Avid高解像度ワークフロー 2K、4K、そしてUHDTVへ www.avid.com/JP/products/Media-Composer 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー はじめに この文書では最新のUHDTV(Ultra High Definition Television=超高精細テレビ放送)と、それに関す る問題、対応するためのソリューション、そして、現在のポスト/放送ワークフローに高解像度ファイルベー スメディアを組み込むことの利点について説明します。 概要 近年、4Kテレビは$5,000程度まで値段が下がり、通常のHDテレビとの価格差もなくなってきています。 メーカーや技術的に先端を行く人々の間で 世界には、まだHDさえも浸透しきっていない地域もある中で、 「HDと何も違わない」 は、HDは既に過去のものです。4Kそのものについては様々な意見があるようで、 という人もいれば「世界を変える革新的技術だ」という人もいます。 「4K」という言葉は高解像度を表す 用語のように使われていますが、実際のところ、解像度を4Kで止めておく理由はどこにもありません。HD 以上の、いわゆる「高解像度作品」の多くは、現在2Kでキャプチャーされていますが、業界の標準化団体は 3840x2160を標準にしようとしつつあるようです。ひとくちに2K/4Kといってもそこには様々な種類が あり、 デジタルフィルムスキャニング(4096x3112)、DCI(Digital Cinema Initiatives)4K(4096x2160)、 DCI 2K(2048x1080)といったフォーマットが、何年も標準となっているDCP(Digital Cinema Package) で配信されています。ここでは、現在の映画館上映用の、既に確立されたワークフローを論じるのではな テレビメーカーと放送局が開発を続けている4K「放送」について、 スポッ く、Ultra HD(UHDTV)あるいは、 トを当てていきます。UHDTVはNHK Labsによって提唱された高解像度放送標準の一連の集合体であ り、ITU(国際電気通信連合)によって、2012年8月「ITU-R勧告 BT.2020」として標準化されました。 UHDTVの4Kバージョンは、HD 1920x1080のちょうど4倍の解像度である3840x2160解像度を持ち、縦 「本当の4Kではない」という異論もありますが、現行と同じ16x9サイズであることが広 横比は16x9です。 く受け入れられ、新しい標準として認識されています。解像度と共に、 フレームレートとカラーエンコード 方式についての新しい提案も存在します。これらの新しい提案は、ITUとSMPTEによる「段階的方法」に組 み込まれ、 メーカーや消費者のためのUHDTVの実現を目指しています。 UHDTV-フェーズ1(2014/15) 以下の内容がフェーズ1に含まれます: • フレームレートは 60 fps を上限とする(プログレッシブのみ) • 解像度は 4K まで (3840 x 2160) • 10/12 bit カラー – (8 bitは採用しない) • Bt. 2020 または 709 カラースペース • HEVC compression • 5.1 および 7.1オーディオ ラスターという意味では、UHDTV フェーズ1は本質的には「Quad HD」 (1920x1080 を4枚つないだも の)です。しかし、それよりもみなさんの興味を引くのは、60 fpsの承認とプログレッシブのみの採用とい う点でしょう。インターレースはその役割を終えている、スポーツのような速い動きには60pがもっとも適 2 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー している、 というのは誰もが同意できる点でしょう。また、 カラースペースとビットデプスに関する決定も特 徴的です。現行のRec.709 HDでは8-10bitに制限されていますが、Ultra HDのRec.2020では8-bitを採 用せず、10-12bitの仕様となっています。カラーガマット(色域)の拡張は、明らかな画質の向上を生み出し ますが、 これを実際に視聴者が見るには、 まだ高価な機器が必要です。拡張されたカラーガマットとプログ これをUHDTVで見る場合にはその視聴環境を大きく改 レッシブフレームレートは、現在のHD番組でも、 善することになりますが、 この場合、実際の4K放送を待つことが前提条件となるでしょう。 