7. メモリアーキテクチャ

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計算機アーキテクチャ基礎論
7. メモリアーキテクチャ
佐藤証 ⻄9-613
[email protected]
メモリ装置の機能
① 主記憶装置/補助記憶装置
- CPUとデータのやり取りを⾏う⾼速な主記憶装置(ICメモリ等)
- ⼤量データの⻑期保存⽤の補助記憶装置(ハードディスク等)
② メモリ媒体の種類
- 半導体,磁性体,光学記録媒体など
③ 揮発性/不揮発性
- 電源を切るとデータが消失
- 電源を切ってもデータを保持
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メモリ装置の機能
④ RAM/ROM
- データの再書き込みが可能なRAM (Random Access Memory)
- 読み込み専⽤のROM (Read Only Memory)
⑤ アクセス⽅式
- シーケンシャル(順次)アクセス (sequential access)
- ランダム(直接)アクセス
⑥ 可搬性
- メモリ媒体を移動して使⽤できること(USBメモリ等)
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メモリ装置の階層
 CPUに近いメモリほど
⾼速性が要求され,遠
いものほど⼤容量性が
要求される
 ピラミッドの下へ⾏く
ほど1ビット当たりの
コスト(ビットコスト)
は低くなる
 CUPの内部レジスタ,
キャッシュメモリ,主
記憶メモリを合わせて
内部記憶装置,それよ
り下の補助記憶装置を
外部装置と呼ぶ
4
ICメモリの分類
 揮発性で読書き可能な
RAMと不揮発で読み取り
中⼼のROMに⼤別される
 Intelの創始者の⼀⼈
Mooreが1965年に⽰した
経験則「18ヶ⽉で集積度
は2倍になる」
DRAMの記憶容量
リフレッシュ不要
揮発性
RAM
ICメモリ
スタティック
RAM(SRAM)
リフレッシュ必要
ダイナミック
RAM(DRAM)
バイポーラ型
MOS型
MOS型
書換え不可
不揮発性
ROM
マスクROM
書換え可
ユーザプログ
ザプ グ
ラマブルROM
PROM
EPROM
EEPROM
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MOS型トランジスタ
 Metal(導電体)-Oxide(酸化膜)- Semiconductor(半導体)の
構造を持つトランジスタデバイスをMOS型と呼ぶ
 電界効果型トランジスタFET(Field Effective Transistor)と
も呼ばれる
 nMOS(negative MOS)型はゲートに正電圧を,pMOS
(positive MOS)型はゲートに負電圧をかけるとオンになる
 nMOSとpMOSを使う回路をCMOS(Complementary MOS)
回路と呼ぶ
1
1
0
入力0
○
×
入力
出力
入力1
1
○
0
×
0
6
MOS型SRAM
 選択線S=1にして,データ線対(D,D)=(1,0)とすると
データ1が,(D,D)=(0,1)ならばデータ0がインバーター
セルに保持される
 選択線S=0ならばデータの読み書きは⾏われない
 選択線S=1にしてデータ線を外から駆動しなければ,セル
から値がデータ線対に読み出される
 選択線はワード線,データ線対はビット線対とも呼ばれる
信号線D
選択線S
0
信号線D 信号線D
選択線S
信号線D
0
1
on
1
0
off
off
1
0
on
off
off
0
7
MOS型DRAM
 コンデンサCに電荷が充電されている状態を”1”,放電
されている状態を“0”と定義する
 選択線S=1にすることでnMOSトランジスタQ1をオンし
てコンデンサと信号線Dを接続して読書きを⾏う
 セルがSRAMに対して⾮常に⼩さく⾼集積化に向く
 コンデンサから電荷が⾃然に放電されるので,定期的に
書き直すリフレッシュ処理が必要
 SRAMよりも低速で,待機電⼒も⾼い
信号線D
選択線S
DRAMセル
8
DRAMの動作
 選択線(word線)とデータ線(bit線)にDRAMセルを格⼦状に接続
 キャパシタを充放電することによって読み書きを⾏う
書き込み動作
読み出し動作
Micron社1MbDRAM MT4C1024
http://www.s-graphics.co.jp/nanoelectronics/index.htm
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スタック型とトレンチ型セル
 DRAMはデータとしての電荷を保存する⼤きなキャパシタを作る必要
があり、トレンチ型とスタック型の⼆種類のセル構造がある
 トレンチ型:トランジスタの横のシリコン基板に掘った鋭い溝の構造
- ⽇⽴製作所の⾓南英夫(現広島⼤学教授)の発明
 スタック型:トランジスタの上にシリコンを堆積させた構造
- ⽇⽴製作所の⼩柳光正(現東北⼤学教授)
 。スタック型はキャパシタを積層するためにトレンチ型より⼯程数や
信号線D
選択線S
D
D
S
S
DRAMセル
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DRAMの衰退
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 NEC・⽇⽴・三菱のメモリ事業を統合したELPIDAは経営
破綻し⽶micronの傘下に
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トレンチコート
 トレンチコートといえば英国を代表するファッション
これなに?
