OS リング 溶接施工マニュアル - 鉄骨梁貫通孔補強工法 OSリング

OS リング工法:BCJ 評定-ST0135-07(平成 24 年 8 月 17 日付)
OS リング 溶接施工マニュアル
R
岡部株式会社
1.はじめに
このマニュアルは OS リングの溶接施工の手順や注意点を示すものです。OS リングを溶接施工する際は必ずこのマニュアルをご一読
願います。このマニュアルに記載していない事項については以下の指針および仕様書により施工を行ってください。
・日本建築学会:建築工事標準仕様書、JASS6、鉄骨工事
・日本建築学会:鉄骨工事技術指針
梁ウェブに国土交通大臣認定を取得した鋼材を用いる場合において、このマニュアルに記載していない事項については各鋼材の
認定における諸規定により施工を行ってください。尚、このマニュアルは予告なく変更する事がありますので、予めご了承ください。
2.施工および施工管理者
鉄骨製作業者に属する鉄骨製作管理技術者による施工管理のもと、溶接施工を行ってください。
3.施工手順
①けがき・孔あけ
②位置決め
③組立溶接
④本溶接
全周隅肉溶接
組立溶接
dw
+
- 2
2
OSリング
梁ウェブ
貫通孔位置
シャコ万力
OSリング
最外径側
となる面
孔あけ位置にけがきを行い、梁 厚肉面(最外径側となる面)を梁ウェ
ウェブに貫通孔をあけます。
ブ面に合わせてください。貫通孔中
心に OS リング中心を合わせます。
シャコ万力等により OS リングを
ウェブ面に密着させ、OS リング
外周に組立溶接を行います。
シャコ万力等を取り外し、本溶
接を行います。
図 1 施工手順
4.施工時の注意事項
①けがき・孔あけ
貫通孔径 dw は表 1 に示す適用貫通孔径の範囲とすることができます。貫通孔径 dw の許容差は±2mm とします。
孔あけ後、貫通孔まわりの切断バリはグラインダー等で除去してください。
表 1 適用貫通孔径 dw の範囲
100S
125S
品名
100L
125L
適用貫通 φ75
φ101
孔径 dw
~100
~125
150S
150L
φ126
~150
175S
175L
φ151
~175
200S
200L
φ176
~200
250S
250L
φ201
~250
②位置決め
図 2 に示す通り、OS リング内面に添付されたシールには、必要
隅肉溶接サイズを記載しています。OS リングは厚肉面(最外径側と
なる面)を梁ウェブ面に合わせてください。タイプⅡは、上下どちら
の面でも溶接可能です。
OS リングと貫通孔のずれは図 3、
図 4 に示す e1 および e2 を測定
することで管理してください。
300S
300L
φ251
~300
350S
400S
450S
500S
600S
φ301
~350
φ351
~400
φ401
~450
φ451
~500
φ501
~600
OS リング
岡部株式会社
OSリング
ロットNo. :
100S
必要隅肉
溶接サイ ズ
A3J17
e2
e1
e2
100S
A3J17
厚肉面をウェブ面と合わせて下さい
必要隅肉
溶接サイ ズ
5
5
厚肉面をウェブ面と合わせて下さい
鉄骨
図 2 OS リング内面のシール例
dw=d の場合
OSリング
e1
e2
e1+e2≦4
d
OSリング
ロットNo. :
※シールのデザインは予告なく変更することがあります
OSリング
e1
岡部株式会社
OSリング
dw<d の場合
e1-e2≦4
e1
d
e2
OSリング
dw
dw
図 3 OS リングと貫通孔のずれ(dw=d の場合)
図 4 OS リングと貫通孔のずれ(dw<d の場合)
OSリング
図 5 に示す通り、OS リングと梁ウェブのすき間は 2mm 以下となるように
密着させてください。梁ウェブが面外に変形し OS リングとのすき間が
2mm を超える場合は、適切な対処により梁ウェブを矯正してください。
2mm以下
はりウェブ
図 5 梁ウェブと OS リングのすき間
③組立溶接
組立溶接は被覆アーク溶接あるいはガスシールドアーク溶接で行い、溶接棒・溶接ワイヤは本溶接と同等のものとしてください。
組立溶接箇所は等間隔に 3~4 箇所、1 パスとし、ショートビードとならないように注意してください。組立溶接のビード長さ、脚長は
表 2 の値としてください。
