当日配布資料(3.32MB)

土壌・廃棄物中の重金属に対する
低環境負荷型キレート抽出技術
金沢大学 理工研究域 物質化学系
教授 長谷川 浩
廃棄物・土壌中の重金属の除去と有用金属回収を
可能とする新しい化学的回収技術
研究の目的
土壌・
廃棄物
Pb, Cd, As等
の溶出を低減
レアメタル
Ga, Ge, Pd,
Sb等を分離回
収
レアメタル、廃棄物(土
壌)の双方を再資源化
廃棄物処理におけるキレート剤の新しい利用方法
Z従来の薬剤混練法におけるキレート処理
+ Mn+
M
n
+ Mn+
M
n
難溶性塩
廃棄物中に
固定・不溶化
本技術におけるキレート洗浄
(4-n)-
+ Mn+
(レアメタル)
M
水溶性錯体
廃棄物から
洗浄・除去
・水による洗浄と比べて、洗浄効果が極めて高い
・酸洗浄よりも安全性が高い
キレート洗浄による金属成分の抽出に関する検討
Zモデル飛灰の調
整
Mn+
Fe3+/Al3+
SiO2
Mn+
n+
M
(レアメタル)
Mn+
OH-
Mn+
Mn+
吸着層 (Fe2O3 又は Al2O3)
キレート
洗浄
レアメタル、吸
着層、固液比、
pH等
抽出挙動
の検討
キレート洗浄による抽出効果
Control
EDTA
HIDS
焼却飛灰と主要成分例
金属濃度 1-10 ppm, キレート剤 10 mM
Control 0.1 M HEPES buffer(pH 7), 固液比 1:5(N=3)
キレート洗浄の抽出モデル
キレート洗浄によるメタル抽出技術
L
全量を溶解
1. M. A. Rahman,
n+ H. Hasegawa, K. Kadohashi, T. Maki, K. Ueda, Chemosphere, 77, 207-213 (2009)
(キレート剤)
2. M. A. Rahman, M. M. Rahman,
K. Kadohashi, T. Maki, H. Hasegawa, Chemosphere, 84, 439-445 (2011)
3. I.M.M. Rahman, M.M. Hossain, Z.A. Begum, M.A. Rahman, H. Hasegawa, In: Handbook of Phytoremediation,
吸着層を構成する
pp. 709–722 (2011)n+
4. Z.A. Begum, I.M.M. Rahman, Y. Egawa, T. Maki, H. Hasegawa, J. Solution Chem.
, 41, 1713-1728 (2012)
成分の回収が有用
5. Z.A. Begum,
1161–1170 (2012)
SiO2 I.M.M. Rahman, H. Sawai, T. Maki, H. Hasegawa, Chemosphere, 87,な場合
6. Z.A. Begum, I.M.M. Rahman, H. Sawai, Y. Tate, T. Maki, H. Hasegawa, J. Chem. Eng. Data, 57, 2723-2732
(2012)
n+
7. Z.A. Begum, I.M.M. Rahman, H. Sawai, S. Mizutani, T. Maki, H. Hasegawa, Water Air Soil Pollut.,1381 (2013)
t
8. H. Sawai, I.M.M. Rahman, Z.A. Begum, T. Maki, H. Hasegawa, Microchem. J., in press (2014)
M
FeL
L
M
ML
M
[L] > [Fe]
吸着層(Fe2O3)
L
Mn+
溶解平衡
L
Mn+
Mn+
FeL
Fe2O3
ML
Mn+
多量成分の吸着層
から少量成分のレ
アメタルを抽出する
場合
[L] < [Fe]t
超分子作用に基づく新規固相抽出剤による金属イオンの分離
多層的に配列
特定の
金属イオン
ケージサイズ
担
体
従来の問題点
・キレート剤
の競争反応
・多量成分の
妨害
静電気的相互作用
サイズ、立体、電荷
多点相互作用による分子認識
・他の固相抽出剤と比べて強い錯生成と高い元素選択性
・キレート廃液から金属回収が可能
・繰り返し使用が可能
超分子型固相抽出材と他の抽出材との比較
キレート剤共存下で金属イオンを定量的に回収する技術
120
(超分子型固相抽出剤の開発・利用)
試料
Sample
回収率
Elute
80
60
40
Fe(Ⅲ) 100 mM
EDTA 10 mM
pH
8.0
N=3
各元素に対応
した超分子型
抽出剤5-10種
類を準備
20
PB
-1
-1
PA
E3
M
E2
M
E1
M
el
e
x1
0
0
-1
Ch
SA
SC
-1
0
TE
-0
1
Recovery [%]
100
Sample
Elute
キレート樹脂
Kinoshita, Hasegawa et al.(2008)
従来の固相抽出剤との比較
①陽イオン交換樹脂
-
M+
SO3
負電荷を有する官能基
が溶液中の陽イオンを
静電的に捕捉
担
体
-
COO
M+
②キレート樹脂
担
体
CH2N
CH2COO
-
CH2COO
-
M
n+
キレート結合を形成する
官能基が配位結合に
よって金属イオンを捕捉
n+
③超分子ゲル
M or ML
静電的相互作用
電荷
多点相互作用
イオンサイズ
キレート剤存在下における金属イオンの抽出挙動
NTA
GEDTA
EDTA
DTPA
DFOB
抽出率(%)
Mg
Ca
Ti
V
Sr
Ba
Al
Ga
In
Mn
Fe
Co
Ni
Cu
Cd
抽出率(%)
超分子作用に基づく新規固相抽出剤を用いた
EDTA存在下における金属イオンの固相抽出
2 5 6.5 8
pH
Ce
Dy
Pr
Ho
Nd
Sm
Er
Tm
pH
Eu
Yb
Gd
Lu
Tb
Sample solution: 500 ppb,
chelant: EDTA – 10 mM,
T-1 type, matrix: H2O,
pH: 2.0, 5.0, 6.5, 8.0,
Sample volume: 5 mL,
flow rate: 0.2 mL min-1,
elution: 6 M HCl – 5 mL.
