AE-SiGMA 解析による酸化マグネシウム改良土の割裂破壊過程の考察

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H26 農業農村工学会大会講演会講演要旨集
AE-SiGMA 解析による酸化マグネシウム改良土の割裂破壊過程の考察
Splitting process of magnesium improved soil by AE-SiGMA analysis
○ 岸 直人 * ・島 本由 麻 ** ・鈴 木 哲也 ***
Naoto Kishi, Yuma Shimamoto and Tetsuya Suzuki
はじめに
1.
近年,酸化マグネシウムは,生態系への
表 -1
環境負荷の軽減等を背景に,地盤改良材と
して用いられてきている
1)
示方配合設計
Specified mix proportion.
。
本研究では,地域資源であるもみ殻灰を
有効利用した植生基盤材を開発するための
実験
シリーズ
細砂
(g)
M
MR
280.0
266.0
バーミ
酸化マグ
キュライト ネシウム
(g)
(g)
14.0
13.3
もみ殻灰
(g)
水
(g)
0.0
12.8
73.5
73.5
58.8
58.8
基礎的検討として,MgO 改良土を対象にも
み殻灰混入土(以下,シリーズ MR)およ
載荷板
び未混入土(以下,シリーズ M)において
割裂試験を行い,力学特性を検討した。あ
供試体
AEセンサ
わせて,画像解析および AE-SiGMA 解析か
CCDカメラ
画像解析
範囲
ロードセル
プリアンプ
CCDカメラ
ら,割裂破壊過程を評価した。
解析方法
2.
載荷板
AE 法の波形処理としてモーメントテン
AE計測装置
(SAMOS)
ソル解析の有用性が明らかになっている。
本研究では,取得した AE 波に対して,簡
図 -1
易な解析手法である SiGMA 解析によって
実験概要図
Experimental set up for splitting test.
評価した。初動振幅値と到達時間差から固
有値解析を行い,せん断率を算出した。せ
AE センサは計 6 個設置した。150kHz 共振
ん断率からひび割れを引張クラック・せん
型センサを用い,しきい値を 40 dB,増幅
断クラック・混合型クラックに分類した。
値を 80 dB として計測を行った。画像解析
なお,AE イベント定義時間は 100 μs とし
はデジタル画像相関法を用いて行った。こ
た。
れは,CCD カメラで撮影したデジタル画像
実験方法
3.
を数値解析することにより,撮影範囲の変
直径 50 mm,高さ 100 mm の円柱供試体
位量およびひずみ分布を推定する手法であ
を 2 シリーズ 6 本ずつ作製した。示方配合
る。実験概要図を図-1 に示す。
を表-1 に示す。なお,供試体の内部構造を
4.
把握するため,54 kHz, 500 V で探触子を用
4.1.
結果および考察
力学特性
割裂引張強度はシリーズ M:0.12 N/mm2 ,
い,超音波伝播速度を測定した。
材齢 7 日において割裂試験を行った。割
シリーズ MR:0.74 N/mm2 であった。超音
裂試験では,破壊過程における AE 発生挙
波伝播速度はシリーズ M:1,336 m/s,シリ
動の計測および画像解析を実施した。AE
ーズ MR:1,864 m/s であった。もみ殻灰を
の計測装置は SAMOS(PAC 社製)である。
混入すると引張強度が約 6 倍,超音波伝播
*
新 潟 大 学 農 学 部 Faculty of Agriculture, Niigata University
新 潟 大 学 大 学 院 自 然 科 学 研 究 科 Graduate School of Science and Technology, Niigata University
***
新 潟 大 学 自 然 科 学 系 (農 学 部 ) Faculty of Agriculture, Niigata University
キ ー ワ ー ド : SiGMA 解 析 , 画 像 解 析 , 酸 化 マ グ ネ シ ウ ム 改 良 土
**
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速度が約 1.5 倍増加することが確認された。
x軸方向
ひずみ量
0.0024
もみ殻灰を混入による引張強度の増加は,
雨水等による基盤材の劣化・損傷を緩和す
るものと考えられる。
4.2.