UHDTV-フェーズ2 (2015 以降) UHDTV フェーズ2では、以下の内容が加わります: • フレームレートを120Hzまで拡張 • ハイダイナミックレンジビデオ • オーディオ機能の拡張 UHDTV-フェーズ3 (2020 東京オリンピック) フェーズ 3 では: • 4320x7280“8K”解像度 (日本の「スーパーハイビジョン」) UHDTV フェーズ2では、フレームレートが再び大きくなり、スポーツや速い動きに対して優れた特性を発 揮します。これは3Dにおいても、120 fpsという高いフレームレートが視聴環境を劇的に改善するでしょ う。ハイダイナミックレンジは、美しいコントラストと、実際の風景と変わらない繊細なルミナンスをより効 率的に生成できるため、 これまでの視聴環境とは明らかに異なる体験をもたらします。REDやARRIのよう なカメラベンダーは、既にHDR(High Dynamic Range)を撮影できるデジタルセンサーを開発していま す。また、DolbyのDolby Visionも、その広いダイナミックレンジにより、多くの視聴者をひきつけていま す。 UHDTVにおけるオーディオフォーマットについては、この文書では詳しく触れませんが、5.1や7.1サラウン ドのさらに先を目指す挑戦が始まるであろうことは、想像に難くありません。アンビソニックスをベースに した新しい提案や、Dolby Atmosのような技術が、現在活発に議論されています。 UHDTVフェーズ3においては、NHKが2020年の東京オリンピックにおいて放送を開始しようと計画して いる8K(4320x7280)がついにサポートされます。8Kという解像度は、その他の国ではまだまだ先の話 ですが、既に仕様の一部に組み込まれており、テレビ受像機側の技術が進めば、すぐにでも製品が出てくる でしょう。 3 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー 現在の高解像度制作 このフェーズの推移に関わらず、世界中の視聴者にUHDTVが届けられるようになるのは間違いないで しょう。解像度それ自体(HDから4Kへ)は、SDからHDに移行したときのような衝撃を与えることはない ものの、高フレームレート、広い色域、広いダイナミックレンジといった解像度以外の要素が、デジタルメ ディアの世界を次のステップに導く役割を果たすと予想されます。メディア企業にとっては、 この「次のステ ップ」が番組の配信方法やコンテンツの収益化方法、そして、 これまでの放送・配信インフラの変更を推し 進めることになります。しかしながら、 メディアの配信サイドおよび視聴者サイドにとっては、高解像度コン テンツはできつつあるものである一方、制作およびポストプロダクションサイドには何年もかけて構築し てきた高解像度ワークフローの仕組みがあります。したがって、 この文書では、現在のポストプロダクショ ン環境において、UHDTVを念頭に置きつつ、高解像度メディアを扱う方法と利点についてお話します。 ポストプロダクションで高解像度メディアを扱う利点 たとえ多くの視聴者にとって4KとHDの違いは、50インチテレビの3m前で見てもわからないものだとし ても、競合力の高いコンテンツを作ることが至上命題のプロフェッショナルにとって魅力的なものであるこ とは間違いありません。 最終配信がHDなのにHD以上の解像度でキャプチャーする理由 高解像度のファイルベースカメラが手ごろに入手できるようになっている昨今、 プロダクションが高解像度 で撮影する主な理由は、出来うる限り最高の品質で映像を撮影したいという欲求と、将来への投資の保証 です。巨大なサイズのファイルをどのように保管するかという問題はありますが、撮影したメディアのライ フサイクルを伸ばすという観点においては、 これは賢明な選択でしょう。 ファイルベースの世界において、 この大きなファイルをスムースに再生させるためには設備に対してさら なる投資が必要にはなりますが、デジタル編集とストレージにといったシステムには自然にフィットします。 また、高解像度メディアでの撮影は、その後のポストプロダクション作業における柔軟性とコントロール性 を確保するものでもあります。今後の放送における配信要件はしばらくはHDのためのものだと仮定する 4K、5Kといった素材は元の素材からHD部分を切り出し、あるいはリフレームする必要があります。 と、2K、 これまでの4倍の大きさを持つ画像であれば、HD部分を切り出すときにも大きな柔軟性が実現できます。 画像中をパンしたり、ズームインしたりするときにも、 この大きさであれば画質を損なうことがないからで す。HD映像で同じことをすると、その不十分な解像度ゆえ、画質の劣化を招いてしまいます。 