超分子作用に基づく新規固相抽出剤を用いた
EDTA存在下における金属イオンの固相抽出
多層的に配列
レアメタル
イオン
ケージサイズ
担
体
従来の問題点
・キレート剤
の競争反応
・多量成分の
妨害
静電気的相互作用
サイズ、立体、電荷
多点相互作用による分子認識
超分子型固相抽出材の特徴
・他の固相抽出剤と比べて強
い錯生成と高い元素選択性
・キレート廃液から金属回収
が可能
・繰り返し使用が可能(100
回まで確認)
EDTA共存下における元素の
抽出挙動とpH依存性
Sample solution: 500 ppb,
chelant: EDTA – 10 mM, T-1
type, matrix: H2O, pH: 2.0,
5.0, 6.5, 8.0, 10, Sample
volume: 5 mL, flow rate: 0.2
mL min-1, elution: 6 M HCl
– 5 mL.
廃棄物試料への適用 (想定される用途)
Z焼却飛灰・溶融飛灰/Pb,Cu,Sb等
ITOガラス/In
蛍光管/Y, Eu等
鋳物廃砂/Cu等
非鉄精錬ダスト/In
飛灰中レアメタルのキレート洗浄
5.0
4.0
抽出した濃度(mg/kg)
3.0
2.0
1.0
0.0
Dy Gd
Lu
Nb Nd
Pr Sm Tb
W
Y
Yb
【新聞記事】
汚泥焼却灰に埋蔵「金」
キレート剤 EDTA 10 mM
pH
7.0
(0.1 M HEPES buffer)
固液比
1:5(N=3)
めっき工場、温泉地域が要因
諏訪終末処理場
回収し維持費に
溶融飛灰中に含まれるレアメタルのキレート洗浄
複数のレアメタルについて、キレート洗浄
の方が水洗浄よりも抽出率が著しく向上
(京都大学環境衛生工学研究会 2010年度優秀プロ
ジェクト賞)
レアメタルを資源レベルで含む
土壌・廃棄物の選定が課題
都市ごみ焼却飛灰・溶融飛灰
1000000
100000
本研究における実測値
(溶融飛灰)
含有量(mg/kg)
10000
1000
100
10
1
0.1
大迫政浩,肴倉宏史(2009)
Ag Bi Ga Ge In Pd Sb Te
非鉄精錬ダスト中Inのキレート抽出
主要成分のベースメタルとInの分離
オートクレーブとキレート(EDDS)抽
出の併用によって、主要成分のPbか
らInを分離
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
Pb
In
0
50
100
Temperature / ℃
非鉄精錬ダストの成分組成
50
組成の割合(%)
Yield / %
(日本分析化学会第60年会 若手ポスター賞、
第 11回高山フォーラム優秀発表賞)
40
30
20
10
150
キレート剤 50 mM EDDS、固液比 1:10(N=3) 反応条件 2300 rpm、240 min
0
In Na Pb
S
Znその他
廃ITO ガラス中In のキレート抽出
ガラス表面でスズをドープした酸化インジウム
マイクロウェーブ加熱下のキレート抽出
によって、定量的にInを抽出
(第11回環境技術学会プレゼンテーション賞、
日本分析化学会第60年会 優秀講演賞)
(a)大気圧下
(b)マイクロウェーブ加熱
廃棄物試料への適用(その他)
廃蛍光管中Y 及びEu
Z000
ITO エッチング廃液中の
In とSn の抽出分離
超分子型固相抽
出材(S-2type)を
直接適用して、In
とSnを分離
固相抽出
廃蛍光灯中の蛍光剤から、以
下の2条件で、Y, La, Euを
MGDA洗浄で定量的に抽出
・90℃
・湿式粉砕(室温)
静電気的相互作用
担
体
従来の問題点
・キレート剤
の競争反応
・多量成分の
妨害
サイズ、立体、電荷
多点相互作用による分子認識
溶離
80
60
In
40
Sn
20
0
エッチング
模擬廃液
レアメタル
イオン
ケージサイズ
100
回収率(%)
湿式粉砕:
ボールミル中でキレート洗浄
多層的に配列
6 M HCl
6 M HCl/
10 mM EDTA
エッチング模擬廃液
300 ppm In / 30 ppm Sn / 5 % (COOH)2
超分子型固相抽出材を用いた
ITOエッチング廃液中Inの分離回収
エッチング廃液
インジウム地金
工程廃棄物
-27 %
 主にシュウ酸エッチング液を利用
 Inが数百ppm、Snが数十ppmで含有
ITOターゲット材製造
壁面付着等
-20 %
スパッタリング(蒸着)
廃液
-5 %
エッチング
不良パネル
-2 %
パネル組立
70 %リサイクル
30 %使用
液晶パネル(製品)
エッチング廃液
歩留まり
<5%
溶離
ITO製造工程におけるInの廃棄量
インジウム回収
