(株)マルハニチロ食品 ビジネスインテリジェンス導入事例

(酒類・加工食品企業間情報システム研究会)
(株)マルハニチロ食品
ビジネスインテリジェンス導入事例
2013年6月
㈱CACマルハニチロシステムズ
企画部 古賀
会社概要(単体・連結)
社名
株式会社マルハニチロ食品
社名
株式会社マルハニチロホールディングス
代表者
代表取締役社長 坂井 道郎
代表者
代表取締役社長 久代敏男
主な事業内容
冷凍食品・レトルト食品・缶詰・練製品・化成品・
飲料の製造・加工・販売
主な事業内容
・水産事業(漁業・養殖、北米、水産商事、荷受、
戦略販売)
・食品事業(冷凍食品、缶詰、煉製品、レトルト、
デザート、化成品、畜産等)
・物流保管事業(保管、配送)
沿革
2008年(マルハニチロ水産・マルハニチロ食品・
マルハニチロ畜産・マルハニチロ物流の4つ
の主要事業会社を中心とするマルハニチロ
グループ新体制スタート)
資本金
12,224百万円
売上高(2013年3月期)
140,134百万円
沿革
・1880年(中部幾次郎、創業。マルハのルーツ)
・1906年(堤清六、平塚常次郎堤商会設立。
ニチロのルーツ)
・2007年(10月に旧マルハと旧ニチロが経営統合)
資本金
31,000百万円
連結売上高(2013年3月期)
809,789百万円(水産:486,469百万、
食品畜産:302,452百万、保管物流:15,382百万、
その他:5,484百万)
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旧情報系システム概要
・稼働時期
・使用ツール
・使用ハード
・活用データ
2000年4月
Oracle(DB)+コグノス社Powerplay&Impromptu(BIソフト)
サーバ(UNIX&WindowsServer2003)
クライアント(WindowsXP IE6)
基幹系の販売、会計及び周辺システムデータを連携
【再構築理由】
・レスポンス問題
- 設定した条件によっては、応答しない場合もあり
・Win7対応
- 古いソフトの為、IE7以降に非対応、セキュリティ上も問題あり
・ハードウェア老朽化
- ハード刷新したくてもソフト非対応により更新出来ない状況
・ソフト保守切れ
- バグやセキュリティ課題に非対応
・ライセンス不足
- 販売終了の為、ライセンスを増やすことが出来ない
・業務要件課題
- 日中更新が出来ない、保存(閲覧可能)期間の不足
・更新処理負荷問題
- 夜間キューブ作成更新処理に時間がかかる
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旧情報系システム構成
[ユーザ数]
約1,000名(経理、営業が主ユーザ)
BI層
Powerplay
(自由分析)
DM
DM
Impromptu
(定型レポート)
[利用用途]
販売系(売上、仕入、粗利、在庫、
受払、売掛、販売実績など)
会計系(BS、PLなど)
DM
DM
DM
DM
・・・
DWH層
[現状データ容量]
100GB
Oracle DB
(販売・経理明細データ、小売店実
績データ、粗利データ等)
ETL層
データソース
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SAP
(会計)
ホスト
ホスト
ホスト(GS21)
(販売管理、在庫等)
[構造]
データ種ごとのキューブ、さらに部門別
のDMが3000弱
夜間処理で1日1回更新
再構築要因と選択ツール
システム再構築の目的
1.パフォーマンスの改善による分析・
レポート作業効率の向上
大量・明細検索でも性能劣化しない高速DB
高速データロードによる鮮度の高いデータ反映
選択ツール
SAP
HANA
2.ユーザフレンドリーな仕組み作りによる
情報分析の活性化
No1シェアのBIツールによる
見える化の仕組み構築
利用シーンに即した充実したレポーティング機能
簡単で誰でも使える非定形検索と分析
不足機能の是正
3.ユーザ要望に迅速に対応可能な柔軟
性のあるシステム
ユーザ自身で簡単にレポート作成・分析
不足機能の解消と陳腐化しない仕組み作り
4.IT部門の運用負荷の削減
チューニングレス、マートレスな情報基盤
ユーザ自身によるレポート作成の推進
