潰瘍性大腸炎の新しい治療 「レミケード」について 監修 東邦大学医療センター佐倉病院 内科学講座 鈴木 康夫 先生 「レミケード」という新しい治療薬の登場で、 潰瘍性大腸炎に対する治療の達成度、 それに伴う患者さんの生活スタイルが 大きく変わろうとしています。 この冊子では、これまでの治療で 十分な効果や満足が得られなかった 患者さんにとって新しい治療選択肢となる 「レミケード」について解説いたします。 2 潰瘍性大腸炎の治療目標とは? 適切な治療により高い生活の質(QOL:Quality of life) を維持し、 より積極的な生活を送る。 潰瘍性大腸炎の多くは、寛解(症状が落ち着いている状態) と再燃(症状が悪化し ている状態)を繰り返します。潰瘍性大腸炎は、完全に治す治療法がみつかってい ないため、適切な治療を継続することで炎症をコントロールし、寛解を維持するこ とが重要です。 長期にわたり寛解の状態を維持することができれば、大腸摘出手術を回避し、日 常の生活において、外出するなど大きな制限を受けることなく安定した毎日をおく ることが可能になります。 3 潰瘍性大腸炎の現状 厚生労働省の調査では、日本国内の潰瘍性大腸炎患者数は、2011年で 133,543人。ここ数年は、1年に5,000人以上の割合で増えています (2011年度末時点)。 発症年齢は年齢別にみると、10代後半∼30代前半に好発しますが、 どの 年代でも発症します。男女比率は1:1で性別に差はみられていません。 潰瘍性大腸炎患者数の推移 ●潰瘍性大腸炎登録患者数 (人) 140,000 133,543人 (2011年) 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 (年) 難病情報センターHP, 特定疾患医療受給者証交付件数より作図 4 潰瘍性大腸炎の進行と症状 潰瘍性大腸炎とは 潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症性変化、すなわちびらん(ただれ)や潰 瘍ができる慢性の原因不明の病気で、炎症性腸疾患のひとつです。 また、寛解(症状が落ち着いている状態) と、再燃(悪化している状態)を繰 り返すことが多く、再燃を起こす患者さんのなかには、最終的に手術(大腸 摘出手術)が必要になることもあります。 残念ながら現在のところ、病気を完治させる治療法はありませんが、さま ざまな薬の開発により治療法は進化し続けています。 5 2 潰瘍性大腸炎の進行と症状 潰瘍性大腸炎の自覚症状 潰瘍性大腸炎の症状で最も多くみられるのが便の異常です。発症早期に は、血便以外の症状がほとんど無く、痔による出血と誤りやすいため注意が 必要となります。炎症が大腸の広い範囲に広がると、血便以外に下痢・軟便 や腹痛といった症状を伴うことがあり、下痢がひどい場合には、1日に20回 以上もトイレにかけ込むこともあるほどです。さらに症状が悪化すると、体 重減少や発熱などの全身の症状が起こることもあります。 ●潰瘍性大腸炎の自覚症状 (%) 100 91% 86% ※初発時の臨床症状 63% 発 現 50 率 37% 31% 20% 0 下痢・軟便 血便 腹痛 体重減少 全身倦怠感 発熱 14% 食欲不振 潰瘍性大腸炎の診療ガイド:文光堂より 6 潰瘍性大腸炎の腸管合併症 潰瘍性大腸炎の合併症には、腸管に起こる腸管合併症と腸管以外の部位 ちゅうどくせい に起こる腸管外合併症があります。腸管合併症としては、大量出血、中毒性 き ょ だ い けっちょうしょう きょう さく せん こう 巨大結腸症、狭窄、穿孔、癌化などがみられます。腸管外合併症としては皮 膚症状、肝障害、関節症状など全身的に起こることがあります。 ●腸管合併症 血便、粘血便といった「便に血が混じる」程度とは異なる、 大量出血 大量の出血が起きることがあります。出血によるショック症 状や、高度の貧血症状を伴う場合、腸管の出血に対する手 術が必要となります。 