テーマ H05: ばね振り子の解 1.摩擦がない場合の解 (1

埼玉工業大学
テーマ H05:
機械工学学習支援セミナー(小西克享)
ばね振り子の解-1/6
ばね振り子の解
1.摩擦がない場合の解
(1) 運動方程式の解
運動方程式は,ばねの伸びる方向を x の正の方向および力の正の方向に取ると,
d 2x
 kx
dt 2
となり,整理すると
F  ma  m
d 2x
k
(1)
 x
2
dt
m
となります.ただし,m はおもりの質量[kg],k はばね定数 N/m,x はおもりの振幅 [m].
運動方程式の解を,A を振幅[m],を角速度[rad/s]として
x  A cos t
とおくと
dx
  A sin t
dt
d 2x
  A 2 cos t
2
dt
となるので,(1)式に代入すると,
 A 2 cos t  
2 
k
A cos t
m
k
m
 
k
m
よって,運動方程式の解は
x  A cos
k
t
m
(2)
となります.初期条件を t  0 で x  x0 として(2)式に代入すると,
A  x0
となります.結局,運動方程式の解は
x  x0 cos
となります.
(2) 周期
周期 T [s]は
k
t
m
(3)
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T
2

となります.
 2
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m
k
(3)
m
k
(4)
ばね振り子の解-2/6
(3) 振動数
振動数 f [Hz]は
1
1

T 2
となります.
f 
2.摩擦がある場合の解
(1) 運動方程式の解
図に示すように,床との間で摩擦が発生する場合を考えます.
ばねの自然長の位置
x>0
Fe
F
v<0 の場合
mg
Ff
ばねの弾性力は,
Fe  kx
摩擦係数をとすると,摩擦力は
Ff  mg
となるので,図 1 に示すように,ばねを伸ばした状態からおもりが左側に動きだす場合,
すなわち速度 v<0 の場合,合成力は
F  Fe  Ff  kx  mg
よって,運動方程式は
F  ma  m
d 2x
 kx  mg
dt 2
より,整理すると
d 2x
k
k
mg 
  x  g    x 

2
dt
m
m
k 
となります.さらに
X  x
mg
k
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ばね振り子の解-3/6
とおくと
d 2 X d 2x
 2
dt 2
dt
となるので,運動方程式は
d2X
k
 X
2
dt
m
と書くことができます.運動方程式の解を,A を振幅[m],を角速度[rad/s]として
X  A cos t
とおくと
dX
  A sin t
dt
d2X
  A 2 cos t
2
dt
となるので,(1)式に代入すると,
 A 2 sin t  
2 
k
A sin t  B
m
k
m
 
k
m
よって,運動方程式の解は
k
t
m
X  A cos
(5)
より
x  A cos
k
mg
t
m
k
(5)
となります.初期条件を t  0 で x  x0 として(5)式に代入すると,振幅 A は
x0  A 
mg
k

A  x0 
mg
k
となります.結局,運動方程式の解は
mg 
k
mg

x   x0 
t
 cos
k 
m
k

(6)
となります.この式より,摩擦がある場合,振動の中心はばねの自然長の位置から
けずれ,振幅は x0 から x0 
mg
k
に減衰することを意味しています.おもりは,
mg 
mg

x0  2 x0 
   x0  2
k 
k

mg
k
だ
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ばね振り子の解-4/6
まで移動した位置で速度が 0 となり,反対方向に運動し始めます.
ばねの自然長の位置
x0
振幅
振動の中心
おもりが反転して右側に動く場合,すなわち速度 v>0 の場合,合成力は
F  Fe  F f  kx  mg
よって,運動方程式は
d 2x
 kx  mg
dt 2
より,整理すると
m
d 2x
k
mg 
  x

2
m
k 
dt
となります.さらに
X  x
mg
k
とおくと,運動方程式は
d2X
k
 X
2
dt
m
となり,解は
X  A cos
k
t
m
より
x  A cos
k
mg
t
m
k
おもりが左端 x   x0  2
mg
k
に来た時を,初期条件
k
t   とすると,振幅は
m
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 x0  2
mg
k
 A  x0  3
 A 
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ばね振り子の解-5/6
mg
k
mg
k
となるので,解は
mg 
k
mg

x   x0  3
t
 cos
k 
m
k

mg
mg
となり,振動の中心は 
に移動し,振幅はさらに減衰して x0  3
になることを意味
k
k
しています.おもりは
mg 
mg
  x0  3
  x0  4
k
k 
k

まで移動した位置で速度が 0 となり,再び反対方向に運動し始めます.このように,摩擦

mg 
のある場合は, v  0 では x 
mg
k
, v  0 では x  
mg
k
を中心とする単振動となり,しか
も,おもりの運動が反転するごとに振幅が減衰します.減衰の様子を表に示します.
n
運動方向
振動の中心位置
1
←
x
2
→
x
3
←
x
4
→
x
5
←
x
:
:
奇数
←
x
偶数
→
x
mg
k
mg
k
mg
k
mg
k
mg
k
振幅,A
x0 
mg
k
x0  3
x0  5
x0  7
x0  9
:
mg
k
mg
k
mg
k
mg
k
:
mg
k
mg
k
x0  2n  1
mg
x0  2n  1
mg
k
k
(2) 周期
おもりがどちら側に動く場合も,同じ周期の単振動とみなすことができます.
周期 T [s]は
T
2

 2
m
k
(7)
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機械工学学習支援セミナー(小西克享)
ばね振り子の解-6/6
となり,摩擦がない場合と同じになります.
(3) 振動数
振動数 f [Hz]は
1
1 m

T 2 k
となり,摩擦がない場合と同じになります.
f 
(8)
(4) 振動停止の条件
摩擦のある場合,おもりが運動を反転する際にばねの弾性力が最大静止摩擦力を越えら
れなくなると,おもりは静止したままとなります.おもりが静止する条件は,振幅を A,静
止最大摩擦係数を  max とすると,
kA   max mg
(9)
と表されるので,振幅の値を代入すると,おもりが静止するまでの運動の回数は
mg 

k  x0  2n  1
   max mg
k 

kx0  2n  1mg   max mg
2n  1mg  kx0   max mg
kx0   max mg
mg
kx     max mg
n  0
2 mg
2n  1 
で与えられます.
(5) 振動開始の条件
最初,おもりを x0 の位置から動かすとき,ばねの弾性力が最大静止摩擦力を越えないと
おもりは静止したままとなります.おもりが動き出すためには x0 は
kx0   max mg  x0 
 max mg
k
を満たす必要があります.
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Tech_inform/Pdf/SpringPendulum.pdf
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