榎本隆二

所属: 高知高専 電気情報工学科
研究タイトル:
非線形制御システムの解析と設計
氏名
榎本 隆二/ENOMOTO Ryuji
E-mail
enomoto(at)ee.kochi-ct.ac.jp
職名
教授
学位
博士 (工学)
所属学会・協会
計測自動制御学会,システム制御情報学会
キーワード
大域非線形システム,位相幾何学,勾配的モース・スメール制御系
提供可能技術
非線形システムの解析,制御系設計(運動計画・フィードバック制御器設計)など
研究内容:
劣駆動ロボットなどの低次元非線形システムの解析と設計を行っています
◆研究概要
非線形常微分方程式などで記述される非線形システムが勾配的モース・スメールベクトル場という特殊な状況である
場合を想定し,その大域的な挙動をモース・ホモロジーに従って表現・解析する方法を研究しています。この研究は複
雑な解析アルゴリズムの設計と関連するソフトウエアの開発を伴います。
◆ 研究テーマと成果の例
一本足ロボットなどの劣駆動ロボットは本質的に安定でない姿勢を基本とし,その付近で安定的に動作することを狙い
ます。狙い通りならば動きは俊敏となって運動性能は格段に向上します。このようなロボットに非線形制御理論を用いる
とその動作範囲が広がります。しかし,緻密に設計した制御システムが不安定化するという事態に遭遇する度に,なす術
なし,という無力感に襲われることも事実です。本研究はこのような非線形システムの大域的な「挙動」を CW 複体という
高次元の「図形」で表現し解析することを目指します。さらに,パラメータの変化に伴って,どのような「図形」に変形してい
くのかを視覚的に捉える方策を与えます。
(1)トルク入力をもつ剛体振子制御系の大域解析と制御系設計
2次元の例題として,トルク制御されたモータ軸を支点とする剛
体振子の制御を検討しています。振子の角度と角速度をフィードバ
ックして任意の角度に安定化させます。角度を周期関数とすると,
一般的な状況では偶数個の特異点(安定もしくは安定とは限らない
平衡点)が現れます(結び目をもたない輪としての平衡点集合と中
空円盤としてのフィードバック制御系は偶数個の交点をもつ)。も
し,目標角度への回転回数の偶奇を区別すると,フィードバックの
周期は4πとなりますが,その際,フィードバック制御系上には漸近
安定点を含めて8個の特異点を配置します。解析によれば右図の
ような大域構造(各 CW 複体は制御軌道の構造を表現)をもつ制御
系が500種類以上現れます。
(2)任意低次元 CW 複体の構造記述と随伴モース・スメール関数,遷移構造の解明
任意次元の CW 複体は特異点近傍の安定・不安定球面上の CW 構造
を用いて記述できますが,それは構造表現自体の低次元化の可能性を
示します。実際には,微分代数方程式の解法という厄介な問題と関連し
ますから,低次元化はそれほど容易ではありません。一方,CW 複体の
双対はモース・スメール関数で,一般化されたリャプノフ関数としての役
割を与えることが可能です。ところで,もとの微分方程式の解の構造を表
現する CW 複体は,パラメータの変化によって他の構造(CW 複体)へと
遷移(ヘテロクリニック分岐)します。この遷移構造の解明は CW 複体の
記述データのみから実行できます。右図は3次元 CW 複体の例です。
非線形システムの大域構造を位相幾何学的な意味の精密さで把握できる時代になろうとしています。当研究室では,実用
段階に近づいた大域非線形制御理論や大域非線形構造解析に関連した話題・ツールをご提供します。ご相談ください。