炎症が急速に悪化し、大腸の動きが止まってしまい、腸内に ちゅうどくせいきょだいけっちょうしょう 中毒性巨大結腸症 ガスや毒素がたまった結果、腸が風船のようにふくらんで巨 大化し、全身に中毒症状があらわれることがあります。多く の場合、緊急手術を必要とします。 きょうさく 狭窄 せんこう 穿孔 癌(大腸癌) 炎症が長期間続いたり、再燃・寛解を繰り返すうちに、腸管 きょうさく が狭くなる (狭窄) ことがあります。 高度の炎症や、ステロイド薬を高用量使用している場合な ど、腸管が脆弱になり、過剰な負荷が無くても腸管に穴が せんこう あく (穿孔)場合があります。 病気が長期にわたると、炎症がつづいたことによる腸の癌化 の危険性が高くなると言われています。 7 3 潰瘍性大腸炎とTNFα 潰瘍性大腸炎の原因 潰瘍性大腸炎の原因については、まだはっきりとわかっていません。しか し、最近の研究で、潰瘍性大腸炎患者さんの腸管では免疫に異常がみら れ、そのことで自分の腸を傷つけてしまう (炎症が起こる) ことがわかってき ました。 炎症にはさまざまな生体内物質が関与しますが、特に重要な役割を果たし ているのが、TNFα (ティー・エヌ・エフ・アルファ) というサイトカインである ことがわかりました。サイトカインはホルモンのような物質で、 ごく微量でも 生体内で大きな作用を及ぼします。 = TNFα 8 マクロファージ: TNFαをつくっている細胞 潰瘍性大腸炎とTNFα 潰瘍性大腸炎の患者さんでは、TNFαが大量につくり出され、 このTNFαが 大腸で炎症を引き起こしていることがわかっています。この炎症によって、 潰瘍などができ、下痢・軟便や血便などの症状があらわれます。 ●潰瘍性大腸炎患者さんにおける血中TNFα濃度 (pg/mL) 150 100 50 40 血中 30 TNFα 濃度 20 >10 コントロール (n=31) 潰瘍性大腸炎 患者 (n=15) Murch S.H. et al.:Gut., 32;913-917, 1991 TNFαとは TNFαとは、炎症や免疫反応の関係しているサイトカイン(生体内物質の 一種)です。 TNFαは 1)それ自体が炎症を引き起こす (直接的な炎症作用) 2)炎症を起こす別のサイトカインの産生を促すことにより炎症を引き起こす (間接的な炎症作用) という作用があることから「炎症の親玉」であると考えられています。 9 4 潰瘍性大腸炎とレミケード 新しい治療薬レミケード 「レミケード」は米国で開発された薬剤で、潰瘍性大腸炎の症状を改善する とともに、潰瘍や粘膜の損傷を治す効果があり、高い評価を得ています。現 在、日本を含む世界約100ヵ国で発売され、各種疾患で162万人以上の 患者さんに使用されています (2011年8月現在)。 日本でも2002年にクローン病の治療薬として認可され、その翌年、関節 リウマチ、その後、ベーチェット病、乾癬、強直性脊椎炎に対しても使用が 認められ、すでに約8万人の患者さんに投与されています(2011年8月 現在)。そして、2010年6月に日本でも潰瘍性大腸炎の治療薬として認可 されました。 レミケードは世界で162万人、 日本でも8万人の患者さんに 使われています! 10 レミケードの作用 レミケードは、炎症の原因であるTNFαに対して、次のように作用し、その働 きを抑え、効果を発揮します。 ●TNFαにくっつき、その働きを抑えます。 ●TNFαをつくっている細胞そのものを壊します。 マクロファージ (TNFαをつくっている細胞) Memo 抗TNFα抗体とは レミケードは「抗TNFα抗体」とも呼ばれており、 レミケードなどによる治療を 「抗TNFα抗体療法」といいます。 11 4 潰瘍性大腸炎とレミケード レミケードの対象患者 いままでの治療で十分な効果が得られない方が対象となります。 