆や、発症の引き金となる脳血管の
収縮は、脳血管細胞内のカルシウム濃度の高まり
によっても生じます。それはつまり、マグネシウ
ム不足がもたらす結果でもあるのです。
マグネシウム不足の原因は先程も述べました。
その原因としては、利尿剤などの薬剤の服薬、食
事からのマグネシウム摂取量不足、胃腸の吸収障
害(下痢など)があり、そのほかにも多くの生活
習慣に原因があります。
たとえば、インスリンはブドウ糖とともにリンを細胞内に移動させる作用がありますが、
暴飲暴食などによってインスリンの過剰分泌を起こすと、必要以上に細胞内にリンが取り
込まれて血液中のリン濃度が低下し、低リン血症を起こします。低リン血症になるとマグ
ネシウムは腎臓から尿とともに多く排泄されます。このように、インスリンの過剰分泌も
マグネシウム不足を起こす原因となります。
また、マグネシウムは「抗ストレスミネラル」と呼ばれるように、ストレスが多いとき
ほど多く消費されます。片頭痛の人は精神的ストレスを受けやすく、ほとんどの人がマグ
ネシウム不足であるといっても過言ではないと思います。
その他、激しい運動、過労、過食など、マグネシウムを消耗する要因は、現代の生活環
境の中に満ちあふれているのです。
肉・牛乳(乳製品)・卵の摂りすぎの弊害
私たちの健康にとって、カルシウムは非常に重
要なミネラルです。しかし一方でカルシウムのと
り過ぎが「マグネシウム不足を引き起こす」とい
うことはあまり知られていません。特に食が細い
(小食)にもかかわらず、肉類や乳・乳製品が好
きという人は要注意です。
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牛乳は、カルシウムを多く含む食品としてよく知られています。でも、牛乳をとり過ぎ
ると、カルシウムは腸から充分に吸収されることなく、そのほとんどが糞便とともに排泄
されてしまいます。このとき、カルシウムだけではなく、体に必要なマグネシウムなどの
ミネラルや栄養素も一緒に引き連れて排泄されてしまうのです。
では、もし牛乳に含まれるカルシウムを充分に吸収したとするとどうなるか? 血液中の
カルシウム濃度が急激に高まります。これがまたよくないのです。
体にはホメオスタシス(恒常性維持機能)という、バランスをとって正常値に近づけよ
うとする働きがありますから、余分なカルシウムは尿としてただちに排泄されることにな
ります。この排泄にともない、マグネシウムや亜鉛などのミネラル、他の栄養素がやはり
失われることになるのです。
このように、牛乳の吸収率がよいにしろ悪いにしろ、カルシウムを多く含む牛乳や乳製
品をとり過ぎることは、結果的にマグネシウムをはじめとする必要なミネラルを失うこと
になります。実際、牛乳や乳製品など、カルシウム分か特に多い食品のとり過ぎによって
マグネシウム不足になるケースは多いのです。
ちなみに、カルシウムとマグネシウムの摂取比は「2一1」が適切と考えられています
が、牛乳そのもののカルシウムとマグネシウムの比は「10 一1」程度と、カルシウムの比
率が高くてアンバランスです。それから代表的な乳製品であるチーズに含まれるカルシウ
ムとマグネシウムの比は、ナチュラルチーズで「20 一1」程度、プロセスチーズ「30 一
1」と、もっとバランスが悪くなっています。マグネシウム不足はミトコンドリアの働き
を悪くさせますので、牛乳や乳製品のとり過ぎには充分に気をつけましょう。
また、肉・牛乳・乳製品、これらにホルモン剤(エストロゲン様環境ホルモン)が含ま
れている可能性があり、本来月経期間中はエストロゲン濃度が低いはずですが、肉・乳製
品・環境ホルモンの摂取でエストロゲンが高濃度になると、マグネシウムの体内濃度は低
下します。
またタンパク質を多量に摂ると(肉食)、解毒の働きをする肝臓と、排泄を担う腎臓に、
大きな負担をかけることになります。尿素が増えてくると、それを尿として流し出すため
に、体は多くの水分を必要とします。そして尿と一緒に、カルシウムやマグネシウムなど
のミネラル類も排泄されてしまうことになります。こういったことから、マグネシウム不
足を引き起こすことになり、マグネシウム不足はミトコンドリの働きを悪くさせます。
高脂肪・高タンパク質食品に偏った食生活を続けると、カロリーのとり過ぎとあいまっ
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て、「SOD」(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシダーゼ」、
「カタラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性
に必要不可欠なマンガン、鉄、銅、亜鉛、セレ
ンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。
結果、活性酸素の発生が増加することになり、
ミトコンドリアの働きを悪化させます。
肉類や乳・乳製品といっだ動物性タンパク質
”たっぷりの食事は、腸内環境を悪くします。
腸内の悪玉菌の大好物は、肉などたんぱく質や脂肪を多く含む食品です。
