この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 英文原著論文紹介 ③高血圧 Postprandial hypertension, an overlooked risk marker for arteriosclerosis. Uetani E, Tabara Y, Igase M, Guo H, Kido T, Ochi N, Takita R, Kohara K, Miki T. Atherosclerosis 2012; 224: 500-5. PMID: 22867753 食後高血圧:見過ごされてきた動脈硬化のリスク因子 上谷英里(愛媛大学大学院医学系研究科老年・神経・総合診療内科学) 田原康玄/伊賀瀬道也/郭 海燕/城戸知子/越智南美子/多喜田理恵/小原克彦/三木哲郎 一方、高齢者では頻回に観察される食事性血圧変化も 背景・目的 循環器疾患リスクとなるという報告が散見されるが、十 血圧変動は循環器疾患のリスク因子である。なかでも 分なエビデンスは得られていない。そこで本研究では、 起立性低血圧についてはよく研究され、循環器疾患や総 食事による血圧変動とインスリン抵抗性、頸動脈内膜中 死亡と関連することが明らかになっている。われわれは 膜複合体厚(intima-media thickness;IMT)、上腕—足首 以前に、起立性低血圧のみならず起立性高血圧も動脈硬 間 脈 波 伝 播 速 度(brachial-ankle pulse wave velocity; 化と関連することを見いだした。 baPWV)との関連を検討した。 図 1 ● 食事性 SBP 変化と動脈硬化の関連 A B (mm/sec) 1,800 p=0.002 1,700 1,700 1,600 1,600 baPWV baPWV (mm/sec) 1,800 1,500 1,400 1,300 1,300 112 244 854 129 PHYPO -2 群 PHYPO -1 群 正常群 PHT 群 C (mm) 0.88 p=0.007 0.84 0.84 0.80 0.80 0.76 0.76 IMT IMT 1,200 PHYPO -2 群 PHYPO -1 群 正常群 PHT 群 PHYPO -1 群 正常群 PHT 群 D (mm) 0.88 0.72 0.68 0.64 0.64 PHYPO -2 群 PHYPO -1 群 正常群 PHT 群 p=0.038 0.72 0.68 0.60 46 1,500 1,400 1,200 p<0.001 0.60 PHYPO -2 群 この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 英文原著論文紹介③ 図 2 ● 高血圧の割合 (%) 100 90 80 33 62 125 70 523 割合 正常血圧 高血圧(未治療) 60 50 10 51 40 48 57 20 10 0 p<0.001 75 30 高血圧(治療中) 28 PHYPO -2 群 71 256 PHYPO -1 群 正常群 方法・対象 PHT 群 合も有意に多かった(図 2)。そこで食事性血圧低下と動脈 硬化との関連を食前 SBP で調整すると、両者の関係は消 2006 年 2 月〜 2011 年 3 月の間に愛媛大学附属病院抗加 失した(図 1 B、D)。多変量解析から、年齢、性別、BMI、 齢ドックを受診した一般地域住民 1 ,339 人を対象とした。 降圧薬、食前 SBP で調整後も、食事性血圧上昇は IMT(β 血圧は 5 分間の安静後に自動血圧計(HEM-9000 AI:オム = 0 .086、p = 0 .001) 、baPWV(β = 0 .170、p < 0 .001) 、 ロンヘルスケア)を使用し坐位で測定した。食事による血 インスリン抵抗性(β = 0 .093、p < 0 .001)に対する独立 圧変動は、昼食直前と食後 30 分の収縮期血圧(systolic した規定因子として抽出された。 blood pressure;SBP)の差(Δ SBP)を用いた。IMT の測 定は SSD-3500 SV あるいはα 10 ultrasonograph(アロカ) 、 考察 baPWV の測定は BP-203 RPE Ⅱ(form PWV/ABI:オム 一般地域住民において、食事による過度の血圧上昇が、 ロンヘルスケア)で行った。インスリン抵抗性は HOMA 独立した動脈硬化のリスク因子であることが示された。 (homeostasis model assessment) 指数で評価した。 結果 食事性低血圧群では、食前の SBP が高かったため、単純 な比較では baPWV や IMT で高値を示したが、SBP の調 整でこれらの関連が消失したことを考えると、食事によ 対象者の平均年齢は 66 ±9 歳(男性 38 .7 %)であり、全 る血圧低下そのものは動脈硬化と関連しないといえる。 体の 44 .5 % が高血圧であった。食前 SBP、食後 30 分 SBP 起立性血圧変化は短時間に計測できる指標であるが、 の平均値はそれぞれ 127 ±18 mmHg、123 ±18 mmHg で 姿勢変化や筋緊張、心拍変動など多様な因子の影響を受 あり、Δ SBP は食前値と強く相関した(r =−0 .335 , p < ける。一方、食事性血圧変化は安静坐位で測定可能であり、 0 .001) 。 起立性血圧変化の測定でみられるような種々の交絡因子 食後 20 mmHg 以上 SBP が低下した PHYPO-2 群は 112 の影響を除外できるため、より精度の高いリスク指標と 人(8 .4 %) 、10 ~ 20 mmHg 低 下 し た PHYPO-1 群 は 244 なる可能性がある。 人(18 .2 %)であった。逆に、食後、10 mmHg 以上の SBP 食事性血圧変化と循環器疾患リスクとの関連について 上昇を示した PHT 群は 129 人(9 .6 %)であった。食事に はエビデンスが不十分である。食事による血圧変化も血 よる血圧変化と IMT、baPWV との関連を図 1 に示した。 圧変動の 1 つの表現型であることを十分に認識し、さらな PHYPO 群、PHT 群いずれにおいても IMT、baPWV は高 る検討の蓄積が必要といえよう。 値を示した(図 1 A、C) 。しかし、PHYPO 群では食前の SBP が有意に高く(PHYPO-2 146 ±17 mmHg、PHYPO-1 132±18mmHg、正常 123±17mmHg、PHT 124±16mmHg、 結論 食事による過度の血圧上昇は動脈硬化と関連する。 p < 0 .001) 、未治療高血圧者(140 /90 mmHg 以上)の割 47
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