特に下痢・軟便や血便などの症状のある患者さん、その症状により外出する などの 日常 生 活に制 限を感じて いる患 者さん など、生 活 の 質( Q O L: Quality of life) が低下している患者さんでは、 レミケードによる治療が考 慮されます。 いままでの治療で十分な効果が得られない方で このような患者さんにレミケードが投与されます 下痢・軟便や血便など 自覚症状のある 患者さん 入退院を繰り返している 患者さん 12 外出などの日常生活に 制限を感じている 患者さん レミケードの投与方法 約2ヵ月に1回、病院で点滴 レミケードは、医療機関で点滴によって投与する薬です。 初めての点滴の後、2回目の点滴は2週間後に、3回目の点滴はその4 週間後(初めての点滴から6週間後)に行います。以降は、8週間おき (約2ヵ月に1回)の点滴となります。 レミケードの投与スケジュール 3回目以降は、8週(約2ヵ月)おきに点滴 8週間 8週間 0 2週 6週 14週 22週 ︵レ 点ミ ケ 滴ー ︶ド 1 点滴は原則2時間以上かけて投与します。 患者さんの状態に応じて4回目から、点滴時間を短縮することが可能です 2 点滴はリラックスした気分で受けましょう 3 何か体調がおかしいと感じたら、主治医や看護師に伝えてください (イメージ) 13 5 レミケードの効果 新しい治療薬レミケード レミケードは、 これまでの治療で十分な効果が得られなかった患者さんに 効果が期待できる薬剤です。 レミケ ードの 主 な 特 徴 は ① ② ③ ④ 症状改善効果が期待できます。 大腸粘膜の損傷や潰瘍を治癒させる効果が期待できます。 ステロイド服用量を減少させる効果が期待できます。 入院回数や手術回数の低下が期待できます。 症状改善効果が期待できます ステロイドなどの既存治療で改善がみられない潰瘍性大腸炎の患者さん にレミケード5mg/kgを初回投与後、2週後、6週後に投与すると投与開始 8週間後には、約55%の患者さんに症状改善効果が認められました。 ●症状の改善がみられた患者さんの割合(8週後) (%) 80 *:p<0.005 vs. プラセボ logistic回帰 70 * 54.8 60 改 善 率 50 40 35.6 30 改善の定義: Mayoスコアが30%以上かつ3ポイント 以上減少。かつ直腸からの出血サブス コアが1ポイント以上減少、 又は1以下。 20 10 0 プラセボ (n=104) レミケード 5mg/kg (n=104) 国内臨床試験 田辺三菱製薬社内資料(承認時審査資料) 「プラセボ」は研究や治験で使用されるもので、外見では本物の薬と区別がつきませんが、薬の有効成分は入っていません。 14 ステロイドなどの既存治療で改善がみられない潰瘍性大腸炎の患者さん にレミケード5mg/kgを初回投与後、2週後、6週後、以後8週毎に投与す ると、長期にわたり症状を抑える効果が認められました。 ●症状の改善がみられた患者さんの割合 (%) 80 70 30 週後 *:p=0.033 vs. プラセボ logistic回帰 60 * 46.2 50 改 善 40 率 30 31.7 (%) 80 70 改 善 40 率 30 10 10 国内臨床試験 田辺三菱製薬社内資料(承認時審査資料) * 45.5 50 20 プラセボ レミケード 5mg/kg (n=104) (n=104) *:p<0.001 vs. プラセボ Cochran-Mantel-Haenszelのχ2 検定 60 20 0 54 週後 0 19.8 プラセボ レミケード 5mg/kg (n=121) (n=121) 海外臨床試験 (Rutgeerts P. et al. : N. Engl. J. Med., 353; 2462-2476, 2005) 改善の定義:Mayoスコアが30%以上かつ3ポイント以上減少。かつ直腸からの出血サブスコア が1ポイント以上減少、 又は1以下。 海外臨床試験のみ、 54週後まで有効性評価をしています。 