「MBDの裏表 」 3月12日 15:40~16:20 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 解析技術部 主席研究員 久保孝行 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 講演分野の説明 基本情報 社名 アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 設立 1969年5月15日 資本金 264億8,000万円 代表者 取締役社長 川本 睦 売上高 連結:9751億円 単独:8850億円 (2013年3月期) オートマチックトランスミッション、 ハイブリッドシステム、 カーナビゲーションシステム 主要製品 従業員数 連結 22,134名(2013年3月31日現在) 単独 13,837名(2013年3月31日現在) 本社所在 地 〒444-1192 愛知県安城市藤井町高根10番地 0566-73-1111(代表) アイシン・エィ・ダブリュ 「技術センター」 A/T・H/Vの設計で使う MBDの説明 1 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 目次 1. 2. 3. 4. 5. モデルベース開発とは MBD導入背景 事例:HILS構築 教育への取り組み 制御設計への展開 2 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. モデルベース開発:モデルとは モデルとは 数式群のことです。 Gear Output Input Modeling = - ギヤの数式 - 回転 :Revout = Revin / r トルク :Trqout = Trqin× r Revout Revin Trqout Trqin r : 出力回転数 :入力回転数 : 出力トルク : 入力トルク :ギヤ比 モデルの種類 1. Plant model - Transmission - Motor - Engine - ・・・ 2. Control model ー H∞ Control ー Self learning Control ー Adaptive Control Δ ー ・・・ P 3 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. MBDの領域:Vプロセスとの関係 制御対象(Plant) モデル 制御(Control) モデル MILS 仮想世界 RCP HILS ソースコード自動生成 Automatic C code Generation 実世界 制御対象(Plant) 車両、エンジン、AT 実制御(Control) 電子制御 ユニット 実車評価 制御 モデル 制御対象 モデル モデルによる 仮想評価 実車評価 MILS RCP モデルによる 実車評価 設計 ソースコード 自動生成 HILS シミュレータ による評価 検証 ソースコード 検証 4 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. モデルベース開発:メリット • 設計段階でシミュレーションが活用できることにより、手戻り工数の削減と 制御ソフトの品質向上を同時に達成できる • ソフトウェアを自動生成できるため、第3者の誤解なくソースコード作成できる。 不具合発生時の手戻り工数大 要求分析 制 御 ソ フ ト 開 発 工 程 従来 実車評価 制御仕様書 作成 設計 結合評価 S/W設計 書作成 単体評価 評価 手作業による制御プログラム作成 手戻り工数小 モデルによる 実車評価 要求分析 MBD モデル作成 設計 不具合発生減 モデルによる 仮想評価 ソースコード 生成準備 実車評価 シミュレータ による評価 単体評価 ソースコード自動生成 評価 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. MBDはモデルベース開発の意味 設計 手戻り工数小 不具合発生減 モデルによる 実車評価 要求分析 ソースコード 生成準備 Model-Based Design 実車評価 モデルによる 仮想評価 モデル作成 評価 シミュレータ による評価 単体評価 ソースコード自動生成 モデルを用いた 開発ループ Model-Based Verification 注:この表現は存在しない モデルベース開発MBD (Model-Based Development)の意味 Model-Based Designはモデルを使った設計工程だけ モデルベース開発は、モデルを使った検査・検証まで行う Model-Based Verificationを含む。 MBD=Model-Based Design+ Model-Based Verification 6 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 目次 1. 2. 3. 4. 