茨城県立水戸第一高等学校 化学部 2年 須藤 駿 鉄の身近な利用例 青写真:現像液として利用。 富嶽三十六景:絵具に使用。 ヘムb:酸素運搬に利用。 インクリボン:プリンタに利用。 プルシアンブルー: 放射性セシウムの吸着剤。 鉄は日常生活の様々な場面で使われている。 これまでの研究結果1 FeSO4 青白色沈殿 プルシアンホワイト (プルシアンホワイトは実際は白色で酸化されて青白色沈殿になる。) 尚,他にベルリンホワイトという表現もあるがプルシアンホワイトの 方が多く使われている。 Fe2(SO4)3 濃青色沈殿 ターンブルブルー K4[Fe(CN)6] 濃青色沈殿 プルシアンブルー K3[Fe(CN)6] 褐色溶液 ベルリンブラウン この2つの沈殿は, 同一物質であり 最近では濃青色沈殿の 表現はプルシアンブルーに 統一されつつある。 それぞれの鉄錯体には固有の名称が存在。 これまでの研究結果2 PBの還元体 PW :プルシアンホワイト PB :プルシアンブルー BB :ベルリンブラウン PBの酸化体 可溶性 鉄錯体のコロイドが分散 不溶性 分散したコロイドが凝集 高校で習った鉄錯体の構造がおおまかにわかった。 研究目的 新たに行った文献調査の結果 PWプルシアンホワイト PBプルシアンブルー 可溶性 KFeⅢ[FeⅡ(CN)6] 不溶性 FeⅢ4 [FeⅡ(CN)6]3 両方とも結晶構造もわかっている。 PBの還元体 可溶性 K2FeⅡ[FeⅡ(CN)6] 不溶性 K4FeⅡ4[FeⅡ(CN)6]3 「Everett's salt」 「Williamson's write」 という名称がある。 鉄錯体の中で最も安定である。 PBの酸化体 BB BG PY ベルリンブラウン ベルリングリーン プルシアンイエロー 可溶性 FeⅢ[FeⅢ(CN)6] 透明な褐色溶液。 不溶性 FeⅢ4 [FeⅢ(CN)6A]3 部分酸化状態。 FeⅢ[FeⅢ(CN)6] PBの完全酸化状態 PWは化学式まで判明しているが,PBの酸化体は記述が様々。 実験:試薬と器具 試薬 FeSO4・7H2O:鹿1級 98.0~102.0% Fe2(SO4)3・nH2O:試薬特級 60.0~80.0% K4[Fe(CN)6]・3H2O:試薬特級 99.5% K3[Fe(CN)6]:和光一級 98.0% H2O2 :鹿1級 34.5% Na2SO3:鹿1級 95.0% C6H8O6:試薬特級 99.5%(L(+)- アスコルビン酸) HNO3:鹿1級 60.0~62.0% FeCl2・4H2O:試薬特級 99.0~102.0% FeCl3・6H2O:試薬特級 99.0% 器具 薬さじ,薬包紙,電子天秤,駒込ピペット,メスフラスコ, メスシリンダー,ビーカー,ガラス棒,超音波洗浄機,試験管, ビュレット,ホールピペット,スターラー,ウォーターバス, スタンド,ろ紙,ろうと 実験:試薬の調整 調整方法 1. 脱気し窒素置換した蒸留水を作製した。 2. 1.00×10-1mol/L, 1.00×10-2mol/L, 1.00×10-3mol/Lの濃度の FeSO4・7H2O Fe2(SO4)3・nH2O K4[Fe(CN)6]・3H2O K3[Fe(CN)6] の水溶液を調製。 3. 各濃度におけるヘキサシアノ鉄(Ⅱ・Ⅲ) 酸カリウム水溶液:硫酸鉄(Ⅱ・Ⅲ)水溶 液を5:1, 3:3, 1:5の体積比で混合し鉄 錯体を作製した。 可溶性条件 ヘキサシアノ鉄(Ⅱ・Ⅲ)酸カリウム 水溶液が多い。体積比 5:1 不溶性条件 硫酸鉄(Ⅱ・Ⅲ)水溶液が多い。 体積比 1:5 酸化剤 H2O2 還元剤 0.355 mol/L L(+)- アスコルビン酸水溶液 + 0.355 mol/L Na2SO3水溶液 の混合水溶液 濃度と混合比を変えて鉄錯体を評価した。 PBとPWの関係 PW 可溶性 PB プルシアンホワイト 不溶性 プルシアンブルー 可溶性 PBとPWの反応は可逆反応であることが分かった。 PWも可溶性・不溶性があることが新たに確認できた。 PBとPWの詳細な関係が分かった。 不溶性 PBとBBの関係 PB BB プルシアンブルー ベルリンブラウン 酸化 H2 O 2 可溶性 不溶性 可溶性条件 不溶性条件 BBをそれぞれの条件の下で酸化すると可溶性・不溶性PBになる。 