悪玉菌はたんぱく質やアミノ酸を分解し、有害物質を作り出し、このためミトコンドリア
の働きを悪化させることになります。
牛乳の飲み過ぎは、過剰なカルシウムが排泄されるのと同時に、マグネシウム・亜鉛・
鉄などのミネラルや、他の栄養素も失われてしまいます。その結果、さらにミネラル不足
が進むことになります。
「SOD」
(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシダーゼ」
、
「カ
タラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、銅、亜鉛、セレ
ンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が過剰に発生する
ことになります。
砂糖のような「空のカロリー食品」の多い食事には必須栄養素が不足していますから、
カロリーだけは満たされても必須栄養素は欠乏するという事態が生じます。結局エネルギ
ー代謝が円滑に進まず、ミトコンドリアの働きを悪くさせます。
ミトコンドリアは「生命のエネルギー工場」と呼ばれ、エネルギーを産生する重要な場
所です。ミトコンドリアの働きの悪さは、新陳代謝やエネルギー代謝など代謝の低下を意
味します。このエネルギー代謝を円滑に行うためには、食生活でとくに栄養素・ビタミン
・ミネラルを過不足なくバランスよく摂取することが大切になります。
偏った食事は、ミトコンドリアの働きを悪化させ、新陳代謝やエネルギー代謝が円滑に
行われなくなります。
こうしたことから、食生活が極めて重要な鍵を握っています。
以上のように、食生活でとくに栄養素・ビタミン・ミネラルを過不足なくバランスよく
摂取することが大切になります。
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インスリン過剰分泌
血糖値というのは血液中のブドウ糖の濃度のことです。ブドウ糖というのは、ご飯や麺
類などの主食に多く含まれる「糖質」が分解されたもので人間が活動するための主なエネ
ルギーになります。食事をすると糖質が消化吸収
されブドウ糖になり吸収され、血液によって体の
あちこちに運ばれます。
血液の中のブドウ糖はそのままではエネルギー
として使えません。血管からエネルギーを使う器
官の細胞に取り込まれないといけないのですが、
その取り込む役割をするのが「インスリン」です。
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、食事をして血糖値が上昇すると分泌量が
増え、血中に増えたブドウ糖を細胞に取り込みます。
その取り込まれたブドウ糖がエネルギーになって、人間は活動することができるのです
が、余分にとってしまったエネルギー(ブドウ糖)は脂肪として蓄えられてしまいます。
急激に血糖値が上がりすぎますと、血糖の急激な上昇を抑制するためにインスリンが過
剰に分泌されることになります。過剰に分泌されたインスリンは血糖を下げすぎることに
なります。血糖値が下がりすぎると、血糖を適正なレベルに戻そうとするからだの仕組み
が働き、体脂肪から遊離脂肪酸がエネルギー源として放出されるようになります。
体脂肪からブドウ糖などエネルギー源としての生成とその消費がバランスしていれば問題
を生じることはありませんが、急激な血糖値の変化にそのバランスが崩れてしまうと血液
中の遊離脂肪酸濃度を高めることになります。
緩やかな血糖値の上がり方なら良いのですが、急上昇と急降下を繰り返すような食事を
していると太りやすいのです。上がりすぎた血糖値を下げるためにインスリンが頑張って
中性脂肪をたくさん作ってしまうということなのです・・・
また、急上昇急降下の食べ方はすぐにお腹が空くので、食べる量が多くなってしまいま
すし、いつも大量のインスリンを出していると膵臓が疲れてしまい糖尿病になりやすくな
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ってしまいます。
インスリンの過剰分泌を起こすと、必要以上に細胞内にリンが取り込まれて血液中のリ
ン濃度が低下し、低リン血症を起こします。低リン血症になるとマグネシウムは腎臓から
尿とともに多く排泄されます。このように、インスリンの過剰分泌もマグネシウム不足を
起こす原因となります。
肥満の人が健康を願うのであれば、何よりも標準体重(BMI:一 25 以下)まで減量
することが第一優先です(スポーツなどで筋肉体質な人は別として)。
肥満であればあるほど、ミトコンドリアの増殖は抑えられてエネルギー代謝が少なくな
り、さらに肥満になりやすくなるという悪循環に陥ります。
食事はカロリーのとり過ぎに気をつけるとともに、いつも満腹でいるのではなく、次の
食事の前には必ず空腹を感じるようにすることです。食事からブドウ糖の供給がなくなれ
ば空腹感を感じ、体に蓄積されているグリコーゲンや中性脂肪からのエネルギー代謝が開
始されます。このとき、ミトコンドリアは栄養分が不足してきたことを認識して数を増や
そうとするのです。ですから間食はダメです!