5. モデルベース開発とは MBD導入背景 事例:HILS構築 教育への取り組み 制御設計への展開 7 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. MBD導入の背景 MBDの導入は、HILSの採用から きっかけは、世界初のFF5速A/Tの開発 FF5AT 製品化 1536 1996 2000 1998 HILS 1024 512 ソフトウェア サイズ 5A/T ソフトウェアはますます肥大化し、 検査時間が増大してきた。 5AT 4倍 4AT 0 1996 2004 1号機導入 数倍に増加 4A/T 2002 モデルベース開発の中の HILS装置に注目しました。 8倍 1998 2000 2002 2004 2006 2008 8 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 多段A/Tの大きさ比較 4速 5速 6速 電子制御の向上とギヤトレーン 方式に変更により6速A/Tは、4速 A/Tよりもコンパクトになった。 9 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 導入背景:ATの機能変更 • 従来の制御 解放側は、OWCが担当 • 新しい制御 係合、解放両方を制御 従来は、機械式のアキュームレータを用いた機械制御。 新方式では、専用のアクチュエータを持った電子制御。 多入力1出力 従来は、油圧の高さを決める 値がコントロール可能 パラメータ 1個 多入力多出力 新方式は、すべて自由自在。 パラメータ 100以上 10 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 事例:HILS構築へ • 新制御では、 自由度の高い制御が可能な 反面、検証すべきパターンが 非常に多かった。 途中で切り替わる 特に変速制御中に別の変速に移動する 多重変速制御の検査は困難を極めた。 再現が難しく、実機では検証が不可能。 シミュレーションの活用が 望まれた。 HILS装置の開発へ 11 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 目次 1. 2. 3. 4. 5. モデルベース開発とは MBD導入背景 事例:HILS構築 教育への取り組み 制御設計への展開 2000年ごろにHILS装置の採用! FF6AT FF5AT 製品化 1996 1998 2000 2002 2004 HILS 1号機導入 12 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. オートマチックトランスミッションのモデリング • 回転系の計算:Dymolaを使ってモデリング 流体系はSimulinkで数式を直接表現 GUIの組み合わせ だけでプラネタリ- などを数式化できる。 - 13 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. AT全体で様々な部品を作る A/T ASSY Gear Train Oil Pump Drive Shaft Clutch / Brake Planetary Gear Other Gears V/B 摩擦特性 引きずりトルク 温度特性 トルク効率(損失) 振動 Valve 調圧式 Accumulator 流体特性 On/Off Solenoid 温度特性 Linear Solenoid 振動 Orifice T/C トルク伝達方程式 トルク伝達方程式 Converter 摩擦特性 Lock Up Clutch 流体特性 温度特性 14 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. パラメータ同定試験の例 • クラッチに油圧を流し、ピストンが摩擦材に接触するまでの 時間を計測する。 様々な油圧の高さで、 様々な温度で測定が必要。 実験データからパラメータを導出 • 流量係数 • オリフィス径 • 油圧応答性 製品には、油圧センサーはない。 穴をあけたり、部品をカットして、自由に動いても 試験ができる専用A/Tを作る。 15 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. AT以外も設計する イグニッション インターフェース 環境設定 E/G ディスプレイ A/T CAN ドライバー 車両としての機械運動のモデル以外に、 エンジン、ABSなどのA/T以外のECUソフトウェアも 設計しなければならない。 16 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. HILSの効果があった実施例 • コーストダウン中の踏み込み試験 時速50~60km/hの定常走行からブレーキを踏み、時速20~ 30km/hに車両速度を下げて、再度加速する。 – 制御ステート切り替えと言う僅かな時間の間にスロットル ペダルが 踏み込まれた場合のショック改善 • パターン解析前 実車発生率0.001% • パターン解析後 実車発生率5% • HILSを用いた評価 ?