4 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー 解像度とともに語るべきなのが、拡張された色域とダイナミックレンジです。現在のHDカメラは10-bitに 制限されていますが、 これらの高解像度カメラは一般的に12-bitをサポートしており、16-bitをサポートす るものもあります。シネマフォトグラファーはHDRのようなテクニックを新しいドラマチックな方法で使い こなし、ポストプロダクション工程においてその色を維持したいと考えます。拡張されたダイナミックレン ジはカラリストにとっても新たな挑戦を可能にさせます。画質を損なったりノイズを発生させたりすること なく、 コントラストやカラーを自由に調整できるからです。 多くの放送局ではまだテープでの納品を必要としており、テープにはそれ自身の制限がありますが、編集 においては相対的に管理が楽であり、また、それ自身がアーカイブ媒体としての機能も果たします。エディ と ターやアシスタントがテープでの作業を終えると、テープを棚に置いて、何に使ったかをノートに記す、 いうものです。ファイルベースメディアはコピーが楽で、電気的に配信できるという特性を持ち、また実時 間以上の処理を可能にするものでもあります。しかし、 ファイルベースメディアに無数のフォーマットが乱 立するようになると、これを共通のフォーマットに変換する必要が出てきました。さらに、テープのように 「棚に置いたらおしまい」という形が取れないため、相対的にアーカイブ管理が面倒です。この「メディア 論争」は、大切なクリエイティブな時間を、 メディア管理のような雑事のために使う原因になってしまいま す。これを解決する本質的な方法は、 これらの雑事を自動化して非クリエイティブな時間を可能な限り減ら し、 これらの作業をバックグラウンドにまわすことで、エディターやアシスタントの才能をクリエイティブな 作業に集中させることにあります。 効果的なポストワークフローにおいて、高解像度のインパクトを最小限に抑える プロダクションの現場では、多くのプロジェクトにおいてあらゆる才能を協調させ、共同で作業することを 考えています。映像エディター、サウンドミキサー、 ビジュアルエフェクト、 グラフィックといった分野のプロ が協調し、最高品質の作品を、それもできうる限り早く完成させることが、 ツールやスタッフに対する費用 フィニッシングといった工 対効果を最大限にする方法だからです。このとき、VFX、カラーグレーディング、 程においては、出来うる限り大きな解像度で作業をすることが必要になります。しかし、編集やロギング、 レ ビュー、承認といった工程においては、この高解像度メディアはあまりにサイズが大きく、チーム間でメ ディアを移動させるといった作業において大きく生産性を落とすばかりか、ワークステーションやストレー ジにも新たな投資を必要とします。コラボレーションやアセット管理、 リモート編集、アーカイブ、ストレージ 効率、編集効率といった観点からは、すでに確立されたワークフローに過度に縛られることなく、効率的な ワークフローをもって高解像度メディアのメリットを享受することを考えることは、 とても大切なことです。 この効率性を維持管理することこそがビジネスの成功のカギであり、それこそがAvidメディアプラット フォームのメインコンセプトでもあります。 5 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー AMA と DMF 高解像度メディアで作業するときに最初に考えるべきことは、ネイティブで作業すべきか、あるいは、中間 ファイルやプロダクション工程において最も効率のよい「メザニン」フォーマットに変換するべきかを決定 することです。これは、作品の最終フォーマットや現在所有している設備の性能、編集に必要なスピード等 の要素を考慮して決定します。どの方法においても、次のステップは、元素材に対して簡単にアクセスす これはAMA(Avid Media Access)を使って行われます。AMAは ることです。Avidシステムにおいては、 Avidが開発したオープンなプラグインアーキテクチャーで、主要なカメラベンダーによって使用され、各 カメラのメディアとメタデータにアクセスできるようになっています。これは、 これまでの「インポート」と 異なり、エディターやアシスタントはメディアがインポートされMXFにリラップされるのを待つ必要があり これらのカメラフォー ません。