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平成24年度
リチウムイオン蓄電池の
海外市場における認証制度
・市場動向等調査業務
事業報告書
概要版
1
総論
・ LiB(リチウムイオン電池)はこれまで小型民生用分野を中心に普及。価格低下・性能向上やエ
ネルギー事情の変化を背景に、今後大型化や用途拡大(運輸・産業用)等、世界的な市場拡大
が期待
・安全や性能に関する要求事項の国際的基準の整備、海外市場参入における認証の重要性の
高まり
→ 本調査では、①大型LiBを中心とした国際規格の動向②今後の経済成長が期待される新興国
におけるLiB及びLiB関連製品の市場拡大の可能性等について調査
第三者
認証機関
IEC
ISO等
認定
試験・認証依頼
信頼
認証
性能証明
製造・
販売業者
ユーザー
購入
2
図1 第三者認証のイメージ
LiBを巡る国際規格の動向
表2 LiBの安全性規格における試験項目
表1 主なLiBの国際規格(安全性・性能)
規格名
対象
内容
JISによる対応状況
LiB単電池・組電池の規格:電気製品には、基本的にIECの規格が適用。試験区分により分類。
IEC61960
性能試験方法・表示・寸法等 JIS C 8711
小形民生用LiBの規格
JIS C 8712 ,
IEC62133
安全性試験方法
JIS C 8714(一部)
I
性能試験方法
なし
E IEC62660-1
C
自動車向けLiBの規格
IEC62660-2
信頼性・誤用試験方法
なし
*
IEC62619
IEC62620*
自動車以外の大型LiB 安全規格
の規格
性能規格
JIS C 8715-1, JIS C 8715-2
(対応予定)
電池パック・システムの規格:自動車部品として、LiBシステムに関する規格あり。対象の性質により分類。
I
ISO12405-1 自動車用電池パック・シ 高出力用
S
高エネルギー用
O ISO12405-2 ステム試験仕様
安全性能要件
ISO12405-3* (ドイツが提出)
なし
*は策定中のもの
IEC62660-2
ISO12405-1
(小形リチウムイオン電池向け)
(自動車用大形リチウムイオン電池向
け)
(自動車用高出力型リチウムイオン電池 (自動車用高エネルギー型リチウムイオ
システム向け)
ン電池システム向け)
8.3.1 External short circuit
(cell)
8.3.2 External short circuit
(battery)
6.3.1 External short circuit
9.2 Short-circuit protection
9.2 Short-circuit protection
何らかの形で電池に衝撃を加え
る。
8.3.3 Free fall
6.1.1 Vibration
6.1.2 Mechanical shock
8.3 Vibration
8.4 Mechanical shock
8.3 Vibration
8.4 Mechanical shock
高低温耐性試験
8.3.4 Thermal abuse (cells)
6.2.1 High temperature
endurance
6.2.2 Temperature cycling
8.1 Dewing -- Temperature
change
8.2 Thermal shock cycling
8.1 Dewing -- Temperature
change
8.2 Thermal shock cycling
電池を潰す。
8.3.5 Crush (cells)
6.1.3 Crush
なし
なし
過充電試験
8.3.6 Over-charging of
battery
6.3.2 Overcharge
9.3 Overcharge protection
9.3 Overcharge protection
強制放電試験
8.3.7 Forced discharge
(cells)
6.3.3 Forced discharge
9.4 Overdischarge
protection
9.4 Overdischarge
protection
IEC62133
試験項目
外部短絡試験
正極と負極をつないで電流を流
す。
衝撃試験
cv
圧壊試験
強制内部短絡試験
電池内部に異物を意図的に含ませ
ることで内部短絡を生じさせ、そ
の結果をみる。
ISO12405-2
■ UL Subject 2580(電気自動車向け蓄電池規格)
3 各国のLiB規格
■ 中国(QC/T743)
中国のLiB規格は、現状では強制ではないが、将来的に強制認証(CCC)の可能性。
IEC規格準拠だが、釘刺し試験の独自項目や衝撃試験方法(落下試験のみ)が異なる。
また、LiB組込製品自体がCCCの対象品目の場合は認証が必要。
■ 韓国(KCマーク)
2009年7月に「品質経営及び工産品安全管理法」における自律安全確認工産品として、