組立溶接の予熱は本溶接と同様に適正な管理を
表 2 組立溶接ビード長さ、脚長
行ってください。予熱温度目安を表 4 に示します。
梁ウェブの鋼種
ビード長さ
脚長
SA440 以外の鋼種
SA440
40mm 以上
50mm 以上
4mm 以上
6mm 以上
④本溶接
表 3 に示すように、OS リングは製品仕様ごとに必要隅肉溶接サイズ S を規定しています。図 2 に示すシールには必要隅肉溶接サイ
ズ S が記載されています。隅肉溶接サイズは必ず S 以上としてください。
ただし、梁ウェブの鋼種が SA440 の場合は、シールに記載の S の値によらず 100S・125S・150S の隅肉溶接サイズ S を必ず 6mm 以上
としてください。
表 3 必要隅肉溶接サイズ
品名
100S
100L
125S
125L
150S
S(mm)
5(6※1)
9
5(6※1)
9
5(6※1)
品名
250S
250L
300S
300L
350S
S(mm)
6
9
7
12
7
※1
赤字の( )内の数値は、梁ウェブの鋼種が SA440 の場合
150L
9
400S
7
175S
6
450S
7
175L
9
500S
8
200S
6
600S
8
200L
9
本溶接の予熱温度の目安を表 4 に示します。
気温が 5℃以下になる恐れがある場合、表 4 の数値よりも 25℃高い予熱温度を適用し、表 4 に「予熱無し」とあるときは 40℃まで加熱
を行ってください。予熱温度は 200℃以下で行うものとし、予熱の範囲は溶接線の両側 100mm の範囲を行うものとします。
表 4 予熱温度の目安
溶接方法
SN400,SM400,
SS400
梁ウェブの鋼種
SN490,SM490,
SM520,TMCP325,TMCP355
TMCP385
SA440※4
低水素系被覆アーク溶接
予熱なし※3
予熱なし
50℃以上
125℃以上
※2
CO2 ガスシールドアーク溶接
予熱なし
予熱なし
予熱なし
85℃以上
※2
フラックス入りワイヤによる CO2 ガスシールドアーク溶接の予熱温度は低水素系被覆アーク溶接に準じる
※3
SN400B,C でウェブ板厚 25mm を超え 32mm 以下の場合は 50℃以上
※4
社団法人日本鉄鋼連盟高性能鋼利用技術小委員会 建築構造用高性能 590N/mm2(SA440)設計・溶接施工指針 抜粋
4.溶接材料
溶接材料は表 5 に示す規格を満たし、かつ 490N/mm2 級高張力鋼に適用可能なものを使用してください。
表 5 溶接材料
溶接方法
被覆アーク溶接
ガスシールドアーク溶接
種類
軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒
軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用マグ溶接及びミグ溶接ソリッドワイヤ
軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用アーク溶接フラックス入りワイヤ
規格
JIS Z 3211
JIS Z 3312
JIS Z 3313
5.溶接方法
溶接は OS リング外周の全周隅肉溶接とし、溶接姿勢は水平隅肉溶接とします。必ず鉄骨ウェブ面を上面に向け、溶接条件(溶接姿
勢・環境 etc)を確保してください。
OSリング
6.検査
図 6 に示す通り、本溶接の隅肉溶接サイズは必ず所定の必要隅肉溶接サイズ S 以上
としてください。また、OS リングと梁ウェブのすき間は 2mm 以下としてください。
OS リングと貫通孔のずれは図 7, 図 8 に示す e1
および e2 を測定することで管理してください。
ただし、図 8 に示す dw<d の場合は、e1-e2 が
4mm を超えても、OS リング内円の中にウェブ貫通
孔が全て含まれていれば構造性能上は問題あり
ません。
e1-e2 が 4mm を超えるとずれが大きくなります
ので、隣り合う OS リングやガセットプレートなどの
他部材との納まりに注意してください。
その他、外観・表面欠陥検査の合否判定は「日
本建築学会:鉄骨精度検査基準」によります。不
合格となった欠陥箇所は適切な処置を行ってくだ
さい。
s
2mm以下
はりウェブ