専用個別サーバによる運用の効率化、リカバリ簡素化
4
インメモリ技術を駆使した
超高速なDWH
・当日データの反映
・レスポンス不満を解消
・必要期間の明細保持
・チューニングレス
SAP
Business
Objects
BI 4.0
職種、階層を意識することな
く、使い易いツールの提供
気になるデータをGoogle感覚
で検索・分析する機能の提供
(不足機能の解消)
誰でも簡単にレポート作成
(IT部門負荷低減)
インメモリDBを採用した理由
SAP HANAは、全てのデータをメモリ上に展開することで、
「チューニングレス」、「データマート不要」での⾼速演算処理を実現可能。
従来型DWHアプライアンス
サーバ
データベース
メモリ
SAP HANA
サーバ
メモリ上
・⾼いデータ圧縮率
・チューニング⼯数削減
・データマート不要
スイッチ/ネットワークの⼯夫
ディスクI/Oの
ボトルネックが発生
必要なデータだけを抽出
キャッシュを利⽤した⾼速化
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データ領域⽤のディスク
が不要、全てメモリに格納
新情報系システムについて
Dashboard
Explorer
Mobile
(ダッシュボード)
(自由分析)
(検索エンジン)
Crystal Reports
LiveOffice
(定型レポート)
(Office連携)
Web Intelligence
BI層
(自由分析/
レポート作成)
統合BIプラットフォーム
キューブ不要
多重アクセス
DM不要
DM
DM
DM
DM
DWH層
SAP HANA
(販売・経理明細データ、小売店実
績データ等)
ETL層
データソース
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Data Services:ETLツール
SAP
(会計で利用)
ホスト
ホスト
ホスト(GS21)
(販売管理、在庫等)
6
BIソリューション
自由分析/定型レポートだけではなく、
ダッシュボードや検索エンジンなど将来
の拡張性もあり最適なフロントツールが
選択可能
統合BIプラットフォーム採用により、
全社展開にも迅速・柔軟に対応
DWHソリューション
インメモリDBの採用により、大量データ
を高速処理し多重アクセスに対応
運用負荷を大幅に削減(データマート、
キューブ作成・メンテナンス不要)
フロントBIツールからの多重アクセスに
おいてもパフォーマンスを維持
検討する上での課題と対応策
【検討経緯】
2012年12月にベンダー数社の提案を比較検討しながら、一次選考にて2社に絞り込み、その後は
実機検証として、マルハニチロの実データを使った評価分析を行った。
【検討上の課題と対応策】
 HANAの導入実績が少ない
-A社製品と比較し、HANAの導入実績が少ない-
⇒実際の販売明細データにて実機検証を実施。実績面の不安を払拭するほどの結果(レスポンス面
※特に多重アクセス、日中更新処理時間など)を得ることができた。
 メモリサイズ(ライセンス費用)
-机上の計算だと128GB必要であり、ライセンス費用が高額に-
⇒これも実データでの検証を実施し、想定していた以上の高い圧縮率を実現。
結果的に64GBのライセンスで収まることが判明し、これを機にHANA採用の流れに。
 サーバの冗長性
-当時、SAP社の認定取得済のシングル構成サーバでは信頼性・可用性の面で問題があった-
⇒ニーズに合った冗長性のあるサーバ機が充当可能な提案をベンダーから受けた。
(SAP社のアプライアンス製品認定取得)
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SAP HANAのパフォーマンス(レスポンス検証)
高速DWHエンジンとして最適なインメモリ技術およびカラムストアの技術を採用することで、無駄なI/
Oを排除しているため、クエリに対して瞬時に結果を返すことができる。
当社販売明細データを使用した、BOの Web Intelligence のレポート出力時間の測定結果(単体性能)は
以下のとおり。
DB時間:HANA-DBでの処理時間
SW時間:ストップウォッチでレポートをクリックしてからレポートが完全表示されるまでを計測した時間
