ドパミンとセロトニン 受容体

ドパミンとセロトニン
受容体
統合失調症
統合失調症の原因・発症の要因
⼤脳辺縁系
基底核
⼤脳辺縁系と基底核
代表的統合失調症治療薬
 定型抗精神病薬
 フェノチアジン系:クロルプロマジン
 ブチロフェノン系:ハロペリドール、スピペロン
 ベンザミド系:スルピリド
 ⾮定型抗精神病薬
 SDA:リスペリドン,パリペリドン、ペロスピロン
 MARTA:クエチアピン,オランザピン、クロザピン
 DPA:アリピプラゾール
ドパミン(DA)産⽣と分解
パーキンソン病の治療薬の理解にも必要!!
L-dopa
dopa decarboxylase(DDC)
Dopamine
Aromatic L‐amino acid decarboxylase(AAAD)=DDC
LBS, TBU 5
DA受容体
ドパミンD1様受容体ファミリー
(興奮性)
Gs→アデニル酸シクラーゼ活性
化→cAMP濃度上昇→プロテイ
ンキナーゼA (PKA) 活性化
(→DARPP32リン酸化)
• D1受容体
• D5受容体
ドパミンD2様受容体ファミリー
(抑制性)
Gi→ホスホジエステラーゼ活性化
→cAMPが分解
• D2受容体
• D3受容体
• D4受容体
セロトニン(5-HT) 産⽣と代謝
5-HT受容体
5-HT1受容体
Gi→ホスホジエステラーゼ活性化
→cAMPが分解
• 5-HT1A 抗不安、抗うつ セディール
• 5-HT1B
• 5-HT1D
⽚頭痛治療薬
5-HT2受容体
G q →ホスホリパーゼC (PLC)活性
化 → イ ノ シ ト ー ル 1,4,5- 三 リ ン 酸
(IP3) や ジ ア シ ル グ リ セ ロ ー ル
(DAG)産⽣量増⼤→⼩胞体から
の⼀過性Ca2+遊離+細胞外からの
持続性Ca2+流⼊→プロテインキナー
ゼC(PKC)活性化
• 5-HT2A 性機能障害
遮断薬(NaSSA):ミルタザピン
• 5-HT2B
• 5-HT2C
不安・不眠・⾷欲減退
遮断薬(NaSSA) :ミルタザピン
5-HT受容体
5-HT3受容体
イオンチャンネル共役型受容体
Na+チャネル開⼝→ Na+ の
細胞内流⼊→脱分極
• 5-HT3受容体遮断薬
グラニセトロン(商品名:カイトリル)
オンダンセトロン(商品名:ゾフラン)
延髄のCTZに5-HT3発現→CTZ機能
亢進→嘔吐
5-HT4受容体
Gs→アデニル酸シクラーゼ活性化
→cAMP濃度上昇→プロテイン
キナーゼA (PKA) 活性化
• 5-HT4受容体作動薬
モサプリド(商品名:ガスモチン)消化管
機能調整薬
副交感神経に発現→AChの遊離を促進
→消化管運動を亢進
薬剤性パーキンソニズムとパーキンソン病
正常
神経活動状態
正常 過剰
⼤脳⽪質
Ach
ACh
ACh
線条体
DA
⿊質
D2受容体
(抑制性)
運動
視床
誘発薬:
DAアンタゴニスト
AChアゴニスト
パーキンソン病
ドパミン
アゴニスト
薬剤性パーキンソニズム
⼤脳⽪質
ACh
Ach
⼤脳⽪質
ACh
Ach
線条体
線条体
抗コリン剤
GABA
GABA
DA
DA
⿊質
D2受容体
ACh受容体
GABA
GABA
治療薬:
DAアゴニスト
抗コリン薬
DA (ドパミン)
ACh (アセチルコリン、興奮性)
GABA (抑制性)
視床
⿊質
D2遮断薬
視床
LBS, TBU 86
⾮定型抗精神病薬の5-HT2受容体
遮断作⽤とEPS
DA
D2 受容体
DA
GABA 5-HT2A受容体の遮断
5-HT2A受容体
5-HTのドパミン系抑制の解除
5-HT
⿊質⼀線条体系
ドパミンの放出
