Document 579637

赤外吸収スペクトルにおける伸縮振動
バネの固有振動
バネ定数
n=
1
k
2p
m
換算質量
mが大きくなると振動数は低下する
同位体で置換することで吸収の帰属ができる
(1) 赤外吸収での伸縮振動はバネの固有振動として理解できる。すなわち、バネ定数
が k のバネに重さmの重りが付いているときの振動数 n は
n
1
2p
k
m
で表される
水素のときの振動数を nH, 重水素の時の振動数を nD とし、結合の強さ k は変わらない
ものとすると、両者の比は
nH nD 
k
mH
k
mD

mD
mH
m1m2
振動にはケイ素と水素が関係するため、その換算質量
を求めると
m1  m2
mD = 56/30, mH = 28/29 よって、nH / nD 
したがって
nD = 1790 cm-1 /
58
= 1287 cm-1
30
58
30
(実測値は1280cm-1)
(3) 同様にケイ素を炭素に置き換えると、
nSi / nC =
12 / 13
28 / 29
, nC = 1790 cm-1 /
12 / 13
28 / 29
= 1830 cm-1
R
R
Si
H
H
分子
No
直線形?
Yes
No
Yes
Yes
i?
N の最も大きい Cn を探せ.
そこで nC2  Cn か ?
i?
No
No
sh ?
Cn ?
Yes
i?
Yes
No
n >2 のCn が2本
以上あるか ?
Yes
No
Yes
No
Yes
No
C5 ?
Yes
Dh Cv
No
Ih
sh ?
Oh Td
Yes
Yes
sh ?
No
nsd ?
No
nsv ?
No
Yes
Yes
Cs Ci C1
No
S2n ?
Yes
Dnh Dnd
Dn
Cnh Cnv S2n
No
Cn
y
x
E
C2
sv(xy)
sv’(yz)
h=4
3
1
3
1
動かない原子の数
(1)(R)
3
-1
1
1
動き方
(R)
9
-1
3
1
N×(1)(R)
A1
1
1
1
1
9
-1
3
1
1
1
-1
-1
9
-1
-3
-1
1
-1
1
-1
9
1
3
-1
1
-1
-1
1
9
1
-3
1
C2v
N
z
A2
B1
B2
よって、
= 3A1 + A2 + 3B1+ 2B2
3
z
x2, y2, z2
1
Rz
xy
3
x, Ry
zx
2
y, Rx
yz
指標表より
並進は trans = A1 + B1+ B2
回転は rot = A2 + B1+ B2 で表せる
から、
水の振動は vib = 2A1 + B1を張る
vib = 2A1 + B1
水素から重水素に置換することで影響を受け
る振動モードのうち、赤外に活性な振動は以
下の3通り
1790 cm-1
A1
1050 cm-1
B1
A1
A:主軸周りの回転に関して符号を変えない
B:主軸周りの回転に関して符号が変わる
2つのA1モードが観察された
シラン
Si-H 伸縮(対称)
H-Si-H 変角
非対称伸縮
シラン錯体
2116 cm-1 → 1790 cm-1
928, 851 cm-1 → 1050 cm-1
0.0
d [1]t
 k [1]
dt
-0.5
y = -0.0371 x
2
R = 0 .9884
-1.0
d [1]t
 k dt
[1]
-1.5
-2.0