% 再現率100% ペダル 実車だけの場合、対策の効果があったのか 再現しなかっただけなのか判断できない。 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. HILS採用の第2ステップ 第2ステップ:HILSを導入から、HILSの定着へ • 取り組み内容の例 – 最新プロジェクトへの対応 • 人員の教育 – 環境の統一 • 異なる拠点でも最新のモデルが提供できる。 – 安心して使える • 定期点検の実施。 HILSを導入して終わりではない。 新しい仕組みが定着するまでの仕組みが必要です。 18 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. モデルの世界配信のイメージ図 HILS system HILS models タイムラグなく、全世界で共通のバージョンで検査ができる。 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. HILSの定期点検 • HILSはソフトウェアの検査装置なので、定期的な点検が必 要です。 – 故障スイッチが故障していたら、検査はできない。 OSアップデート 掃除 メンテナンス 入れ替え 機能拡張 20 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. HILS他社導入事例 • 自動車メーカー 車両全体HILSの活用 • ホンダ技術研究所、三菱自動車等 • 他業界 – 特殊車両 – 鉄道 – 電力系 HILSは、MBDの入り口として、今後も様々な業界で 使われるようになる。 21 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 目次 1. 2. 3. 4. 5. モデルベース開発とは MBD導入背景 事例:HILS構築 教育への取り組み 制御設計への展開 22 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. MBD教育の流れ • 教育1 1. 講座:制御理論と共に、MATLABのコマンドを教育。 2. 講座:Simulinkを使った教育 • 教育2 講座期間短縮 1. 制御理論の教育をやめた。 2. 講座:Simulinkの使い方だけに絞る 定着効果のアップ • 教育3 1. 講座:Simulinkの使い方だけに絞る 教育後に直ぐに モデルが書ける。 2. 演習:操作演習を取り入れる • 教育4 1. 講座:Simulinkの使い方だけに絞る 2. 演習:操作演習を取り入れる 3. 図を書かせる、ディスカッションを取り入れる。 23 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 教育の変更理由 課題: 新人:上手に使えない。 中堅:スキル習得にばらつきが多い。 原因 中堅 ・演習量の不足によるスキル未定着 →教育3で解決 ・その後をOJTに、依存しているので 基礎より上のスキルが 身に付いていない。 (新たな問題) 新人 教育3でも使えない。 → Simulink以外の基礎力がなく、 開発全体の流れが解っていない。 新人・中堅で 異なる教育が必要 24 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. アイシンG共通MBD教育実施について 教育4の取り組み • 自社だけでMBD教育を拡充す るのは、困難。 • アイシンG連携で、 MBD教育の環境を用意した。 アイシンG連携 アイシン・ エィ・ ダブリュ アイシン 精機 アイシン・ エーアイ アイシン・ コム・ クルーズ アドヴィッ クス アイシン エンジニ アリング 25 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 2013年度 新設新人用 教育講座 コンセプト アイシンGr.各社で実施しているMBD教育を集約しMBD教習所を設置 ツールを使いこなせる技能を習得できるコースを設定する。 目標 部署に戻ってからのOJT時間を極力減らすために 「モデル設計スキルレベル1」を完了し レベル2の途中まで育成する。 【スキルレベルの定義】 モデル設計スキルレベル 1 : • シミュレーションを実行し、検査ができる。 • Simulink, Stateflowを用いて、指定された機能を、 指示された方法で実現できる。(使用するブロック、構造など、ヒントあり) モデル設計スキルレベル 2 : • Simulink, Stateflowを用いて、指定された機能を、 自らの判断で実現できる。(使用するブロック、構造など、ヒントなし) スキルレベル3 • 最適な方法を自ら判断し、コード生成可能な完全なモデルを設計できる。 