【奨励賞】トヨタファイナンス

第1回「エンパワーメント大賞」受賞組織の取り組み
【奨励賞】トヨタファイナンス㈱
住
所:愛知県名古屋市西区牛島町 6 番 1 号
ホームページ:http://www.toyota-finance.co.jp/index.php
従業員数:1,772 人(内訳:男性 933 人 女性 839 人)
業
種:金融業
1.取り組み・支援に至る経緯・理由
1998 年トヨタ自動車の財務部月賦課が独立して誕生、2000 年よりクレジットカード事業
を開始した。当時、営業は男性、女性はその補助的業務という意識が強かった。カード事
業を開始してからは、300 社あまりから多様な人材を採用していたが、女性に対する固定的
性別役割分担意識の解消は進まなかった。2005 年から総務人事部内でポジティブアクショ
ンに取り組み、2010 年人事制度の改定と伴に『人材マネジメント方針』を展開し、トップ
のコミットメントの下、企業文化変革に全社レベルで取り組むことになった。この方針策
定に当たっては、先ず、役員の意識を変えることからスタートした。約1年をかけ、役員
のワークショップでは、役員自身は何をすべきか、熱い議論が行われ、経営陣が完全に“腹
落ちした”状況で臨むことになった。
制度改定に伴い、従来事務やオペレーション作業が中心だったエリア限定スタッフAS
から、約 150 名が企画、営業などへの活躍領域の拡大を求めて、地域限定総合職GAへ転
換した。彼女らは、意識は高かったが、元々総合職としての役割を付与されておらず、そ
の能力拡張が喫緊の課題となった。また、開業以来利用しているシステムの更改というプ
ロジェクト推進のため、職種に適した能力を養成し、戦力化する必要性に迫られていた。
一方で、長時間労働が当たり前で、出産後には“配慮”が行き過ぎて、成長につながる
ようなチャレンジングな仕事をさせないといった環境だったため、両立支援制度が整備さ
れていても実際にそれを利用する社員が少なかった。これでは、総合職として能力を発揮
できるようになっても、どこかでキャリアを諦めなければならず、両立支援制度が実効的
に当たり前に利用されるようになる必要があった。
そこで、エリア総合職(GA)約 150 名から約 50 名を選抜し、彼女らが自分のキャリア
を考えながら、業務を通して自分の能力を伸ばし、総合職としてGN(全国転勤ありの総
合職)と遜色のない能力を発揮するようになるために、年度ごとの考課値・昇格をトレー
スし、自分のキャリアを考え、内省により自己成長させ、行動をおこすことができる人材
の育成を目標とした。
また、自分のキャリアは自分で創るという主体性を育むこと、セイフティネットである
制度が当たり前に使えるような、多様性を認める職場風土づくりのために、出産による離
職率の減少、両立支援制度利用者の増加および利用率の向上が必要と考え、ただ長く働く
のではなく、自分のキャリアを考え、制約がある中で能力を発揮し、会社に貢献できる人
材の育成、それを支える職場づくりを目指した。
©(公財)日本生産性本部
第1回「エンパワーメント大賞」受賞組織の取り組み
2.具体的な取り組み・支援の主な内容
(1)女性社員の能力拡張
同時期に入社した総合職でも数年後男女で差がつく、女性社員の能力伸長が図れないの
は、付与される役割によると当社では考えている。ハードルの高い業務を、上司や同僚
のサポートを得ながら達成すること、所謂『修羅場経験』をすることで、更なる意識向
上、成長に結びつくと信じている。2011年総務・人事部内にグループ横断のポジティブ・
アクション・チームを組成し、以下の施策を実施した。
①GA特別研修:一般職から地域総合職に転換した女性社員を対象に、総合職社員に求
められる5つの行動プロセス(情報収集・現状把握(分析)・構想・合意形成・実行)
をアセスメント形式の研修で実体験し、自分とのギャップを認識する研修を企画した。
②職場での戦略的OJT実践と役割付与:成長を意識した役割が付与され、上司が常に関
心をもってフォロー、指導し、結果が正しく評価されて、次のステップを期待される
サイクルの中で人は育つという信念の下、全ての職場で戦略的OJTに取り組んだ。
③キャリア面談:年1度、チームが選抜GAと面談。面談結果は本人の承諾を得て上司に
フィードバックし、必要に応じて上司のヒアリングを行う。これは、社員を育てるの
はあくまで現場だという考え方に基づく。
④キャリア育成会議:チームは選抜GA社員がいる所属長(部長)と、個々の社員につい
て3~5年後を見据えた育成計画を話し合う。計画は単に業務を遂行するだけではな
