政策と農業地域

日本の農業
日本の農業地域
農業地域システム
地域システム
・現代の日本の農業
の1.5%
%程度
現代の日本の農業生産額
農業生産額は,
生産額は,GNPの
は,
と,すっかり弱小産業になってしまった。しかし …
高度経済成長期以前
高度経済成長期以前の
以前
農業地域区分
農業地域区分
えん麦・
畜産
尾留川(1950)
・食料生産
食料生産を担う
生産を担う農業
を担う農業は元来,人間集団の存立条件。近世以前は
農業は元来,人間集団の存立条件。近世以前は各戸,各領国
は元来,人間集団の存立条件。近世以前は各戸,各領国の
各戸,各領国の自給自足。
自給自足。
特に主食
特に主食=
主食=コメについては,
コメについては,政策的
については,政策的に支配地域の生産を
政策的に支配地域の生産を徴税
に支配地域の生産を徴税や
徴税や開発支援によって管理。
開発支援によって管理。
⇒ 日本の農業
日本の農業地域は,その
農業地域は,その自然条件
地域は,その自然条件を基礎としつつ,各時代における
自然条件を基礎としつつ,各時代における政策
を基礎としつつ,各時代における政策に主導・影響さ
政策に主導・影響さ
れつつ形成されてきた。
成されてきた。 … 大規模な開発
れつつ形
大規模な開発や
開発や構造的変化
構造的変化は
的変化は政治状況と連動。
政治状況と連動。
大豆・馬
鈴薯
eg.古代:条里
古代:条里,
古代:条里,中世:荘園,
中世:荘園,近世:新田開発,
近世:新田開発,明治:士族授産,
明治:士族授産,戦後:開拓 …etc.
水稲
単作
水稲,
水稲 蔬菜,
蔬菜 畜産
養蚕
弥生
湿田
灌漑
乾田
条里耕地
荘園開発
戦国大名の
領国開発
近代開拓
新田開発
麦,さつまいも,たばこ
「農業地域」の成立
農業地域」の成立
・江戸時代前半まで,食料
江戸時代前半まで,食料は基本的に
食料は基本的に自給自足
は基本的に自給自足 ⇒ 各村,各領内の
各村,各領内の閉鎖的な「
閉鎖的な「農業地域
な「農業地域」
農業地域」
輸送手段も
未発達で,
で,広域流通
広域流通したのは,
したのは,幕府
幕府供出の
供出の年貢米
年貢米ぐらい。
・輸送手段
も未発達
で,
広域流通
したのは,
幕府
供出の
年貢米
ぐらい。
世情の安定
安定,,交通
交通の整備とともに,
の整備とともに,都市部
都市部を中心に
を中心に市場競争
市場競争による
による地域分化
地域分化が始まる。
・世情の
安定
の整備とともに,
都市部
を中心に
市場競争
による
地域分化
が始まる。
江戸
時代
・非農業人口が多数集まる
非農業人口が多数集まる城下町
が多数集まる城下町や大きな
城下町や大きな町場
や大きな町場の近在(
町場の近在(徒歩日帰り圏)に,
蔬菜を主とする
蔬菜を主とする小規模な
を主とする小規模な地場産地
小規模な地場産地が形成。
地場産地が形成。 eg.
eg. 仙台:南小泉
仙台:南小泉,
南小泉,六郷,
六郷,愛島
・江戸時代後半になると,藩
江戸時代後半になると,藩や各地の篤農家
や各地の篤農家による
篤農家による種苗
による種苗の改良が進む。
種苗の改良が進む。
eg.仙台:
仙台:養種園
盛岡:菜園,
会津若松:御薬園etc.