さらに、空腹時の運動は軽いものであっても、ミトコンドリアをより刺激することにな
り、効率よく数を増やすことにつながります。
小断食(三度の食事を一度程度抜く)は、ミトコンドリアを刺激するのに有効な手段です
が、2日を越える絶食は、刺激ではなくミトコンドリアの死滅を招く可能性があり逆効果
です。分子化学療法研究所の後藤日出夫先生提唱される、朝食を「万能健康ジュース」に
変えること”は、日常的に軽い刺激を与えることになり、ミトコンドリアの活性化に有効
です。
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標準体重以下(BMI一 20 以下)の人はカロリーを制限する必要はなく、むしろ摂取
カロリーを増やす必要がありますが、それでも間食は控えて、さらに空腹時には軽い運動
をすることが、ミトコンドリアの数を増すためには効果的です。
食べ物では、ブドウの果皮(赤ワインにも含まれる)やピーナッツの薄皮に含まれるポ
リフェノールの一種レスペラトロールに、カロリー制限と同じような効果があり、ミトコ
ンドリアの数を増すといわれています。また、大豆や大豆製品に含まれるタンパク質成分
のβコングリシニンや、黒豆の皮に含まれるアントシアニン、トマトなどに含まれるリコ
ピンもミトコンドリアの数を増す効果があるといわれています。
脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種、アディポネクチンには、ミトコンドリアの数
を増やす効果があるといわれています。これも肥満になれば分泌量が減り、減量すると増
えます。標準体重でいること、きちんと空腹感を感じることが、ミトコンドリアを増やす
最良の方法なのです。
このように、食べ過ぎはミトコンドリアの働きを悪化させます。
さらに活性酸素は細胞にインスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)を高めて、
それにより糖尿病や動脈硬化を引き起こしやすい状態をつくるという悪循環になります。
インスリンが効きにくい状態(インスリン抵抗性)は、それ自体で「酸化ストレス」を
促進すると言われています。
これらによって引き起こされる炎症反応は活性酸素の増加や細胞の酸化を促進する要因に
なります。
血液中に溢れる遊離脂肪酸も直接的に酸化ストレスを増加させる要因になっています。
血液中に大量の遊離脂肪酸があると、血液の酸化が亢進します。
また、脂質が酸化されると細胞が障害されてしまいます。
細胞を包む膜の活性酸素産生、細胞内のミトコンドリアでの活性酸素産生も促進します。
また、肥満化した脂肪細胞からは様々な生理活性物質(アディポカイン)や炎症を引き
起こす物質(炎症性サイトカイン)が分泌されます。
これらの生理活性物質や遊離脂肪酸などが合わさって、身体の「酸化ストレス」を促進す
る要因となり、全身の障害を招くことになるのです。
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3.有害物質・・活性酸素の問題
細胞内小器官である「ミトコンドリア」は私達に生きるエネルギーを与えてくれますが、
反面、活性酸素を最も多く発生する細胞内小器官でもあります。
ミトコンドリアを増やすと、体全体のエネルギー発生量を増やすことができます。ミトコ
ンドリアを増やし、活性化させると、エネルギー合成時に発生する活性酸素の消去する機
能も高まります。しかし、弱ったミトコンドリアの活性酸素を消去する機能は低く過剰の
活性酸素が発生し、その活性酸素によってミトコンドリアがさらに弱っていくという悪循
環が始まります。
身の回りは活性酸素を生み出す要因だらけ
実は活性酸素は、私たちが生きていく上で、どうしても発生してしまうものなのです。
私たちが体に酸素を取り込み、消費する過程で活性酸素は自動的につくり出されます。
激しい運動をしているときはもちろんのこと、仕事や家事などをしてふつうに生活して
いるときも、くつろいでいるときや眠っているときも発生するのです。
私たちは生きている限り活性酸素から逃れることはできません。
太古、地球の生物が酸素を体に取り込んで生きるようになったときからの、宿命といえ
るかもしれません。
もちろん活性酸素が体の中で増える一方だと、人間はたちまち死んでしまいます。
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そのため、私たちの体は活性酸素を取り除く手段を持っています。
ただ、この手段では手に負えない量の活
性酸素が発生したとき、病気や老化が起き
