NEDO 省エネルギー技術フォーラム 2014 戦略的省エネルギー技術革新プログラム 実証開発フェーズ 高効率酸素製造装置(HT‐PSA*)の開発 * High Temperature – Pressure Swing Adsorption 東京ガス㈱ 共同研究先:吸着技術工業㈱、東京ガスケミカル㈱ 研究開発期間:平成26年9月~平成29年2月 1.1.背景、目的 2 空気から分離され高濃度化された酸素は、製鉄プロセス、化学プラント、ごみ焼却炉、ガラス溶解炉、 石炭ガス化複合発電(IGCC)、非鉄金属精錬等、幅広い分野で使用され、酸素の国内生産量は113 億 m3/年(自家消費含まず)である。 また、コスト的な問題で使用量が制約されているユーザも多く、安価な酸素製造法の確立は産業界に とって極めて重要な課題となっている。 1.2.目標(従来技術と本技術の比較) * Pressure Swing Adsorption 深冷分離法 従来型PSA* 本技術(HT-PSA) 基本動作 気体の液化温度差を利用 圧力スイングによる吸脱着 圧力スイングによる吸脱着 酸素発生量 (単機) 5,000 ~ 20,000 m3N/h 100m3N/h ~ 8,000 m3N/h 100 ~ 10,000 m3N/h 吸着材 - ゼオライト:N2吸着 ペロブスカイト型酸化物:O2吸着 作動温度 -183℃(O2液化温度) 常温 600℃前後 前処理 不要 必要 上限酸素濃度 99.99 %以上 93 % 99 % 電力原単位 0.32 kWh/m3N 0.40 kWh/m3N 0.20 kWh/m3N (加熱も含む) 備考 技術的に飽和状態、電力原単位の低減は難しい 従来技術より40 %以上省エネ 1.3 . 技術開発成果の活用イメージ 3 酸素 化学プラント 酸素 HT-PSAの製品イメージ 酸素 酸素 酸素 製鉄所 窒素 ごみ焼却場 IGCC 工業炉 2.1.本技術の概要 従来型吸着材とペロブスカイト型酸化物の 吸着性能の違い(イメージ図) 4 HT-PSAの基本構成 (a) 従来型の酸素吸着材 (物理吸着) 窒素分子 大きさの近い酸素 分子・窒素分子を 物理的に100%選択 分離するのは困難。 吸着材 酸素分子 吸着材 (b) ペロブスカイト型酸化物 (化学吸着) 酸素分子 吸着材 化学的(酸化反応) に取り込まれるため、 選択性100% 窒素分子 2.2.本技術の優位性 5 本技術 0.20 kWh/m3N以下 選択性の高さから、従来技術より優れた電力原単位で分離が可能 2.3.研究開発体制 6 実施者 東京ガス㈱ 技術開発責任者 藤峰智也 ・プロジェクトのとりまとめ ・プロトタイプ機の開発 ・実証機の開発 ・吸着材の低コスト化、量産化、耐久試験 ・量産化 ・耐久試験 共同研究先 吸着技術工業㈱ ・実証機、吸着材の開発 ・試験装置の開発 共同研究先 東京ガスケミカル㈱ ・実証機エンジニアリング ・商品化に向けた検証 外注 吸着材量産化、実証試験装置製作 吸着材製造メーカ 装置製造メーカ 3.1.開発経緯 7 事前研究→実用化開発フェーズを経て、商業化する前段階まで開発が進んでいる。 現時点 残る課題を解決するため、実証開発フェーズを選定した。 全体フロー NEDO:事前研 究フェーズ 自主研究 NEDO:実用化開発フェーズ NEDO:実証開発フェーズ 装置稼働年数 2009年~ 2010年~ 2011年~2013年 2014年~2016年 試験機名称 小型カラム試験機 小型試験装置 ベンチスケール機 パイロットスケール機 プロトタイプ機 実証機 吸着材量 0.024 kg 2.0 kg 10 kg 226 kg 5t 20 t 酸素発生量 1 LN/h 70 LN/h 0.35 m3N/h 5.0 m3N/h 100 m3N/h 500 m3N/h 熱回収 ー ー 両側蓄熱 熱回収 両側蓄熱 高効率熱回収 両側蓄熱 高効率熱回収 加熱源 加熱方式 電気 外熱式 電気 外熱式 電気 外熱式 電気 内熱式 電気/燃焼/排熱 成果 基本性能の確認 耐久試験:3ヶ月 酸素分離の確認 排熱回収なし 排熱回収方式 耐久試験:約9ヶ月 高効率回収方式 5.0 m3N/hまで scale up 概観 3.2.ベンチスケール機概要 ベンチスケール機の仕様 8 蓄熱体を両側に設置しガスを 分離する新方式を考案し、特 許出願済。 吸着材量 : 5kg/塔 吸着塔 :φ 83mm, L=700mm 酸素発生量 : 350L/h ベンチスケール機本体 吸着剤(LSCF) 600℃ 計測項目 吸着塔 項目 蓄熱体 アルミナボール 酸素 窒素 時間 吸着時間、脱着時間、均圧時 間、昇圧時間 圧力 吸着塔内(吸着、脱着、均圧) 温度 吸着塔内10点、吸着塔出口2 点 流量 供給空気流量、発生酸素流量、 発生窒素流量 3.3.吸着材耐久試験 9 1cycle = 136sec ベンチスケール機による6ヶ月の耐久試験期間において、酸素濃度・発生量とも にほぼ変化は見られなかった。また、耐久試験を継続したところ、40日後、80日 後の性能にも変化は見られなかった。これより、マクロ的な吸着性能は維持され ることがわかった。 試験日数:260日、全吸脱着回数:16万5千回 3.4.吸着材耐久試験 TG試験結果 10 9ヶ月耐久試験後の吸着材 Air-N2 耐久試験終了後のTG試験でも、性能劣化は見られなかった。 