Avid DNxHDのようなメザニンフォーマットには多くの利点がありますが、 マットファイルを、インポート時間を待つことなくダイレクトに見て編集することは、素材をより分けて構 成するときには非常に有効で重要な最初の工程です。AMAはこのような工程におけるメディアへの「イン スタントアクセス」を可能にし、すべてのメタデータを維持します。もしこの方法に改善の余地があるとす れば、 このような作業を自動化し、 トランスコードやコンソリデートといった作業をバックグラウンドで行う ことでしょう。素晴らしいことに、 これを可能にした「DMF(Dynamic Media Folders)」と呼ばれる機能 が、Media Composer® 7の新機能として追加されています。 Dynamic Media Folders ダイナミック・メディア・フォルダー(DMF)の主目的は、 ファイルベースメディアに関する作業をバックグラ ウンドで自動化し、インポートにかかる時間やつまらない作業工程を減らすことにあります。高解像度メ ディアはその特性から、 リアルタイム性能の障害となってしまい、ストレージ容量的にも圧迫が大きく、協 調作業やリモート編集といった作業にも向いていません。したがって、高解像度メディアからHDプロキシー メディアを作るには、 この機能は計り知れないほど有効です。エディターやアシスタントは、 メディアを管理 されているフォルダーの中で整理しますが、 これは自動的にあらかじめ設定されたフォーマットに変換さ れていくのです。 DMF内のメディアは自動的に以下のような処理を行います: • 指定された場所にコピーし、そこからAMAリンク • トランスコード • コンソリデート 6 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー DMFインターフェースでは、エディターやアシスタントが必要な処理を設定し「プロファイル」を作成する ことができます。 • 複数のプロファイルを作成し、指定のフォルダーにメディアが入ったときの自動処理を指定します(図1 参照) • すべての処理は、使用可能なシステムリソースを使って、バックグラウンドで実行されます。処理は、 Media Composer自身が起動していなくても実行されます。 • プログレスバーやメッセージ等に作業を邪魔されたり中断されたりすることはありません。 • DMF内のメディアは「管理」されています。すなわち、システムによりインデックス化されており、メディ アのリンクがはずれてオフラインになる危険性を最小限に抑えています。 • 「バックグラウンドキュー」ウインドウを開くことで、現在の進行状況を確認することができます。 図1 – ユーザー作成のプロファイルによって複数のDynamic Media Foldersを設定 ユーザーはDMFに対し、 コピー、 コンソリデート、 トランスコードといった作業を割り当て、 どのようにビン に表示させるかを設定します。この設定と処理内容はプロファイルエディター(図2)によって作成できま トランスコードと す。プロファイルエディターでは、AMAリンクを確立させた後、コピー、コンソリデート、 いった処理を割り当てるので、DMF内に置かれたファイルやボリュームは、その設定にしたがって処理さ れます。 7 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー 高解像度メディアの場合、DMFを使ってDNxHD 36のようなプロキシーメディアを作るワークフローが想 定できます。こうすれば、自分自身のパフォーマンスやネットワーク上の別のエディターのストリーム数に 影響を与えずにすみます。 図2 – DMF プロファイルエディター 8 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー ファイルがDMFに置かれ、処理が実行されると、 タイムライン上のインジケーターが新しい素材の準備が できたことを知らせます。 DMFウインドウを開くと、どのDMFに新しいアセットができているのかを見ることができます。 「取得」カ ラムに表示されている緑のビンアイコンをクリックすると、 プロファイルに設定されたAMA設定にしたがっ て、素材をビンに「プル」します(図3)。この方法で、エディターは作業を中断させられることなく、バックグ ラウンドで処理されているメディアをビンに取り込むタイミングを自由に決めることができます。 図3 – DMFによるアセットの取得 DMFに置かれたすべてのクリップは、この後、Media Composer内でAMAマスタークリップとして表示さ れます。 