2014年10月名古屋大学マテリアル理工学専攻応用物理学分野 有機伝導体の電子論 分子軌道法 東京工業大学 有機・高分子物質専攻 森 健彦 OCWからプリントを印刷してくること。 第1回 分子軌道法、強結合近似その1 第2回 自由電子、強結合近似その2 第3回 フェルミ面、輸送現象 第4回 磁性、電子相関 第5回 有機導体 第6回 有機半導体 第7回 デバイス物理 参考書 「分子エレクトロニクスの基礎」 化学同人 2, 3, 4, 5, 7, 8章 2 [− h e 2 ∇ − ∑ Zn ]φ = E φ 2m 4 πε 0 n rn σ軌道とπ軌道は直交するのでπ軌道のみ考えることが できる。 σ 0 =0 π この部分のみ考える。 0 隣接したC=C間の共鳴積分βのみ考え、他は0。 重なり積分はすべてS=0とする。 α− E β =0 β α− E α-β φ = χA − χ B α+β φ = χA + χ B 5 3 N φ = ∑ c iχ i (3) E = ∫ φ * Hφdτ ∫ φ * φdτ (4) 永年方程式 N×N次 非対角項:AO間の共鳴積分 ∫χ β ij = α11 − E β12 0 ...... β 21 α 22 − E β 23 =0 0 β 32 α 33 − E * i α ii = Hχ j dτ ∫χ * i Hχ i dτ 複雑なπ電子系のHückel法 π電子のあるCに番号を付ける。全部でN個とする。 N×Nの行列式を書き、対角項はすべてαーEとする。 非対角項は、i番目とj番目の炭素間に結合があればβ なければ0。 |行列式|=0はEのN次方程式になっているので、 これを解いてN個のエネルギーレベルを求める。 下から順に電子を入れていく。中性なら (電子数)=(炭素数) 2(α+2β)+4(α +β) ー6α= 二重結合3個分3×2β=6βよりも2β 得をしている(非局在化エネルギー)。 環の炭素数が4n+2 非局在 芳香族 4n 非局在なし (Hückel則) H 1 C 2 H C C H 4 C 3 H この解は α-2β α+2β 結合エネルギーを 計算せよ。 2(α+2β)+2α ー4α= 二重結合2個分2×2β=4βよりも得をしていない。 φ = ∑c n χ n エネルギーバンド (強結合近似) ϕ = ∑ cn χ n 結合エネルギーを計算せよ。 シクロブタジエンの行列式を作れ。 α χ 1 χ2 χ3 χ4 χ5 H α− E β 0 ...... β α− E β =0 0 β α− E H H 1 H H 4 2 H 3 H H β n a β n α+β α+2β ∂E = 0 i=1〜N ∂c i でエネルギー極小 の永年方程式は α-2β α-β (7) N組のci(固有関数)=分子軌道 N:原子軌道の総数 i 右のような一次元鎖のLCAO-MO (ポリアセチレンのHückel MO) 4 この解は ciの連立方程式 (2) LCAO-MO (Linear Combination of Atomic Orbitals) 2(α+β)ー2α= 1 2 (6) N個のエネルギーレベルE(固有値) 核を配置しておいてそこに1個の電子をほうりこむ 結合エネルギーを 計算せよ。 ベンゼンの行列式を作れ。 6 (5) EのN次方程式 +e 対角項:i番目AOの エネルギーレベル π電子系 Hückel法 H1 2 H C C H H -e +e 2 http://www.op.titech.ac.jp/lab/mori/lecture.html 例 エチレン H2O +Ze (1) 1電子Schrödinger方程式 H で1セルr → r+a 平行移動しても χ1 原子の番号を付け替えただけなの で物理的内容は変化しないはず。 χ2 したがって、電子密度ρ=φ* φは 変化しない。よって各原子についてcn+1* cn +1 = cn*cn つまりcnで変化していいのは位相のみなので、これを cn +1= cn eiθ= cn eika とおく。つまりφは inka χn n N×N次 これを直接解く方法もあるが、別の解法をとる。 χ2 χ3 χ4 χ5 χ3 χ4 χ5 χ6 φ = c 0 [χ 0 + e ika χ1 + e i 2kaχ 2 + e i 3kaχ 3 + e i 4ka χ 4 + ....] = c 0∑ e の形になる。(Bloch関数) c0は規格化定数にすぎないので以下忘れる。 