これなに?
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トレンチコート
 第⼀次世界⼤戦の英国の軍服で,銃,弾薬,⼿りゅう
弾などをぶら下げた
 地⾯に⽳を掘る塹壕(トレンチ)からその名がついた
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DRAMモジュール
 バスクロックに同期して⾼速動
作するSDRAM (Synchronous
DRAM)や,⽴上り/⽴下りの両
⽅で動作するDDR SDRAM
(Double Data Rate SDRAM)
等の規格がある
 SPD(Serial Presence Detect)
はチップの種類や構成、メモリ
容量、誤り訂正符号やパリティ
の有無などの情報をEEPROM
に格納している
メモリ
SDRAM
規格
PC100
PC133
転送速度
800MB/s
1066MB/s
DDR SRAM
DDR200
(PC1600)
1.6GB/s
DDR550 DDR2-1200 DDR3-2133
(PC4400) (PC2-9600) (PC3-17000)
4.4GB/s
9.6GB/s
17GB/s
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SRAMチップの例
 記憶容量:215=32768バイト(32KB)
 アクセス時間:最⼤70ns
 電源:Vcc=5V,スタンバイ時2V動作可能
 消費電⼒:動作時最⼤50mA,スタンバイ時最⼤20μA
 動作温度範囲:0~70°
/S
1
0
0
0
端⼦
/W /OE
Φ
Φ
0
Φ
1
0
1
1
動作表
モード
⾮選択
書込み
読取り
動作
データピンDQ
ハイインピーダンス
⼊⼒
出⼒
杯インピーダンス
メモリマップ
消費電流
スタンバイ
動作
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SRAMチップのブロック図
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メモリセルの選択
 メモリセルは⼆次元に配置され,⾏と列の2⽅向から
アドレスの指定が⾏われる
 DRAMの読出しは低速だが,列⽅向に⼀度に多くの
ビットが読み出されているので,これを連続転送して
速度を上げるのがSDRAM
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メモリインタリーブ方式
 連続するアドレスが順次アクセスされる確率が⾼い
 連続するアドレスを複数のメモリに交互に割り振る
 メモリのデータをバンクと呼ばれるバッファ領域に読
み出して,連続するデータのアクセスがあればこのバ
ンクからデータを取り出す
 SDRAM等で⾼速に代⽤⽤のキャッシュメモリに転送す
るのが現在の主流
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ROM
 フラッシュメモリなど再書き込み可能なROMが普及し,
「読取り専⽤」ではなく不揮発性メモリの意味合いが強い
 マスクROM
- 製造時にフォトマスクでデータを配線パターンとして記録
 PROM (Programmable ROM)
- ユーザーが⼿元でデータの書き込みが可能
- EPROM (Erasable Programmable ROM)
データの書き込みは電気的に⾏い,紫外線照射でデータを消去
現在はほとんど使われない
EPROM
EPROMイレイサ
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EEPROM (Electrically Erasable PROM)
 電気的にデータ書込みと消去が可能なROM
 主流のFlashメモリのセルはMOS型FETと似ているが,浮
遊ゲートを有するトランジスタ⼀個で構成される
 NAND型フラッシュメモリの動作
- 書込み:制御ゲートに20V程度の電圧をかけることで,p領域内の
電⼦がトンネル効果で酸化膜を通過し浮遊ゲートに取込まれる
- 消去:制御ゲートに逆⽅向電圧をかけて浮遊ゲート内の電⼦を放出
- 読込:浮遊ゲート内に電⼦がないとチャネルができ電流が流れる
書込み
ON
OFF
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EEPROM (Electrically Erasable PROM)
 電⼦の通過で酸化膜が劣化するので書込み回数は104程度
 NAND型:配線が簡単で⾼密度,シーケンシャルアクセス
に適しているがランダムアクセスには不向き.ストレージ
⽤途など
 NOR型:配線が複雑で⾼集積化に不向きだが,ランダムア
クセスに向いている.BIOSや従来のEEPROMの置き換え
 PICやH8マイコンのROMにもFlashメモリが使⽤される
SSD
Compact Flashと
SDカード
USBメモリ
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NOR型とNAND型のセル
NOR型
NAND型
演習問題1
① メモリを分類する場合の項⽬について説明しなさい
主記憶装置/補助記憶装置,メモリ媒体の種類,揮発性/不揮発性,RAM
/ROM,アクセス⽅式,可搬性など.