[1]t
[1]0
-2.5
t
d [1]t
 k  dt
0
[1]
-3.0
y = -0.072x
2
R = 0 .9949
-3.5
ln
[1]t
 k t
[1]0
-4.0
0
10
20
30
T [h]
ln [1]t/[1]0 を時間でプロットすることで傾きkの直線が得られる(1次反応)
グラフの傾きより、kH = 0.0371, kD = 0.072, kH/kD = 0.52
重水素の場合の方が反応が速い・・・逆同位体効果
シグマ錯体の形成
40
50
60
逆同位体効果
DGH > DGD
の場合には逆同位体効果が観察される
H
D
L+
R
H
M
DGH
DGD
R
H
M
H
L
D
H
R
L+
M
M
L
+ R
H
同位体効果
逆同位体効果
ゆるい遷移状態
タイトな遷移状態
H
D
律速段階の遷移状態の形に応じて速度論的な
同位体効果の表れ方が変化する
アルキル錯体の構造
(CO)4
Os
(CO)4
Os
CH2N2
H
H
(CO)3 Os
(CO)3 Os
Os (CO)3
H
H2C
Os (CO)3
H
Calvert, R. B.; Shapley, J. R. J. Am. Chem. Soc. 1978, 100, 7726-7727.
H
H
H
H
H
C
H
C
水素の交換が速く、低温でもNMRで区別できない
水素と重水素のゼロ点エネルギーの差を利用して両者を識別する
より重い原子を含む結合は、古典物理学的にはより低い振動数を持ち、量子
論的にはより低いゼロ点エネルギーを持つ。ゼロ点エネルギーが低いと結合を
開裂させるのにより多くのエネルギーが必要になり、すなわち結合を切断する
ための活性化エネルギーはより高くなる。従って、観測される反応速度は小さく
なる。
遷移状態では結合がゆるくなるた
めポテンシャル面が広がる
DGH < DGD
DGH
DGD
H
D
ゼロ点エネルギー
速度論的同位体効果
C-H結合に比べてM-H-C結合は弱く、ポテンシャルの谷の形状は幅広くなる。そ
の結果、末端のC-H結合に比べてエネルギーは低下、さらに水素と重水素のエ
ネルギーの差は小さくなる。
C-H
H-Bridge
H
H
D
D
HとDの差が縮まる
温度が低くなると平衡はエネルギーの低いH-Bridgeにシフトする。
重水素はC-H結合に存在した方が系のエネルギーは下がる。
(温度によって存在比は変化する)
D
低温ほどAの
割合が増える
H
H
C
A
H
H
D
C
B
メチル基のケミカルシフト:重水素が入るほど高磁場に現れる
(同位体シフト)・・・通常は等間隔に現れる
メチル基のケミカルシフト:{d(CH) + d(CH) + d(MH)}/3
低磁場
低磁場
高磁場
水素が架橋位置を占める割合が高くなるに連れて、ケミカル
シフトは高磁場にシフトする。従って、アイソトポマー間のケミ
カルシフト差が変化する。
35 ºC:
D1 = d(CH2D) – d(CH3) = 0.34 ppm
D2 = d(CHD2) – d(CH2D) = 0.39 ppm
-76 ºC:
D1 = d(CH2D) – d(CH3) = 0.55 ppm
D2 = d(CHD2) – d(CH2D) = 0.68 ppm
高磁場側のシグナルの方がケミカルシフトの温度による変化が大きい
(1) C-HとM-H-Cのポテンシャル曲面の形を比較すると、C-H結合に比べてM-H-C結合は弱いためにポテンシャ
ルの谷の形状は幅広くなる。したがって、水素と重水素のエネルギーの差は末端の場合に比べて小さくなる。
よって、トータルのエネルギーを比較した場合には重水素が末端に位置したほうがエネルギーが小さくなり、水素
がHB位を占める割合が大きくなる。重水素はシグナルが観察されないため、ケミカルシフトとは無関係。したがっ
て、HBの方が負に大きい値を示す場合には重水素化率の上昇に伴いHBの割合が増えるためケミカルシフトは負
に大きくなる。
(2)
d -3.66 = (2  HT + HB)/3
d -4.00 = (HT + a  HT + HB)/(a + 2)
水素が架橋位置を占める割合を1、重水素が架橋位置を占める場合をaとすると、
水素が2個、重水素が1個なので全体は a+2 となる。重水素が架橋位置を占める
割合はaとなり、水素が架橋位置を占める割合は2となる。重水素が架橋位置を占
めた場合のケミカルシフトはHTであり、水素が架橋位置を占める場合には (HT +
HB)/2 となる。
従って、平均の値は
a
1
2
1
H H
H D
D H
a
C
D
Os
C
Os
H
Os
C
Os
2HT/2
H
Os
Os
(HT+HB)/2
[(a  HT) + {2  (HT + HB)/2}]/(a+2) = (HT + a  HT + HB)/(a + 2) となる。
d -4.39 = (2a  HT + HB)/(2a + 1)
水素が架橋位置を占める割合を1、重水素が架橋位置を占める場合をaとすると、
水素が1個、重水素が2個なので全体は 2a+1 となる。重水素が架橋位置を占める
割合は2aとなり、水素が架橋位置を占める割合は1となる。重水素が架橋位置を
占めた場合のケミカルシフトはHTあり、水素が架橋位置を占める場合には HB と
なる。
従って、平均の値は [(2a  HT) + (1  HB)]/(2a+1) = (2a  HT + HB)/( 2a+1) となる。
(3) (2)より変数が3個、式が3個なので解が得られることがわかる。
この連立方程式を解くと、a = 0.8077, HT = 1.304, HB = –13.588 となる。
(4) a = 0.8077 であるから、ボルツマン分布の式にaの値を導入すると
Na/Nb = 0.8077 = exp(–DE/kT)
DE = 546.7 J/mol
2a
1
1
a
H D
H D
D D
a
C
Os
D
C
Os
HT
Os
D
C
Os
Os
H
Os
HB