⇒今日の「伝統」品種に
「伝統」品種に
仙台:養種園,
養種園,盛岡:菜園
菜園,会津若松:御薬園
御薬園
高度経済成長と
高度経済成長と農業地域
・郡市別に,
郡市別に,米,雑穀,野菜,養蚕,
に,米,雑穀,野菜,養蚕,
果実,工芸作物,その他の各部門
果実,工芸作物,その他の各部門
別収入比率を算出し,最多部門
別収入比率を算出し,最多部門の
最多部門の
優占作目に基づいて,地域的まと
優占作目に基づいて,地域的まと
まりを考慮して分類。
・当時,養蚕・蚕糸業
養蚕・蚕糸業の大産地だった
養蚕・蚕糸業
福島県北や米沢盆地
福島県北 米沢盆地の地域特性
米沢盆地
は,反映されない結果になっている。
1961農業基本法
農業基本法
1)
)コメ一辺倒
コメ一辺倒から,
一辺倒から,地域特性
から,地域特性を生かした「
地域特性を生かした「選択的拡大
を生かした「選択的拡大」
選択的拡大」
・輸出が途絶えた
輸出が途絶えた養蚕
輸出が途絶えた養蚕に代わる作物の創出
養蚕に代わる作物の創出
・果樹 … 津軽,長野盆地,福島盆地,山形盆地
・工芸作物(
工芸作物(タバコ,こんにゃくetc.) … 中山間地域(阿武隈,北上山地)
・畜産(
畜産(酪農,肉牛) … 山間部,火山山麓
2)
)大都市市場に
大都市市場に生鮮野菜を
生鮮野菜を大量出荷できる体制づくり
大量出荷できる体制づくり
・大都市
大都市への
大都市への人口集中
への人口集中が加速
人口集中が加速 ⇒ 近郊農業地帯(
近郊農業地帯(伝統野菜の産地を含む
伝統野菜の産地を含む)衰退
幕末〜
近代
大都市
地域
戦後
・各地で,繊維作物
各地で,繊維作物(
繊維作物(綿など),油化作物を主とする
油化作物を主とする工芸作物
作物を主とする工芸作物の栽培が発達。
工芸作物の栽培が発達。
… 特に,冬
「太平洋ベルト地帯」)
特に,冬も温暖な
温暖な関東・東海・近畿・瀬戸内(
関東・東海・近畿・瀬戸内(後の「
太平洋ベルト地帯」)
・中部〜南東北では蚕糸業
中部〜南東北では蚕糸業が大発展。日清戦争後,一大
蚕糸業が大発展。日清戦争後,一大輸出産業
が大発展。日清戦争後,一大輸出産業に。
輸出産業に。
⇒「米と繭」の生産構造
・東京・
東京・大阪・
大阪・名古屋などの
名古屋などの大都市消費市場
などの大都市消費市場の生成
大都市消費市場の生成 + 近郊農村を結ぶ
近郊農村を結ぶ輸送
を結ぶ輸送
路の整備 ⇒ 蔬菜に特化した
蔬菜に特化した近郊農業
に特化した近郊農業地域が成立
近郊農業地域が成立
⇒大都市市場を中心とする「
大都市市場を中心とする「チューネン
を中心とする「チューネン」
チューネン」的構造が形成。
的構造が形成。
・占領地からの復員・引揚げ者
占領地からの復員・引揚げ者,荒廃した国土
復員・引揚げ者,荒廃した国土 ⇒ 食料緊急増産
食料緊急増産 ⇒高原開拓地
・都市では
都市では … 卸売業近代化
卸売業近代化 ⇒ 公設市場の開設,卸業者の統合,取引き透明化
公設市場の開設,卸業者の統合,取引き透明化
⇒ 中央卸売市場,地方卸売市場の整備
・農村では
農村では … 「産地指定」制度による「
産地指定」制度による「大産地
」制度による「大産地」の育成
大産地」の育成
★1966 野菜出荷安定法
・「指定野菜」について,指定された
指定野菜」について,指定された大都市市場
」について,指定された大都市市場に,
大都市市場に,一定量以上
に,一定量以上を出荷できる
一定量以上を出荷できる
組織化された生産者が集まる地域(
組織化された生産者が集まる地域(多くは「農協」
多くは「農協」の地域
農協」の地域)を「指定産地
)を「指定産地」に指定。
指定産地」に指定。
・産地指定を受けた
産地指定を受けた産地
を受けた産地は,大規模化のための
産地は,大規模化のための生産・出荷施設
は,大規模化のための生産・出荷施設の
生産・出荷施設の補助を受けた
補助を受けた
り,市場価格の暴落時には価格保障
り,市場価格の暴落時には価格保障を受けられる特典。
価格保障を受けられる特典。
※指定野菜
花卉産地の配置
花卉産地の配置
・政令指定野菜 … 国民生活上極めて重要な14品目を
国民生活上極めて重要な 品目を政令
品目を政令指定。
政令指定。
キャベツ,きゅうり,さといも,だいこん,たまねぎ,トマト,なす,にんじん,ねぎ,はくさい,
