液晶ディスプレーや有機EL技術を揺るがす可能性も

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開発 した製造 プロセ
スで作製 したR G B 各
色 で発 光 す るL E D 。
G の 発 光 は電流 とし
て1 0 8 m A を 流 した
場 合 の 様 子 ( 写真 :
東京大学)
ギ
LEDを ガ琢 上に作製
東京大学がスパッタで実現
液晶カ スプレーや有機 EL技 術を揺 るがす可能性も
型 GaNの 各層 をパルススパ ッタリン
藤岡洋氏 の研究室 は、ガラス基板 上
グ法 (PSD)で 形成 (図1(a))。
光励恐
にスパ ッタリング法 で窒 化 ガ リウム
および電流注 入の両方でLEDと して
徐 々に品質や生産性 が向上 した。今
では、生産性 は、LEDの 製造で一般
的なMOCVD十 ょり高 い。 レイヤー・
(GaN)結 晶 か ら成 るLEDを 形成す
発光することを確認 したという。赤色
バ イ ・レイヤーと呼ばれる、原子単位
る技術 を開発 した。
(R)、緑色 (G)、青色 (B)の3原色で発
の薄膜 を成膜することも可能 になっ
た」(藤岡氏)出)。
東京大学 生産技術研究所 教授 の
基板や結晶成長 の コス トが大幅 に
低下 し、LEDの 低価格化 につ ながる
光す るLEDを 作 り分 けることにも成
関発 した技術 は 「
結晶成長の条件
功 した。
や手順などノウハウに属する部類で、
可能性 がある。さらに、大面積 LED
を安価に実現 できる可能性 もあるた
生 産性 は MOCVD以
上に
スパ ッタリング装置 は既存の製品を
め、大面積かつ高精細 のLEDデ ィス
プ レーや、面発光 が特徴 の有機 EL
スパ ッタリング法 で、量 子丼戸 な
利用できる」(同氏)。既 にこの技術で
どを含 む高品質のGaN結 晶を形成す
LEDの 他 に、GaNか ら成 る高電子
「
照明 に代 わ る大面積 LED照 明 が実
ることは、以前はまず不可能と考 えら
移動度 トランジスタ(HEMT)も 試作
現する可能性がある。
れ ていた。それで も多くの研究機関
済み」(同氏)という。
や企業が開発を試みてきたが、「
成功
RGBの
発 光 素子 も作 製
藤岡氏らは、約5cm角 のガラス基板
したのは我 々が世界 で初 めて」(藤岡
氏)とする。
グラフ エンは安 く入手可能
一方、グラフェンをガラス上に敷
いたのは、それによって窒化アル ミ
上にグラフェン多層膜を転写。その上
藤岡氏 は、約 10年 前 からこの技術
にAlN、nttGaN、 GaNと InGaNの 多
当初
開発 に取 り組 んでいたという。「
ニウム (AlN)や GaNの 結晶品質が大
層構造 から成る量子丼戸 (MQWs)、 p
はGaN結 晶 の 品質 が 低 か っ た が、
きく向上するため (図1(b、c))。
(a)開発 したLEDの 素子構造
MQWs i muttipte quantum wells
14M“
回 ELECTЮ
MCS 201477
(b)グラフェンなしで形成 した (c)グ ラフェンの上に形成 した
GaN結 晶
GaN結
晶
図 1 グ ラフェンが成
功 の鍵 に
東京大学 藤岡研究室 が
開発 した、スパ ッタリン
グ法 でガラス上 に作製
したL E D 素 子 の 構 造
( a ) 。ガラスの上にまず
グラフェンを転写するこ
とがポイン トで、グラフ
ェンな しではG a N 結 晶
の品質 が 向上 しない と
い う( b 、
c ) 。( 図、写真 :
東京大学)
NEレ ポート
晶を成長 させる技術を開発 していたい
。
グラフェンは原子 1層分 のグラファイ
トシー トともいえる。数層 かつ 多結
晶のグラフェンで あれば、この3年ほ
どで、大面積のシー トを安 く作製でき
るようになった。今回用 いたグラフ
ェンも市販の製品だという。「
グラフ
ェンは2次元的であるが故に多結晶で
6
4 3
備 研 0 ∝ 0 0 硬
一
拭叶困5Sとヽ日鯛黙G︵
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藤岡氏 は2008年 の時点で、グラフ
ァイトシー ト上 にAlN結 晶やGaN結
図 2 大 面積 LEDの 価格 は 1/10近 くに