Memo メイヨ Mayoスコアとは 潰瘍性大腸炎の重症度をみるための指標のひとつです。下に示した①∼④の項目 をもとに算出します(0∼12点)。値が大きいほど症状が重く、小さいほど症状が軽 いとされておりスコアが3∼5点が軽症で、11点以上が重症であるといわれます。 ①排便回数 ②血便 ③粘膜所見(内視鏡所見)④医師による全般的評価 15 5 レミケードの効果 大腸粘膜の損傷や潰瘍を治癒させる効果が期待できます ステロイドなどの既存治療で改善がみられない潰瘍性大腸炎の患者さんに、 レミ ケード5mg/kgを初回投与後、2週後、6週後に投与すると投与開始8週間後に は、約46%の患者さんに粘膜の損傷や潰瘍を治癒させる効果が認められました。 ●大腸粘膜の潰瘍が治癒した割合(8週後) (%) 60 50 40 治 癒 30 率 20 *:p=0.006 vs. プラセボ logistic回帰 * 46.2 27.9 10 0 プラセボ (n=104) レミケード 5mg/kg (n=104) 国内臨床試験 田辺三菱製薬社内資料(承認時審査資料) ステロイド服用量を減少させる効果が期待できます レミケード5mg/kgを初回投与後、2週後、6週後、以後8週毎に投与する と、 ステロイドの服用量を減らす効果が認められました。 ●症状改善かつステロイド服用量 10mg/日以下の割合(30週後) (mg/日) 30 (%) 60 50 40 達 成 30 率 20 45.0 20.0 10 0 プラセボ レミケード 5mg/kg (n=20) (n=20) 対象:試験開始時にステロイドを20mg/日以上服用し ていた患者さん 国内臨床試験 田辺三菱製薬社内資料(承認時審査資料) 16 ●ステロイド服用量推移 ス テ ロ イ ド 服 用 量 ︵ 中 央 値 ︶ プラセボ(n=79) レミケード5mg/kg(n=70) 25 20 15 10 5 0 0 8 14 22 30 38 46 54(週) 海外臨床試験 (Rutgeerts P. et al. : N. Engl. J. Med., 353; 2462-2476, 2005) 田辺三菱製薬社内資料(承認時審査資料) 入院回数や手術回数の低下が期待できます レミケード5mg/kgを初回投与後、2週後、6週後、以後8週毎に投与する と、入院回数と手術回数の減少傾向が認められました。 ●潰瘍性大腸炎による入院回数の減少 (回) 50 (回) 50 患 者 1 0 0 人 あ た り の 入 院 回 数 40 40 30 21 20 10 0 ●潰瘍性大腸炎による手術回数の減少 プラセボ (n=244) 患 者 1 0 0 人 あ た り の 手 術 回 数 40 34 30 22 20 10 0 レミケード 5mg/kg (n=242) 海外臨床試験 (Sandborn W.J. et al. Gastroenterology, 137; 1250-1260, 2009) プラセボ (n=244) レミケード 5mg/kg (n=242) 海外臨床試験 (Sandborn W.J. et al. Gastroenterology, 137; 1250-1260, 2009) Memo 潰瘍性大腸炎の手術率 長い経過のなかにおいて、ステロイド を はじめとした 内 科 的 治 療 で コント ロールできない場合、手術が必要とな ります 。また、発 症 から1 5 年 で 2 0 % 以上の患者さんで手術が必要となると いう報告があります。 (%) 30 累 積 大 20 腸 切 除 術 10 率 0 5 10 15 発症後経過年数 20 (年) Hiwatashi N. et. al.:J. Gastroenterol, 30(Supple 8) ;13-16,1995 17 6 レミケードの安全性 副作用は、早期に発見し、迅速かつ適切な処置を行うことで重症化を防ぐ ことができます。次の注意事項を必ず守りましょう。 