26 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. トレーニングテキスト 27 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. アイシンG合同MBD教育 日程 ・新入社員向けに20日コース 内容 形式 ※青字は講座形式 日数 該当箇所 Simulinkレベル1 講習 講座 1.5 1章、2章、3章、4章、5章 Simulinkレベル1演習 3.5 6章 Simulinkレベル2 講習 講座/自習 1 7章 Simulinkレベル2 演習 グループ 6 8章、9章 自習 Stateflow講習 講座 1.5 1章、2章、3章、4章、5章 SF演習 グループ 4.5 6章、7章 ガイドライン講習 講座 1 振り返り、資料作成 自習 0.5 - 発表会 講評 0.5 - 20項目のIDを学ぶ 12日 6日 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 研修のほとんどは考える力の育成 全体のカリキュラムで、 Simulink操作技術を教える部分は2割程度。 知識以外に演習ベースで操作を習熟させる必要があるが、 その時に、Simulinkの操作習熟だけでなく、考える力の育成 に費やす。 考えを補助する図・表の説明・演習 整理手法の説明・演習 適度にディスカッションを取り入れ、知識の押し付けではなく、 自ら考える力の育成を重視。 29 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. MBDの新人教育は「Simulinkの操作」以外の教育が大切 要求の理解方法・要求の育て方を学ぶ • ユースケースの抽出と、タイミングチャートによるユースケー スの表現、その分析手法を勉強します。 • チームで、ユースケースの説明を実施。理解が正しいのか 議論する。これによって要求を正しく理解するためにどのよう に深堀していけばよいのかが習得でき、他者と議論する為に 図が重要である事が認識されます。 設計手順・手順の重要なポイントを学ぶ • 要求を理解してからモデルを作るプロセスの習得を目指す。 要求をしっかりと定義するため、タイミングチャート作り、それ をテストで活用する。 シミュレーションによって検査・検証のプロセスを体験する。 テストファーストの重要性を学ぶ。 30 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. より高い確率でスキルを定着させる取り組み 教育に、ディスカッションを取り入れる • チームで議論させ、話し合うことによってより深く考え、課題 に対して真剣に取り組みます。 どんな話題でディスカッションするのか? • 要求 • システムの把握:何が入力で何が出力か • 機能の把握:どんなユースケースがあるか • 検証 • どんなテストをしなければならないか 一人で黙々と演習を行うよりも時間が必要となるが、定着率まで考慮 して、コースの時間を設定する。 3人ぐらいのグループでディスカッションを行うことで「考える」「理解す る」「説明する」の要求分析に必要な力が育成され、 モデリングの力が定着しやすくなる効果がある。 31 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 受講者が作成したタイミングチャートの例 32 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 修了証書 研修の習熟度を測るため、研修中に課題を提出してもらいます。 【修了証書の発行条件】 以下のモデルを作成、修正。 カテゴリ 章 内容 Simulink 第8章 クルーズコントロール制御 Stateflow 第7章 再生プレイヤー ガイドライン - ガイドラインモデルの修正 きちんと受講した人はほぼ100%が完了 講座のみ受講した人は、100%がモデルの提出ができなかった。 想定通りの結果。 33 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 受講者の声 今後の業務で活用できること • • • • • • • モデルの作り方 ガイドラインに沿ったモデルの記述方法 状態遷移図の作り方 状態遷移表の作り方 仕様の読み方 構造化の考え方 仕様を読み解く際に、タイミングチャートを作成し、テストケー スを考えること Simulink以外の力が強化できた事が 受講者のアンケートから解った。 (狙い通り) 34 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. そもそも制御開発ってなんなの 良くある質問:制御理論の教育をやめて、大丈夫なのか? 企業では、高度な制御理論による精度向上よりも、その他の方が設計工数 が多い。したがって、制御理論を駆使するエンジニアも少数で良い。 MBDに携わるエンジニア全員が制御理論を知っておく必要はない。 (0はダメです。) それよりも、ユーザー視点で制御開発できる事が大切です。 • 戦略・戦術・行動(動作) 上位を意識した制御開発が重要! 「2軸のロボットアームで指定された板に色を塗る。」 