(過剰なD2受容体の遮断を防⽌)
EPSを起こしにくい
薬剤性パーキンソニズムを誘発する
代表的な医薬品
ドパミン遮断薬
 特に定型抗精神病薬(ドパミンD2受容体遮断薬)
D2受容体の約80%を遮断
パーキンソニズム発現
D2受容体の約90%を遮断
抗精神病薬の効果を発揮
LBS, TBU 87
D2レセプター占有率
100
錐体外路症状
80
70
抗精神病薬作用
薬剤用量
アセチルコリン(M1)
セロトニン(5HT)
ノルアドレナリン(NA、α1)
ヒスタミン(H1)
ドパミン(DA)
D2受容体占有率の経時的変化
D2 受容体占有率
70%
タイトバインディングな薬剤
ルーズバインディングな薬剤
時間
各種受容体との相互作⽤及び臨床効果
受容体相互作⽤
D2 拮抗作⽤
5-HT2A拮抗作⽤
期待される臨床効果
治療効果
統合失調症の改善
(主として陽性症状)
統合失調症の改善
(主として陰性症状)
錐体外路系副作⽤の軽減
副作⽤
錐体外路系運動障害
α1 拮抗作⽤
鎮静作⽤
鎮静作⽤、起⽴性低⾎圧、⽬眩、反射
性頻脈、降圧薬の作⽤増強
H1 拮抗作⽤
鎮静作⽤
鎮静作⽤、眠気、体重増加、中枢性抑
制薬の作⽤増強
mACh拮抗作⽤
錐体外路系副作⽤の軽減
5-HT1A 拮抗作⽤
抗不安・抗うつ作⽤
錐体外路系副作⽤の軽減
分裂病認知障害の改善
視覚異常、緑内障の悪化⼝渇、頻脈、
便秘、乏尿、学習記憶障害
野⽥ 幸裕ら、⽇本神経精神薬理学雑誌、17:346、1997を改変
⼤野 ⾏弘:臨床精神薬理 5:147-153、2002
アリピプラゾールのDA神経安定化機構
(仮説)
DA神経興奮状態
DA神経抑制状態
消化管機能調整薬、嘔吐
• 消化管機能調整薬
• 嘔吐抑制薬
D2受容体遮断薬
ドンペリドン(商品名:ナウゼリン)
有効BBBを通過しにくい→ESPが少
ない
副交感神経にD2発現→ AChの遊
離を抑制→消化管運動を抑制
5-HT4受容体作動薬
モサプリド(商品名:ガスモチン)
副交感神経に5-HT4発現→AChの
遊離を促進→消化管運動を亢進
抗がん剤(シスプラチン等)による嘔吐
末梢に作⽤
D2受容体遮断薬
ドンペリドン(商品名:ナウゼリン)
プロクロルペラジン(商品名:ノバミン)
延髄のCTZにD2発現→CTZ機能亢進
→嘔吐
5-HT3受容体遮断薬
グラニセトロン(商品名:カイトリル)
オンダンセトロン(商品名:ゾフラン)
延髄のCTZに5-HT3発現→CTZ機能
亢進→嘔吐
中枢に作⽤
宿題のやり⽅
統合失調症
Prof. John Nash at Princeton university
the Nobel prize in 1994
精神疾患の分類
⼼因性精神障害・・・ストレスなどにより発症:神経
症(不安障害)⼼⾝症
外因性精神障害・・・中毒性、器質性、症状性、
認知症や脳感染症や脳外傷性等
内因性精神障害・・・統合失調症、気分障害
その他・・・発達障害
統合失調症
およそ100⼈に1⼈弱がかかる頻度の⾼い病気です。
発症の頻度に⼤きな男⼥差はないとされてきましたが、診断基準
に基づいて狭く診断した最近の報告では、男:⼥=1.4:1で男
性に多いとされています。男性よりも⼥性の発症年齢は遅めです。
発症は、思春期から⻘年期という10歳代後半から30歳代が多い
病気です。10歳代後半から20歳代にピーク(好発年齢)があり
ます。
「普通の話も通じなくなる」「不治の病」という誤ったイメージがありま
すが、こころの働きの多くの部分は保たれ、多くの患者さんが寛解し
ていきます。
脳の構造や働きの微妙な異常が原因と考えられるようになってきて
います。