るのです。大量発生のきっかけにはさまざ
まなものがあります。
体が傷を受けたり、ウイルスが侵入した
ときもそうですし、太陽光線も原因になり
ます。
これらは昔から、私たちの体に活性酸素
を発生させる原因になってきました。
その上、現在では、更に活性酸素を発生
させる原因が増えています。
それが食品添加物や洗剤、化粧品などに含まれる化学物質であり、大気中の有害物質や
放射線などです。これらの原因は、昔にはなかったものです。
豊富な栄養をとっているにもかかわらず、現代人に病気が多いのは、このことが原因で
はないかと言われています。
ウイルスや細菌は、病気を引き起こす元凶ですが、これも活性酸素発生の原因になりま
す。これらの外敵が入ってくると、白血球が出動してきて外敵を殺そうとします。
このときの武器が活性酸素なのです。白血球が敵の数に合わせて、びったり適量の活性
酸素しか出さなければいいのですが、白血球は外敵を確実にやっつけるために必要量を上
回る活性酸素をつくってしまいます。その余分な活性酸素が、まわりの細胞まで傷つけて
しまうのです。体にとっての異物は、ウイルスや細菌ばかりではありません。
実は、病気を治すために飲む薬や、空気中に存在する有害物質、そして食品添加物や洗
剤、化粧品などに含まれる化学物質も、体にとっては異物なのです。
これらのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異
物と理解してしまうのです。
そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程でも、活性酸
素が発生してしまうのです。
このように特に、現代の科学や文化の発達が生んだ数々の人工的な要因が、私たちを更
にむしばんでいることが伺えます。
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薬や食品添加物の氾濫、農薬の普及、排ガスによる大気の汚染、水の汚染、原子力の利
用による放射線被爆、電気製品による電磁波・・・・・生活環境の変化、破壊はすなわち
体内での活性酸素の大量発生につながっているのです。
昔から受けてきた紫外線にしても、オゾン層の破壊により、増加し続けています。
こうした要因は、ほんの数十年の間に急速に増えてきたものです。
私たちの体の働きは、太古から少しずつつくられてきたものですから、この数十年の変
化にはついていくことができません。
体の中には活性酸素を取り除く働きもありますが、人間のミトコンドリアは、活性酸素
の発生源が今よりずっと少ない時代につくられていますから、新しい要因が生み出す過剰
な活性酸素まで取り除くことはできない状態にあります。
活性酸素をつくり出す原因がこれだけ増え、体の中には対抗する手段が充分にはないと
すると、私たちの体の中には、過剰な活性酸素が存在しているということになります。
これが現代人の体をむしばみ、病気をつくり出しているのです。
食物の豊富な国に住み、快適な暮らしをしているにもかかわらず、現代社会に暮らす日
本人は病気から逃れることができません。
ガンや糖尿病、心臓病などの成人病の発生が増えているのも、昔はあまりみられなかっ
た喘息や花粉症、アトピーなどのアレルギーが増えているのも、環境の悪化による活性酸
素の増加が原因と考えられます。
日本は長寿大国となりましたが、長寿を謳歌している人の多くは、活性酸素を発生させ
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る要因が少ない時代に育っていることを忘れてはいけません。
また、昔の日本人の食事は活性酸素を取り除くために理想的な食事ともいわれています。
活性酸素の発生要因に囲まれ、欧米風に変化した食事をとって育っている若い人や子供
が、長生きできる保証はどこにもないのです。
また、高脂肪・高タンパク質食品に偏った食生活を続けると、カロリーのとり過ぎとあ
いまって、「SOD」(スーパーオキシドディスムターゼ)や「グルタチオンペルオキシダ
ーゼ」、「カタラーゼ」といった、抗酸化酵素”の活性に必要不可欠なマンガン、鉄、銅、
亜鉛、セレンなどのミネラル元素の不足を引き起こします。結果、活性酸素の発生が抗酸
化作用より常に優位な状態、いわゆる「酸化ストレス」になります。
偏食や過食は活性酸素の発生を加速し、がんや認知症などの疾患にも悪影響を及ぼしま
す。カロリーのとり過ぎは活性酸素の発生量を増加させ、逆にカロリーを制限することは
活性酸素の発生を減少させ、片頭痛を改善させ、老化の進行を抑制します。
さらに、活性酸素の増加させる”環境の悪化”があります。
環境ホルモンとは?