LiBが追加され、韓国に輸出されるLiBは韓国の安全基準への適合が必要。IEC準拠。
■ 台湾
独自のLiBに関する規格は確認できなかったが、BATSO(Battery Safety Standard and
Certification Organization)という電動バイク用LiB規格が存在。また、LiBを組み込んだ
製品が、安全性確保のために台湾の規格計測検査局(BSMI)が定める法定点検と試
験認証の対象になる可能性がある。
4
8.3.9 Design evaluation
Forced internal short
circuit (cells)
改定により車両自体の安全性要件に加えてREESS(エネルギー貯蔵
システム)の安全性要件事項が追加され、採択されれば日本を含む
加盟国で型式認証が義務付けられる予定。
海外への輸出にあたり、危険物輸送に関する国際連合(UN)勧告
(オレンジブック)や、EU域内の化学物質規制(REACH等のEU指令)そ
の他各国の法規制に従う必要がある。
8.3.8 Transport tests
表3 認証機関の各国規格対応状況
国際規格認証機関
IEC規格にはCB証明と呼ばれる制度がある。IEC加盟国内ではこのCB証明で各国の規格認証
の一部または全部を代用できる。以下は日本国内でCB証明を行なっている代表的な認証機関。
■
■
■
■
JET(一般財団法人 電気安全環境研究所)
JQA(一般財団法人 日本品質保証機構)
テュフラインランドジャパン(株)
(株) UL JAPAN
◎:自機関での発行が可能
○:自機関での発行が条件付きで可能
△:取得支援が可能
―:未対応
左記の各国規格の代行申請等にも対応。
(最新の対応状況は各認証機関に要確認)
6
まとめ
■ 国際規格・各国規格の拡大
インドでも、LiBに関する規格は確認できなかったが、インドの品質規格であるBIS
(Bureau of Indian Standard)規制の対象指定98品目については、認証取得が必要。
図2 CBスキーム
出所)PSEジャパン
株式会社HP
(参考)世界市場における分野別LiB製品動向
アジア各国におけるLiB市場の動向
(中国・インド・インドネシア・マレーシア・韓国・台湾・タイ・ベトナム・日本)
■ 自動車輸送分野
容量ベースで今後拡大が予想されるのがPHV、EV、HE
V、電動バイクなど。電動アシスト自転車は微増。
経済成長や人口増、所得増加、電力需要増等に伴い各国でのLiB関連市場の成長が期待
■ 自動車産業の動向
■ UN ECE R100(型式認定相互承認協定に基づく電気自
■ LiBに関する規制等
ただし、日本・韓国・フランス・スイス
のみ適用
■ インド
5
民間による任意規格であるが、米国では州や地方自治体レベルで
認定を義務づけていることもあり、市場参入への影響は大きい。性
能・信頼性は対象外。国際規格と異なるのは、塩分の吹き付け試験
と深潰試験の二つ。
動車の保安基準)
輸送試験
UNによって規制されている。
IEC62133ではUNの規制を参照する
よう指示されている。
(参考)
v
中国・韓国・インド・インドネシア・タイ等を中心に、乗用車生産台数が増加傾向。日本は減少。エコカー補助金等の各国政
策とあいまって、電気自動車の普及が予想。BATSO規格がある台湾やインドネシア・タイ等では自動二輪車の電動化も期待。
■ 電力需要の増加
急速な経済成長にあわせ、中国を中心に電力需要が増加しており、再生可能エネルギーやLiB導入の可能性。また、インド
やインドネシア等では停電対策としてのLiB需要も想定される。一方、マレーシアやベトナムではまだ市場拡大が見えない。
■ 動力分野
v
最も拡大が予想されるのは、フォークリフト。次いで業務
用ロボット。規模は小さいが無人搬送機(AGV)、港湾用ク
レーンなども増加。
■ 電力貯蔵分野
住宅用、大規模電力貯蔵システム(系統設置)等で拡大
海外市場への参入に国際規格や各国規格への対応が求められる
傾向は今後一層強まる。そこで、国内電池産業の国際競争力を強化
していくためには、認証機関との連携・認証機能の強化が必要。
たとえば、セミナー等による第三者認証制度に関する普及啓発や、
補助金等による企業の負担軽減などが考えられる。
■ 認証制度に対する需要の高まり
今後、たとえば、改定UNECE R100等が国内で義務化されたり、コン
テナサイズの超大型バッテリーや、現在開発中のレドックスフロー電
池などのLiB以外の新型電池などが普及・規格化されれば、認証需
要も高まるものと考えられる。
v
■ 大阪での認証拠点集積強化の必要性
大型LiBにかかる規格化や認証機関の動向をおさえ、大阪・関西の
認証拠点の維持・強化をはかるために、移転・進出先の候補地とし
て十分なスペースのある夢洲などの特区地域への進出を促し、国
際戦略総合特区制度のメリット(特区進出企業に対する税財政支援、
大阪では地方税ゼロ)を活かした支援を進めるべき。認証機関を核
に関連産業の集積がすすめば、関西がめざすバッテリースーパーク
ラスターに一歩近づくであろう。