く、伸ばしたい能力や成長イメージなどと言った視点から確認する。
⑤総務人事部役員との懇談会:昇格を控えた総合職女性社員と総務人事部役員(2名)
との懇談会で、役員からは会社の女性社員に対する期待感を伝え動機付けを行う。会
社の期待度が伝わる機会でもあり、また職場の課題などを話し合うことができる。
(2)両立支援制度運用職場づくり
制度運用は、妊娠から復帰まであくまで職場中心のサポートを心がけている。『人材マ
ネジメント方針』策定にあたり1年を費やした役員の議論があったように、このような
施策は現場が納得し腹落ちしなければ、風土として根付いていかないと信じている。
①両立支援制度運用職場風土づくり:業務内容が異なる部署により、土日出勤、シフト
勤務制など様々である。それぞれの職場が自分たちで考え、職場にあった運営体制を
構築するため、職場へ入り込み、職場の社員とともに考えることにした。当初現場か
らの反感も強く大変苦戦したが、職場の女性たちが人事の取り組みに共感し、また、
職場もせっかく育てた女性が結婚・出産を機に退職してしまうマイナスを真剣に考え、
徐々に社会・会社の変化、人事の意図を理解するようになった。
②両立コミュニケーション面談:妊娠判明時から復帰3ケ月まで5段階に分けて行われ
る。段階に応じて、本人と上司、そして人事の3者で行われるが、特徴として産休前
に本人にライフプランを記入してもらい上司と共有する。
③ 仕事と家庭の両立支援フォーラム:復帰直前に上司とペアで参加。午前中は、働き方
について話し合い、午後は管理職と復帰予定者で部屋を分け、それぞれ先輩ママ、先
輩管理職が入ってアドバイス。その後、先輩ママは管理職に、先輩管理職は復帰予定
者にアドバイス。
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第1回「エンパワーメント大賞」受賞組織の取り組み
3.取り組み・活動による具体的効果
(1)定量的効果
①女性社員選抜メンバーの資格推移・評価
2011
2012
2013
2014
GA-Ⅰ(課長級)
0人
1人
2人
2人
GA-Ⅱ(主任級)
4人
6人
7人
12 人
GA-Ⅲ
29 人
29 人
31 人
27 人
7人
4人
3人
1人
3人
5人
2006
2012
結婚による離職率
27.0%
10.5%
両立支援制度利用者
7人
30 人
両立支援制度利用率
42.8%
90.0%
-
4 名(5 講座)
GA-Ⅳ
9人
産休・育休者
0人
10%
90%
32%
68%
②女性社員制度利用者の推移
育児休暇中の通信教育受講者
(2)定性的効果
①男性管理職(GM・所属長)の意識の変化:この施策の上位概念である企業文化変革
との関連性を粘り強く説明すると同時に、役割付与が適切か、目標設定時の動機付け
等、繰り返し職場に問うてきた。その結果、2012年以降は、所属長が育成計画を基に、
女性部下の育成計画を熱く語り、悩みを相談するという内容の濃い打ち合わせとなっ
た。これは、役割付与やコミュニケーションの強化により『女性も男性と同じように、
それ以上に仕事ができる』ということを上司が実感し、それが、部署の業績や活性化
にも繋がったという成功体験に裏打ちされていると考える。
②女性社員の意識の変化:横並びで『出る杭』になることを好まない従来の女性社員の
意識が変化。『基幹職になってマネジメントがしたい』『専門性を磨きたい』等自分
の言葉でキャリアを語る女性が出てきた。
例)営業事務担当だったGA社員は、会社への貢献をより実感したいと考えていたが、
営業担当へ一歩踏み出すことができなかった。しかし所属長が背中を押したこと
で決心がつき販売店営業職へ。割賦推進販売、カード獲得、長期融資目標を大幅
に達成すると共に、好事例の展開を行い、男性営業職社員の刺激にもなっている。
例)2010年出産したGA社員は現在も短時間勤務を利用しているが、経理部資金G
でノンバンクの生命線とも言える資金調達に関するリスク管理業務のチームリー
ダーとして、リスク・収益管理の高度化に貢献すると伴に、後進の育成にも力を
入れ2014年1月付けで主任クラスへ昇格した。
③コレクション(回収)センターが「職場復帰の基本方針」制定:2011年8月、両立しな
がらもセンターの一員として、助け合いながら働く方向性を打ち出した。これにより
事前に復帰後の働き方がイメージできることで、計画が立てやすくなり、両立支援の
見地からも一定の勤務配慮を設けながらも他社員との公正性を鑑み、遅番勤務・土日
出勤を取り入れ要員確保に繋げることができた。この動きは他のセンターへも波及し
つつある。
©(公財)日本生産性本部