溶媒中のイオン分析 –直接注入法とマトリクス除去法

Application Note IC14005
溶媒中のイオン分析
– 直接注入法とマトリクス除去法 –
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社
キーワード
ピーク µg/L
はじめに
Thermo Scientific™ Dionex™ IonPac™シリーズは有機溶媒
µS/cm
溶媒、
不純物分析、
濃縮分析
耐性が高いカラムなので、メタノールやアセトニトリルなどの有機
溶媒中のイオン分析をする場合、試料をそのまま注入できます
(直
接注入法)。
しかし、有機溶媒の濃度によってはベースラインの隆起が起こり、
目的成分が妨害され、
定量が困難となることがあります。
このベー
スライン隆起を軽減できる分析方法として濃縮カラムを用いたマ
トリクス除去法があります。
そこで、本アプリケーションノートでは、直接注入法とマトリクス
除去法の2つをご紹介します。
直接注入
アセトニトリル(AcCN )、メタノール(MeOH )、2-プロパノール
(IPA )の3種類の有機溶媒を、注入ループを用いて直接注入しま
した。結果は、
図1に示すように、Clについては、どの溶媒もベース
図1:50 % AcCNを直接注入したクロマトグラム
表1:3 種類の溶媒での添加回収率(直接注入法)
AcCN
F
Cl
NO2
SO4
Br
NO3
PO4
10 %
99
−
102
99
100
101
102
25 %
104
−
105
101
98
99
99
50 %
108
−
100
99
95
102
92
75 %
112
−
82
99
91
91
102
100 %
35
−
63
85
119
140
77
ラインの隆起が確認されたため、Clの定量ができませんでした。
MeOH
F
Cl
NO2
SO4
Br
NO3
PO4
Cl以外の成分については、有機溶媒濃度25 %程度までであれば
10 %
102
51
102
99
102
105
98
添加回収率は90±10 %であり、定量できることが確認できまし
25 %
104
−
97
99
102
96
96
た。しかし、有機溶媒を注入したときの圧力変動は200 psiで、カ
50 %
112
−
70
104
104
110
99
ラムへの負荷も懸念されます。
分析条件(直接注入法)
75 %
115
−
67
101
100
110
96
100 %
108
−
80
87
90
112
73
IPA
F
Cl
NO2
SO4
Br
NO3
PO4
IC 装置
Thermo Scientific Dionex ICS-5000 +、
Thermo Scientific Dionex AS-AP
カラム
Dionex IonPac AG15(4 x 50 mm)
Dionex IonPac AS15(4 x 250 mm)
10 %
98
−
101
102
107
102
102
25 %
103
−
102
103
99
107
101
カラム温度
30 ℃
50 %
98
−
104
101
93
105
99
溶離液
7 ∼ 65 mmol/L KOH、グラジエント分析
75 %
96
−
98
108
78
111
96
100 %
−
−
54
58
74
90
75
(溶離液ジェネレーター使用)
流量
1.20 mL/min
サプレッサー
Thermo Scientific Dionex AERS 500、
エクスターナルモード(251 mA)
検出器
電気伝導度検出器
炭酸除去デバイス CRD200 使用
注入量
100 µL
±10 %以上を赤字で表記
−は未検出
濃縮カラムを用いたマトリクス除去
Application Note IC14005
ピーク µg/L
濃縮カラムを用いると、目的成分のみを保持し、
マトリクスである
有機溶媒を除去することができます。図2に配管図を示しました。
より高濃度有機溶媒中のイオン分析ができるようになります(図
3)。特にメタノール(MeOH )は100 %でも分析ができました。
µS/cm
その結果、溶媒由来のベースライン変動が抑えられ、直接注入法
また、注入時の圧力変動もほぼなくなりました。
図3:50 % AcCNをマトリクス除去したクロマトグラム
表 2:3 種類の溶媒での添加回収率(マトリクス除去法)
図2:マトリクス除去法の配管図
キャリア純水で導入された試料は濃縮カラムに目的イオン種が
保持されます。有機溶媒マトリクスは濃縮カラムに保持されるこ
となく排出されます。これにより、
マトリクスが取り除かれた目的
イオン種が分離カラムへ導入され、分離検出されます。トラップカ
ラムはキャリア純水の精製に用いられます。
分析条件(マトリクス除去法)
IC 装置
Dionex ICS-5000 +、Dionex AS-AP
カラム
Dionex IonPac AG15(4 x 50 mm)
Dionex IonPac AS15(4 x 250 mm)
濃縮カラム
Dionex IonPac UTAC-LP2(4 x 35 mm)
トラップカラム
Dionex IonPac ATC-3(9 x 24 mm)
キャリアポンプ
0.5 mL/min、3 分間送液
カラム温度
30 ℃
溶離液
7 ∼ 65 mmol/L KOH、グラジエント分析
(溶離液ジェネレーター使用)
流量
1.20 mL/min
サプレッサー
Dionex AERS 500、
AcCN
F
Cl
NO2
SO4
Br
NO3
PO4
50 %
93
101
75 %
89
99
103
97
101
107
103
105
92
95
111
103
100 %
36
92
107
76
94
115
102
MeOH
F
Cl
NO2
SO4
Br
NO3
PO4
50 %
100
106
95
107
98
105
102
75 %
96
94
100
101
101
99
98
100 %
97
104
99
95
105
104
104
IPA
F
Cl
NO2
SO4
Br
NO3
PO4
50 %
104
107
106
105
108
101
105
75 %
98
91
106
102
92
104
103
100 %
94
91
98
83
96
94
90
±10 %以上を赤字で表記
−は未検出
まとめ
カラムやサプレッサーは、
HPLCで用いられる一般的有機溶媒で
のダメージはほとんどありません。しかし、先に示したように、分
析においてクロマトグラム上にベースラインの変動が確認され、
不純物を検出するような高感度な分析では、問題となる場合が
多々あります。マトリクス除去法を用いることで、ベースライン変
動の原因となる有機溶媒をオンラインで除去し、精密分析ができ
るようになります。
エクスターナルモード(251 mA)
検出器
電気伝導度検出器
炭酸除去デバイス CRD200 使用
注入量
100 µL
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