Conduct Disorders(⾏為障害)
Schizophreniform Disorder(統合失調症)
Affective Disorders(感情障害)
Dementia(認知症)
10
20
30
40
50
60
70
80
Weinberger (1987)
おもな傷病の総患者数(万⼈)
厚⽣労働省 平成23年
1)⾼⾎圧症 906.7
2)⻭⾁炎/⻭槽膿漏/う蝕 460.2
神経・精神疾患系
3)糖尿病 270
アルツハイマー病 36.6
4)⾼脂⾎症 188.6
⾎管性認知症など 14.6
5)⼼疾患 161.2
パーキンソン病 14.1
6)悪性新⽣物 152.6
運動ニューロン疾患 0.9
7)⾷道、胃、⼗⼆指腸疾患
124.6
統合失調症 71.3
8)脳⾎管疾患 123.5
気分障害(うつ病含む)
95.8
9)喘息 104.5
LBS, TBU 24
国⺠医療費の概況
厚⽣労働省 平成23年
総医療費 38.5兆円
1)循環器系の疾患 5.79 4)精神及び⾏動の疾患 1.91
⾎管性認知症等 0.18
⾼⾎圧疾患 1.91
統合失調症 1.03
脳⾎管疾患 1.79
気分障害(躁鬱病含む) 0.3
虚⾎性⼼疾患 0.75
5)神経系の疾患 1.19
2)悪性新⽣物 3.18
アルツハイマー病 0.21
3)呼吸器系の疾患 2.17
6)糖尿病 1.22
肺炎 0.35
COPD 0.14
喘息 0.36
LBS, TBU 25
統合失調症の原因・発症の要因
⼤脳辺縁系
基底核
脳の構造の異常
• CTやMRI検査
前頭葉や側頭葉の体積が健康な⼈よりも⼩さい
しかし、まだ明確な診断基準はない
• PET検査
DA受容体の発現量などを検査
⽣涯経過と症状経過
症状
 幻覚・妄想:統合失調症の代表的な症状で、⼀定の
特徴があり「陽性症状」と呼ぶ。
 幻覚とは、実際にはないものが感覚として感じられこと
最も多いのは、聴覚についての幻覚、つまり誰もいないのに⼈
の声が聞こえてくる、ほかの⾳に混じって声が聞こえてくるとい
う幻聴(幻声)
 妄想とは、明らかに誤った内容であるのに信じてしまい、
周りが訂正しようとしても受け⼊れられない考えのこと
⽣活の障害
 患者本⼈も説明しにくい症状ですので、周囲から「社会性が
ない」「常識がない」「気配りに⽋ける」「怠けている」などと誤解
されるもととなることがあります。
 会話や⾏動の障害:会話や⾏動のまとまりが障害される
症状
 感情の障害:⾃分の感情についてと他⼈の感情の理解に
ついて障害が⽣じます。
 意欲の障害:病識が障害される
 病識→⾃分⾃⾝が病気であること、あるいは幻覚や妄
想のような症状が病気による症状であることに⾃分で気
づくことができること、認識できることをいいます
統合失調症の薬物療法
抗精神病薬が有効な精神症状
抗精神病薬の作⽤は、⼤きく3つにまとめられます。
1. 幻覚・妄想・⾃我障害などの陽性症状を改善する抗精
神病作⽤
2. 不安・不眠・興奮・衝動性を軽減する鎮静催眠作⽤
3. 感情や意欲の障害などの陰性症状の改善をめざす精
神賦活作⽤
の3種類です。
統合失調症薬物治療
• ⽬標:必要最⼩限の薬剤を規則正しく飲み続ける。
薬剤師は・・・
“薬を飲ませる”
↓
”薬が飲める”ように服薬指導を⾏う
代表的統合失調症治療薬
 定型抗精神病薬
 フェノチアジン系:クロルプロマジン
 ブチロフェノン系:ハロペリドール、スピペロン
 ベンザミド系:スルピリド
 ⾮定型抗精神病薬
 SDA:リスペリドン,パリペリドン、ペロスピロン
 MARTA:クエチアピン,オランザピン、クロザピン
