歴史都市防災論文集 Vol. 8(2014年7月) 【報告】 石場建て建物の最大滑動量の実験的推計に関する検討 Experimental Upper Limit of Maximum Slide Response on Un-anchored Traditional Structure 山田耕司1 Koji Yamada 1豊田工業高等専門学校教授 建築学科(〒471-8525 愛知県豊田市栄生町2-1) Professor, Toyota national College of Technology, Dept. of Architecture Traditional Japanese wooden structures are not fixed on the ground, and they slide on stones. Many shaking table tests and parametric analyses have been executed. These reports show the qualitative data on this sliding phenomena of unanchored traditional structures. The quantitative data on this sliding phenomena is needed for structural design. In this report, I propose the estimation method of the maximum slide response upper limit based on shaking table tests. As a result, another slide displacement occurs on both the same test specimen and the same earthquake motion. The estimated maximum slide displacement is 1.2 times of the average of the maximum slide displacements in one-way . Keywords : Un-anchored traditional structure, silde response, shaking table test, 1.序 旧来の日本家屋である伝統構法木造建物では、建物上部構造を束石上に設置し、基礎(もしくは地盤)に 固定していない。このような建物では、強震時に建物上部構造が束石上を滑っていることが過去の震災調査 で確認されている。束石上の滑動による上部構造への影響は、あまり研究されていない。滑動に関する研究 は、免震構造物の滑り支承において多い。しかし、これらの研究は、低摩擦係数を想定しており、上部構造 は剛と見なせる場合が多い。一方、筆者を含めて、実験 1)~5)を通した基礎研究が行われているが、定量的な 傾向を掴めるまでには至っていない。解析的なアプローチとして、松本らの研究6)、米澤らの研究7)がパラメ トリックに解析を行い定性的傾向を論じている。滑動に関する研究として、鋼とモルタル間の滑動に関する 研究も行われている。文献8)では、速度履歴依存型の摩擦係数を導入して実験結果を程よく模擬している。 しかし、滑動面の正確な特性把握が必要としている.一方、文献9)は黒鉛潤滑を応用した滑動の報告である が、この中で片方向に滑動が増大する傾向を表現するには、正負方向の摩擦係数の僅かな差の導入が必要で あると述べている。この2件の研究より、滑動量を理論的に定量化することは難しいと言える。そこで伝統 構法木造建築の地震時の最大滑動量を実験を中心として推定する方法を考える。