で説明 35 Page 35 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 指定された板に色を塗る制御装置 最も簡単な制御例 ロボットアームの軸をどう動かすか 全てのモータの速度、角度を時間ごとに指定する。 データを設定して、指定時間に 指定位置に移動させて、色を塗る。 初歩的なシーケンス制御で実現された工作機械の例 • プログラムの規模は小さい。 • 試行錯誤によってデータを設定する。 • 誤差を見込んだデータ設定を行う。 • 形が変わるごとに、全てのデータを作り直す。 36 Page 36 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 指定された板に色を塗る 最も簡単な制御例 ロボットアームの軸をどう動かすか 全てのモータの速度、角度を指定する。 フィードバック制御を考えよう! 指定どおりにモータを動作させるにはどうする。 二つのモータに対する角速度、角度を用いた2自由度問題。 二つを同じ重みでフィードバックすると、目的の位置に 制御できない。 37 Page 37 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. ロボットアームの高度な制御理論 WEB上に幾つかの事例があります。 確かに難しい制御問題です。 38 Page 38 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 初歩的なシーケンス制御 先ほどの制御では、 形が変わるごとに、全てのデータを作り直す。 部品ごとにデータを全て作り出すのは非常に困難 高度なフィードバックの実現が、ユーザーにとって 本当に重要なのだろうか? 39 Page 39 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. ユーザーインターフェースの改善 ロボットの先端部分の経路を指定すれば、モータの速度、 角度を自動的に計算できるプログラムを追加する。 → ユーザーは経路を指定するだけで済む 2. 形から、最適な経路を計算し、自動的に経路を計算するプ ログラムを追加する。 → ユーザーは、形をCADからコピーするだけ。 1. 40 Page 40 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 指定された色を塗る • CADの形を入力するだけの装置と、入力データを入れるの は大変だが、設定どおりに塗れる装置。同じ開発工数ならど ちらが良い製品なのか? ここで、上位の要求までさかのぼる 上位要求:色が綺麗に塗れれば良い。 下位要求:先端位置を指定の時間に指定の場所に持ってくる。 • 色を塗るロボットアームの角速度・角度のフィードバックを突 き詰めれば本当に綺麗に色が塗れるのか? – そもそも、いつも色は均一に噴射されるのか? • ロボットアームの位置は、そもそも色を綺麗に塗る為の代用 変数でしかないのではないか? 41 Page 41 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. そもそも何をフィードバックすべきか • 画像処理して、自動で色を塗る方が良いのでは? • 画像処理を入れれば、腕の細かいフィードバックは必要ない かも知れない。 ミクロな現象にとらわれず、物事をマクロ的に捉え 本質的には何がしたいのか、上位視点で問題解決すべき 企業の製品開発において、高度な制御理論を駆使する 部分は少ない。 大多数の人間がその他の開発に従事している。 魅力ある製品開発と、高度な制御理論は直結しない。 しかし、現実的には、制御理論を知っている人ほど、MBDで 活躍できるという事実はある。 だから、制御理論を教えれば、同じような人材が増えると事を 期待している教育担当者が多い。 42 Page 42 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 制御工学はなぜ必要なのか? では、制御理論あるいは制御工学は何を教えているのか。 制御理論のコントローラ設計手法 1. 制御対象を把握し、数式で表現する。 – システム同定→プラントモデルの設計 2. 数式を用いて仕様を検討する。 シミュレーション行い要求を確認する。 – ステップ応答→制御モデルとプラントモデルでMILS タイミングチャートを使ったり、シミュレーションを活用する事 =制御工学は、MBDの王道的問題解決手段 • MBDを教える場合には、理論を教えるのが大事ではなく、手 法を教える事が大切ではないか? • そもそも何を教えているのか、教える側が理解しなければ、 受講者に重要なポイントが伝わらない。 【高度な制御理論は、選別した人材に教育すべき。】 43 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 目次 1. 2. 3. 4. 5. モデルベース開発とは MBD導入背景 事例:HILS構築 教育への取り組み 制御設計への展開 – MBDの採用前に取り組んでいた 制御開発技術の紹介 – MBDの制御導入ポイント – MBDの制御導入で失敗する例 実例は説明できない。 