 DPA:アリピプラゾール
統合失調症治療薬の使⽤法の基本
 理想:副作⽤のEPSやプロラクチン上昇がなく効果を⽰す・・・線条体の
D2受容体占有率(遮断)が65〜78%(定型は80〜90%遮断)
• リスペリドンは2〜4mg(基本的には少量がベター)原則的には他の抗精神
病薬との併⽤は望ましくない。
• 1剤少量から始め幻覚・妄想、不安緊張感が軽減するのを⽬安、その後そ
の量で維持。(注意:頻繁な薬物変更、急激な投与量の増減は効果が得
られない、更にEPS出現の原因となる)
 初発、再発時:急性期・・・急性EPSや不快感が出にくく、⽤量調整しやす
いので⾮定型を第⼀選択薬として⽤いることが多い。
• 興奮の強い患者・・・リスペリドン0.1%液剤(無効なら再投与可)オランザピ
ンOD錠(5〜10mg)。従来は注射が主流であったが、最近は経⼝薬の傾
向。経⼝投与出来ないほど不穏な場合は注射
• 維持療法:安定期には症状の再燃を防⽌する。寛解してもすぐに⽌めず最
低⽤量を維持する。
各種受容体との相互作⽤及び臨床効果
受容体相互作⽤
D2 拮抗作⽤
5-HT2A拮抗作⽤
期待される臨床効果
治療効果
統合失調症の改善
(主として陽性症状)
統合失調症の改善
(主として陰性症状)
錐体外路系副作⽤の軽減
副作⽤
錐体外路系運動障害
α1 拮抗作⽤
鎮静作⽤
鎮静作⽤、起⽴性低⾎圧、⽬眩、反射
性頻脈、降圧薬の作⽤増強
H1 拮抗作⽤
鎮静作⽤
鎮静作⽤、眠気、体重増加、中枢性抑
制薬の作⽤増強
mACh拮抗作⽤
錐体外路系副作⽤の軽減
5-HT1A 拮抗作⽤
抗不安・抗うつ作⽤
錐体外路系副作⽤の軽減
分裂病認知障害の改善
視覚異常、緑内障の悪化⼝渇、頻脈、
便秘、乏尿、学習記憶障害
野⽥ 幸裕ら、⽇本神経精神薬理学雑誌、17:346、1997を改変
⼤野 ⾏弘:臨床精神薬理 5:147-153、2002
副作⽤→アドヒランスが低下するので注意
 いろいろな薬物に共通する副作⽤:肝臓や腎臓への薬物の影
響、⾼⾎糖になったり、糖尿病が引き起こされたりすることがある
 抗精神病薬に特徴的な副作⽤:
治療初期:そわそわしてじっと座っていられない(アカシジア)、体がこ
わばって動きが悪い、震える、よだれが出る(パーキンソン症状)
⻑期投与:⼝などが勝⼿に動いてしまう(遅発性ジスキネジア)、筋
⾁の⼀部がひきつる(ジストニア)
 薬物の随伴的な副作⽤:眠気、だるさ、⽴ちくらみ、⼝渇、、プ
ロラクチン上昇に伴う無⽉経、乳汁分泌、射精不能、慢性便秘
 ごくまれだが重篤な副作⽤:悪性症候群(⾼熱、筋強剛、⾃
律神経症状など)→治療薬
⾮定型の副作⽤
• ⾼⽤量ではEPS出現する。
• 気分障害ではEPS出現しやすいため注意が必要。
• オランザピン、クエチアピンは糖尿病患者には禁忌(糖尿病で
なくても定期的な⾎糖値測定必要)
• 通 常 EPS を 出 現 さ せ な い た め に CP 換 算 600mg, 最 ⼤
800mg/⽇
• ⾼齢者・・・有害作⽤に感受性が⾼いため、より低⽤量を検討
• 妊婦・・・定型より⾮定型が望ましい、乳汁中に分泌されるため
授乳注意
⾮定型抗精神病薬の副作⽤プロファイル
の⽐較
EPS(急性)
リスペリドン>オランザピン=アリピプラゾール>クエチアピン>クロザピン
体重増加
クロザピン>オランザピン>リスペリドン=クエチアピン>アリピプラゾール
鎮静
クロザピン>クエチアピン>オランザピン>リスペリドン>アリピプラゾール
プロラクチン上昇
リスペリドンのみ可能性⼤
Current Psychosis & Therapeutics Report ,Vol1,No1,2003より抜粋