単体
5年
2年
DB時間(秒)
SW時間(秒)
DB時間(秒)
SW時間(秒)
全件集計
0.03
2.08
0.01
2.52
(縦)部門・商品 (横)締月
0.73
56.66
0.53
58.80
部門指定
0.50
2.66
0.51
2.96
取引先指定
0.03
2.10
0.03
2.48
条件指定(商品)
0.04
2.20
0.01
2.34
条件指定(都道府県)
0.71
19.48
0.51
20.80
HANA-DBの処理時間は全て1秒以下となっており、5年分のデータを保持した
場合でも高速であった。SW時間が長いものはレポートの出力サイズが非常に大きい
ことが理由であり、レポートの作り方を工夫することで大幅に時間を短縮可能
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SAP HANAのパフォーマンス(多重処理検証)
コア単位にカラムパーティショニングが行われているため、多重アクセス下においても性能劣化せず、
ユーザ数増加や適用業務範囲を広げてもユーザにストレスを与えることなく使用することが可能。
当社販売明細データを使用した、BOの Web Intelligence のレポート出力時間の測定結果(多重性能)は
以下のとおり。
2年分データ及び5年分データでそれぞれ100多重のSQLを発行し検証。
今回、SQLスクリプトのLOOPで100回SQLを連続発行(SLEEPなし)した。
100多重
5年
2年
DB平均時間
(秒)
DB MAX時間
(秒)
DB平均時間
(秒)
DB MAX時間
(秒)
全件集計
0.08
0.55
0.08
0.48
(縦)部門・商品 (横)締月
0.19
0.75
0.11
0.78
部門指定
0.11
0.72
0.08
0.66
取引先指定
0.40
1.58
0.17
3.72
条件指定(商品)
0.20
1.04
0.13
1.37
条件指定(都道府県)
0.17
0.89
0.10
0.74
100多重においてもHANA-DBの平均処理時間は1秒以下となり、性能は劣化しない。
5年分のデータを使用した場合においても非常に良好なレスポンスを維持している。
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導入決定後以降に発生した課題
旧システムを円滑に新システムに移行することを主眼に置いて、リプレース作
業を開始
・新旧システムでの数値検証
・新システムへのレポート移行
【主な課題】
・BusinessObjectsのバグ問題
- 採用したBIツールに基本機能にてバグ発覚
・導入機器の搬入時期
- SAPの認証に時間がかかり本番機(実機)でのテスト遅れ
・PCのXP→Windows7切替時期と重複
- XP機ブラウザを暫定的にFirefox使用、win7機はIE9使用
・他システム開発プロジェクトとの関連
- 殆どのシステムと連携していることでの整合性維持
・5社統合及び組織改編
- 今後の事業会社統合による影響と対策
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BIツール選定にあたっての留意点
【留意点】
・ IT各社はDBの速さを謳い文句に競い合って提案するが、ユーザからすると、
条件を設定し答えが出てくるまでの時間が重要。
今回もHANAの性能にとらわれすぎて、BIツール側のサーバ処理時間を軽視
していた。
複数のサーバで処理する場合は、トータルスループットで判断すべき。
・ カラム型データベースとロウ型データベースの特性を見極めた上での対応が
必要。(カラム型は出力する項目数が多いと既存DBと性能差はあまりない)
【所感】
・ マルハニチロとしては利用者が最も多いシステムであり、ユーザビリティに注力
してツール選定から導入支援まで将来性を見越した選択を行ってきた。
稼働間もない為、今はまだその結果が正しかったかどうかは不透明ですが、
少なくともBIの刷新は、目に見えにくいですが投資効果の大きいものである
と考えています。
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以上、ご清聴有難うございました。