副作用を防ぐための注意事項 ◆ レミケードによって起こる可能性のある副作用について、きちんと理解する。 ◆ レミケードによる治療を受けているときは、定期的に診察や検査を受ける。 ◆ 点滴中やご自宅で、 「いつもと違う」 「何かがおかしい」と少しでも感じることが あったら、すぐに主治医に連絡する。 レミケードの副作用 予想される主な副作用 レミケードの点滴中または点滴終了後に、発熱、頭痛、発疹などが起こることがあります。 重要と考えられる副作用 ひ よ り み かんせん ①感染症(肺炎・結核・敗血症・日和見感染など) レミケードなどTNFαの作用をおさえ る治療(抗TNFα療法)を受けると、免 疫の働きが低下して感染症にかかりや すくなることがあります。かぜのような 症状があらわれたときは、 自己判断をせ ず、主治医に相談してください。 ち はつ せい か びんしょう ②遅発性過敏症 点滴後3日以 上過ぎてから、発 熱 、発 疹、筋肉痛などのアレルギー症状があ らわれることがあります。 だつずい しっかん 18 ③脱髄疾患 神経の病気のひとつで、視覚や感覚の 異常、筋力の低下、手足のしびれ等の 症状があらわれることがあります。この ような症状があらわれた場合、また、過 去に家族が脱髄疾患(多発性硬化症な ど)と診断されたことのある患者さん は、主治医に相談してください。 かんしつせいはいえん ④間質性肺炎 細菌などの病原体が原因ではなく、薬の 影響によって起こる肺炎です。呼吸困難 や呼吸不全などの症状があらわれること があります。このような症状があらわれ た場合は、 主治医に相談してください。 ⑤抗dsDNA抗体陽性化に伴う ループス様症候群 自分の身体の成分に対する抗体があら われて、関節痛、筋肉痛、発疹などの症 状があらわれることがあります。このよ うな症状があらわれた場合は、主治医 に相談してください。 ⑥肝機能障害、血液障害 臨床検査値(血液検査)で異常を認める ことがあります。 ※主な副作用の症状を記載した、別紙「レミケードを投与 された患者さんへ」も準備しています。 詳しくは主治医へお尋ねください。 その他の情報 ●悪性腫瘍 因果関係は不明ですが、 レミケードを投与された患者さん(小児・若年成人を含む) で、 悪性腫瘍、悪性リンパ腫が発生した方がいました。そのため、継続的な調査を行ってい ますが、3年間の追跡調査では、悪性腫瘍の発生率について従来の治療とレミケード で違いは認められませんでした (調査は現在も進められています)。 ●伝達性海綿状脳症(TSE) レミケードは、予防接種に用いられるワクチンなどと同様に「細胞培養」と呼ばれる方 法を応用して製造されています。その際、 ウシ由来の成分が使用されますが、次のよう な安全対策が講じられています。 ●ウシ由来の食物を一切含まない厳重な餌の管理下で飼育され、米国農務省の検疫で食用可能とされ た健康なウシから得た成分を使用 ●不純物を除去する処理をしてから使用 このような厳格な安全対策を徹底することで、完全に否定することはできませんが、薬 剤の中にTSEの原因となる蛋白質が含まれる可能性は極めて低くなります。 レミケー ドは現在までに世界で約162万人の患者さんに投与されていますが、 レミケード投与 によってTSEが起きたという報告はありません。 ●ワクチン接種 ワクチン接種を希望される場合は、主治医に相談してください。 レミケードを投与できない患者さん 次の方はレミケードを投与することができません。 該当する方は必ず主治医にお伝えください。 ◆ 現在、重い感染症にかかっている方 ◆ 現在、活動性の結核にかかっている方 ◆ 過去にレミケードまたはマウス由来蛋白質を含む他の医薬品の投与を受けて、 過敏症を起こしたことのある方 ◆ 脱髄疾患(多発性硬化症など) にかかっている方、もしくは過去にかかったことの ある方 ◆ うっ血性心不全の方 19 7 潰瘍性大腸炎と診断されたら 潰瘍性大腸炎と診断された患者さんは、所定の手続きを行うことで、医療 費自己負担の助成を受けることができます。 