B型肝炎ワクチン接種による 抗体獲得効果の検討 西條公勝、嶋貫久美子、渡部千恵子、西條元彦 医療法人社団城南会 西條クリニック鷹番 西條クリニック下馬 背景 透析患者のHBs抗原陽性率は男性2.12%、女性1.78% (2007年末)であり、本邦の一般人口と比較すると依然高値 である。また近年若年層を中心にgenotype Aによる性交渉 に伴う感染が拡大している。 透析患者に対するB型肝炎ワクチン接種が推奨されている が、HBs抗体獲得率が低いことが指摘されている。 目的 透析患者に対するB型肝炎ワクチン(以下HBワクチン) 接種によるHBs抗体獲得率、抗体獲得に影響を与える因 子、抗体維持期間を検討すること。 対象 当院および関連1施設でHBワクチンを接種し 効果判定をした106人 全患者 194人 HBs HBs抗原もしくはHBs抗体陽性 HBs 34人 ワクチン接種拒否 36人 効果判定不能 8 8人 HBワクチン接種 106人 方法 組換え沈降B型肝炎ワクチン(ビームゲン®)10μgを3回 (0・1・6ヶ月後)皮下注射した。 HBs抗体(CLIA法)獲得の有無でresponder群とnon-responder 群に分類し、抗体獲得に影響を与えた因子を検討した。 また接種後最長3年間HBs抗体価を観察した。 HBワクチン接種 106人 responder non-responder 患者背景 患者数 n(%) 男性 n(%) 年齢 糖尿病性腎症 n(%) 透析歴 (月) BMI Hb (g/dl) Albumin (g/dl) CRP (mg/dl) HBc抗体陽性 n(%) HCV抗体陽性 n(%) responder non-responder p-value 47(44.3%) 36(76.6%) 71.6±12.3 15(31.9%) 82.6±71.5 21.5±3.2 10.7±1.8 3.64±0.40 0.33±0.57 10(21.3%) 1(2.1%) 59(55.7%) 32(54.2%) 73.5±12.4 25(42.4%) 90.7±77.6 21.1±3.8 10.8±1.0 3.50±0.33 0.50±1.05 2(3.4%) 4(6.8%) 0.017 0.416 0.201 0.583 0.501 0.665 0.047 0.323 0.004 0.262 エリスロポイエチン抵抗性 p=0.015 25 erythropoiesis resistance index 20 週当たりのエポエチン投与量(U/週) 週当たりのエポエチン投与量( 週) 透析後体重( (g/dl) ) 透析後体重(kg) 体重( ) x Hb( 15 10 換算比 12.4 エポエチン:ダルベポエチン = 200: :1 5 エポエチン:エポエチンベータペゴル(隔週 エポエチン:エポエチンベータペゴル 隔週) 隔週 = 120:1 7.5 0 responder n=47 non-responder n=59 HBs抗体価 接種1年後の推移 HBsAb (mIU/ml) n=42 HBsAb (mIU/ml) 900 180 800 160 700 140 1年後HBsAb HBsAb 600 500 400 300 120 100 80 60 200 40 100 20 0 ワクチン接種後 126.1±184.3 Y=0.1956x-3.5692 R2=0.7247 p<0.05 0 1年後 28.2±42.3 0 500 獲得したHBsAb 1000 (mIU/ml) (mIU HBワクチン再接種による免疫記憶効果 HBsAb (mIU/ml) 250 P=0.08 200 症例1 症例2 2 150 症例3 105.2 症例4 100 症例5 50 平均 15.2 0 初回接種 再接種 透析患者に対するHBワクチン 報告 年 発表者 国 接種量 (μg) 接種 回数 2010 小島寛司ら (行橋クリニック) 日本 10 3 80.2 2010 山形ゆみ子ら (市立島田市民病院) 日本 10 3 48.3 2010 興津亜紀ら (城北共立クリニック) 日本 10 3 57 2013 竹内智子ら (御上会野州病院) 日本 10 3~6 68 2012 Lin SY 台湾 40 4 0.1.2.6 Engerix-B® 70.5 40 4 0.1.2.6 Euvax B® 80.8 20 3 0.1.6 Euvax B® 92 2012 Ahmadi F et al スケジュー ル(月) ワクチン 抗体獲得 率(%) イラン 2013 Afsar B トルコ 40 4 0.1.2.6 2014 Saran KA et al サウジ アラビア 40 4 0.1.2.6 Engerix-B® 89.6 2014 Ayub MA et al ブラジル 40 4 0.1.2.6 Engerix-B® 59 78.4 まとめ ① HBワクチン10μg×3回皮下注射によるHBs抗体獲得率は44.3% でありこれまでの報告と比較して低かった。 ② responder群はnon-responder群よりも男性の割合が多く、HBc抗体 陽性の割合が多く、血清アルブミンが高値、ESA抵抗性が低かった。 ③ 抗体維持率は1年後59.5%、3年後50%と低値であった。 ④ 獲得したHBs抗体価が高いほど、1年後の抗体価は保たれていた。 ⑤ HBワクチンを再接種すると免疫記憶効果により、初回接種より HB 高いHBs抗体価を獲得出来た。 結語 透析患者に対するHBワクチン接種は、既存の接種回数・ 投与量ではHBs抗体獲得率、維持率が低いため、接種方法 を見直す必要がある。 現在10μg×4回接種(0・1・2・6ヶ月後)での検討を行ってい 10μg 4 0 1 2 6 る。 日本透析医学会 COI開示 筆頭発表者名:西條公勝 演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある 演題発表に関連し、開示すべき 企業などはありません。
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