位置フィードバック機構を内蔵した ERマイクロアクチュエータ 東京工業大学 精密工学研究所 准教授 吉田 和弘 1 従来技術とその問題点 • 小形サイズで高い発生力と大きいストロークのア クチュエータには液圧駆動が適しており、その制 御に、電界で粘度を制御できる機能性流体ERF を用いたシンプル、小形のERバルブを応用する ことができる。 • 液圧アクチュエータは、液体が固有の形を持たな いことから、ソフト化できる特長も有する。 • 位置制御のためには、外部に位置センサ、コント ローラが必要で、システムとして大形化、高コスト 化をまねく問題があった。 2 新技術の特徴・従来技術との比較 • ERバルブの一方の電極を可動とし出力端とした構造で、 外力による位置に応じて液圧パワーを制御する、シンプ ル、小形でアクチュエータに組み込み可能なデバイスを 提案する。 • 上記デバイスによる、外部の位置センサおよび コント ローラなしの位置制御により、高パワー密度、ソフトで、 従来より小形、コンパクト、低コストの位置制御システム を実現できる。 • 上記アクチュエータを直列に接続し、それぞれで横方向 外力がゼロになるように位置制御を行うと、形状適応と いう新機能を実現できる。 3 従来技術:ERマイクロアクチュエータ ERF パワー源 P 固定電極 Q Q 差圧 P ERF(Electro-Rheological Fluid.電気粘性流体):電界で粘度が変化 ERマイクロバルブ ○ 電界強度Eで圧力 P,流量Qを制御 E: 高 E=0 流量 Q ○ 固定電極だけの 摺動部がない 単純構造 マイクロ化可能 ERマイクロアクチュエータ ERマイクロ ERF圧力源 ERF圧力源 アクチュエータ (一定圧力) (一定圧力) : ERマイクロバルブ ERマイクロ ERマイクロ + バルブ バルブ 液圧マイクロ アクチュエータ Vv Vv v v 特長: 液圧 液圧 ○高パワー密度 マイクロ マイクロ ○ソフト化可能 アクチュ アクチュ ○シンプル、小形 v低 収縮 エータ v高 伸長 エータ 4 提案技術:位置フィードバック機構を 内蔵したERマイクロアクチュエータ 可動電極 変位x 力f ベローズ (ばね要素) ERF 固定絞り q ばね要素 可動電極 スペーサ 固定電極 v pc 固定電極 電極部 流入口 流出口 5 提案するアクチュエータの動作 伸長/収縮 可動電極 v: 高/低 ERF pc 位置フィードバック機能 外力 可動電極 ERF pc 特長 電極間電圧v:高/低 ER効果により 圧力降下pc:高/低 ベローズ: 伸長/収縮 変位が増加/減少する外力 流路間隔:増加/減少, 電極間の粘度:減少/増加 圧力降下pc:減少/増加 v 発生力:減少/増加 外力による変位を抑制 ○シンプル,コンパクトな構造 ○位置フィードバック機能 6 試作したアクチュエータ 電極部 シリコーンゴム (10, t0.2) 可動電極 (8.8, t0.3) Ps= 200 kPa スペーサ (t0.08) 流出口(1.0) 円筒形絞り 0.11 mm 0.5 mm ERF: ネマティック液晶 流入口 (1.0) (3箇所) 固定電極 (8.8, t0.5) 10 mm 7 試作アクチュエータの静特性 出力変位:最大52 m, ヒステリシスなし 25 60 40 20 0 1.5 20 Temp.: 23 C x Model pc 15 10 0 発生力 :最大1.5 N パラメータ同定 実験結果とほぼ一致 最大出力変位における アクチュエータ剛性:16 kN/m : フィードバックなしの3.7倍 位置フィードバック機能 1.0 0.5 0.0 0 Pressure pc [kPa] Output force f [N] Output disp. x [m] 実験結果 200 400 600 800 Applied voltage v [V] : 数学モデルの値18 kN/m とほぼ一致 8 変位拡大機構 出力変位を拡大したアクチュエータの提案と実現 変位xa 可動電極 ベローズ (ばね 定数K) ERF 固定絞り q pc 伸長/収縮 電極間電圧v:高/低 ベローズ ER効果により (ばね定数Km, 圧力降下p :高/低 c 有効面積Am) 出力変位:伸/縮 変位x 位置フィードバック機能 変位が増/減する外力 流路間隔:増/減, v 電極間の粘度:減/増 圧力降下pc:減/増 固定電極 発生力:減/増 (有効面積A) 外力による変位を抑制 力fa 9 試作した変位拡大機構付アクチュエータ シリコーンゴム(10, t0.2) カバー 変位拡大機構 ポート (0.5) ベース 電極部 銅製円板 (8.2, t0.3) 可動電極 (8.8, t0.3) ERF: 低分子 ネマティック 液晶 10 試作アクチュエータの特性 30 200 20 100 最大203 m p ヒステリシスなし Temp.: 23 C x c 0 2 10 0 最大1.8 N 1 0 0 Output disp. Applied voltage xa [m] (reference) v [V] 動特性実験結果 Pressure pc1 [kPa] Output disp. xa [m] Output force fa [N] 静特性実験結果 1000 500 0 200 0.83 s 0.84 s 100 アクチュエータ剛性:6.3 kN/m 0.73 s 0.72 s 0.83 s 200 V 400 V 600 V 800 V 0.76 s 0.89 s 0 200 400 600 