ベンジルアミノプリン(BA)製剤と糖によるダリア切り花の日持ち性向上 ~散布処理で花弁のしおれと褐変を抑制~ 1.背景と目的 ダリアは本県特産の切り花で、多彩な花型と 花色が評価され、生産・消費が拡大しています が、日持ちが悪い花という印象が強く、その改 善技術が求められています。近年、植物ホルモ ンのひとつであるベンジルアミノプリン(以下、 BA と記す)の日持ち延長効果が(独)農研機構・ 花き研究所によって明らかにされました。そこ で、その実用化を目指し、BA 製剤と糖処理の併 用について検証した結果を紹介します。 2.BA 製剤処理の効果 BA 処理として、BA 製剤(クリザール社製ミラ クルミスト)1,000 倍液を収穫直後の花全体に 散布しました。この処理によって、図1のよう に花径がより長期間、大きいまま維持されまし た。日持ち日数も BA 処理で長くなり、比較的日 持ちの悪い品種である‘かまくら’では、4.0 日 が 7.7 日に延長できました。 これは、外側の花弁から順番に生じる萎れと 褐変が、BA 処理によって抑制されたためです。 この効果は、BA 製剤が直接散布された花弁での み見られ、花の半面だけに BA 処理を行ったとき には、その半面の花弁だけ褐変が抑制されまし た(図2)。このため、BA 処理を行う際には、 花全体に均一に散布するよう注意が必要です。 13.3日以上 また、28 品種を用いて BA 処理効果の品種間 花径(cm) 花径(cm) 花径(cm) 3.糖処理の効果 次に、BA 処理を前提とし、生け水に加えるシ ョ糖濃度を0~8%(全区とも抗菌剤添加)と して検討しました。その結果、ショ糖2%以上 の各区で観賞期間中の花径がより大きくなり、 切り花重も重くなりました。さらに‘黒蝶’な どの赤~黒系品種では、観賞期間中に開いてく る内側花弁の花色が濃くなり、品種本来の花色 が維持されました(図3)。これらの効果は、 BA 処理単独では見られないことから、観賞前の BA 処理と観賞中の糖処理の組み合せによって、 日持ち性が大きく向上できる可能性が明らかと なりました。 4.今後の展開 奈良県内では 300 品種以上のダリアが栽培さ れ、全国有数の遺伝資源となっています。この 有利性を活かし、切り花生産と日持ち性向上の 技術開発を継続的に進めていきます。 (花き栽培ユニット 仲 照史) 13.3日以上 12.7日 14 14 12 13.3日以上 12.7日 かまくら BA かまくら 無処理 7.7日 1214 10 4.0日 1012 8 0 810 0 差を検討した結果、効果の強弱はあるものの全 品種において日持ち延長効果が見られました。 12.7日 かまくら BA 黒蝶 BA かまくら 無処理 黒蝶 無処理 7.7日 4.0日 5 黒蝶 BA BA かまくら 10 15 黒蝶 無処理 かまくら 無処理 図2 BA 製剤の散布処理による日持ち延長効果 (1月観賞試験 8 日目。品種:‘かまくら’。左から無処理、半面処理および全体処理) 花弁の赤マーク(矢印)は処理開始時に最も内側にあった未展開花弁を示す 7.7日 処理後日数(日) 5 10 処理後日数(日) 4.0日 黒蝶 BA 15 黒蝶 無処理 8 図1 BA 0 製剤の散布処理が観賞時におけるダリアの 5 10 15 花径と日持ち日数に及ぼす影響(8 処理後日数(日) 月鑑賞試験) 注)図中矢印は、各区の日持ち日数.黒蝶 BA 区は 14 日で試験打 ち切りとしたため、13.3 日以上と記載. 4 奈良農研ニュース vol.146 2014 4 奈良農研ニュース vol.146 2014 図3 糖濃度の花色への影響 (左からショ糖 0,2,4,6 および 8%)
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