② メモリ装置の階層でトレードオフとなる項⽬は何か
アクセス速度と記憶容量.
③ RAMにおけるリフレッシュ動作とは何か説明しなさい
DRAMは⼀定時間を過ぎると記憶内容が消失してしまう.したがって,
DRAMでは消失する前に記憶内容を読み取って再書き込みを⾏う操作が必
要.また,データを読み取った後にもリフレッシュ操作が必要.
④ MOS型のSRAMとDRAMの特徴を説明しなさい
SRAMは⾼価だが⾼速に動作する.DRAMは⼤容量化を安価に実現できる.
⑤ メモリインタリーブ⽅式について説明しなさい
メモリをバンクに分割しておき,各バンクから同時にデータを取り出すこ
とでアクセス回数を減らして⾼速化する⽅式.
⑥ NAND型とNOR型のフラッシュメモリを⾼密度化と
式の観点から⽐較しなさい
アクセス⽅
NAND型はセルを密に配線した⾼密度化が容易でシーケンシャルアクセス
に適している.NOR型は配線が複雑なため⾼密度化が困難であるがランダ
ムアクセスに適している.
ハードディスク装置
 IBMが1956年に開発した磁性体を塗布し
た硬質の円盤を⾼速で回転させて読書き
を⾏う補助記憶装置
 磁性体で作られたヘッドに巻き付けたコ
イルに電流を流し,⼩さな溝ギャップか
ら漏れる磁束でディスク⾯を磁化
 読取りはディスクからの漏れ磁束で⽣じ
る電流を検出
 電流の向きでデータの0/1を制御
書込み
読出し
24“ディスク50枚で5MB
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ハードディスク装置
 プラッタ (磁気ディスク)
- データを記録する磁性体を塗布または蒸着した⾦属のディスク.
ディスク枚数は2〜10枚程度
 スピンドルモータ
- ディスクを毎分4,200〜7,200回転程度で回す
 磁気ヘッド
- スイングアームの
先端に取り付けら
れデータを読み書
きする.ディスク
の各⾯に対してひ
とつ⽤意される
 アクチュエータ
(位置決め装置)
- ヘッドをリニア
モータで制御し任
意のトラック上に
移動する機構
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ハードディスクの容量
 トラック (track)
- 同⼼円状の記録領域
 シリンダ (cylinder)
- 複数のディスクで同じ直径のトラック
を筒に⾒⽴てたもの
 セクタ (sector)
- トラックを中⼼から放射状に分割した
最⼩の記録領域.通常は512バイト
 線記録密度
- 円周⽅向の単位⻑さあたりの記録ビッ
ト bpi (bits per inch)
 トラック密度
- 半径⽅向の単位⻑さあたりのトラック
数 tpi (track per inch)
 ⾯記録密度
- 線記録密度×トラック密度 bpsi (bits
per square inch)
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ハードディスクのアクセス時間
 シーク時間 (seek time)
- 磁気ヘッドをディスク上の⽬的位置まで移動させる時間
 回転待ち時間 (search time)
- トラックの位置決めが完了してから磁気ヘッドに⽬的のセクタが
現れるまでのディスクの回転待ち時間
- “磁気ヘッドが⽬的のセクタ上にある場合の0秒(最⼩)”と”1回転
分の時間(最⼤)”の平均の回転待ち時間が多く⽤いられる
- 平均回転待ち時間(秒)=60秒÷回転数÷2
 データ転送時間
- データの転送が開始されてから完了するまでの時間
- データ転送時間(秒)=データ量(B)÷データ転送時間(B/s)
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デフラグ(Defragmentation)
 ディスクに書き込みと削除を繰り返し⾏うと,ファイルの配置が
不連続になり、空きスペースが細分化される.このため連続した
空き領域に⼊りきらないファイルを分割して保存するようになる.