環境ホルモンが問題となりはじ
めたのは、1980 年頃に世界各地で
異常が発見されることによって、
研究がされるようになりました。
環境ホルモンは、外因性内分泌攪
乱物質または外因性内分泌攪乱化
学物質と呼ばれています。
環境ホルモンという呼び名は、
あるひとつの物質の名前ではなく、
”生物のホルモンの働きを狂わせ
てしまう物質”の総称です。環境
ホルモンは、体内の正常な働きをするホルモンの働きを壊すことで、様々な異常を引き起
こします。
体内のホルモンの働きを乱し、生殖機能への影響などが心配されている環境ホルモンは、
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人工的に作りだされた化学物質で、正しくは内分泌攪乱化学物質といいます。環境ホルモ
ンの多くは有機合成化合物で、環境庁が 1998 年 5 月に策定 、2000 年 11 月に改定した「環
境ホルモン戦略計画 SPEED'98」では、“動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その
生体内で営まれている正常ホルモンの作用に影響を与える外因性の物質”とし、疑われる
化学物質として 65 物質をあげています。
また、ゴミの焼却の際に生ず環境ホルモンも大問題になっていますが、私たちの周りに
は 医薬品、農薬、食品添加物、合成樹脂、合成洗剤など、人が作りだした化学物質がたく
さんあります。
問題は人体がダイオキシンなど環境ホルモンである有機化合物を受け入れやすく、分解
・排出しにくい点です。そのために体の中に残って害をもたらすのです。たとえば、女性
ホルモンに似た環境ホルモンが体内に入り込むことで、ホルモン本来の働きが乱されるこ
とになります。環境ホルモンは、前立腺ガンとの関係が心配され、免疫力を低下させるの
ではという不安もいわれています。
食物では、アメリカの肉牛や養殖の魚に環境ホルモンの残留が見られますが、これは家
畜の飼料やエサに成長を早める成長ホルモンが混ぜられているからです。
私たちはゴミを出さないなど、身近にできることから取り組み、これ以上環境ホルモン
を作らないようにすることも重要ではないでしょうか。
環境ホルモンの原因
環境ホルモンの原因となっているのは、化学物質です。化学物質を大量に摂取している
とは、誰もが思わないのでしょうが、日々の生活の中で環境ホルモンは、身体の中に取り
込まれているといってもよいでしょう。殺菌剤・防腐剤・殺虫剤・農薬・食品添加物・ダ
イオキシンなど、約 70 種もの化学物質があげられています。さらに、環境汚染された状態
の川や海などからも有害物質が検出されています。産廃処分場の侵出水から、30 種以上の
環境ホルモンが検出されたという例もあります。
環境ホルモンの影響
環境ホルモンは、知能低下・学力障害・注意力欠如・ストレスへの過剰反応・ 拒食症・
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強迫神経症・様々な不安症・鬱状態・アレルギーなど、人や生物に、多大な悪影響を及ぼ
すことがわかっています。さらに、環境ホルモンの影響を受けている動物の肉などを食べ
ることも環境ホルモンの影響があります。そして、人間への影響として、キレやすい子供
が増えたことも環境ホルモンの影響ではないか?と言われています。
私たちが、なにげなく食べているジャンクフードには、着色料や保存料といった食品添
加物(化学物質)が大量に入っています。さらに、カップメンやお弁当などの容器や缶ジ
ュースの缶には、化学物質が使われていて、微量ですが、溶け出しています。私たちが、
安全だと思っているものには、実際、多くの化学物質が入っているというのが現状なので
す。しかし、そういったものは、私たちの目に見えるものではなく、見逃してしまいがち
です。
このように私達の身の回りには「有害物質」に満ちあふれている生活環境におかれてい
ます。このため有害物質に対する対策を考える必要があります。
デトックス(解毒)を行う上での基本的な対応は、次のようにまとめられます。
1.有害化学物質を摂らない、発生させない(薬、飲酒、魚介類、腸内細菌の健全化など)