a φ = ∑ e inka χ n のエネルギーは n ∫ φ * Hφdτ = E= ∫ φ * φdτ ∑ ∑e = ∑ ∑e m n − imka χ *m )H (∑e inka χ n )dτ m −imka * m n * m i(n− m )ka n m = n-1 n n+1 n m N(e ika β + α + e −ika β ) = N E = α + 2β cos ka β= coska = a β n ∫χ * n−1 Hχ n dτ α= e ika + e −ika 2 β= ∫χ 3 4 0 この間隔が Δk = π/a Nが大きければ非常に細かい →ほとんど連続 (エネルギーバンド) 2× (8) 2N個の電子があると E −π/aからπ/aまで π a = 2π Na φ = χ 0 + χ1 + χ 2 + χ 3 + .... φ= k レベルの間隔 −π/a π/a 0 E 2k 2 F = 2N → kF = 2π Na k −π/a 0 π/a 全部の状態が占有 αー2β すべての原子間に節 → とことん反結合軌道 k π/a 0 α+2β i 2π N とことん結合軌道 k=0のとなりの状態は位相が ずつ回っていき、固体内を1周すると e 位相が2πだけずれる。つまり固体全体で節が1個だけある。 (7) N個の電子があると (9) N=6の場合 2π n 2π n なので k= = Na 6a E = α + 2β cos ka = α + 2β cos 2π n 6 0, ±π/3, ±2π/3, π E= E -2π/3 −π/3 0 2π/3 π/3 k π/a αー2β αーβ α+β α+2β ベンゼンのπ軌道(Hückel法) 同様にして任意のN個のCをもつ環のHückel法分子軌道が計算できる。 k 電子が半分つまっている。 (half-filled) H H H H H H −π/a H π/a 0 -π/2a H 1つの原子軌道χあたり2個の電子が入る。 ↑と↓ E 2k 2 F = N → kF = 2π Na H −π/a 2 → Nka=2πn (n:整数) → k = 周期的境界条件 E 細かい間隔で並ぶ k (6) 総レベル数 α −π/a eiNka =1 −π/a φ = ∑ e χn (5) で E 1 (4) 右のように輪にする。 (そうしないと端に特別な 「表面状態」ができてしまう。) 全体でN原子あるとすると、N番目=0番目だから Hχ n dτ inka n N=0 n * n+1 n a β φ = ∑ e inka χ n k ∫ χ Hχ dτ * n E = α + 2β cos ka k= 0とおくと k= π/aとおくと E = α + 2β cos ka 周期関数なので 0 −π/a π/a 4β −π < ka < π あるいは <k< α+2β のみ考えればよい。 (2) β < 0 なので Eの最大値は k= π/aで E= Eの最小値は k= 0で E= (3) 全体でバンド幅 のエネルギーバンド χ *m )(∑ e inka χ n )dτ ∫ χ H χ dτ ∫ χ χ dτ αー2β α n m i(n−m )ka n ∫ (∑ e ∫ (∑e E E = α + 2β cos ka R)=π/2a ポリアセチレンで結合交代がまったくない場合 自由電子 (1) 量子力学の基本原理から、一番簡単な自由電子の 場合について調べる。 (2) 金属電子を自由電子とみなして、多数の自由電子 がある場合のエネルギーや運動量の分布について 調べる。 (3) 電子の分布をフェルミ統計に基づいて調べ、T≠0 での金属電子の性質について議論する。 統計力学:古典統計(ボルツマン) 量子統計(フェルミ統計、ボーズ統計) E E= p=ーhk p=hk 左に進む電子 右に進む電子 0 波数 k=2π/λ h 2k 2 放物線 2m k∝p 波長の逆数 単位長さ× 2πの長さの中にある波の数 2 2 2 px + py + pz 三次元の場合には E = + V なので 2m Schrödinger方程式は =2 ∂ 2 ∂ 2 ∂ 2 [− ( + + ) + V ]φ = Eφ 2m ∂x 2 ∂y 2 ∂z 2 φ (x, y,z) = e V=0のときの解(固有関数)は i(kx x +k y y +kz z ) E= エネルギー(固有値)は E= 今、無限に広がった空間ではなく、長さLの箱に閉じ込め られており、かつx=Lの端が壁ではなく、 x=0につながって いるとする。 (つなげないと壁のために「表面 準位」が出てしまう。) L φ(x+L, y, z)=φ(x, y, z) x=0 ikx L e = 1 → kxL=2πn → kx = E ky 2π ny L = N ただし V = L3 1つのエネルギーレベルに ↑と↓スピンの2個の電子 最もエネルギーの高い電子 (フェルミエネルギー)では kF2=kx2+ky2+ky2なので 2 E =2 2 EF = kF 2m EF = h 2 k 2m F E E E+dE E = 4π k 2 dk = dN 2π ( )3 状態の間隔(3次元) L = 2k 2 2m より dE = dN 4πk 2 dk V 2m V 2m 2 2 =2 = k= ( ) E 2 2 2 2π dE 2π 2 = ( ) 3 = k dk 2π = L 1 m 同じ式 2mE 3 kx kF D(E) 球面:フェルミ面 D( E ) = D(E)はEとE+dE の間のレベルの数 h2 2 (kx + k y2 ) = 一定 とすると kx2+ ky2 =kF =一定 2m → 円 フェルミ統計:同じ状態を1つの粒子しか占有できない場合 Ci E EF k =( =2 1 )2 EF kF D(E) D(E) L2 2 N= k = 2π dN D(E) = = dE ∂F = E i + k BT (ln N i − ln(Ci − N i )) − μ = 0 ∂N i E −μ i Ci − N i = e kB T Ni T=3000 K T=300 K 1 T=0 K あるエネルギーの状態数がCiあり、このうちNiが 占有されているとする。電子Ni個は区別できない から、 Ci個からNi個を選ぶ方法の数は Wi = エントロピーの統計力学的定義から S = k B lnW = k B ln ∏Wi = k B∑ lnW i = kB ∑ln 円の面積 実現するNiの分布はギブス自由エネルギー F=E-TS-μN ただしE=ΣNiE i、N=ΣNi を最小にするものだから、Fを各Niで微分してゼロとおき、 占有Ni kx, ky -kF フェルミ面は円筒 ) kx E+dE V 2 × 3π ky L 2 kx kx ( 球の表面積 ky 各エネルギーで 状態の数を数える E πk 2 2 =N 2π 2 EとE+dEの球殻の間にある状態の数dN kz D(E)∝E1/2 2 E 占有 状態密度の別の導き方 3N D(E) = 2E E 逆にNについて解いて N= パウリの排他原理に従って N個の電子をつめていく。 最低エネルギーの原点から はじめて半径k=√kx2+ky2+ky2 の球内に電子をつめると エネルギーレベルの間隔 → Lが大きければほぼ連続 → エネルギーバンド あるいは 2 = 2 = EF = kF = × 2m 2m E= x=0 x=L dN D(E) = = dE E 状態の間隔(3次元) 二次元金属 2π nz L これをEについて微分して、単位エネルギーあたりの エネルギーレベルの数(状態数 or 状態密度)は 4π 3 k 2 3 =N 2π ( )3 L kF kz = 2π L 周期的境界条件 半径kの球の体積 kz ky = (一辺Lの立方体とする。) kxz方向は描けない kx 2π nx L kx or ky or kz 2π L 同様にしてy, z方向にも kx = ある球面上の点は 同じエネルギーを もつ。 フェルミ面 x=L ǁ (n:整数) フェルミエネルギー h2 2 2 2 (kx + k y + kz ) 2m i i i Ci! N i!(Ci − N i )! Ci! N i!(Ci − N i )! = kB∑ (Ci lnCi − N i ln N i − (Ci − N i )ln(Ci − N i )) i Stirlingの公式 ln N!= N ln N − N f(E) 0 E 金属では 50000 K くらい EF T≠0のとき kBTくらいの幅でf(E)は 連続的に1から0になる。 占有率 f (E i ) = Ni = Ci フェルミ-ディラック分布 T=0 のとき 1 E < μ f (E) = −∞ = e +1 1 E > μ f (E) = +∞ = e +1 EF = μ :化学ポテンシャル T≠0ではこの部分の 電子が上に熱励起さ れている。 N Ci × i = Ni Ci E E E U(T ) = 1 50000K EF ≈ > 100 なので熱励起されているのは 300K kBT 全体の1%以下。 cf.古典気体 自由電子 フォノン dx = Wi = − Cv = f (E i ) = e 古典統計 N=Σni個の粒子がni個ずつ状態iに 分布しているとする。 このときの統計的重みは N! W = n1!n2 !n 3!