 ファイルの分割保存が増えると,OSの処理量やヘッドの移動量
が増⼤し,読み書き速度が低下.
 デフラグはディスク内のファイルを再配置して分割状態を解消し,
連続した空き領域増やす.断⽚化(Fragmentation)の反意語
 断⽚化解消だけでなく,ファイルのアクセスが早くなるように
データの配置を
最適化するもの
や,ランダムア
クセスに強いが
書込み回数に制
限のあるSSDに
対応したデフラ
グツールもある
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磁気リムーバブルディスク
 光メディアがメジャーとなったが磁気ディスクは⾼速
 フロッピーディスク (floppy disk)
- 磁性体を塗布した⼩円盤を紙またはプラスチック製の保護ケース
に⼊れたもの(320kB〜1.44MB)
 ZIPディスク
- 100〜250MB
ZIP disk
8インチ
5.25インチ
3.5インチ
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世界発明コンテスト
⾃ら主宰する世界発明コンテスト11年連続グランプリ
Dr.中松の発明件数は3,000以上でエジソンの特許件数
の1,093を抜く(特許は約200件)
34年間、⾃分の⾷事を撮影し、⾷べた物が脳の働きや
体調に与える影響を分析したことに対して2005年「イ
グノーベル栄養学賞」を受賞
1987年から毎年10⽉に世界天才会議を開催
フロッピーディスクの発明者
(⾃称)
発明≠特許
世界⼀はこっち
⼭崎舜平(1942-)
 ㈱半導体エネルギー研究所
所⻑⼭崎駿平は2004年に
特許取得件数世界⼀(3,245
件)ギネスブックに認定
 現在は6,000件を超える
 IGZOの特許が有名
その後⾳沙汰なし・・・
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トラックとセクタ
 従来は外周と内周のセクタ数は同⼀であったが,外周ほ
ど記録密度が低下するため,現在は外周のセクタ数を増
やしている
 1トラックごとにセクタ数を変えるのは管理が煩雑にな
るため,領域 (ゾーン) ごとにトラックのセクタ数を固
定するZBR (Zone Bit Recording)⽅式が⽤いられる
セクタ数⼀定型
セクタ可変型
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CD (Compact Disc)
 直径12cmのプラスチックディスク上のアルミ記録層のピットとラ
ンドによりデータを記録し,レーザー反射光の強弱として読み出す
- ピット:レーザー光を乱反射する⼩さな突起
- ランド…レーザー光を反射する平⾯部
 HDDやFDの同⼼円状のトラックと異なり,らせん状の1本のトラッ
クに内側から外側に向かって記録
- トラックの記録密度が⼀定で効率がよい
直径12cm
厚さ1.2mm
ポリカーボ
ネート基板
記録層
(反射膜)
保護膜
約10μm
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CDドライブの構造
 ディスクをスピンドルモータで回転
 光学式ピックアップでディスク上のデータを読み出し
- トラッキングモータ,スクリュー:ピックアップを所定の位置に移動
- ビームスプリッタ:レーザー発振器からの光をCD-ROM側に反射し,
CD-ROMからの反射光を光センサに透過
- 光センサー:CD-ROMで反射して戻ってきた光を電気信号に変換
- ピックアップ:反射光の強弱をデジタルデータに変換
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EFM(Eight to Fourteen Modulation)
 CDのデータはピットの始まりと終わりを“1”に割り当て
ているが,“1”が連続すると短いピットが連続して読み
取りエラーが⽣じやすくなる
 8ビットのデータを14ビットに拡張してエラーを低減
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CD-ROMの回転方式
 ⾳楽CDの速度(150KB/秒)を標準として○倍速で表す
 CLV(Constant Linear Velocity):線速度⼀定⽅式
- 記録⾯の移動速度を内周と外周で⼀定に保つ
- 外周ほどディスクの回転は低くなる
 CAV(Constant Angular Velocity):⾓速度⼀定⽅式
