8.1 連立同次線形微分方程式

8.1 連立同次線形微分方程式
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8.1 連立同次線形微分方程式
¶
連立同次線形微分方程式
³
n 個の未知関数をもつ微分方程式の系.つまり連立線形微分方程式 (system of linear differential
equation)
 ′
x1



 x′2
..

.


 ′
xn
= a11 x1 + a12 x2 +
= a21 x1 + a22 x2 +
..
.
· · · + a1n xn + f1 (t)
· · · + a2n xn + f2 (t)
..
.
= an1 x1 + an2 x2 + · · · + ann xn + fn (t)
を考える.行列を用いるとこの系は X′ = AX + F と表せる.ただし,



X=

x1 (t)
x2 (t)
..
.


a11
a21
..
.
a12 · · ·
a22 · · ·
..
.
a1n
a2n
..
.
an1
an2
···
ann




, A = 


xn (t)






, F = 


f1 (t)
f2 (t)
..
.



.

fn (t)
この微分方程式を満たす n 個の微分可能な関数 x1 , x2 , . . . , xn をこの方程式の解 (solution) という.
µ
´
λt
C を任意の定数ベクトルとし,X = Ce
′
λt
とおくと,X = AX より,Ce
= ACe . これより,AC − Cλ = 0
λt
′
または (A − λE)C = 0. このことから,X = AX の自明でない解を見つけるには, (A − λI)C = 0 を満たす
0 でないベクトル C を見つければよい.この連立方程式を満たす λ を行列 A の固有値 (eigenvalue).そして
0 でないベクトル C を λ に対する固有ベクトル (eigenvector) という.ところで連立方程式 (A − λE)C = 0
が 0 でない解をもつための必要十分条件は det(A − λE) = 0 である.また det(A − λI) は n 次の多項式になり
det(A − λI) = 0 を行列 A の特性方程式 (characteristic equation) という.そこで,特性方程式を解いて固
有値 λ を求め,連立方程式 (A − λI)C = 0 を解いて,固有ベクトルを求めることができる.つまり非常に難しい
微分方程式の問題が簡単な線形代数の問題に還元された.


1

1

1 −1 
 X を解け.
2 −1
0


1−λ
−1
1
1 1 − λ −1  = −(λ + 1)(λ − 1)(λ − 2)
det(A − λE) = 
2
−1 −λ
例題 8.1 X′ = 
 1
解
−1
より固有値は λ = −1, 1, 2 である.次に固有値 λ = 2 に対する固有ベクトル C は

−1
(A − 2E)C =  1
2


−1
1
c1
−1 −1   c2  = 0
−1 −2
c3
を満たす 0 でない解より Gauss の消去法 (Gaussian elimination) を用いて解く.


−1 −1
1
A − 2E =  1 −1 −1 
2 −1 −2
R1 ↔R2
R2 +R1
→ R1 
−2R2 +R3 →R3
−→
1
 0
0

−1 1
−2 0 
1 0
R2 ↔R3
2R3 +R2 →R2
R3 +R1 →R1
−→

1
 0
0


より c3 は任意の定数,c2 = 0, c1 = −c3 となる.したがって,固有ベクトル C は 

0
1
0
−1

1
0 
0


0 
 で表され,
1
2


X1 = 

−1

 2t
0 
 e はこの微分方程式のひとつの解である.
1
固有値 λ = 1 に対する固有ベクトルは



より 



 −1×R2 →R2 

R1 ↔R2
0 −1
1
1
0 −1
1 0 −1
−2R2 +R3 →R3
−R2 +R3 →R3
 0 −1
 0 1 −1 
0 −1 
1 
A−E = 1
−→
−→
2 −1 −1
0 −1
1
0 0
0

 
1
1

  t


で表され,
X
=
1 
2

 1  e もこの微分方程式のひとつの解である.同様に固有値 λ = −1 に対する
1
1
固有ベクトルは


−1
1
2 −1 
−1
1
2
A+E = 1
2


−1


− 15 ×R2 →R2
−2R2 +R1 →R1

−2R2 +R3 →R2
1
2
 0 −5
0 −5
R1 ↔R2
−→
−1

−1
3 
3
−R2 +R3 →R3
2R2
5
+R1 →R1
−→

1 0
 0 1
0 0

1/5
−3/5 
0



 −t


3 
 で表され,X3 =  3  e もこの微分方程式のひとつの解である.ここで X1 , X2 , X3 は一次
5
5
独立なので X = c1 X1 + c2 X2 + c3 X3 は一般解になると思われる.次の定理で述べるが,確かにこれは一般解で
より 




 
−1
1
−1
X = c1  0  e2t + c2  1  et + c3  3  e−t
5
1
1

ある.よって一般解は
で与えられる. ¥
行列 A の係数が定数で,n 個の異なる固有値をもつとき,次の定理が成り立つ.
¶
³
′
定理 8.1 同次連立微分方程式 X = AX の A が n 次の定数行列で n 個の異なる固有値 λ1 , λ2 , . . . , λn とそ
れに対する固有ベクトル C1 , C2 , . . . , Cn をもつならば,この微分方程式の一般解は
X(t) =
n
∑
ci Xi (t)
i=1
で与えられる.ただし,Xi = Ci eλi t (i = 1, 2, . . . , n) はそれぞれ X′ = AX の解であり,また一次独立で
ある.
µ
´
例題
{ 8.2 次の連立微分方程式を解け.
x′1 + x1 + 3x′2
=0
x′2
=0
3x1 +
+ 2x2
.
解
(
X(t) = c1
−6√
5− 7
)
√
(3+ 7)t
e
(
+ c2
−6√
5+ 7
)
e(3−
√
7)t