図 6 梁ウェブと OS リングのすき間
OSリング
OSリング
dw<d の場合
dw=d の場合
e1
e1
e2
e2
e1-e2≦4
e1+e2≦4
d
e1
e2
e1
OSリング
d
e2
OSリング
dw
dw
図 8 OS リングと貫通孔のずれ
図 7 OS リングと貫通孔のずれ
7.その他
(dw<d の場合)
(dw=d の場合)
(1)熱ひずみ
OS リングを溶接すると、梁が熱ひずみにより変形することがあります。ひずみが発生した場合は必要に応じて適切な矯正を行ってくだ
さい。特にウェブ片側に連続して溶接する際はご注意ください。
(2)防錆剤の除去
OS リングは防錆処理のため、全面に防錆剤【タセトシルバー※5 銀灰色:(株)タセト製】を塗布しています。タセトシルバーは、溶接の
際、塗膜除去の必要はありません※6 が、溶接環境(温度等)や溶接条件(電流・電圧等)により溶接欠陥(ピット等)が発生する恐れがあ
ります。溶接欠陥が発生した場合は「日本建築学会:鉄骨工事技術指針・工場製作編」に準じ適切な処置を施してください。
前もって OS リングの溶接箇所(側面および下面のメッシュ部)
のタセトシルバー(図 9 参照)を除去する場合は、下記の例を参
考に除去願います。
●ブラスト処理。
●ガスバーナー(酸素とアセチレン混合)等で塗膜を焼却後、
ワイヤブラシ等による除去。
●グラインダー等による塗膜剥離。
●塗料剥がし剤(ペイントリムーバー等)による除去。
※5 タセトシルバーは(株)神戸製鋼所の登録商標です。
除去部分
除去部分
溶接面
溶接面
OS リング タイプⅠ
※6 タセトシルバー製品カタログを参照願います。
OS リング タイプⅡ
図 9 タセトシルバーの除去部分
(3)溶接面の清掃
OS リングおよび梁ウェブ溶接面は溶接に先立ち、水分・スラグ・ごみ・さ
び・油・塗料・はがれやすいスケール、およびその他溶接に支障となるも
のはあらかじめ適切な方法で除去します。
梁ウェブ
溶接面
OSリング
溶接面
(4)溶融亜鉛メッキ
図 10 溶接面の清掃
OS リングに溶融亜鉛メッキをする場合は下記連絡先にお問い合わせ願います。
全面に塗布しているタセトシルバーは溶融亜鉛メッキ工程(脱脂処理等)で完全に除去できない可能性があります。残存したままメッ
キをすると不メッキとなるため、ブラスト処理等により除去する必要があります。
メッキ工程中においては、通常の施工方法を行うと溶接をしていない OS リングの内側から酸が侵入し、不メッキや錆の発生原因とな
ります。酸が侵入しないように OS リングの内側も隅肉溶接をしてください。
(5)OS リング内径の寸法許容差
OS リングの内径は仕様上、タイプⅠで最大 4mm、タイプⅡで最大 11mm 小さくなることがありますので配管の納まりなどに注意してく
ださい。OS リングの内径が小さくても構造性能上は問題ありません。
上記事項にご留意くださいますよう、お願い申し上げます。
なお、ご不明な点は右記連絡先までお問い合わせ願います。
連絡先:岡部株式会社 TEL 03-3624-6201
tr
標準
貫通孔径
do
br
d1
d
d2
br
d1
d
tr
付図1.OSリング形状寸法
φ100
タイプⅠ
タイプⅡ
φ101~
φ125
φ150
φ126~
φ150
タイプⅡ STKN490B 鋼管切断加工 または
SN490B 厚板切断加工
φ175
φ151~
φ175
φ200
φ176~
φ200
※1:原則、梁ウェブ貫通孔径は適用貫通孔径の範囲とする。 φ250
ただし、OSリングの内径(d)の75%まで小さく することができる。
※2:300L、400S、450Sおよび500Sは、梁 φ300
ウェブ貫通孔径をOSリング内径(d)まで拡げる事
φ350
ができる。
※3:内径(d)は仕様上、表数値よりタイプⅠで最大4mm、
タイプⅡで最大11mm小さくなる事があるので納ま
りに注意する。
※4:括弧内の数値は、梁鋼種がSA440の場合の必要隅 肉溶接サイズを示す。
φ400
φ450
φ500
φ600
d1
d2
br
tr
100S 100
122
120
20
11
5(6)
100L 100
144
140
33
22
125S 125
151
149
24
13
125L 125
177
171