- ディスクの回転速度を⼀定に保つ
- 外周ほどデータの読み出しが早い
 CLV⽅式は内周部の回転が速くなりすぎるためCAV⽅式が多
く採⽤される
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CD-RとCD-RW
 CD-R(Compact Disc Recordable)
- ⼀度だけデータを書き込める追記型CDです。
- 強いレーザーで有機⾊素の記録膜を熱し化学変化を起こす.変化
した部分は元に戻らない
- CD-Rの記録⾯は⾳楽CDやCD-ROMと⾮常に近い性質を持ち,⾳
楽CDプレーヤーやCD-ROMドライブと⾼い再⽣互換性
 CD-RW(Compact Disc Recordable)
- 相変化という物質の状態変化を利⽤し約1,000回の書き換え可能
- CD-RWの反射率は15〜25%と⾮常に低いため⾳楽CDプレーヤー
やCD-ROMドライブで読めないこともある
CD-ROM
CD-R
CD-RW
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CD-R/RWの書き込み方式
 ディスクアットワンス
- ディスク全体のデータを⼀度に書き込む
- 「リードイン(記録開始)→データ本体→リードアウト(記録終了)」の順序
- 追加で書き込みはできないが,リングブロック(データの継ぎ⽬)が⽣じ
ずほとんどの⾳楽CDプレーヤやCD-ROMドライブが利⽤可能
 トラックアットワンス
-
データ本体を複数のトラックのまとまりとして書き込む
「リードイン→複数トラックデータ本体→リードアウト」の順序
このひとまとまりをセッションと呼び,最⼤99セッションまで対応
セッション内のトラック間にリンクブロックが⽣じる
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CD-R/RWの書き込み方式
 セッションアットワンス
- ディスクアットワンスとトラックアットワンスの中間の⽅式
- リードイン→データ本体→リードアウトというセッション構造を複数持つ
- リングブロックが⽣じず⾳楽CDプレーヤ等で確実に読めるCDが作成可能
 パケットライト
- トラック単位よりも細かいパケット単位で書き込む⽅式
- ハードディスクドライブのような感覚でデータを読み書き可能
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CD-R/RW書き込みの失敗を防ぐ技術
 CD-R/RWドライブは常に⼀定の速度で書き込むため,データの
転送が途切れると書き込みに失敗する
 多くのドライブはデータを⼀時的に溜め込むバッファメモリ(2〜
8MB)を持つが,書き込み速度の⾼速化によりバッファ内のデー
タがなくなるバッファアンダーランが⽣じることもある
 バッファアンダーランの兆候を予測して直前に書き込みを⼀時停
⽌し,バッファが⼀定⽔準以上に溜まったら書き込みを再開
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DVD(Digital Versatile Disc)
 ビデオ⽤の「Digital Video Disc」として企画されたが,画像以
外の多⽤途(Versatile)として名称が変更された
 ソニー・Philipsの「Multimedia CD」と東芝・松下・⽇⽴・ビク
ター・パイオニア・Time Warner・ThomsonのSuper Density
Discが統⼀されてDVD規格ができたが,その後は規格が乱⽴
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DVDの記録方式
 EFMPlus:8/16 (10,2) Run Length Limited
- 8ビットのデータを連続する“0“が最少2個,最⼤10個となる16
ビットデータに変換
 相変化記録⽅式(Phase Change Rewritable System)
- 記録層を強⼒なレーザー光照射で600℃以上に加熱して分⼦を流
動状状態にして照射を⽌めるとアモルファス(⾮結晶)状態となる
- レーザー⾼強度を下げて400℃程度に加熱して照射を⽌めるとク
リスタル(結晶)状態となる
- データの読み取りは弱いレーザーで⾏う
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Blu-Ray Disc vs.HD DVD
 BD