しかし、全てのパラメータ に対して実験を行うのは困難であるので、実験と基本としながら理論で得られる定性的特性を検討に加える。 最大滑動量に影響を与えるパラメータは、摩擦係数(摩擦面)、上部構造の固有周期・保有耐力・復元力特 性,地震動の非定常特性がある。このうち、理論で得られる定性的特性より10)、上部構造の保有耐力が高い 程、滑動が大きいことが分かっている。従って、線形モデルを用いれば、最大滑動量の推定は安全側と考え ることができる。地震動特性は、設計法と関連するので本報では言及しない。ただし、上下動も含めた適切 な設計用地震動を今後検討する必要はある。残ったパラメータは、摩擦係数(摩擦面)と固有周期となる。 そこで本報では、固有周期が規定された試験体の滑動実験から最大滑動量の推定法を検討する。 1 −237− 2.実験方法 試験体 試験体を図1に示す。試験体は合板、根太で作成し、鉄板で重量を調整した(1F:3.36kg,2F:10.52kg(錘 8.14kg))。復元力として、厚さ2mm、幅10mmのステンレス板を上下に固定して用いた。設計目標固有振動 数は、ステンレス板1枚(Sus1)で3Hz、ステンレス板2枚(Sus2)で5Hzであるが,Sweep試験の結果、ステンレ ス板1枚(Sus1)で2.9Hz(h=2.4%)、ステンレス板2枚(Sus2)で3.7Hz(h=1.8%)であった。加えて,上層を固定した 剛モデル(Fix)も計測した。なお、試験体Sus1,Sus2は実験中に固有振動数が変動したが、その変動幅は10%以 内に抑えた。 礎石は、300mm角のみがき御影石(木片との静止摩擦係数は0.54)を用いた。 計測はポテンショメータおよび加速度計を用い、加振方向滑動(2ヶ)、加振直交方向滑動(1ヶ)、1階 部加振方向(1F-NS)、1階部加振直交方向(1F-EW)、2階部加振方向(2F-NS),加振方向入力加速度(GL-NS),の 6カ所を測定した。 入力動 本報で用いる入力動は、エルセントロNS、タフトEW、JMA-Kobe NS、BCJ-L2を振動台(サンエス製 SPT2D-20K-85L-50T)で加振可能な範囲に調整した波形である。この波形の最大加速度を500,700,900galに調 整して加振した。同一試験体、同一加振波で10回繰り返し加振した。 加速度計 3/ 加速度計 復元力バネ 㻞㻜 図1 試験体寸法図 加振方向 㻟㻜 㻠㻜 加速度計 㻝㻜 変位計 滑動面 㻢㻜㻜 㻠㻜㻜 㻞㻜㻜 㻜 㻙㻞㻜㻜 㻜 㻙㻠㻜㻜 㻙㻢㻜㻜 ローラー 変位計 加振方向 加振方向 㻡㻜 㻢㻜 㻢㻜㻜 㻠㻜㻜 㻞㻜㻜 㻜 㻙㻞㻜㻜 㻜 㻙㻠㻜㻜 㻙㻢㻜㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻠㻜 㻡㻜 㻢㻜 D エルセントロ 163*$ JDO E タフト (:3*$ JDO 㻢㻜㻜 㻠㻜㻜 㻞㻜㻜 㻜 㻙㻞㻜㻜 㻜 㻙㻠㻜㻜 㻙㻢㻜㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻠㻜 㻡㻜 㻢㻜 㻢㻜㻜 㻠㻜㻜 㻞㻜㻜 㻜 㻙㻞㻜㻜 㻜 㻙㻠㻜㻜 㻙㻢㻜㻜 㻞㻜 㻠㻜 㻢㻜 㻤㻜 㻝㻜㻜 F -0$.REH163*$ JDO G %&-/3*$ JDO 図2 入力加速度波形(GL-NS) 3.実験結果 滑動の特性 2 −238− 㻝㻞㻜 㻝㻠㻜 㻝㻢㻜 本節では、先ず滑動状況を概観する。いくつかの試験体では、加振中にねじれ滑動および加振直交方向滑 動が発生したが、滑動量が加振方向の10%に満たなかった。図3~5に滑動の時刻歴(加振方向の平均値)を 10波まとめて示す。図に示した以外の加振ケースは、今回の試験装置では滑動量が礎石寸法を超え、実験で きなかった。図中のμは最大滑動量の平均値であり、σ/μは最大滑動量の変動係数である。