薬剤性パーキンソニズムとパーキンソン病
正常
神経活動状態
正常 過剰
⼤脳⽪質
Ach
ACh
ACh
線条体
D2受容体
ACh受容体
GABA
GABA
DA
⿊質
D2受容体
(抑制性)
運動
視床
誘発薬:
DAアンタゴニスト
治療薬:
DAアゴニスト
抗コリン薬
AChアゴニスト
パーキンソン病
ドパミン
アゴニスト
薬剤性パーキンソニズム
⼤脳⽪質
ACh
Ach
⼤脳⽪質
ACh
Ach
線条体
線条体
抗コリン剤
GABA
GABA
DA
DA
⿊質
DA (ドパミン)
ACh (アセチルコリン、興奮性)
GABA (抑制性)
視床
⿊質
D2遮断薬
視床
LBS, TBU 86
薬剤性パーキンソニズムを誘発する
代表的な医薬品
ドパミン遮断薬
 特に定型抗精神病薬(ドパミンD2受容体遮断薬)
D2受容体の約80%を遮断
パーキンソニズム発現
D2受容体の約90%を遮断
抗精神病薬の効果を発揮
LBS, TBU 87
D2レセプター占有率
100
錐体外路症状
80
70
抗精神病薬作用
薬剤用量
⾮定型抗精神病薬の5-HT2受容体
遮断作⽤とEPS
DA
D2 受容体
5-HT2A受容体の遮断
5-HT2A受容体
5-HTのドパミン系抑制の解除
5-HT
⿊質⼀線条体系
ドパミンの放出
(過剰なD2受容体の遮断を防⽌)
EPSを起こしにくい
Acetylcholine(M1)
Serotonin(5HT)
Noradrenaline(NA、α1)
Histamine(H1)
Dopamine(DA)
各種抗精神病薬の受容体占有率
ハロペリドール
オランザピン
クロザピン*
クエチアピン
ドパミンD1
リスペリドン
ドパミンD2
セロトニン5-HT2A
セロトニン5-HT1A
アドレナリンα1
アドレナリンα2
ヒスタミンH1
ムスカリン
Goldstein,1999
定型および⾮定型抗精神病薬の受容体
占有率
D2
低
中間
⾼
ハロペリドール
低
5-HT2A
⾼
クロザピン
クエチアピン
オランザピン
リスペリドン
ゾテピン
S.Kasper et al:Eur Arch Psychiatry Clin Neurosci 249(Suppl 4):IV/83-IV/89,1999
クエチアピンのD2受容体占有率の変化
[11C]raclopride
450mg
クエチアピン
[11C]raclopride
24
hours
2 hours
64 % D2
Occupancy
0 % D2 Occupancy
D2受容体占有率の経時的変化
D2 受容体占有率
70%
タイトバインディングな薬剤
ルーズバインディングな薬剤
時間
各種受容体との相互作⽤及び臨床効果
受容体相互作⽤
D2 拮抗作⽤
5-HT2A拮抗作⽤
期待される臨床効果
治療効果
統合失調症の改善
(主として陽性症状)
統合失調症の改善
(主として陰性症状)
錐体外路系副作⽤の軽減
副作⽤
錐体外路系運動障害
α1 拮抗作⽤
鎮静作⽤
鎮静作⽤、起⽴性低⾎圧、⽬眩、反射
性頻脈、降圧薬の作⽤増強
H1 拮抗作⽤
鎮静作⽤
鎮静作⽤、眠気、体重増加、中枢性抑
制薬の作⽤増強
mACh拮抗作⽤
錐体外路系副作⽤の軽減
5-HT1A 拮抗作⽤
抗不安・抗うつ作⽤
錐体外路系副作⽤の軽減
分裂病認知障害の改善
視覚異常、緑内障の悪化⼝渇、頻脈、
便秘、乏尿、学習記憶障害
野⽥ 幸裕ら、⽇本神経精神薬理学雑誌、17:346、1997を改変
⼤野 ⾏弘:臨床精神薬理 5:147-153、2002
アリピプラゾールのDA神経安定化機構
(仮説)