メディアが低解像度にトランスコードされても、オリジナルの高解像度メディアとのリンク情報は維持して いるので、その後のカラーグレーディングやフィニッシングのステージで高解像度メディアと再リンクを取 ることができます。 高解像度メディアをHD配信 - FrameFlex 先にお話したように、HD以上の解像度で撮影する理由は、その後のポストプロダクション工程において、 フレーミングやカラー、 クオリティといった様々な要素に柔軟性が生まれるからです。しかし、映画以外 の分野においては、作品はHDで配信するのが今のところの主流です。このトレンドを強く認識したAvid は、Media Composer 7にFrameFlex™ツールを搭載しました。 9 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー Media Composer 7以前のバージョンでも、Reformatオプションにより、プロジェクトサイズより大きな 映像を表示させることは可能でした。このときメディアはストレッチさせる、 またはプロジェクトサイズにフィッ トさせる、 あるいはクロップする、 といった選択肢がありました。しかしここには、 「必要な部分を切り出す」 という選択肢はありませんでした。FrameFlexを使えば、高解像度メディア − 動画でも静止画でも − か ら必要な領域を自由に切り出すことができます。エフェクトエディターを使えば、その領域をパンしたりズー ムしたりといったアニメーションも加えられます。これにより、オリジナルの画質を損なうことなく、注目させ たい場所を引き立たせることができます。編集はノンディストラクティブなので、いつでも変更できます。 最近では、 この機能を前提にして、わざと少し大きめに撮影し、後でフレーミングを調整するといった手法 も使われています。このワークフローにおいては撮影できるカメラアングルが倍になる、 という言い方も できるかもしれません。メタデータはクリップに残っているので、再リンクのときに解像度が変わっても、 フ レーミングのデータはそのままです。フィニッシングという観点でも、表示されている品質は元画像からの 高品質イメージであることを保証できます。 すべてのクリップを同時に変更することも、別々に設定することも可能です 10 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー フレームレートの mix and match あるプロジェクトの素材がすべて同じフォーマット、同じフレームレートで撮影されることは稀です。 Media Composerのタイムラインのmix and match機能は、素材のフレームレートが現在のプロジェク トのフレームレートと異なる場合、モーションアダプターを適用することで自動的にリアルタイムに調整 し、エディターが作品作りに集中することができる機能です。もし、その結果に満足できなければ、モーショ ンアダプターの設定を変更することもできます。(図4) 図4 – モーションエフェクトエディター カラーマネージメント – CDL と LUT 先に述べたように、近年のファイルベースカメラで撮影することの利点は、単に高解像度であるということ だけではなく、そのすぐれたカラーとコントラストにもあります。カメラシステムの究極の目標は、人間の 目のカラーとコントラストに対する感覚に、できうる限り近づけることにあります。人間の目は「白が飛ぶ」 ことはありませんし、 「黒がつぶれる」こともありません。しかし、通常のカメラではこれらの現象が簡単に 起きてしまいます。そこでカメラメーカーは、色に関するより細かい情報を残すための方法を研究してき ました。この方法には、いくつかの異なった方式が存在します。そして結果的に、各カメラメーカーがそれ ぞれ異なったカラースペースを記録することになりました。ARRI LogC、Canon C-log、Sony Slog2など これらのカラース がそれです。したがって、最終視聴者にHD画面で正しい色を見せようとする場合には、 ペースをHDカラースペース(Rec.709)にマッピングしなければなりません。エディターはストーリー作り に集中していますので、編集システムがソースファイルからカラースペースを読み取り、自動的にそれを適 用して出力するのが最も理想的でしょう。カラーマネージメントは、ポストプロダクション工程の最後まで、 正しい色情報が維持されていることを管理するものです。カラーエンコーディングには、一貫したカラース 11 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー ペースが関連するすべてのクリップに適用されることを確実にするための「Look Up Table(LUT)」も含 まれます。