画像解析および AE-SiGMA 解析にお
x軸方向
ひずみ量
0.0003
0.0022
0.00025
0.0020
0.00020
0.0017
0.00015
0.0015
0.00010
0.0012
0.00005
0.0010
ける割裂破壊過程の評価
0.0008
応力レベル80 %
画像解析の結果から,両シリーズとも応
力レベル 95 %で最終破断面におけるひず
み量の増大が確認された。特に載荷板との
接触部付近で局所的にひずみ量が増大する
0.0000
0.0005
-0.00001
0.0003
-0.00008
0.0001
-0.00013
-0.0002
-0.00017
-0.0004
-0.00022
-0.0006
-0.00031
-0.0009
y
ことが確認された(図-2)。
応力レベル95 %
-0.0011
x
引張クラック
の増加が確認されたことから,SiGMA 解析
-0.00036
応力レベル95 %
せん断クラック
-0.00045
混合型クラック
シリーズM
シリーズMR
図 -2
-0.00040
-0.0014
画像解析により割裂破壊時の局所ひずみ
を用いた 3 次元位置評定による AE 源の発
-0.00005
応力レベル80 %
画 像 解 析 お よ び AE-SiGMA 解 析 結 果
生位置および形成モードの同定と割裂破壊
Results of image analysis and AE-SiGMA
過程の評価を試みた。なお,シリーズ M に
analysis.
おいてイベントは検出されなかったため,
100
解析の結果を付記した。シリーズ M におい
0.016
引張クラック
80
累積イベント数
てイベントが検出されなかった要因として
は,低強度かつ空隙構造の発達が影響して
いると考えられる。
SiGMA 解析の結果,シリーズ MR におい
て応力レベル 80 %で供試体中心部から供
0.012
せん断クラック
混合型クラック
60
0.008
x軸方向のひずみ量
40
0.004
20
0.000
0
x軸方向のひずみ量
図-2 はシリーズ MR のみに対して SIGMA
-0.004
60
70
80
90
100
応力レベル (%)
試体上部で AE が発生しており,応力レベ
ル 95 %で y 軸方向(最終破断面方向)に広
図 -3
AE イ ベ ン ト 形 成 モ ー ド 別 発 生 頻 度
がっていくことが確認された。破壊クラッ
( シ リ ー ズ MR)
クの形成モードの発生源位置を比較すると,
Relation between horizontal strain and crack
引張クラックは供試体中央部近傍,せん断
generation on the stress level (series MR).
クラックは載荷板の両端面において頻発す
前に,供試体内部の微小なクラックを検出
ることが確認された。
している可能性が示唆された。
図-3 にシリーズ MR における AE イベン
ト形成モード別発生頻度を示す。引張クラ
5.
まとめ
MgO 改 良 土に お いて割 裂 試 験を 行 った 。
ックがせん断クラック・混合型クラックと
比較して卓越していることが確認された。
検討の結果,もみ殻灰混入の有効性が示唆
x 軸方向のひずみ量増加にともない,AE イ
されるとともに,画像解析および SiGMA
ベントの増加が確認された。すべての形成
解析により,割裂破壊過程を詳細に評価で
モードにおいて,x 軸方向のひずみ量の増
きる可能性が示唆された。
加点より先に AE の発生が始まることもあ
参考文献
わせて確認された。特に引張クラックにお
1)
藤 森 新 作 ・ 小 堀 茂 次 ( 2000)自 然 環 境 に や さ し い
いては顕著にこの結果を示した。画像解析
土 壌 硬 化 剤 マ グ ホ ワ イ ト の 開 発 ,農 業 土 木 学 会 誌 .
による供試体表面におけるひずみ量の増加
第 68 巻 , 第 12 号 : 1297-1300.
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