蛋白質中の電子構造を計算するQM/MM法 1 蛋白質のポテンシャルエネルギーを計算する 1 2 電子 電子 核 電子の運動E 電子―核クーロンE 電子 電子 1 核 核 電子間反発クーロンE 核間反発クーロンE 大規模分子の量子化学計算をいかに行うか? • 大規模な分子を計算したいが量子化学計算ができない。 凝集系: 蛋白質、溶液 複雑な置換基を持つ化合物 • 局在した電子構造が定義しやすい場合 – 電子構造を解く領域→QM領域:量子化学計算 – それ以外の領域 →MM領域:分子力学(古典力学、静電理論)計算 →量子化学計算と分子力学計算の組み合わせ[1]:QM/MM法 O H R N O N H N 電子構造を解く領域 溶液中の色素:結合なし OH R S H R 蛋白質中の色素:単結合を介した複合分子の部分系 3 [1]Warshel, A.; Levitt, M. J. Mol. Biol. 1976, 103, 227-249. 分子力学法(Molecular Mechanics; MM) における相互作用モデル angle 1,2,3 V K1,2,3 1,2,3 eq 1,2,3 2 dihedral 1,2,3,4 V Vn 1 cos n 1,2,3,4 n 2 二面角変化 結合角変化 1 A4,6 B4,6 vdW vdw V4,6 12 6 r4,6 r4,6 相互作用 2 3 4, q4 結合長変化 bond 2,3 V K 2,3 r2,3 r eq 2,3 2 6 クーロン 相互作用 coulomb V4,5 q4 q5 r4,5 5, q5 分子力学法(Molecular Mechanics; MM)における ポテンシャルエネルギー関数 VMM VIcoulomb VIvdW ,J ,J I J V (I J ) MM qI qJ AI , J BI , J 12 6 rI , J rI , J rI , J I J MM (I J K ) MM bond I ,J K I , J , K I , J , K (I J K ) MM VIangle ,J ,K ( I J K L) MM VItorsion ,J ,K ,L 2 eq K I , J rI , J rI , J J ) ( IMM eq I ,J ,K 2 Vn 1 cos n I , J , K , L ( I J K L) 2 MM ○解析的に原子核に働く力を計算できる。→高速処理 – 蛋白質のような大規模分子の長時間シミュレーションが可能 ×経験的なポテンシャルで万能ではない。→非常に注意を要する。 – 反応は扱えない。 – クーロン相互作用→点電荷間の相互作用 – 環境が変わってもパラメータは固定。 QM/MM法でエネルギーは如何に計算されるか。 QM/MM法で計算されるエネルギー E Tot E QM E MM E QM MM QM領域とMM領域の相互作用 E QM MM E non Bond E Bond (1)Non-bonding interaction omb E non Bond E vd W E Coul クーロン相互作用 ri QA (2)Through bond interaction (MM level) Bond E E Stretch E Bending E Tortion MM region QM領域 Lys Retinal van der Waals interaction (MM level) H C N R2 C H H C wat Counter residues O MM領域 The rest of protein and waters Stretch O R1 H Bending H C Tortion H C QM region O6 切断する結合をどのように取り扱うか? • 実際の化学結合上にQM領域とMM領域の境界が入るとき、 →Link atom • 量子化学で従来より用いられてきた計算モデルの簡素化手法 • Link atomを用いて、類似した電子構造 QM MM C C σ(C-C)単結合 C H σ(C-H)単結合 • Link atomを用いるのが困難な結合(切ることが困難なケース) QM MM 多重結合: π系は切断すると誤った電子構造 を与える。 7 代表的なlink atom • 水素原子 QM MM C C σ(C-C)単結合 C H σ(C-H)単結合 • “Pseudo bond”: Pseudo atom (Cps)の導入[1] C σ(C-Cps)単結合 Cps: 一本の単結合し か生成しない擬炭素 原子。結合長、角度、 二面角が通常の炭素 原子に近くなるように Effective Core Potentialを置いて経 験的に調節する。 • Generalized hybrid orbital (GHO)[2] – 前もってsp3混成軌道を用意し、 QM領域の原子との結合にのみ用いる。 [1]Y. Zhang, T.-S. Lee, W. Yang, J. Chem. Phys. 1999, 110, 46. [2]J. Gao, P. Amara, C. Alhambra, M. J. Field, JPCA 1998, 102, 4714-4721. 8 諸熊らによるONIOM法[1] • モデル系(S)からリアル系(R)へのモデルの拡張 高精度High理論による結果は、高速計算可能なLow理論により近似できる。 ≅ • リアル系(R)のHigh理論の近似式 ≅ = R, High理論 S, High理論 + 図.3層オニオム法の概念図 「●」は実際に計算する理論とモデルのレベル。 破線の矢印は、オニオム法におけるエネル ギー補正を示している。 R, Low理論 S, Low理論 [1]F. Maceras, K. Morokuma, J. Comput. Chem. 16, 1170, (1995); M. Svensson, S. Humbel, R. D. J. Froese, T. Matsubara, S. Sieber, and K. Morokuma, J. Phys. Chem., 100, 19357 (1996) 9 蛋白質の構造と励起状態を計算する方法: QM/MM法の開発 •QM/MM法の利点 ⇒蛋白質の構造と励起状態が計算可能 発光状態の構造、発光エネルギー 構造を持った静電ポテンシャル 蛋白質の役割を詳細に解析できる。 図1. 赤色蛍光蛋白質の発色団結合サイト •分子集合体への拡張[1] – 複数個のQM領域を含むことができる。 ⇒ 複数個の色素を含む蛋白質が計算可能 [1]Y. Kiyota, J. Hasegawa, K. Fujimoto, B. Swerts, and H. Nakatsuji J. Comp. Chem. 30(8), 1351-1359 (2009). 図2. 光合成反応中心における色素集合 10 体の最適化構造
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