今回の技術で大面積 LEDを 製造 した場合の単位面積当
たりの製造コス トの本誌による推測値 を、2012年 時点
の一般的LEDパ ッケージと比較 した。単位面積当たり
のコス トは従来の1/10近 くになる。結晶成長のコス ト
もスパ ッタリング法を用いることで1/2に 、ウエハープ
三
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士
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督
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母
魯
轡
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猛
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\ 暑
RCB3色 発光の素子
利用で蛍光体が不要に
スパッタリング法での
MOCVD法
結晶成長で、
スト低下
よ',コ
もc軸の向きはそろっており、粒界の
状態もよい」(藤岡氏)という。
2012年の一般的な
LED′
ツ ケージ
LEDと しての発光性能について、
既存の製品と比較できるWPE(wall_
どのデータはまだ
plug efficiency)な
ない。ただし、極低温 での光励起 に
MOCVD法
よる内部量子効率の測定では 「
既存
コス トも低下する。RGBの 発光素子
れば、液晶を用 いない自発光型 LED
デ ィスプレーの実現 に も大 きなハ ー
のLEDよ り数割低 いという結果が得
を作 り分けることがで きれば、蛍光
ドル がな くなる。有機 ELに 対 して
られている。 これをいかに高 めてい
体 のコス トも不要 になる。ただし、こ
も、信壇 性の高 さの点で優位 になる。
くかが今後の課題」(同氏)とする。
れだけではLEDの 製造 コス トは1/2
にもならない。パ ッケージの コス トが
グ
今回はガラス基板 を用 いたが、「
ラフェンが転写可能で、しか もプロセ
全体 の6割 を占めているからである。
ス温度 の約500℃ に対す る耐熱 性 が
これにつ いて藤 岡氏 は、「
LEDの
パ ッケージコス トが高いのは、イヽ
さな
あればなんでもよい」(同氏)。薄 くて
大面積 ガラス上にも作 製可能
発光性能 に大 きな課題がない場
合、今回の技術は既存のLEDだ けで
なく、液晶ディスプレーや有機EL技
術を揺るがす存在 になる可能性があ
る (図2)。
まず、基板がガラスになることで、
よりも結晶成長用装置 の
LEDチ ップに大電流を流す ための放
熱対策にコス トが掛 かるため。一方、
スパ ッタリング法 は、数 m角 規模 の
ガラス上に液晶デ ィスプレーを製造
LEDの サ ファイア基板 が不要 にな
す る際にも用 い られてお り、大面積
る。ガラス基板のコストはサファイア
基板の数十分の1と安い。サファイア
の成膜 に向く。大面積 LEDを 作る場
合 はパ ッケージコス トも大幅に低減
基板より安いSi基板を用いた 「
GaN―
できる」とみる。その場合、単位面積
on―
S」 技術を超える低 コス ト化を実
当た りの製造 コス トは本誌推定 で既
現できる可能性がある。加 えて、ス
存のLEDの 1/10に近づ く。
パ ッタリング法 を利用することで、
大面積 LEDを 低 コス トで製造でき
曲 がるガラス基板 などの利用 で、フ
レキシブルな大面積 LEDの 作製 も実
現可能だとする。 (野
澤 哲生)
十MOcvD=有
機金属気相成長法。毒性 の強
い有機金属原料やアンモニア (NH3)ガスなど
を利用するため、その取 り扱 いに追加 コス ト
が掛 かる。
注 1)今 回の LEDは 「
1と能 を犠牲 に して生産
性 を高めても意味 がないため、MOCVDと 同
等 の数 μm/hの 成膜 速 度 で作 製 した」(藤岡
氏)とい う。
参考文献
1)野澤,「フレキシブルな青色 LEDに 道、東大
などが試作、発光に成功」
日経 エレクトロ
〕『
エクス』
,2008年 4月 21日 号,n0976,pp
16-17
NI―
I ELECTRONに
S如
47715