- 波⻑405nmの⻘⾊レーザー
光の焦点サイズを0.4μm以
下に絞り25Gバイト(1層)の
記録密度を実現
- ⾼NAレンズを採⽤するため
カバー層わずか0.1mmの特
殊なメディア構造
 HD DVD
- 焦点サイズ約0.51μm
- 従来のDVDメディア
の設備を流⽤して製
造することでコスト
ダウンを狙った
http://www.itmedia.co.jp/pcuser/articles/0706/01/news004.html#l_ht_0705kaitai02.jpg
46
BD LTH(Low to High) TYPE
 BD-R
- 記録層に⾦属などの無機⾊素をスパッタリング(蒸着)で形成
- 相変化⽅式により未記録の状態では反射率が⾼く記録により反射
率が低くなる
 BD-R LTH TYPE
- CD-RやDVD-Rと同じ有機⾊素をスピンコート法で塗布
- 熱によって⾊素を化学的に分解して消失することで,データ未記
録の状態は反射率が低く,記録により反射率が⾼くなる
- 製造コストが安い
BDの記録イメージ
LTHの記録イメージ
47
48
光ディスク装置
DVD
CD
BD
http://www.ieice-hbkb.org/files/08/08gun_02hen_03.pdf
レーザー
スポット径
トラック間隔/最少ピット⻑
記録⾯
ディスク容量
変調⽅式
サンプリング周波数
チャンネル数
音声
映像 ビットレート(LPCM)
量⼦化ビット数
CD
785nm ⾚外線
1.5μm
1.6μm/0.87μm
⽚⾯1層
650MB/720MB
EFM(2,10)
44.1 kHz
2 ch
1.4 Mbps
16 bit
DVD-Audio
650nm ⾚
0.86μm
0.74μm/0.4μm
⽚⾯1~2層
4.7~9.4GB
8/16 RLL(2,10)
192 kHz (最⼤)
2 ch
9.6 Mbps (最⼤)
24 bit (最⼤)
BD-Video
405nm ⻘
0.38μm
0.32μm/0.138μm
⽚⾯1~4層
25〜128GB
2/3 RLL(1,7)
192 kHz (最⼤)
5.1 ch
27.4 Mbps (最⼤)
24 bit (最⼤)
演習問題2
① 次のハードディスクの記憶容量を計算しなさい
- 記憶容量/トラック:300kB
- トラック数/シリンダ:20
- シリンダ数/ディスク:5,000
300kB×20×5,000=6GB (教科書の28.6GBは誤り)
② 次のハードディスクにおいて,500kBのデータを読み取るのに
必要な平均アクセス時間を計算しなさい.ただし,データは
ディスク上に連続して書かれており,連続する読み出しに待ち
時間等は⽣じないものとする.
- 平均位置決め時間:5ms
- 回転数:7,200/min
- 記憶容量/トラック:300kB
平均回転待ち時間(ms)=60s÷7,200÷2=4.2ms
データ転送速度(kB/ms)=300kB×7,200÷60s=36kB/ms
データ転送時間(ms)=500kB÷36kB/ms=13.9ms
平均アクセス時間(ms)=5ms+4.2ms+13.9ms=23.1ms
③ 近年のハードディスク,セクタ数を外周ほど多くしている理由
を説明しなさい
内周付近と外周付近を同じ記憶密度にして,より⼤量のデータを記憶
できるようにするため.
演習問題2
④ EFM⽅式の原理と,それを⽤いる理由を説明しなさい
EFM⽅式では8ビットのデータを“1”が連続したい14ビットのデータに
変換する.これは“1”が連続するデータに対しても⻑さの短いピットが
連続して現れないようにして読取りエラーを防ぐため.
⑤ 相変化記録⽅式において,記憶層にアモルファス状態やクリス
タル状態を作り出す原理を説明しなさい
記録層に強⼒なレーザーを照射して600℃以上に加熱すると分⼦が流
動状態になる.ここで,レーザーの照射を⽌めると急速に冷えて分⼦
がばらばらの状態で固まりアモルファス状態になる.また,レーザー
光の強度を弱くして記録層を400℃まで加熱してからレーザー光の照
射を⽌めると分⼦が整列したクリスタル状態になる.
⑥ BDがDVDよりも⼤きな記憶容量を実現するための⼯夫につい
て説明しなさい
BDではトラック間隔やビット⻑,レーザー光のスポット径などをより
⼩さくして⾼密度化を図っている.
参考文献
http://www.way-on.com.tw/PCbasal/
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