ばれいしょ,ピーマン,ほうれんそう,レタス
省令指定野菜
「指定野菜」に準ずる野菜を農林水産省令
農林水産省令で指定。以下の
で指定。以下の33品目。
・省令指定
野菜 … 「指定野菜」に準ずる野菜を
農林水産省令
で指定。以下の
品目。
アスパラガス,いちご,えだまめ,かぶ,かぼちゃ,カリフラワー,かんしょ,グリーンピース,
ごぼう,こまつな,さやいんげん,さやえんどう,しゅんぎく,しょうが,すいか,スィ-トコー
ン,セルリー,そらまめ,ちんげんさい,生しいたけ,にら,にんにく,ふき,ブロッコリ-,み
つば,メロン(
つば,メロン(温室メロンを除く)
温室メロンを除く),やまのいも,れんこん, ししとうがらし,わけぎ,らっきょう,
にがうり,おくら
・食料ではない花
食料ではない花は,高度経済成長期
は,高度経済成長期,米や野菜のような
高度経済成長期,米や野菜のような
政策的保護がない中で,
政策的保護がない中で,自由
がない中で,自由な
自由な市場競争 を展開。
⇒ 冬温暖で,
冬温暖で,大都市間
で,大都市間にある
大都市間にある東海地方
にある東海地方で生産が急拡大。
東海地方で生産が急拡大。
・一方で,国土の周辺地帯
一方で,国土の周辺地帯では少ない。
周辺地帯では少ない。
⇒ 「チューネン環」的な分布
チューネン環」的な分布
が野菜よりも
野菜よりも明瞭
よりも明瞭
3)
)輸送技術・インフラの発達と
輸送技術・インフラの発達と遠隔産地
の発達と遠隔産地の発展
遠隔産地の発展
・自動車(
自動車(トラック),鮮度保持,道路の整備
トラック),鮮度保持,道路の整備 ⇒ (鉄道に比べて)機敏で,
機敏で,積み替え
で,積み替えの
積み替えの
ない長距離
長距離の
ない
長距離の輸送が可能に
輸送が可能に ⇒ 「輸送園芸」農業の成立
輸送園芸」農業の成立
4)
)施設栽培技術の発達
施設栽培技術の発達
・施設化
施設化による
施設化による促成・抑制栽培
による促成・抑制栽培 ⇒ 大都市市場
大都市市場の
市場の端境期をねらった出荷
端境期をねらった出荷 ⇒ 生産の組織
化による品質・規格の統一 ⇒ 高価格,高収益,大量出荷を実現
高価格,高収益,大量出荷を実現
⇒ 遠隔地でも,
遠隔地でも,輸送コスト
でも,輸送コストを補って余りある
輸送コストを補って余りある「大産地」
を補って余りある「大産地」の成立が可能に
「大産地」の成立が可能に
・特に … 東海,南四国,南九州,
東海,南四国,南九州,長野,
長野, 東北では東京に近い
東北では東京に近い福島県
では東京に近い福島県に
福島県に大産地が誕生
大産地が誕生
野菜生産の分布
野菜生産の分布
5)
)構造改善
西南日本に大規模
施設経営が多い
・集約的な
集約的な野菜生産
野菜生産
が集まっている地域
が集まっている地域
はどんな地域?
どんな地域?
・選択的拡大,野菜の大産地の育成,稲作の合理化を推進す
選択的拡大,野菜の大産地の育成,稲作の合理化を推進す
るための農業生産・流通基盤の整備
るための農業生産・流通基盤の整備 … 機械化,
機械化,圃場整備,
圃場整備,生産
施設,集出荷施設の
施設,集出荷施設の近代化
南関東・東海地方で
野菜作付率が高い
=集中度
・そうなる 理由 は?
①大都市圏
都市圏
②高冷地
高冷地
1952
仙台平野
2009
③西南暖地
西南暖地
6)
)補助金農政と
補助金農政と「
農協」の強化
農政と「農協」の強化
遠隔性に
遠隔性に,施設化
施設化
と組織化
組織化で克服
・こうした諸政策は,様々な「
こうした諸政策は,様々な「補助
こうした諸政策は,様々な「補助」制度を通して実施
補助」制度を通して実施
⇒ 補助の受け皿として「
補助の受け皿として「農協
として「農協」組織を強化
農協」組織を強化
⇒ 補助金依存の農業体質 ⇒ 政策依存の
政策依存の農業地域
依存の農業地域 … 特にコメ
特にコメの
コメの主産地域
高装備の施設
は関東,東海
は関東 東海,
東海
近畿に多い
=集約度
高度成長の地域システム
水利階層
システム
高度経済成長期の日本の農業地域システムの特徴
高度経済成長期の日本の農業地域システムの特徴
・稲作中心の
稲作中心の自給的
中心の自給的農業
自給的農業 ⇒ 蔬菜や花などの商業的
蔬菜や花などの商業的農業へ
商業的農業へ ⇒ 市場・経済