今回の実験で は、Fixの500gal加振時のように滑動が小さ過ぎるケースもあるが概ね滑動を生じた。ほぼ全ての加振事例に おいて、同一の滑動傾向が見られた。ただし、固有周期と最大滑動量の定性的傾向は読み取れなかった。ま た、Sus1(2.9Hz)のタフトEW(500gal)、同(700gal)、BCJ-L2(500gal)、Sus2(3.7Hz)のJMA-Kobe(700gal)、BCJL2(500gal)、FixのBCJ-L2(900gal)、において一方向に滑動が進むケースと原点に戻るケースに分かれた。原 点に戻るケースの加振順序は、 Sus1(2.9Hz)のタフト EW(500gal)で1回目、同(700gal)で8~10回目、BCJL2(500gal)で7~10回目、Sus2(3.7Hz)のJMA-Kobe(700gal)で9~10回目、BCJ-L2(500gal)で6~10回目、Fixの BCJ-L2(900gal)で1~2回目である。このため、これら6ケースにおける変動係数は他のケース(変動係数0.2 程度)に比して大きい。一方で、最大滑動量を推測するには一方向に滑動が進むケースが重要である。そこ で、一方向に滑動が進むケースのみで平均および変動係数を計算した.結果を表1に示す。表より滑動のパ ターンを統一すれば,変動係数はほぼ0.2程度になると言える。 次に滑動の進展する時間を検討する。エルセントロNSのケースでは最大20秒程度、タフトEWでは最大12 秒程度、JMA-Kobe NSでは最大5秒程度、BCJ-L2では最大45秒程度、となっている。これは,BCJ-L2では主 要動継続時間が長く、小さな滑動が蓄積された影響と考えられる。 最大滑動量の推定最大値 次に最大滑動量の推定最大値を最大滑動量の5%上側許容限界で検討する。図6に最大滑動量の信頼率75% における5%上側許容限界を示す。横軸は最大滑動量の平均、縦軸は最大滑動量推定値である。単純に計測 事例全てを用いた場合も平均値と推定値に線形性が高いが、一方向にのみ滑動が進展するデータのみを用い た場合は、本稿の範囲ではほぼ線形となっており、推定値は平均値の約1.2倍となっている。 㻝㻡 㻡㻜 㻠㻜 μ =9.55 σ/μ=0.19 㻝㻜 㻡 μ =36.68 σ/μ=0.05 㻟㻜 㻞㻜 㻜 㻙㻝㻜 㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻝㻜 㻙㻡 㻜 㻙㻝㻜 㻙㻝㻜 㻙㻝㻡 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻙㻞㻜 エルセントロ16JDO 㻟㻜 㻞㻜 㻝㻜 㻜 㻜 㻡 㻙㻝㻜 㻝㻜 㻝㻡 μ =21.15 σ/μ=0.23 㻙㻞㻜 㻙㻟㻜 㻙㻡 㻠㻜 㻜 㻡 㻞㻜 μ =47.80 σ/μ=0.35 㻡 㻝㻜 㻜 㻙㻡 㻝㻜 㻡 㻙㻤㻜 㻙㻞㻜 㻡 μ =133.10 σ/μ=0.09 㻠㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻙㻟㻜 㻜 㻙㻝㻜 㻙㻞㻜 㻙㻢㻜 㻙㻝㻠㻜 㻝㻜 㻟㻜 㻡㻜 㻙㻠㻜 㻙㻝㻞㻜 㻙㻠㻜 㻝㻡 㻢㻜 㻜 㻙㻝㻜㻜 㻙㻟㻜 㻝㻜 タフト(:JDO 㻙㻤㻜 㻙㻞㻜 㻜 㻙㻠㻜 㻝㻡 㻙㻢㻜 㻙㻝㻜 㻙㻞㻜 㻙㻢㻜 㻙㻠㻜 㻜 μ =65.14 σ/μ=0.05 㻢㻜 㻜 㻙㻡 㻝㻜 㻙㻡 㻤㻜 㻞㻜 μ =22.32 σ/μ=0.16 㻞㻜 㻤㻜 㻣㻜 㻢㻜 㻡㻜 㻠㻜 㻟㻜 㻞㻜 㻝㻜 㻜 㻙㻝㻜 㻜 㻙㻞㻜 㻙㻟㻜 タフト(:JDO タフト(:JDO 㻟㻜 エルセントロ16JDO 㻠㻜 㻙㻡 㻜 㻙㻝㻜 㻙㻝㻢㻜 㻙㻤㻜 μ =46.46 σ/μ=0.26 %&-/JDO -0$.REH16JDO -0$.REH16JDO 図 