原田幸明,中村崇:「レアメタルの代替材料とリサイクル」,2008
固相抽出
ITOエッチング模擬廃液中におけるIn, Snの
超分子型固相抽出材への回収
吸着量 (mmol/g)
0.2
In
0.15
Sn
In+Sn
0.1
0.05
0
0
50
試料通液量(ml)
100
カラム:T-2type
条件:300 ppm In, 30 ppm Sn, 5 % (COOH)2, pH 0.6
超分子型固相抽出材を用いたInとSnの分離
T-2 type
Back extraction(%)
100
S-2 type
T-3 type
100
100
50
50
50
0
0
0
100
100
100
50
50
In
Sn
50
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 E1 E2
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 E3
HNO3(M)
HNO3(M)
E1
6 M HCl
E2
1 M HCl HCl / 10 mM EDTA
E3
6 M HCl HCl / 10 mM EDTA
0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
HNO3(M)
逆抽出において、InとSnをそ
れぞれ定量的に分離回収
E3
超分子型固相抽出材を用いた
ITOエッチング廃液の実試料中におけるIn, Snの回収
含有量(ppm)
In
386
固相への捕集率
Extraction(%)
Sn
38.8
In(Ⅲ)
Sn(Ⅳ)
99.6±0.4
100.0±0.0
逆抽出における分離回収
Back extraction(%)
In(Ⅲ)
Sn(Ⅳ)
0.3 M HNO3
6 M HCl
1 M HCl / 10 mM EDTA
98.3±0.1
0.2±0.3
1.6±0.0
13.6±1.8
0.1±0.1
86.2±2.1
カラム:T-2type 条件:pH 1.5, N=3
実験室レベルのキレート洗浄 -固相抽出処理による
実試料中レアメタルの回収
Table 1
廃棄物実試料中におけるレアメタルの回収率
実試料
溶融飛灰
廃ITOガラス
非鉄製錬ダスト
廃蛍光管
Nd, Pr, Y, Er
In
In
Y, La, Eu
キレート抽出条件
常温
マイクロウェーブ
超分子型固相抽出材
T-1
T-4
T-4
T-1
全回収率
83%
97%
98%
94%
規制元素
Pb, As, Cd
-
-
-
各0.005 ppm以下
-
-
-
主なレアメタル元素
最終的な溶出量
オートクレーブ 加熱/メカノケミカル
成果論文
1. H. Hasegawa, I.M.M. Rahman, Y. Egawa, H. Sawai, Z.A. Begum, T. Maki, S. Mizutani,
Microchemical Journal, 106, 289-294 (2013)
2. I.M.M. Rahman, Z.A. Begum, H. Sawai, T. Maki, H. Hasegawa, Chemosphere, 92, 196–200, (2013)
3. H. Hasegawa, I.M.M. Rahman, Y. Egawa, H. Sawai, Z.A. Begum, T. Maki, S. Mizutani, J. Hazard.
Mater., 254-255, 10-17 (2013)
4. H. Hasegawa, I. M. M. Rahman, Y. Umehara, H. Sawai, T. Maki, Y. Furusho, S. Mizutani, Microchem.
J., 110, 133-139 (2013)
5. H. Hasegawa, I. M. M. Rahman, Y. Egawa, H. Sawai, Z.A. Begum, T. Maki, S. Mizutani, Water Air Soil
Pollut., 225, art.no.2112 (2014)
まとめ
1. 土壌・廃棄物中における金属の化学的湿式回収法
・キレート洗浄による金属抽出法
・新規超分子型固相抽出材による分離回収法
2. 実際の土壌・廃棄物試料への適用
・焼却飛灰・溶融飛灰
・非鉄精錬ダスト、廃ITOガラス、廃蛍光管等
実用化に向けた課題と企業への期待
・水洗浄/キレート処理/酸処理の比較と損益評価
・具体的な廃棄物・土壌の提案
・プラント化にノウハウを有する企業との連携
お問い合わせ先
(有)金沢大学ティ・エル・オー
中村 尚人
TEL
FAX
e-mail
076-264-6090
076-234-4018
[email protected]