課題解答例 4 月 18 日分(6/4 訂正) 1.クラペイロンの式によると、相図における相境界の傾きは、その条件にお ける転移エンタルピーΔH と転移体積変化 ΔV を用いて、 dp ΔH = dT TΔV と書くことが出来る。 ここで、転移エンタルピーおよび転移体積変化とは、それぞれ ΔH = H f − H i (f は転移後、i は転移前を表す) ΔV = V f −Vi と定義する。 一般に、融解において融解エンタルピーΔH および融解体積変化 ΔV は、正 の値を取ることが多い(つまり、液体の方がエンタルピーが高く、体積も大 きい)。 しかし、水は固体中で水素結合により構造体を形成するため、凝固によって 体積が増加する(よって ΔV<0)珍しい物質の一つである。一方、ΔH は正 であるので、水の固-液相境界の傾き dp/dT は負となる。 これは、圧力を挙げると融点が下がる事を意味するため、アイススケートブ レード下の氷が、体重により融解することも定性的にはありうるかもしれな い。 2.今、圧力が p0 から p1 に変化した時、融点が T0 から T1 へと変化するとおく。 クラペイロンの式をこの範囲で積分すると、 ΔH 1 dp = dT ΔV T p1 ΔH T1 1 ∫ p0 dp = ΔV ∫ T0 T dT ΔH T1 p1 − p0 = ln ΔV T0 ΔH T1 − T0 ΔV T0 体重を w [kg]とすると、3x10-3 [m2]の底面を通じて氷に及ぼされる圧力増加 は、g を重力加速度として、 w⋅g p1 − p0 = 3×10 −3 [Pa] である。圧力 p0 の時の融点を T0=273 .15[K]とすると、与えられた ΔH、ΔV を使って(単位に注意)、 w⋅g 6.0 ×10 3 T1 − T0 = 3×10 −3 −1.61×10 −6 273.15 となる。よって、T1-T0 = −0.1 とするためには、w=4.2x102 [kg]の体重が必要 ということになる。 p1 − p0 = アイススケートリンクの氷の温度について検索してみると、-10℃〜−2℃程 度であるらしい。この温度まで融点を下げるためには、さらに 10 倍以上の 体重が必要であるということになり、計算上現実的であるとは考えにくい。 定性的には、荷重は融点を下げることに違いは無いが、定量的に考えるとこ の説では説明不充分であると言える。
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