DA神経興奮状態
DA神経抑制状態
服薬指導上,ケアのポイント
 眠気、注意⼒、集中⼒、反射運動能⼒低下が起きるため⾃動⾞運転など危険を伴う機械の
操作はしないように注意する。
 効果より副作⽤(特にEPS)が先に出現することがあるので、あらかじめ対処法を具体的に説明し
安⼼して服⽤出来るように配慮する。
 EPS出現で転倒する危険性がある。
 投与⼀週間以上あとに固有の効果を⽰す
 効果が必ず出ることを保証し、治療への参加意欲を⾼める。
 急激な服薬中⽌は悪性症候群が出現する可能性があるので、説明し勝⼿に中⽌しないように
説明する。
 アルコールの摂取は作⽤を増強するため避けるように指導する。
 過剰服⽤による⾃殺防⽌のため処⽅⽇数、通院間隔、服薬⽅法をチェックする。
 スルピリドは投与量によって適応が以下のように変わってくる。
 消化性潰瘍 (150mg/⽇)・うつ病(300mg/⽇)・統合失調症(600mg/⽇)
 患者がどの様な副作⽤を好まないかを主治医に伝える。
 乳汁中に移⾏するため、授乳婦に投与する場合は授乳を中⽌する。
代表的統合失調症治療薬
 定型抗精神病薬
 フェノチアジン系:クロルプロマジン
 ブチロフェノン系:ハロペリドール、スピペロン
 ベンザミド系:スルピリド
 ⾮定型抗精神病薬
 SDA:リスペリドン,パリペリドン、ペロスピロン
 MARTA:クエチアピン,オランザピン、クロザピン
 DPA:アリピプラゾール
症候性パーキンソン症候群
薬剤性パーキンソニズム
LBS, TBU 55
なぜ薬剤性パーキンソニズムは重篤副作⽤
に分類されているか?
 ⾮常に出現頻度の⾼い病態である
 神経疾患以外の治療過程でも出現する
 ⻑期間にわたり症状が持続してしまう
LBS, TBU 56
症状の主体は・・・
パーキンソン病の症状と同じである。
つまり、副作⽤発⾒の重要ポイントは・・・
パーキンソン病の初期症状を⾒逃すな!
LBS, TBU 57
薬剤性パーキンソニズムの
代表的な症状は・・・






振戦
無動
固縮
突進現象
姿勢反射障害
仮⾯様顔貌
LBS, TBU 58
代表的な初期症状
家族や本⼈が気づく








動作が遅くなった
⼿が震える⽅向転換がしにくい
⾛り出すと⽌まれない(突進現象)
声が⼩さくなった
表情がなくなった
歩き⽅がふらふらする
歩幅が狭くなった(⼩刻み歩⾏)
⼀歩⽬が出ない
LBS, TBU 59
早期発⾒
症状
合計点が6点を超えたら、薬剤性パーキンソニズムが疑われます
LBS, TBU 60
薬剤性パーキンソニズム
 多くの薬剤の副作⽤として起こる、特にD2受容体遮断作⽤を有す
る薬剤(抗精神病薬)は可能性が⾼い
 服⽤後数⽇から数週間で発症することが多い
 左右対称性に症状が発現する傾向がある
(パーキンソン病: ⼀側性に発現)
 ⼥性で起こりやすい (パーキンソン病: 性差なし)
 ⾼齢者で起こりやすい (パーキンソン病: 好発50歳代)
 不随意運動 (ジスキネジア、アカシジア等)を伴う
 MRIやCTまた⾎液検査などによる特異的所⾒はない
LBS, TBU 61
薬剤性パーキンソニズムのリスクファクター
 ⼥性で起こりやすい
 ⾼齢者で起こりやすい
 同じ薬剤なら服⽤量が多いほど起きやすい
⾼齢者の⼥性が抗精神病薬を服薬している場合
パーキンソン病様症状をよく観察する
副作⽤を早めに把握する
LBS, TBU 62
薬剤性パーキンソニズムとパーキンソン病
正常
神経活動状態
正常 過剰
⼤脳⽪質
Ach
ACh
ACh
線条体
D2受容体
ACh受容体
GABA
GABA
DA
⿊質
D2受容体