要因に左右される
に左右される
要因
・政策・制度の役割拡大
政策・制度の役割拡大 … コメ:国による
コメ:国による計画的生産
:国による計画的生産政策と
計画的生産政策と価格支持
政策と価格支持制
価格支持制
度,生産設備への各種の補助金
補助金。コメの主産地である
度,生産設備への各種の
補助金。コメの主産地である東北
。コメの主産地である東北では特に大。
東北では特に大。
下流
・公的技術支援機関の役割
公的技術支援機関の役割 … 高度化する農業技術,品種開発競争
⇒ 地域単位として自治体
地域単位として自治体や
自治体や農協の枠組みが重要
農協の枠組みが重要に
の枠組みが重要に
・自然条件 … 既存の産地とは異なる
既存の産地とは異なる気候条件
異なる気候条件(温度,日照)
(温度 日照)を利用したコスト
を利用したコスト
節約や
節約や出荷時期調整による
出荷時期調整による高価格形成
による高価格形成などの
高価格形成などの優位
などの優位条件として活用
優位条件として活用
機能的な
機能的な農村空間の成立
農村空間の成立
上流
・構造改善事業
区画の整形圃場
構造改善事業 ⇒ 10a, 30a区画の
区画の整形圃場,
整形圃場,用排水路網,
用排水路網,排水調整機能付
排水調整機能付
水田,温度・湿度調整機能付き
水田,温度・湿度調整機能付きハウス
,温度・湿度調整機能付きハウス,自動化された
ハウス,自動化された集・出荷施設
,自動化された集・出荷施設
+それらの維持管理組織(
それらの維持管理組織(土地改良区,
土地改良区,生産組合,
生産組合,農協)
★地域に与える影響が
地域に与える影響が大きい
に与える影響が大きい施設
大きい施設の
施設の管理には,
管理には,強い
には,強い取り決めが
強い取り決めが
… 水不足時の水門
水不足時の水門の開閉
水門の開閉順位
の開閉順位,
順位,開ける程度や時間 etc.
⇒農村社会 … 生活全般にわたる
生活全般にわたる互助
にわたる互助集団ら
互助集団ら単一目的
集団ら単一目的別の
単一目的別の機能集団
別の機能集団へ
機能集団へ
⇒ 村落共同体の存立・持続は,
村落共同体の存立・持続は,平等
は,平等な
平等な配分システムあってこそ
配分システムあってこそ
仙台平野の用水路
仙台平野の用水路
農業水利システム
-手取川扇状地
-手取川扇状地
・広瀬川 ⇒ 広瀬川水系水利連絡協議会
・幹線用水路(右表) ⇒ 仙台東土地改良区
・支線用水路 ⇒ 水利地区(集落)
・末端用水路 ⇒ 農家
果樹農村の
果樹農村の機能的
農村の機能的
地域システム
稲作減反政策とその
稲作減反政策とその影響
政策とその影響
・高度経済成長を通した食生活の洋風化
高度経済成長を通した食生活の洋風化
で,コメの消費量が減少
で,コメの消費量が減少。
コメの消費量が減少。
長野盆地
⇒ 1970年
年,コメの生産調整
,コメの生産調整,翌
生産調整,翌71年からは
,翌 年からは
水田の「転作
水田の「転作」による「
転作」による「稲作減反
」による「稲作減反」政策。
稲作減反」政策。
⇒日本の農地
日本の農地利用の大変動
農地利用の大変動
⇒経営規模の小さい
地域から稲作以外へ
の転作が進行。
転作が進行。
長野
コメ主産地域
の縮小→
の縮小
内山幸久(1972)による
)による
内山幸久(
果樹農村
果樹農村の
農村の末端組織
・共選所の
共選所の集荷範囲は
集荷範囲は
ほぼ集落
ほぼ集落の範囲
集落の範囲↓
の範囲↓
… 小布施町の例
小布施町の例
・生育期にあわせて集約的管理
生育期にあわせて集約的管理が必要な
集約的管理が必要な防除
が必要な防除
組織のほうが
組織のほうが細分化
のほうが細分化され,機能的体制に
細分化され,機能的体制に↓
され,機能的体制に↓
新興産地の形成
新興産地の形成
東北・九州でも
東北・九州でも野菜・
でも野菜・
園芸農業が増加
園芸農業が増加
※東北の新興産地 … 岩瀬キュウリ
岩瀬キュウリ,白河
キュウリ,白河トマト
,白河トマト,
トマト,
南郷トマト
南郷トマト,安代
トマト,安代リンドウ
,安代リンドウ,寒河江
リンドウ,寒河江バラ
,寒河江バラ,霊山
バラ,霊山イチ
,霊山イチ
ゴ,会津盆地のアスパラ
,会津盆地のアスパラ,田子ニンニク
アスパラ,田子ニンニク etc..