具体的な目標を共有し,外来 CI 療法を行った一症例

ポスターC-2
具体的な目標を共有し,外来 CI 療法を行った一症例
キーワード:脳卒中,上肢機能,目標
佐藤亮太
公益財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院
【はじめに】
当院外来リハの終了が検討されていた脳卒中後の
対象者に対して,作業選択意思決定支援ソフト(以下
本人の生きがいである釣りや調理等に関する目標を
立案した.釣り糸に素早く仕掛けを取り付ける,野菜
の皮をスムーズに剥ける,等.
ADOC)を使用して具体的な目標の検討と共有を行
い,CI 療法を実施した.その結果,上肢機能が向上
・左 Br-stage 上肢Ⅴ 手指Ⅴ ・握力:左 16.4kg
・簡易上肢機能検査(以下 STEF):74 点
し目標を達成して当院のリハを卒業できた経験につ
・Wolf motor function test(以下 WMFT):遂行時
いて報告する.
【症例紹介】
間平均 10.8 秒 Functional Ability Scale(以下
FAS)平均 2.9 点
60 代男性,右利き,妻との 2 人暮らし.X 年 2 月
10 日に右被殻ラクナ梗塞を発症.A 急性期病院にて
加療し,3 月 11 日に当院回復期病棟へ転院.
上肢の麻痺が残存し 6 月 9 日に自宅退院.当時は
・Motor Activity Log(以下 MAL):使用頻度平均
3.0 点 動作の質平均 3.6 点
【CI 療法終了時評価】
・握力:左 21.3kg ・STEF:89 点
CI 療法の適応基準を満たさず.その後は週 1~2 回
ペースで当院外来にて作業療法を行っていた.発症
から約半年が経過したところで,主治医の指示の下
・MAL:使用頻度 4.2 点 動作の質 4.1 点
・WMFT:平均 1.93 秒 FAS 平均 3.8 点
自宅にて自慢のカレーを作ってきたり,療法士が提
CI 療法を実施することとなった.
【方法】
1)実施期間
示した課題以外でも積極的に麻痺手を使用するよう
になった.目標にしていた項目もほぼ達成し,今後の
生活でもいろいろなことに挑戦したいと前向きな発言
実施期間は 1 日 5 時間(午前 3 時間,午後 2 時間)
の練習を 10 日間行った.
2)CI 療法のプログラム
①日常生活に於ける麻痺手使用を促進する行動戦
略「Transfer Package」竹林 1) らの実践を参考
に実生活における麻痺手使用の課題を提示し,
解決法を療法士と共に相談した.また,麻痺手使
用の self-monitoring のための日記の記入も行
った.
②反復的・課題指向型練習
様々な物品を用いて,目標達成に向けて段階的
に難易度を上げる課題指向型練習を実施.1 日に
自主練習を含め 15 から 20 課題を実施した.
③非麻痺手の拘束
今回は,自然な両手動作の獲得を目的としてリハビ
リ室・自宅とも非麻痺手の拘束は行わなかった.
3)目標の立案・検討
ADOC を用いて意味ある作業の中で如何にして麻
痺手を使えるようになるか目標を対象者とともに相談
した.
【CI 療法開始前評価】
ADOC を用いた面接によりセルフケア関連に加え,
が聞かれ,当院でのリハビリ卒業となった.
【考察】
花田 2) らは外来 CI 療法では,麻痺手を使用した
ADL 方法を自宅で即日実践するよう対象者に指導で
き,その結果や感想を翌日に速やかに聴取できること
か ら , 入 院 診 療 に 比 べ て self-monitoring や
problem-solving が促される可能性がある,と述べて
いる.今回は,生きがいにも繋がる具体的な目標に向
かい,CI 療法に加え,Transfer Package を通して実
生活の中でも麻痺手を使用した行動を促進すること
が出来たことが,維持期においても機能面の向上・目
標の達成に繋がったと考える.
【文献】
1)竹林崇,他:CI 療法における麻痺側上肢の行動変
容を促進するための方略(Transfer Package)の効
果.作業療法 31:164-175,2012
2)花田恵介,他:外来診療における CI 療法の実践
報告.総合リハ 39:367-372,2011