ポイントを抜粋して説明する。 44 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. 制御開発へのMBD採用:状態遷移表を活用 油圧制御の開発に状態遷移表を活用。 状態遷移表 状態遷移図(ハレル形式) 状態名 赤、赤 ラベル名 T01 A01 → T02 A02 → 赤、青 T03 A03 → 赤、黄 T04 A04 → 青、赤 T05 A05 → 黄、赤 T06 A06 → 遷移条件 条件アクション 遷移先 遷移条件 条件アクション 遷移先 遷移条件 条件アクション 遷移先 遷移条件 条件アクション 遷移先 遷移条件 条件アクション 遷移先 遷移条件 条件アクション 遷移先 前回A:3秒後 →赤、青 前回B:3秒後 →青、赤 60秒後 →赤、黄 7秒後 モードAで動いた →赤、赤 40秒後 →黄、赤 7秒後 モードBで動いた →赤、赤 UMLに定義された状態遷移マトリクスとは異なる。 検証観点ではなく、要求を作り上げていく事に注目した表 状態遷移の概念を採用したのは、HILSよりも先。 形式的に表現できるので、仕様の誤解が生じにくい。 参照元:組込みエンジニアのための状態遷移設計手法 45 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. R2012bで導入された状態遷移表 • 2012年末にマスワークス社のStateflowに導入された AW方式の状態遷移表 状態遷移表 状態遷移図 紙に書いてもシミュレーションできない。(半MBD?) ツール化によって、MBD(シミュレーション)採用になった。 46 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. モデルベース開発導入の流れ 一般的なMDB 導入パターン 制御系への展開は、 自動コード生成採用までに 様々なハードルがある。 HILS導入 HILSの定着 制御へ展開 • • • ガイドライン 開発環境改善ツール プロセス 自動コード生成 実例は説明できない。 ポイントだけを抜粋して説明 47 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. MBDの制御導入ポイント(効果を出すために) • 導入前(準備) – AUTOSAR等の近年提案されている開発技術は、そもそ も人がミスを起こしやすい原因を排除するための技術。そ れらのリスクを低減する取り組みはAUTOSARやMBDを 採用することとは無関係に実践すべき。 • 導入初期 – Cソースの事をあまり意識せず、やりたい機能の実現に注 視する。RCPの活用が効果的。 – 1回の開発プロセスだけに注視せず、Vプロセス全体が無 理なく連携し、何回も回せるプロセスの流れを構築する。 ウォーターフロー型よりも、スパイラル型に近い。 • 自動コード生成導入時 – モデルは、抽象化されたものである。従来のC言語のルー ルや仕組みを引き継つがない。 48 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. MBDの制御導入で失敗する例 • シミュレーションを活用せず、ソースコードの自動生成だけを 採用する。 – シミュレーションを活用しないと、実車評価まで行った後に、 要求が変わり、毎回自動生成用のモデルを作り直すこと になる。自動生成の採用だけで、工数は削減されない。 シミュレーションを活用していないので、品質もあがらない。 • シミュレーション不可能な領域に手を出す。割り込み処理な ど、Simulinkが苦手な領域です。やっても効果は出ない。 • テストのために、やたらに小さな規模で関数設定をする。 – RAM効率が悪くなる。ツールの特徴を理解せず、従来 方式を押しつけても上手くいかない。 →シミュレーションの活用がMBDのキー。それを活用しない、 あるいはできない領域はやるべきではない。ハンドコードの方 が良い領域は沢山ある。メリットの出る部分で活用すべき。 49 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved. まとめ • MBDの導入効果に夢を追い求めるな。 – ツールを採用すれば、それだけで品質が上がり、工数が 削減されるわけではない。 – ツールの導入は手段であり、目的ではない。MBDは、 ツールの導入ではなく、シミュレーションの導入である。 • 導入して終わりではない – ツール導入で、MBDが終わるわけではない。新しい仕組 みは定着させるために様々な取り組みが必要になる。 • MBDの採用理由は、コストや開発期間の短縮ではない。 – 品質の向上、性能アップが目標で、コストや開発工数の 低減はおまけ。正しくやらなければ何もメリットはない。 50 ©AISIN AW CO., LTD. All Rights Reserved.
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