6XV+]の滑動時刻歴(PP,μ:最大値の平均,σμ:最大値の変動係数) 3 −239− 㻡 μ =2.36 σ/μ=0.26 㻠 㻟 㻝㻜㻜 㻠㻜 㻤㻜 㻞 㻟㻜 㻝 㻞㻜 㻙㻝 㻢㻜 㻠㻜 㻞㻜 㻜 㻙㻝㻜 㻡㻜 㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻝㻜 㻟㻜 㻜 㻙㻝㻜 㻜 㻙㻞 㻙㻝㻜 㻙㻟 㻜 㻝㻜 㻙㻠 㻙㻞㻜 㻙㻡 㻝㻤 㻟㻡 㻝㻢 㻟㻜 㻝㻠 㻞㻡 㻝㻞 㻝㻜 㻤 μ =11.69 σ/μ=0.19 㻠 㻞 㻙㻞 㻜 㻡 㻝㻜 㻝㻡 タフト(:JDO μ =15.15 σ/μ=0.10 㻝㻜 㻠㻜 㻝㻜 㻟㻜 㻞㻜 㻝㻜 㻜 㻡 㻝㻜 㻝㻡 㻜 㻙㻡 㻡 㻜 㻡 㻝㻜 㻝㻡 μ =99.71 σ/μ=0.31 㻝㻠㻜 㻝㻞㻜 㻝㻜㻜 㻤㻜 㻙㻡 㻜 㻙㻝㻜 タフト(:JDO 㻜 㻜 㻙㻡 㻡㻜 㻡㻜 㻡 㻙㻡 㻢㻜 㻝㻡 㻝㻜㻜 㻝㻡 μ =64.95 σ/μ=0.04 㻣㻜 タフト(:JDO 㻞㻜 㻟㻜 㻤㻜 μ =23.58 σ/μ=0.17 㻙㻝㻜 㻞㻜 エルセントロ16JDO 㻞㻜 㻙㻡 㻝㻜 μ =73.18 σ/μ=0.07 㻙㻢㻜 㻜 㻙㻡 㻜 㻙㻠㻜 㻡 㻜 㻙㻡 㻟㻜 エルセントロ16JDO エルセントロ16JDO 㻢 㻞㻜 μ =32.01 σ/μ=0.15 㻙㻝㻜 㻙㻞㻜 㻢㻜 㻜 㻝㻜 㻡 㻝㻜 㻙㻝㻜 μ =72.38 σ/μ=0.52 㻠㻜 㻙㻡㻜 㻞㻜 㻙㻟㻜 㻙㻝㻜㻜 㻙㻝㻡 㻜 㻙㻝㻜 㻙㻞㻜 㻝㻜 㻟㻜 㻡㻜 㻙㻠㻜 㻙㻞㻜 㻙㻝㻡㻜 㻙㻢㻜 -0$.REH16JDO -0$.REH16JDO %&-/JDO 図 6XV+]の滑動時刻歴(PP,μ:最大値の平均,σμ:最大値の変動係数) 表 最大滑動量の平均・変動係数の再計算結果 ケース 6XV+] 6XV+] )L[ タフト(:JDO タフト(:JDO %&-/JDO -0$.REHJDO %&-/JDO %&-/JDO μσμ 再計算結果(μσμ:用いたデータ数) : : : : : : 180 信頼水準75%における5%上側許容 限界 信頼水準75%における5%上側許容 限界 160 140 120 100 80 60 40 20 0 0 50 最大変位(mm) 100 150 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 0 50 100 最大変位(mm) 150 全データを用いた場合 滑動が一方向のみに進むデータを用いた場合 図 最大滑動量の信頼率における上側許容限界(横軸:最大滑動量の平均) 4 −240− 㻡 㻠 㻟 㻞 㻝 㻜 㻙㻝㻜 㻙㻝 㻜 㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 μ =3.10 σ/μ=0.25 㻙㻞 㻙㻟 㻙㻠 㻙㻝㻜 㻙㻡 㻞㻡 㻞㻜 㻝㻡 㻡 μ =13.26 σ/μ=0.07 㻝㻜 㻜 㻙㻝㻜 㻞㻜 㻟㻜 㻟㻡 㻟㻜 㻙㻝 㻝㻡 μ =8.38 σ/μ=0.06 㻜 㻙㻡 㻡 㻝㻜 㻡 㻜 㻝㻡 㻙㻡 μ =1.25 σ/μ=0.59 㻞 㻙㻞 㻜 㻙㻠 㻜 μ =14.10 σ/μ=0.22 㻡 㻜 㻡 㻝㻜 㻙㻡 -0$.REH16JDO 㻙㻢㻜 㻙㻝㻢 㻙㻣㻜 㻝㻜 㻙㻟㻜 㻡 㻜 㻙㻝 㻙㻝 㻞㻜 㻝㻜 㻙㻝㻜 μ =65.78 σ/μ=0.09 㻟㻜 㻝㻡 㻝 㻙㻟㻜 㻝㻜 -0$.REH16JDO 㻞㻜 㻝 㻡 㻙㻤㻜 -0$.REH16JDO 㻞 㻜 㻙㻡㻜 㻙㻝㻠 㻙㻝㻤 㻝㻡 㻙㻠㻜 㻙㻝㻞 㻙㻞 㻙㻝㻜 㻙㻟㻜 㻙㻝㻜 㻙㻝 㻝㻜 㻙㻞㻜 㻙㻤 㻙㻝 㻡 㻜 㻝㻜 㻙㻢 㻙㻡 㻜 㻝㻜 㻜 㻙㻡 㻙㻡 タフト (:JDO タフト (:JDO タフト (:JDO 㻝 㻜 㻝㻜 㻙㻞 㻝 μ =27.28 