800 Applied voltage v [V] Time constant: 0.81 s 5 6 7 8 9 25 26 27 28 29 Time [s] バンド幅:0.1 Hz以上 : 電極部に流せる流量に比べ 変位拡大機構容積が過大 11 形状適応機能を有する多自由度ERアクチュエータ 内視鏡検査における 被験者の負担軽減 センサおよびアクチュエータ を用いた形状適応機能の付加 液圧駆動: 高いパワー密度 内視鏡 管状器官 均一系ERF: センシングおよび制御機能 均一系ERFを用いた形状適応機能を有する 多自由度ERアクチュエータの提案 基本ユニット 可動電極形 3ポートERバルブ 内視鏡 12 提案する多自由度ERアクチュエータ 基本ユニット 可動電極形 3ポートERバルブ 内視鏡 可動電極形3ポートERバルブ 基本ユニット 内視鏡 固定電極 ERF 液圧源 可動電極 固定電極 制御圧力 ゴム製チャンバ 可動電極形ERバルブの制御圧力により長手方向に伸縮 中央のゴム製チャンバは左右に対して長さの比が2:1 13 提案するアクチュエータの動作 制御圧力:高 接触力 接触力 流路高さ:高 電界強度:低 流路高さ:低 電界強度:高 可動電極形 接触力 3ポート ERバルブ ERF 液圧源 下向きの接触力を 下げるように 内視鏡を屈曲: 形状適応機能 接触力 接触力 14 可動電極形ERバルブラージモデル 固定電極 変位 弾性 ヒンジ 固定電極 弾性 ヒンジ 可動電極 ○ 2枚の固定電極とその間の1枚の 可動電極から成る3ポート形 ○ 弾性ヒンジを用い, 摺動部なしで電極間隔変化 ○ 2個のERバルブを用い, 圧力による力をキャンセル 固定電極 シール膜 (PDMS) 可動電極 シール膜 (PDMS) 400 m (中立位置) 5 mm 16 mm 固定電極 11 mm 2 mm 19 mm 15 可動電極形3ポートERバルブの特性実験 実験装置 力と圧力の関係 変位と圧力の関係 圧力センサ 圧力センサ pc1 pc2 Ps 電源 ギア ポンプ 変位x 可動電極形 力f ERバルブ ○ pc1,pc2ともにヒステリシス pc2 あり Ps ○ 最大変化には0.7 N程度必要 pc1 :改良の余地あり ○ pc1とpc2はほぼ対称形 ○ 変化範囲pc1: 61 %, pc2: 54 % :理論値90%より小 :内部漏れの影響 16 試作した1関節基本ユニットラージモデル 可動電極形3ポートER バルブラージモデル 板ばね (内視鏡に相当) リン青銅製 長さ: 18 mm 幅 : 10 mm 厚さ: 0.2 mm PDMS製チャンバ FEM解析により設計し,成型加工 0.84mm 0.5mm 膜厚 0.1 mm 5 mm 10 mm 10 mm 17 1関節基本ユニットラージモデルの実験結果 動 作 コンプライアンス ○ 力fをはおもりで印加 ○ 形状適応機能: Ps = 0 kPa:なし Ps = 80 kPa:あり f, y f = 0.4 N,Ps = 80 0 kPa kPa Ps = 0 kPa:6.0 mm/N Ps = 80 kPa:7.2 mm/N : コンプライアンス1.2倍 : 形状適応機能を確認 ただし,今後改良が必要 18 想定される用途 • 小形サイズで高い発生力、大きなストロークで、低 コストの位置制御システムを実現できるため、細い 管路内、災害現場の瓦礫内等の狭隘空間で作業 を行うマイクロロボット、マイクロマニピュレータ等に 応用できると思われる。 • 管状器官の形状にならって変形する内視鏡、カ テーテル等、ソフトかつ形状適応機能を応用した、 人に負担の少ない医用・福祉デバイスに応用でき ると思われる。 19 実用化に向けた課題 • 位置フィードバック機構により外乱による位置決め 誤差を低減する機能は実験的に確認できた。位 置決め誤差をゼロにするためには、今後、さらな る工夫が必要である。 • 形状適応機能については、原理的な有効性を実 験的に確認できた。今後、内視鏡を屈曲する実用 的なトルクを発生する液圧アクチュエータを開発 する必要がある。 • 組み込み形液圧パワー源としては、高出力パ ワー(体積2.3cm3 で0.22W出力)の圧電マイクロ ポンプ等の応用を図る必要がある。 20 企業への期待 • 共同研究による、耐久性を含めた実用レベル の特性の実現 • 共同研究による、高パワー密度、コンパクト、 ソフト、低コストという本アクチュエータの特長 を活かした産業用デバイスへの応用、実用化 • 共同研究による、形状適応機能を有する内視 鏡等の医用・福祉デバイスへの応用、実用化 21 本技術に関する知的財産権 • • • • • • 発明の名称 出願番号 公開番号 特許番号 出願人 発明者 :電気粘性流体アクチュエータ :特願2007-198359 :特開2009-036216 :特許第4953131号 :国立大学法人東京工業大学 :吉田和弘 22 産学連携の経歴 • 2000-2003年度 セイコーエプソン㈱と共同研究実施 (研究分担者) • 2005-2009年度 セイコーエプソン㈱と共同研究実施 (研究代表者) • 2006年度 古河電気工業㈱と共同研究実施 (研究分担者) 23 お問い合わせ先 東京工業大学大学 産学連携コーディネーター 尾上 二郎 TEL 03-5734-7634 FAX 03-5734-7694 e-mail onoue@sangaku.titech.ac.jp 24
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