2.有害化学物質を体内に吸収させずに排出する(食物繊維、硫黄を含む野菜類など)
3.吸収したものは排泄する(皮脂、含硫アミノ酸・野菜、キレート剤、水分不足など)
4.解毒代謝を向上する(ビタミン・ミネラル類、解毒負荷軽減など)
こういったことから、慢性頭痛を改善させるためには「デトックス」が不可欠となりま
す。
デトックスとは
デトックスとは身体の中の毒素を外に出すということです。不要なものは出してしまう
ことが大事なことです。ちなみに便秘になると不快感を感じます。イライラしたり身体が
重く感じたりしますが、快便の時は爽快じゃないですか。またサウナや岩盤浴で汗をたく
さんかいた時も気持ちいいです。老廃物や毒素を出した時には爽快感を感じるのです。
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もちろん毒はなるべく身体に入れないほうがいいのですが、現実的にはとても難しいこ
とです。だからなるべく出してしまうために「デトックス」が必要なのです。
体内の毒素や老廃物を外に出すこと。これは必要なことなのです。
ストレスが続いて血圧や血糖が上がるなど、新陳代謝が低下することで体に必要な栄養
素などが届きにくく、老廃物などの不要なものが、排出しにくい状況になってしまいます。
つまりデトックスができにくい状況になってしまいます。
毎日の食生活で取り入れる食べ物(たんぱく質・脂質・炭水化物・ミネラル・水)で私達
の体が維持されています。その人間の体の 70
%前後は水でできていますが、水の使い方で
体の中の老廃物や汚染物質を流しだすことに
大きなヒントがあるのです。
人の体は、日々代謝を行い古いものと新し
いものとに交換しています。細胞の数で 5000
億個の細胞が入れ替わるといいます。
その結果、不要物としてたんぱく質や核酸
が分解されて出てくる老廃物や、生命維持や
代謝によって出てくるものなどの有害物質な
のです。
体の不要物質は、血液によって回収されますが、血液の循環がスムーズに行われないと
回収されずに臓器や細胞の働きを邪魔することになります。
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●尿を出しましょう!!・・水分摂取を怠りなく
尿は体の老廃物を排泄したり、病気を教えてくれたりと人間の体にとって大切な役割を
しています。体に毒素をためず健康体にするためにも、毎日の生活においての解毒(デド
ックス)を心がけが必要です。
基本のデドックス・・・多くの解毒(デドックス)の中でも基本ともいえるものが、水を
飲むということです。あらゆる代謝は水のある環境
下で行われるので、水を飲むことで代謝がスムース
になり、細胞が解毒(デトックス)されていきます。
特に、尿から有害物質を排出するためには、尿の
濃度を薄く保つことが必要で、水分が不足して尿の
濃度が高まると、有害物質が溶けずに体内残ってし
まいます。
水をコップでこまめに意識して飲むことです。目
安は 1 日 1 から 2 リットルほどです。ただし、病気
で医師にかかっている場合は、水分摂取の注意があ
るかもしれませんので、医師とご相談してください。
体のなかのさまざまな化学反応の媒体
浸透圧バランス、pH 調整、血液循環などの、体内で起こるほとんどの作用に水が関係し
ています。体温を調節や、栄養素を運んだり、不要なものを排出するのも、水が大きく関
わっています。命の源とも言える働きをしているのです。
大量の水が自分の中を流れ、あらゆる機能を支えていることを考えると、いきいきした
体をつくるのに、水の質が体の良し悪しを左右すことになります。そのためにもよい水を
取りましょう。
ストレスが多い環境下では体内で活性酸素が発生しやすく、さまざまな病気の80%は
活性酸素が関与しているともいわれています。その活性酸素を消してくれるといわれる水
素水が話題になっていますが、世界に奇跡の水といわれる名水もこの水素が多く含まれて
いるそうです。
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☆水の可能性に期待して、老廃物のデトックスを心がけましょう!