σ/μ=0.07 㻞㻜 㻞 㻝㻡 㻟㻜 㻞㻡 㻜 㻞㻜 エルセントロ 16JDO 㻠 㻝㻜 㻝㻜 㻙㻞㻜 㻤 㻝 㻡 㻜 㻙㻝㻡 㻞 㻜 㻙㻡 㻙㻝㻜 㻢 㻙㻡 μ =24.65 σ/μ=0.08 㻝㻜 㻝㻜 μ =1.25 σ/μ=0.59 㻟 㻟㻜 エルセントロ 16JDO エルセントロ 16JDO 㻠 㻝㻤 㻝㻢 㻝㻠 㻝㻞 㻝㻜 㻤 㻢 㻠 㻞 㻜 㻙㻞 㻜 㻙㻠 㻝㻜 㻟㻜 μ =0.94 σ/μ=0.18 㻡㻜 㻙㻝㻜 㻙㻡 㻝㻜 㻟㻜 㻡㻜 㻙㻞㻜 㻜 㻙㻟㻜 㻜 㻙㻝㻜 㻙㻝㻜 μ =10.84 σ/μ=0.21 㻝㻜 㻟㻜 㻙㻝㻜 㻡㻜 㻙㻟㻜 㻙㻠㻜 㻙㻡㻜 μ =38.20 σ/μ=0.16 %&-/JDO %&-/JDO %&-/JDO 図 )L[の滑動時刻歴(PP,μ:最大値の平均,σμ:最大値の変動係数) 4.結語 本報では、強震時における建物上部構造の滑動量把握を目的として、固有周期が規定された試験体の滑動 実験から最大滑動量の推定法を検討した。その結果、構造物の固有周期、地震動、により、滑動量が変化す ること、同一試験体・同一加振波でも滑動の時刻歴が定性的に異なるケースがあること、最大滑動量を発生 する滑動時刻歴の最大滑動量の変動係数は0.2程度であること、最大滑動量の推定値は最大滑動量を発生す る滑動時刻歴の最大滑動量平均値の1.2倍程度であること、が分かった。以上より、強震時における建物上 部構造の滑動量を実験で得られた最大滑動量平均値を用いて推測し,その最大滑動量を許容する大きさ束石 を設置すれば良いと言える。今後は、実大建物との比較実験、設計用地震動の設定、および、多数の固有周 期の試験体による実験が必要である。 参考文献 1) 山田耕司:束立て床の滑動免震効果に関する実験的研究,日本地震工学会大会-2003梗概集,pp.2-3,2003 5 −241− 2) 川上沢馬,向坊恭介,山田耕司,鈴木祥之:柱脚を固定しない木造建物のロッキングと滑動,日本地震工学会・大 会-2007 梗概集,pp.286-287,2007 3) 向坊恭介,川上沢馬,鈴木祥之:礎石建て構法木造建物の地震時挙動に関する研究 その1振動台実験,日本建築学 会講演梗概集C-1,pp.175-176,2008 4) 川上沢馬,向坊恭介,鈴木祥之:礎石建て構法木造建物の地震時挙動に関する研究 その2地震応答解析,日本建築 学会講演概要集C-1,pp.177-178,2008 5) 吉田尚弘,向坊恭介,大岡優,伊津野和行:礎石建て構法木造建築物の柱脚滑り挙動の解析的研究,日本建築学会 講演梗概集C-1,pp.561-562,2009 6)松本 憲幸 , 河合 直人:伝統的木造住宅の地震時挙動に関する解析的研究,日本建築学会講演梗概集C-1,pp.429-430, 2012 7) 米澤 美貴 , 向井 洋一 , 鈴木 祥之:伝統的構法による礎石立ち木造建築物実大試験体の柱脚部のすべり挙動の解析的 評価, 日本建築学会講演梗概集C-1,pp.295-296,2012 8) 榎田竜太,池永昌容,長江拓也,中島正愛:鋼とモルタルのすべり面をもつ柔・剛構造物の動摩擦特性と地震応答 特性,日本建築学会構造系論文集 第76巻 第661号,pp.527-534,2011.03 9) 榎田竜太,長江拓也,池永昌容,稲美充顕,中島正愛:黒鉛潤滑を応用した直置き型鋼構造建物柱脚の摩擦低減, 日本建築学会構造系論文集 第78巻 第685号,pp.435-444,2013.03 10) 山田耕司,向坊恭介,鈴木祥之:建物固有周期と入力動周期の建物滑動量への影響,第13 回日本地震工学シンポジ ウム(2010)論文集,pp.4040-4047,2010.11 . 6 −242−
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