(抑制性)
運動
視床
誘発薬:
DAアンタゴニスト
治療薬:
DAアゴニスト
抗コリン薬
AChアゴニスト
パーキンソン病
ドパミン
アゴニスト
薬剤性パーキンソニズム
⼤脳⽪質
ACh
Ach
⼤脳⽪質
ACh
Ach
線条体
線条体
抗コリン剤
GABA
GABA
DA
DA
⿊質
DA (ドパミン)
ACh (アセチルコリン、興奮性)
GABA (抑制性)
視床
⿊質
D2遮断薬
視床
LBS, TBU 86
薬剤性パーキンソニズムを誘発する
代表的な医薬品
ドパミン遮断薬
 特に定型抗精神病薬(ドパミンD2受容体遮断薬)
D2受容体の約80%を遮断
パーキンソニズム発現
D2受容体の約90%を遮断
抗精神病薬の効果を発揮
LBS, TBU 87
副作⽤としてパキンソニズムを誘発する薬剤
重篤副作⽤疾患別対応マニュアル1 p117〜119参照
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0611009.pdf (p26〜28)
A)定型抗精神病薬
a. フェノチアジン系
クロルプロマジン、レボメプロマジン、フルフェナジンなど
(ウインタミンなど、ヒルナミンなど、フルメジンなど)
b. ブチロフェノン系
ハロペリドール、スピペロンなど
(セレネース、スピロペタン)
c. ベンザミド系
スルピリド、スルトプリドなど
(ドグマチールなど、バルネチール)
LBS, TBU 65
⾮定型抗精神病薬
⾮定型抗精神病薬は、パーキンソニズムの出現が少ないため
統合失調症治療のガイドラインで、第⼀選択薬となっている。
 セロトニン・ドパミン遮断薬(SDA):ペロスピロン、リスペリドン
(ルーラン、リスパダール)
 多元受容体抗精神病薬(MARTA):オランザピン、クエチアピン
 ドパミン部分作動薬:アリピプラゾール
(ジプレキサ、セロクエル)
(エビリファイ)
LBS, TBU 66
副作⽤としてパキンソニズムを誘発する薬剤
重篤副作⽤疾患別対応マニュアル1 p117〜119参照
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0611009.pdf (p26〜28)
B) 抗うつ薬
a. 三環系抗うつ薬
イミプラミン、クロミプラミン、アミトリプチリンなど
b. 四環系抗うつ薬
マプロチリン、ミアンセリン
c. その他の抗うつ薬
パロキセチン、フルボキサミン、ミルナシプランなど
C) 消化性潰瘍薬 ヒスタミンH2ブロッカー
ラニチジン、シメチジン、ファモチジン
LBS, TBU 67
副作⽤としてパキンソニズムを誘発する薬剤
重篤副作⽤疾患別対応マニュアル1 p117〜119参照
http://www.info.pmda.go.jp/juutoku/file/jfm0611009.pdf (p26〜28)
D)
制吐薬
ドンペリドン、オンダンセトロンなど
(ドンペリドンは⽐較的副作⽤の発現頻度が低いため、抗パーキンソン薬の主な副作⽤である悪⼼・嘔吐に
対して⽤いられる)
E) ⾎圧降下薬: レセルピン
中枢性⾎圧降下薬であるが、その作⽤機序がシナプスのドパミンを枯渇させるため、本来の作⽤としてパーキン
ソニズムを誘発しやすい(この作⽤から、かつては抗精神病薬として⽤いられていた)
G) その他
頻尿改善薬、免疫抑制薬、抗ガン剤、認知症治療薬、抗てんかん薬
(抗コリン薬)
(ACh作動薬)
(バルプロ酸)
LBS, TBU 68
重要ポイントは・・・
早期発⾒と早期対応
初期症状を⾒逃すな
抗精神病薬の服⽤時だけではありません
LBS, TBU 69