●食生活に気をつけましょう。・・食物繊維摂取不足には注意を
沢山尿を出すために、食物繊維やカリウムは、便や尿を出やすくするので、たっぷり取
ることをおすすめします。カリウムの多い食材には、ほうれん草やトマト、リンゴ、にん
にく、人参、海藻など・・・。
要注意!食品添加物の現実
食品添加物には、保存剤、殺菌剤、漂白剤、小麦粉改良剤、合成着色料、合成着香料、
乳化剤などがります。普通の食生活をしていても、私たちは 1 日に 80 種類以上の食品添加
物を食べています。食品添加物の怖さとして、その発がん性が取り上げられています。
摂取されている食品添加物の組み合わせによる害は測定されていません。仮に、食品添
加物自体は、発がん性がないとしても活性酸素となると話が違います。いま、私たちが口
にする食品は、食品添加物のお世話になっていないものが無い程です。
そうした食べ物からも活性酸素が生まれるのです。食品添加物には亜鉛を消費するもの
が多く、亜鉛不足は、活性酸素を打消す
SODの効果を弱めます。その結果体内
に発生する活性酸素の増加が大量に増加
することになります。そのような体内を
水でデドックスをしましょう!
4.薬剤による影響
さらに、「ミトコンドリアの働きを悪く
させるもの」があります。それは、まず「頭痛」のたびに服用する”アスピリン”を含ん
だ市販の鎮痛薬であり、片頭痛・予防薬として使用される抗てんかん薬のデパケンであり、
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また風邪などのときに安易に使用される抗生物質です。
ミトコンドリアは細胞内で細菌のように見え、実際、昔、真核細胞生物に入り込んだあ
る種の細菌がその先祖であると考えられています。このように、ミトコンドリアは細菌的
な性質を有していることから、
他の細菌類と同じように抗生物質により殺傷される可能性が高いのです。細菌に近い生物
であったミトコンドリアにも少なからずダメージを与えます。特に片頭痛の素因のある人
は、ミトコンドリアの数がもともと少なく、またミトコンドリアの働きが悪いために、そ
の影響を受けやすいのです。
こういったことから、意味のない風邪での抗生物質の服用には注意が必要です。
また、牛肉、豚肉、鶏肉など、大量生産される畜産食品や養殖魚には抗生物質を含むエサ
を用いて飼育されたものが多く、それらを通して抗生物質が摂取されることになりますの
で、これらの食品のとり過ぎには注意が必要です。
また、アスピリン(アセチルサルチル酸)は、肝臓で代謝されてサルチル酸という強い
酸に分解されます。サルチル酸は、ミトコンドリアが代謝物を取り入れる小さな穴を破壊
します。その結果、ミトコンドリアはエネルギー代謝ができなくなり、最終的に死滅して
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しまいます。頭痛薬や風邪薬の安易な服薬は、ミトコンドリアの働きをさらに悪くさせま
す。こういったことから、緊張型頭痛の状態で、アスピリンを含んだ鎮痛薬を頻繁に服用
していますと、片頭痛への移行を早めることになります。片頭痛の段階での服用は、その
鎮痛効果を悪くさせ、結果的に効かなくなります。
また、予防薬として使われる抗てんかん薬のデパケンにもミトコンドリア毒性があり、
要注意です。長期間にわたる服用では、結局何をしているのか分からなくなります。
病気を治すために飲む薬(市販の鎮痛薬や病院で処方される薬剤などすべてです)これ
らのものは、つい最近まで、人類の体内に入ることはなかった物質なので、体は異物と理
解してしまいます。
そして、異物を解毒しようと、ある酵素を出します。この酵素が働く過程で、活性酸素
が発生してしまうのです。このため、過剰に服用した鎮痛薬は異物そのものであり、これ
を解毒するために過剰に活性酸素が発生することによって”ミトコンドリアを弱らせる”
ことになります。
以上のように、長期間にわたる薬剤の服用は、その種類は問わず要注意ということです。
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