カラーマネージメントシステムは素材の色を取り出し、編集処理のために選択されたカラーモ デルに、できるだけ正確にそれらをマッピングします。このマッピングはオン・ザ・フライで行われ、あるいは エフェクトを追加したときには、同時にレンダリングされます。 Avid Media Composerでは、カラー情報がファイル中に重畳されている場合には、それを自動的に Rec.709にマッピングします。これは時間を短縮するだけでなく、間違った情報を読み込まないためでも あります。また、カラー情報はColor Decision List(CDL)によって記録することもできます。この場合 は、Avid ALE(Avid Log Exchange)でインポートするか、手動でデータを入力することになります。複数 のLUTを適用することも可能ですし、その適用順序を変更することもできます。これらの工程中、オリジナ ルのカラーエンコーディングデータはマスタークリップのメタデータとして残り続けます。 インフラストラクチャー 共有ストレージとアセットマネージメントシステムは、ポストプロダクションワークフローの大切なコンポー ネントですが、高解像度メディアがこれらのコンポーネントのパフォーマンスに対して大きな悪影響を与え ることは、簡単に想像がつくでしょう。ポストプロダクションや放送局は、 メディアを共有することで制作の 同時進行を行っており、既にその利便性を知っています。メディアが高解像度になることで、その利便性を 犠牲にすることはできません。しかし、 どのようにそれを犠牲にせずに、高解像度メディアのワークフロー を作るのか、決めかねています。. Avid ISIS® と Avid Interplay® は世界中数千のユーザーに使われている共有ストレージとアセットマネー ジメントシステムです。オリジナルの高解像度メディアはネットワークに与える負荷が大きすぎるため、多 くのユーザーは編集用のプロキシー解像度を使っています。画質を犠牲にしたくなければ、HDサイズが 最適なプロキシーとなるでしょう。Avid DNxHDでも、Apple ProResでも、あるいはSDでも、Interplayで はバックグラウンドで、 これらのフォーマットに自動的に変換できるので、エディターの手を煩わせることが ありません。大きなファイルを扱っているときの問題は、ストレージ容量が簡単に消費されてしまうことで す。ISISのユニークな機能であるFlexdriveなら、必要に応じていつでもストレージ容量を変更できます。 システムが使用中であっても容量を変更できるので、エディターが仕事を中断する必要はありません。 12 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー リモートワークフロー 予算と時間がどんどん圧迫されている昨今、チームのメンバーがどこにいても、いつでもメディアにアクセ スできる環境は非常に重要です。Avid Interplayなら、エディターだけでなく、制作に関わるあらゆるスタッ フが、iPadやiPhoneといったデバイスを使って、あるいはSafariやChromeといったWebブラウザーを 使って、 メディアにアクセスすることができます。素材が多い作品では、ロギングするのも大変な仕事です が、 これもシンプルなブラウザーのインターフェースで、 リモートで行うことができます。エディターやアシ スタントがMedia Composerで編集しなければならないようなときは、Media Composer | Cloudオプ ションが使用できます。メディアは高解像度映像からリアルタイムに作成されるプロキシーで、Wi-Fiや4G の環境を使ってストリーミングされます。このワークフローでは、エディターは、現場で撮影したローカル の高解像度メディアと共有ストレージ内のメディアをタイムライン上で混在させることも可能です。ローカ ルで撮影した素材は、バックグラウンドで共有ストレージへ転送できます。 フィニッシングソリューション 2Kや4Kといった高解像度で作品を完成させる場合には、メタデータの維持はフィニッシングを成功させる ための大切な要素です。Avid Media Composerは、高解像度でフィニッシング可能なシステムに対して 正確なコンフォームを実現するための情報を含んだAAF(Advanced Authoring Format)を出力しま す。この業界標準のファイルには、以下のようなフィニッシングシステムに対して、 コンフォームに必要な情 報が含まれています。 • Autodesk - Smoke, Flame, Luster • Black Magic Design – Resolve • Digital Vision - Nucoda • Filmlight – Baselight • Quantel - Pablo 一般的に、映画館での再生にはDCP(Digital Cinema Package)が使われますが、UHDTVにおいては HEVC(High Efficiency Video Coding 俗に言うH.265)やGoogleのVP9コーデックのような、より効 率的なコーデックを使うかもしれません。インターネット経由でコンテンツを配信する場合には、バンド幅 の制限もきちんと考慮にいれなければなりません。 13 2K、4K、そしてUHDTVへ Avid高解像度ワークフロー 将来の方向性 UHDTVが将来的な配信フォーマットのスタンダードになる運命にあるのは、おそらく間違いないでしょ う。Blu-rayのフォーマットと、ストリーミングおよびダウンロードのためのコーデック(H.265)について は、標準化と配信パイプラインについて、活発な議論が続いています。この次世代メディアに対して、Avid は、すべてのアプリケーションを64-bitにすることでパフォーマンスを確保し、Avidまたは3rdパーティー 製品で使用できるメディアプラットフォームのモジュール化といった開発も続けています。高解像度のパ イプラインには、 プロダクション、ポストプロダクション、配信といったすべての工程を含める必要がありま す。この視点からAvidは、高解像度メディアをサポートし、ワークフロー全体でメタデータを維持するワー クフローを構築するためのプラットフォームの開発を続けています。Media Composerの将来のバージョ ファイルの大きさだけではなく、カラーやフレー ンにおいては解像度フリーになり、4Kのような解像度を、 ムまでを含めた形でサポートするようになるかもしれません。同時に、 自動処理と、 可能ならその処理のバッ クグラウンドでの実行(例えば、撮影監督が現場で決定してメタデータに記録したフレーミング情報の、自 動読み込みと適用等)といった、別の角度での効率性の追求も続けています。 Avidはお客様に最高のソリューションを提供するため、新しいフォーマットが生まれても現在の効率的な ワークフローを失わないように、パートナーとオープンな開発を続けていきます。 最後に 高解像度メディアは、 クリエイターに高品質な作品を制作することを可能にしました。それによって視聴者 が「好きな番組を高品質で見たい」と思い、さらには4Kテレビを買うきっかけになり、そこから波及して高 品質の広告が制作されるようになり、 というように、高解像度メディアは進化し続けるでしょう。新しい フォーマットと配信形態に対するニーズに沿うように、Avidは、編集、ストレージ、アセットマネージメン ト、 レビュー、承認といった、制作に関わるあらゆる工程において現在のワークフローを失わないように、 総合的なアプローチを続けています。今日の高解像度メディア制作のニーズに応え、現在のワークフロー を失わないために、Avid製品はツールやテクノロジーを補強してきました。HD配信は今後もしばらく続 くと思われますが、UHDTV番組は進化し続けるでしょう。Avidはワークフローに対するテストと保証を続 け、 クリエイターとディストリビューターが望むワークフローを実現していきます。 14 www.avid.com/JP/products/Media-Composer アビッド テクノロジー株式会社 〒107-0052 東京都港区赤坂2-11-7 ATT新館ビル4F ©2014 Avid Technology, Inc.All rights reserved. 無断複写・転載を禁じます。製品の機能、仕様、システム要件、発売日は予告なしに変更されることがあります。Avid、Avid ロゴ、DNxHD、FrameFlex、Interplay、ISIS、Media Composerは、米国および/またはその他の国におけるAvid Technology, Inc.およびその子会社の登録商標または商 標です。 「Interplay」の名称は、Interplay Entertainment Corp. の許可を得て使用しています。同社はAvid の製品に対してなんら責任を負うところのものではありません。 そのほか本書に記載されている商標はすべて、それぞれの所有者に属します。 AHRWWP0214
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