第六話 TV 番組で文字出すにも、創意工夫が大切でした! はじめに ワープロの発達がテロップの世界を 変えた・・・・・ 前回までは「癒しの音空間創り」3 回に 手書きのテロップ、ワイプの効果、 フリップの文字はサイズの変化や動 きが可能!! わたりお付き合いいただきました。誌面を 現在 TV 番組の文字情報やイラストなど 長々とお借りしました。今回は筆者自身が はそのほとんどが PC によって創られてい 1973 年当時、文字などをカメラ映像に 体験した現場でのちょっとした創意工夫の ます。 OL させるには基本的に黒色の紙に白文字 お話です。 出演者が色々と番組内容を説明をする時、 で書かれたカードを FSS 装置にセッティ 手持ちで使うイラストボード類もデザイナ ングして使用していました。また文字のワ ーが PC によって創っています。しかし当 イプ効果などは機材の関係でなかなか簡単 時は手書きのイラストや文字、せいぜい活 にはできませんでした。そこで、かなり無 字は写植という印刷に近いもの使用してい 理やり、それも原始的な方法で、様々な文 銀座を歩くステキな BG(ビジネスガー ました。 字ワイプ効果を実現していました。それは ル)がキレイな OL(オフィスレディ)に 国産初のワープロ専用機(東芝)が発表 機材的な方法ではなく、なんと人的方法で 変わったという話ではありません。 されたのが 1978 年です。 実現していたのです。 今回は映像に OL(オーバーラップ)さ テロップの世界もそれまではテレシネあ ・・・ 時 代 が 変 わ れ ば、BG、 OL も変わる!?・・・ せて提供する文字情報「テロップ(telop) 」 るいは副調整室で手書きあるいは写植印刷 のお話、またその時代背景 BG(バックグ による素材を、FSS 装置を使い、OL 処理 ラウンド)のお話です。 によって放送していました。 引き抜き効果 図ー 1 図を見ればわかるように出来上がったテ ロップカードに何も書いていないテロップ 私が初めて TV 制作関係の仕事にたずさ 1978 年ワープロ専用機を(東芝)が初 カードを重ね 映像にテロップを OL した わったのは今から 40 年ぐらい昔のことで めて発表 1980 年 ワープロ業界に家電各 ら重ねた何も書かれていない方のカードを す。 社が参入してきます。 紙芝居の要領で引き抜くと下に書かれた文 1973 年、昭和 48 年頃、当時 TV 番組 その後 PC のワープロ機能が普及 2002 字がワイプされて現れるというものです。 の中では出演者の名前などの文字情報はテ 年家電メーカーワープロ専用機(シャープ) この方法を応用すれば、2 行の文字や縦 ロップ(オペークカード)という紙に書かれ、 の生産が終了します。 書きでも利用でき、また引き抜くカードに テレシネと呼ばれるセクションに設置され スリットを入れるなど、まさに創意工夫で た FSS(フライング スポットスキャナー) ワープロや PC はその高度な辞書や罫線、 面白い効果が期待できます。もちろん手動 という装置から STUDIO-SUB 副調整室に 特殊フォント、図表などと優れた機能を生 送られそこでカメラの映像に「スーパーイ かし TV 番組制作のテロップや図表などの ンポーズ」 (superimpose、 「重ねる」 )別 表示にもなくてはならないツールとして発 です。 起こし効果 図ー 2 の言い方では OL させて放送していました。 達しました。 これが今あらためて考えてみるとなんと また PC は今日の CG 制作にも欠かせな 単にテロップカードを立てておき OL し もアナログチックで、またちょっとした創 いものにもなっています。 たところで倒すだけ、出来上がり映像は文 意工夫を加えることで、おもしろ味のある 字が画面下から起き上がってきたような効 素材になっていて、 「スタジオ夜話」的に興 果になります。 味あるものだったことを思い出しました。 48 FDI・2013・11 フリップは動くぞ!! 黒地に白文字なら FSS 装置での映像素材 でなくとも OL は意外と簡単です。スタジ オカメラをその時一台利用できるなら、大 きな黒地のカード(フリップ)に小さめの 白文字で書けば、それをカメラでズームイ ンなど動きをつけて OL、これで文字が動 いたり、サイズが変化したりと面白さがぐ っと増します。創意工夫です。 余談になりますが、昨今「美文字」とい う表現がありますが、当時手書きのテロッ プは正に「美文字」のスペシャリストが書 いていたのです。また手書き文字の字体に もいくつか決められていたものがありまし た。歌舞伎の文字、勘亭流、芝居文字や今 で言うゴシックなど様々です。 いずれにしても人的な方法です。協力し ていただくテレシネのスタッフの方々やカ メラマン、スイッチャーの皆さまや文字を 書くデザイナー、くれぐれも普段からの良 きお付き合いを通し、コミュニケーション 良好をこころがけておくことは言うまでも ありません。 ・・・・読者、諸先輩の皆様 これからも 良きお付き合いをお願いいたします。 参考 テロップ ア メ リ カ の グ レ イ 社 の 商 品 名、television opaque-card projector、カードの寸法 125 × 100mm、文字が画面の横方向や縦方向にスクロー ル機能などもある。 縦ロールテロップ VRT vertical 横ロールテロップ HRT horizontal フリップ 27cm × 35.5cm 程度のボードに文字や図などを 書きテレビ番組で、主にタイトルやクレジットを表 すのに使う。 フライング スポットスキャナー(FSS) CRT の走査スポットを光源とし、被写体をなぞる ことにより画像を取り込む装置。 テロップなどの画像取り込み用に使用されていれ る。 ー 森田 雅行 ー 49 FDI・2013・11
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