潰瘍性大腸炎に対する医療費自己負担の助成制度について 潰瘍性大腸炎は「特定疾患治療研究事業」の対象疾患※に指定されていま すので、住所地を管轄する最寄りの保健所にて所定の手続きを行い認定さ れると、潰瘍性大腸炎における医療費自己負担分(保険診療)の一部、 また は、全額が国や都道府県から助成されます。 ※いわゆる難病のうち、原因不明で、治療方法が確立していないなど治療が極めて 困難で、病状も慢性に経過し後遺症を残す可能性があり、医療費も高額で経済的 な問題や介護等、家庭的にも精神的にも負担の大きい疾病で、その上症例が少な い130疾患が「特定疾患」 として指定され、国による調査研究の推進、医療施設の 整備などが進められています。特定疾患のうち潰瘍性大腸炎を含む56疾患が 「特定疾患治療研究事業」の対象となっており、医療費自己負担の助成が行われ ています。 20 患者さんの医療費自己負担 患者さんの世帯の所得に応じて、1ヵ月あたりの医療費自己負担限度額(下 記表) が設定されています。 「重症患者」に認定されると医療費自己負担分は全額公費で助成されるの で、患者さんの負担はありません。 治療後、症状が軽快し、下記の3要件を1年以上満たしたと主治医が判断し更新申 請の審査において「軽快者」と認定された患者さんは、 「特定疾患治療研究事業」 による公費助成は中断されます。但し、主治医が病状の悪化を確認した場合は、 手続きを行うことにより公費助成を再度受けることができます。 ①疾患特異的治療が必要ない。 ②臨床所見が認定基準を満たさず、著しい制限を受けることなく就労などの日 常生活を営むことが可能である。 ③治療を必要とする臓器合併症等がない。 「軽快者」の対象となる疾患は、 「特定疾患治療研究事業」の対象56疾患のうち、 潰瘍性大腸炎を含む30疾患です。 医療費自己負担の月額限度額表 階層区分 A 生計中心者の市町村民税が非課税の場合 対象者別の一部自己負担の月額限度額 入院 外来等 生計中心者が 患者本人の場合 0円 0円 0円 B 生計中心者の前年の所得税が非課税の場合 4,500円 2,250円 C 生計中心者の前年の所得税課税年額が5,000円以下の場合 6,900円 3,450円 D 生計中心者の前年の所得税課税年額が5,001円以上15,000円以下の場合 8,500円 4,250円 対象患者が生 計中心者であ るときは、左 欄により算出 した額の1/2 に該当する額 をもって自己 負担限度額と する。 E 生計中心者の前年の所得税課税年額が15,001円以上40,000円以下の場合 11,000円 5,500円 F 生計中心者の前年の所得税課税年額が40,001円以上70,000円以下の場合 18,700円 9,350円 23,100円 11,550円 G 生計中心者の前年の所得税課税年額が70,001円以上の場合 平成20年7月1日改正 備考 1.市町村民税が非課税の場合とは、当該年度(7月1日から翌年の6月30日をいう。) において市町村民税が課税されていない(地方 税法第323条により免除されている場合を含む。)場合をいう。 2.10円未満の端数が生じた場合は、切り捨てるものとする。 3.災害等により、前年度と当該年度との所得に著しい変動があった場合は、その状況等を勘案して実情に即した弾力性のある取扱 いをして差し支えない。 4.同一生計内に2人以上の対象者がいる場合の2人目以降の者については、上記の表に定める額の1/10に該当する額をもって自 己負担限度額とする。 21 7 潰瘍性大腸炎と診断されたら 申請手続き 申請に必要な主な書類は、次のとおりです。 「新規申請および更新申請(毎年)」 ① 申請書兼同意書(臨床調査個人票の研究利用についての同意) ② 医師による臨床調査個人票(新規申請では新規用、更新申請では更新用) ③ 住民票(世帯全員がのっているもの) ④ 生計中心者の所得に関する状況を確認することができる書類 ⑤ 健康保険証のコピー など *資格は1年(10月1日∼9月30日)で毎年更新手続きが必要です。 *申込書や臨床調査個人票などは、最寄りの保健所にあります。 *申請に必要な書類は、各都道府県で異なる場合があります。 *重症患者認定申請をされる場合は、最寄りの保健所にご相談ください。 上記申請に必要な書類を、最寄りの保健所に提出し、 「特定疾患医療受給 者証」交付の申請手続きを行います。 受理、審査、認定されたのち、受給資格が得られます(「特定疾患医療受給 者証」が交付されます)。 医療費の自己負担への助成は、申請書が受理された日からとなります。医 療機関や保険薬局、訪問看護をご利用のときは、 「特定疾患医療受給者証」 と「保険証」をあわせて提示してください。 (医療費自己負担の助成) 申請が受理された日から「特定疾患医療受給者証」を、受け取るまでにかかった限度額を超える医療費 自己負担分(保険診療内に限る)については、立て替え払いとなります。後で保健所にて手続きすること により払い戻しが受けられますので、領収書等は大切に保管しておいてください。 ★具体的な申請手続きや「特定疾患医療受給者証」が交付されるまでの期間、医療費の自己負担への助 成の開始時期などは、各都道府県で異なりますので、最寄りの保健所にご相談ください。 22 記 録 表をつけましょう! レミケードによる治療がはじまったら「記録表」をつけましょう。 レミケードを 投与すると、体の抵抗力が弱まったり、投与後に副作用が出ることがありま す。そのため、自分の体の状態をよく知っておくことが大切です。治療状態 を記録する 「記録表」を記入しましょう。 体調記録表 体調記録表 日 付 日 付 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ★1 診察日および 投与日 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ★1 1 日の 排便回数 ★2 ★3 ★4 ★5 便の状態 粘血便の有無 出血の程度 腹痛の程度 1 日の 排便回数 ★2 ★3 ★4 ★5 便の状態 粘血便の有無 出血の程度 腹痛の程度 体温(℃) 体温(℃) 体重(kg) 体重(kg) 備 考 (体調の変化など) 備 考 (体調の変化など) ★1 診察日に (○) を、レミケードの投与を受けた日に(◎) をつけてください。 ★1 診察日に (○) を、レミケードの投与を受けた日に(◎) をつけてください。 ★2 便の状態は数字を記入してください。 ★2 便の状態は数字を記入してください。 1:有形 2:軟便 3:泥状便 4:水様便 ★3 粘血便 (粘液と血液がまざった便) は数字を記入してください。 0:粘血便なし 2:明らかな粘血便ではないが、肉眼的に血液の混入が確認できる 4:明らかな粘血便がある ★4 出血は数字を記入してください。 0:出血なし 1:少量の血液、排便回数の半分以下 2:はっきりした血液、ほぼ毎回 3:ほぼ血液ばかり ★5 腹痛は数字を記入してください。 0:なし 1:時々気になる程度 2:いつも気になる程度 3:がまんできない程度 15 診察日および 投与日 1:有形 2:軟便 3:泥状便 4:水様便 ★3 粘血便 (粘液と血液がまざった便) は数字を記入してください。 0:粘血便なし 2:明らかな粘血便ではないが、肉眼的に血液の混入が確認できる 4:明らかな粘血便がある ★4 出血は数字を記入してください。 0:出血なし 1:少量の血液、排便回数の半分以下 2:はっきりした血液、ほぼ毎回 3:ほぼ血液ばかり ★5 腹痛は数字を記入してください。 0:なし 1:時々気になる程度 2:いつも気になる程度 3:がまんできない程度 16 23 病・医院名 REC-481E2013年7月作成
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