BBからPBの反応は不可逆反応である。 BBを放置すると不溶性PBになる。 PBとBBの詳細な関係が分かった。 濃度と可溶性・不溶性 PW 濃度 BB PB 低 中 高 可溶性 不溶性 可溶性 不溶性 可溶性条件 不溶性条件 濃度によっては可溶性であっても沈殿は生じ,不溶性であっても分散する。 可溶性と不溶性は濃度に依存する。 濃度による分散・凝集の変化 低 濃度 高 可溶性条件 分散 凝集 不溶性条件 可溶性・不溶性の鉄錯体とはいえ,濃度が低ければ分散し,高けれ ば凝集する。 濃度によって分散と凝集の状態は変化する。 PBの酸化体と還元体 可溶性 可溶性 可溶性条件 大きな結晶が分散・凝集 大きな結晶が分散・凝集 K2FeⅡ[FeⅡ(CN)6] KFeⅢ[FeⅡ(CN)6] 不溶性 不溶性 不溶性条件 小さな結晶が凝集・分散 小さな結晶が凝集・分散 K4FeⅡ4[FeⅡ(CN)6]3 FeⅢ4 [FeⅡ(CN)6]3 小さな結晶が分散 FeⅢ[FeⅢ(CN)6] PBの酸化体と還元体の関係が分かった。 結論 参考文献 1. 2. 3. 4. 5. 6. 日吉芳朗, プルシアンブル−─その化学と教材としての意義─, 数研出版. 吉野和典, プルシアンブルー;新しい応用とそのナノ粒子, THE CHEMICAL TIMES, No.3(通巻229号), p.23~27, 2013. 林英子, プルシアンブルーを用いた酸化還元反応の可視化教材. 高分子論文集,Vol. 47, No. 10, pp, 825-832(Oct . , 1990) サイエンスビュー 化学総合資料 初版 実教出版社 2012. 7. フォトサイエンス化学図録 新課程 数研出版 2011. Electrochemical Oxidation and Reduction of Thin Films of Prussian Blue Vernon. D. Neff, J.Electrochem.Soc., 125, p.886~887, 1978. 7. Spectroelectrochemistry and Electrochemical Preparation Method of Prussian Blue Modified Electrodes. J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 4767-4772. 8. CHARGE TRANSPORT IN PRUSSIAN BLUE FILMS DEPOSITED ON ITO ELECTRODES Electrochimica Acta. Vol. 41. No. 6, pp. 835-841,1996. 9. Prussian Blue and Its Analogues: Electrochemistory and Analytial Applications Electroanalysis 2001, 13, No. 10, pp 813-819. 10.The existence of ferrous ferricyanide. 1999,,Transition Metal Chemistry 24,648-654 11.Lattice constraction and eepansions accompanying the electrochemical conversions of Prussian blue and the reversible and irreversible insertion of rubidium and thallium irons.Journal of Electroanalytical Chemistry 406(1996) 155-163. 12.KINETICS AND MECHANISM OF PRUSSIAN BLUE FORMATION. Bull. Chem. Soc. Ethiop. 2009, 23(1), 47-54.
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