39
26
150S 150
178
176
27
14
150L 150
208
202
44
29
9
175S 175
207
203
30
16
6
175L 175
241
233
50
33
9
200S 200
234
230
32
17
6
200L 200
270
262
53
35
9
250S 250
290
286
39
20
6
250L 250
332
322
63
41
9
300S 300
346
340
43
23
7
Ⅱ
300L 313
391
ー
64
39
12
Ⅰ
350S 350
400
394
47
25
7
400S 413
461
ー
48
24
7
450S 463
525
ー
44
31
7
500S 513
575
ー
51
31
8
600S 613
683
ー
57
35
8
Ⅰ
φ201~
φ250
※2
φ251~
φ300
φ301~
φ350
φ351~ ※2
φ400
φ401~ ※2
φ450
φ451~ ※2
φ500
φ501~
φ600
寸 法 (mm)
必要隅肉
溶接サイズ
S ※4
φ75~
φ100
φ125
鋼材の種類及び製造方法
タイプⅠ 国土交通大臣認定材
認定番号:MSTL-0352
(SNR490B相当)
ローリング鍛造加工
適用 ※1
タイプ
貫通孔径
dw
Ⅱ
品 名
d ※3
9
5(6)
9
5(6)
付図2.設計
OSリングの採用を検討の際は、「OSリング工法設計ハンドブック」を必ず確認すること。
■検討および使用の決定
貫通孔無しで構造設計を行った結果から得られる貫通孔部分の存在応力が、OSリング工法を用いた貫通孔部分の耐力を上回ら
ないことを確認する必要があるので、OSリングの使用の決定は構造設計者により行う。
■適用範囲
※14
※14
L2
L1
L2
L2
■適用範囲の梁
断面形状
H形断面
梁せい
1500mm以下
フランジ幅
600mm以下
L2
■貫通孔の規定
※5:梁がSS,SM材又はSN400Aの場合は25mm以下とする。
※6:SN400Aは塑性化部に適用不可とする。
※7:部材種別がFC・FDランクの場合は塑性化部に適用不可とする。
※10
貫通孔の 1/2・D-(1/3・Deー1/2・dw)以上、
※8:ただし、ウェブ幅厚比は96 235/F以下とする。
※10
偏心量e’1/2・D+(1/3・De-1/2・dw)以下、
(F:梁の許容応力度の基準強度)
かつ、tf+a+tr+1/2・dw以上、
※9:F>385の場合は1/2D以下とする。
dw
※9
2/3・D以下 、かつ
D-2(tf+a+tr)以下
ウェブ厚
32mm以下 ※5
鋼種
SS400,SM400
D-(tf+a+tr+1/2・dw)以下
※6
SN400 ,SM490
SN490,SM520
F≦440の大臣認定
建築構造用鋼材
梁の ※7
部材種別
D
d
dw
e'
L2
※8
FA、FB、FC、FD
L1
※10:F>385の場合は
1/2・D-(1/4・Deー1/2・dw)以上、
1/2・D+(1/4・Deー1/2・dw)以下とする。
L2
70mm以上 ※14
※11:梁に軸力が作用する場合は適用不可とする。
D:梁せい、dw:貫通孔径、tf:フランジ厚、tr:OSリング肉厚
※12:梁せい方向に連続して設けた貫通孔は適用不可とする。
a=max(30,r+1.8S)、
※13:OSリングを両面に取り付ける場合は、同じOSリングを
ただし、B>400の場合、a=max(40,r+1.8S)
取り付ける。
B:梁幅 、S:OSリングの隅肉溶接サイズ
※14:梁端部近くは応力が大きくなり、設置不可となる場合が
r:H形鋼のフィレット寸法またはビルトH鋼の溶接サイズ
あるので注意する。
De=D、ただしD>1200の場合は、De=1200
1.5dw以上(dwは大きい方)
免責事項
万一 OS リング工法に問題が発生した場合は、下記の免責事項をふまえた上で対応させていただきます。
●本マニュアルに記載した注意事項が行われずに発生した不具合。
●本マニュアルに記載した事項に反した施工による不具合。
●不可抗力(天災、地変、地盤沈下、火災、爆発、騒乱など)により発生した不具合。
●瑕疵(かし)を発見後、すみやかに届けがされなかった場合。
2014.0617_1