⋅ ⋅⋅ Ei − μ kB T Ci f (E i ) = Ci+Ni ー1 ∂F = ∂N i F = ∑ E i ni − kBT (N ln N − ∑ ni lnni ) − μ∑ ni i i T π2 T = nR 2 TF TF ボーズ-アインシュタイン統計 E μ f(E) 1 f (E i ) = hω k BT プランク分布 −1 フォノン(格子振動)はボーズ-アインシュタイン粒子 光(フォトン)も同様 → 黒体放射 1 f (E i ) = Ei − μ kB T e Ei − μ kB T + ー ±1 量子統計 n=4 n=6 E E = α + 2β cos ka E =0 k f (E i ) = n i = ボルツマン分布 ボルツマン分布:古典的粒子 − f (E i ) = e 1 f(E) Ei − μ kB T eika =x+iy =cosθ+ιsinθ 1 f (E i ) = ボーズ分布:スピンが整数の粒子:光子(フォトン) 格子振動(フォノン)、 4He μ 0 Nk B e Ci + N i =e Ni E Stirlingの公式 2 Ni = Ci Eiーμ → hωとおくと =0 ∂F = ∂N i ln N!= N ln N − N π2 T →0 Eiーμ > 0 e+∞→ +∞ f(E) →0 Eiーμ = 0 e0→ 1 f(E) → +∞ すべての粒子が最低準位に落ち込む これをF=E-TS-μN に入れてNiで微分してゼロとおき、 したがって これをF=E-TS-μN に入れて(S=kBlnW) k B2T = E niで微分して0とおくと N! lnW = ln = N lnN − ∑ n i ln ni n1!n 2!n3 !⋅ ⋅⋅ i 3 2 kBTF 気体定数 ∂T T2 n4 n3 n2 n1 π2 3 N ∂f(E) (Ci + N i −1)! N i!(Ci −1)! ボルツマン分布(古典統計) i E Ci-1→ Ciとすると Cv/T γ Cv=γT T 自由電子(金属電子)の比熱 γ 3 N 3 N TF:フェルミ温度 を用いて D(E F ) = = 2 E F 2 k BTF あるいは EF 1 f(E) 0 lnWi = (Ci + N i )ln(Ci + N i ) − N i ln N i − Ci ln Ci 低温(<4 K)での比熱の測定から γ→D(EF)を実験的に求められる。 だから dE kBT = Ni個の玉とCi-1個のしきり 板をならべる数 T Cv = γ + βT 2 T E-μ>>kBT では e大>>1 だから (E − E F )D(E) Ni個の粒子をCi個の準位に入れる。 いくつ入れてもよい。 格子振動(フォノン)比熱がCv∝T3 となる低温で Cv=γT+βT3 0 演習問題:ボーズ-アインシュタイン統計 高温では フォノン ばかり Cv ∫ ∞ Tのみで0 ∂T はEFの近くのkB でないから、この範囲で D(E)〜D(EF)と近似して 自由電子がフェルミ分布しているため、EF近傍の kBT 程度の電子しか熱励起されておらず、比熱に効かない。 金属電子はとても”フェルミ粒子”的 (E − E F )D(E ) f (E)dE ∂f(E) Dulong-Petitの法則より、自由電子が理想気体だとすると Cv=3R の比熱があるはずであるが、実際はこの T 300K −2 ≈ ≈ 10 以下 TF 50000K フェルミ気体 ∞ ∂f (E ) dE Tはf(E)にのみ ∂T 入っている。 1 1 E−μ f (E i ) = E i − μ = x なので x= e +1 k T k BT e B +1 ∂f = ∂T N f(E) 0 ∂U CV = = ∂T ここで 0 ∫ ∞ EFをエネルギーの基準にとる 比熱 = × EF D(E) ∂f (E) dE ∂T x ∞ x e = D(E F ) ∫ 0 (kBTx) x 2 k BTdx T (e + 1) ∞ x e 2 2 = kBTD(E F) ∫ x x 積分表よりπ2/3 2 dx (e + 1) 0 CV = D(E F ) ∫0 (E − E F ) 金属電子の(内部)エネルギー 実際の電子数は D(E)×f(E) e Ei − μ kB T −1 1 f (E i ) = e Ei − μ kB T n=8 +1 フェルミ分布:スピンが半整数の粒子:電子、陽子、 中性子、3He Ei-μ>>kBTではすべてボルツマン分布に漸近。 π π 3π/2 Nonbonding k π/2 y 0 4π/3 2π/3 5π/3 y π/3 0 ka x x π 3π/2 π/2 y π/4 0 ka x N=4n uses nonbonding level → No stabilization N=4n +2 does not have nonbonding → stabilization → Hückel role
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