これより、吸着材ペレットのミクロ的な性能劣化もなく、9ヶ月程度の運転では連 続的に稼働できることが確認できた。 3.5.新規吸着材開発 コスト比較 11 LSCF1991よりも低コストな吸着材を検討した結果、2つの有望な吸着材を選定し た。それぞれ組成を示すと、SrFeO3-δ、SrCoFeO3-δである。さらにLSCFの最適組 成の検討も別途行い、La0.05Sr0.95Co0.9Fe0.1O3-δという組成を得た。 既存のLSCF1991に比べ最低でも40 %をこえるコスト削減となった。 酸化物のコスト比較 3.6.量産化、最適化 12 蒸発乾固法の他、共沈法、固相法が製造方法として選択できることがわかった。 ・蒸発乾固法 ・共沈法 ・固相法 蒸発乾固法で酸素吸着材 LSCF1991を総量250 kg製造し、50 kg/batchを確立した。 3.7.パイロットスケール機概要 13 吸着材充填量 LSCF1991 : 226 kg 蓄熱体充填量 吸着塔内: 300 kg 吸着塔外:30 kg 吸着塔口径・長さ Φ = 355 mm 、 L = 1,750mm 加熱方式 内熱式ヒーター 3.8 .パイロットスケール機 試験結果と電力原単位 14 試験条件 項目 単位 試験1 試験2 原料空気供給量 m3N/h 32.2 28.7 吸脱着時間 sec 65 30 均圧時間 sec 5 5 昇圧時間 sec 3 3 サイクルタイム sec 146 76 設定温度 ℃ 850 850 吸着圧力 kPa-abs 脱着圧力 kPa-abs 3.93 6.49 酸素濃度 vol% 80.29 61.75 酸素発生量 m3N/h 4.251 7.091 合計原単位 kWh/m3N 1.461 1.282 電力原単位 119.92 117.21 試験1:通常運転、試験2:ラピッド運転 パイロットスケール機にて目標にする電力原単位 を達成した。 3.9.1,000 m3N/h時の想定電力原単位 15 パイロットスケール機の運転から想定される酸素濃度別の電力原単位 を以下に示す。 酸素発生量1,000 m3N/hとした時、電力原単位0.2 kWh/m3N以下と推算できた。 3.10.研究開発内容 16 (1)構成機器としての従来型PSA式酸素製造装置との相違点 従来型PSAとの違い① 吸着材は選択性の高い ペロブスカイト型酸化物 ペロブスカイト型酸化物の特徴 600℃以上の高温場において、 化学的 かつ 可逆的に酸素を吸脱着 (温度一定で、分圧を変化させる) 断熱材 吸脱着 ヒーター 熱交換機 蓄熱体 従来型PSAとの違い② 高温を保持するための 加熱および熱回収装置 :Aサイト :Bサイト :O (酸素) 17 (2)本技術の課題と目標値 ・正味酸素発生量 : 装置 5 m3N/h ・電力原単位 : スケールアップにより 電力原単位の実証 吸着材 50 kg ・生産能力 : 250 kg ・耐久試験 : 約9ヶ月劣化なし (LSCF1991) ・電力原単位 : ・加熱方式 : ・加熱方式 : ・吸着材使用量 (1 m3N/h あたり) : 500 m3N/h以上 0.25 kWh/m3N-O2以下 1.5 kWh/m3N-O2 電気加熱 ・正味酸素発生量 : 大容量化に伴い燃焼 加熱・排熱利用の検討 吸着材の組成、ミクロ、 マクロ形状の最適化 最適化された吸着材の 商用レベルの量産化 電気加熱・燃焼加熱・ 排熱利用 ・吸着材使用量 (1 m3N/h あたり): 25 kg ・生産能力 : 20 t ・耐久試験: 年単位の長期耐久試験 2年間で性能劣化3%以内 (3)発生量における推算電力原単位 18 従来法の原単位以下となる装置の開発を行う (4)吸着材の最適化 組成 19 マクロ形状 ミクロ形状 昨年度までの プロジェクト La0.1Sr0.9Co0.9Fe0.1O3-δ ペレット 数µm SrFeO3-δ LSCF1991より安価、 2成分で取扱いやすい 中空ペレット 最適な細孔形状 ・細孔径 ・比表面積 (LSCF1991) SrCoFeO3-δ LSCF1991より、大きな吸着容 量があるが耐久性が未確認 etc 球状 La0.05Sr0.95Co0.9Fe0.1O3-δ LSCF1991と同等の性能で、や や安価 etc 組成、マクロ形状、ミクロ形状を最適化し、 吸着材使用量の大幅な低減を図る ハニカム 量産化技術確立へ 250 kg → 5 t、20 t etc (5)開発スケジュール 20 3.11.省エネルギー効果 21 ①酸素製造装置:既存装置のリプレース効果 ②酸素富化燃焼:酸素燃焼による燃料削減の効果 2020年 2030年 国内 国内 酸素製造装置 0.9万 8.3万 酸素富化燃焼 1.7万 4.4万 省エネルギー効果量(kL/ 年) 2.6万 12.7万 応用分野 備考:原油換算による 3.12.今後の展望 22 HT-PSAの実用化・スケールアップで、 幅広い分野への省エネに貢献 海外 10,000m3/h 大型機 →石炭ガス化(IGCC) →製鉄(高炉用) →化学プラント 大型 2,000m3/h 中型機 →ガラス溶解炉 →電炉 中型 国内 500m3/h 実証試験機 →中小型工業炉 小型 5m3/h パイロットスケール機 2016年 2018年 2020年 22 実用化時期
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