癌治療の光線力学的療法に利用されるポルフィリン の水溶性を高める発明です Improvement of water-solubility of porphyrin derivatives for photodynamic therapy 埼玉大学大学院 理工学研究科 物質科学部門 教授 松岡 浩司 1 本技術の背景 • ポルフィリン (porphyrin)とは? H N 4つのピロール環 特徴 2 1 20 + 4つのメチン基 一般に、赤色を呈し、得意な吸収 像および蛍光(赤色)を示す。有機溶 媒中で可視部に4本、ソーレー帯 (400 nm付近)に1本のピークをもつ。 中心部の窒素は鉄やマグネシウム をはじめとする多くの元素と安定な 錯体を形成することが可能である。 5 3 4 N HN 21 22 24 25 NH N 10 15 環状テトラピロール ☛電気化学的利用 (酸化還元特性) ☛光材料として利用 (光学特性) 2 本技術の背景 ・ポルフィリン(porphyrin)を用いた癌の光線力学療法(PDT; PhotoDynamic Therapy)が知られている。 正常細胞に比べて、ポルフィリンが癌細胞に蓄積し易い レーザー光を照射→1O2(一重項酸素)による癌細胞死滅 癌の検査・治療 参照先 http://ganshien.umin.jp/public/research/spotlight/ishikawa/index.html 3 従来技術とその問題点 ・組織透過性の高い630 nmのレーザーを照射し、ポルフィリンの 励起により発生する一重項酸素による癌細胞を死滅させる。 光感受性物質とレーザー光線による光化学反応を利用した癌治療法 問題点も多い・・・・ • 水溶性が極めて低い • 生体適合性が悪い • 排泄速度の遅さ • 水溶性の向上 • 生体適合性の向上 • 排泄速度の向上 4 実施例 1 ポルフィリンと糖を組み合わせた ポリマーの合成、評価 水溶性の向上 毒性の減少 ターゲッティング 高分子化 フィルム作製→選択的に癌細胞死滅 多様な可能性!! 5 OH O HO HO 実施例 2 O O HO HO N H NHAc N-アセチルグルコサミン O + N NH O HN ポルフィリン HO HO OH O O N H TEMED APS or AIBN x H 2N H 2N DMSO or DMF HN N アクリルアミド HN NH O y N O z 500 MHz, in DMSO-d6 O O NHAc O NHAc N H N OH O 0.19 Abs. N H Abs. 3.00 x N HN HN Solvent: CHCl3 Solvent : H2O H2N O y O z NH N 0.15 HO HO OH O O O NHAc N H 2.00 x N N H NH N HN 0.10 HN O HN H2N O y O z N NH N 500 MHz, in CDCl3 1.00 0.05 N O HN N H NH N 0.00 0.00 300 400 500 600 700 nm 300 400 500 600 700 nm 6 実施例 3 ポリマー 蛍光強度 140 120 HO HO OH O Solvent : H2O 蛍光スペクトル O Q:Q帯 S:Soret帯 O NHAc 蛍光強度 600 N H ポルフィリン モノマー Solvent: CHCl3 蛍光スペクトル 500 x H2N 100 N HN HN 400 O y O z Q-597 nm NH N 80 300 N O HN Q-555 nm 60 NH Q-519 nm Q-591nm N H N Q-551nm 200 40 Q-517nm S-420 nm 20 100 S-416nm 0 0 620 630 640 650 660 670 680 690 波長 (nm) 蛍光強度 600 700 650 700 波長 (nm) 750 800 蛍光強度 900 140 励起スペクトル 120 励起スペクトル 800 650 nm 700 100 600 80 500 648 nm 400 60 300 40 200 S帯 20 0 350 400 100 Q帯 450 500 550 波長 (nm) 600 0 650 700 350 400 450 500 550 波長 (nm) 600 650 700 7 実施例 4 (フローサイトメトリーによる評価) 濃度(µM) 蛍光強度 細胞数(%) N-7.5-1001.fcs N-2.5-1001.fcs N-1.0-1001.fcs N-0.5-1001.fcs Non-1-1001.fcs 濃度(µM) 蛍光強度 ポリマー PBS溶液 32.9 11.8 14.3 9.92 8.93 光源:450 nm 細胞数(%) D-7.5-1001.fcs D-2.5-1001.fcs D-1.0-1001.fcs D-0.5-1001.fcs Non-1-1001.fcs 31.5 15.7 19.7 11.9 8.93 100 100 HeLa細胞 intact 80 HO HO 60 OH O HeLa細胞 DDS-associated 80 650 nm 付近の蛍光 O 60 O N H NHAc x H2N 40 40 N HN HN O y O z NH N 20 20 0 0 10 0 1 10 10 蛍光強度(対数表示) 2 10 3 10 0 1 10 10 蛍光強度(対数表示) 2 濃度依存的に強度増加 ⇒ ポリマーがHeLa細胞に取り込まれる! 10 3 8 実施例 5 (顕微鏡観察による評価) 無血清条件下(HeLa細胞)、ポリマー溶液 (in PBS) 0.0 µM 0.5 µM 1.0 µM 2.5 µM 5.0 µM 7.5 µM 濃度依存的に毒性増加 ⇒ ポリマーが抗癌剤になる可能性あり! 9 実施例 6 (顕微鏡観察による評価) 血清条件下(HeLa細胞)、ポリマー溶液 (in PBS) 0.0 µM 0.5 µM 1.0 µM 2.5 µM 5.0 µM 7.5 µM 濃度依存的に毒性増加 ⇒ 無血清条件より毒性低減 10 新技術の特徴・従来技術との比較 • 従来技術の問題点であった、水溶性の向上に 成功した。 • PDT以外にも、抗癌剤として作用する可能性 が示唆された。 • 顕微鏡観察により、アポトーシスにより死んだ 細胞とポリマーにより死んだ細胞の形が違い、 興味深い結果が得られている。 11 想定される用途 その1 • 光線力学的診断(PhotoDynamic Diagnosis) 正常細胞に比べ癌細胞に蓄積しやすい性質 を利用して、癌組織のイメージングをおこなう。 対象とする腫瘍 • 肺癌 • 表在性食道癌 • 表在性胃癌 癌研究分野の特性等を踏まえた支 援活動ホームページより引用 • 子宮頸部癌 等 12 想定される用途 その2 • 光線力学的療断(PhotoDynamic Therapy) 腫瘍親和性の光感受性物質(例えばポルフィ リン誘導体)とレーザー光線を利用して、悪性 腫瘍内において光化学反応を起こさせ、特異 的に死滅させる。 • 組織透過性の高い赤色光領域に強い吸収を もち、腫瘍組織に対して高い選択性と親和性 を有する物質が望まれている。⇒ポルフィリン 誘導体 13 実用化に向けた課題 • 現在、より水溶性の向上したポルフィリン誘導 体まで開発済み。しかし、癌組織に対する実 験が未解決である。 • 今後、より詳細な活性評価について実験デー タを取得し、PDDやPDTに適用していく場合 の条件設定を行っていく。 Photocure ASAのホームページより http://www.photocure.com 14 企業への期待 • 水溶性ポルフィリン誘導体の合成法が確立で きたので、さらに、ペプチド、タンパク質、遺伝 子等の導入手法を共同開発したい。 • 各種癌組織や実験動物を取り扱うことのでき る、 企業・研究機関との共同研究を希望。 • PDDやPDTに利用するための製品化を実現 していただきたい。 15 本技術に関する知的財産権 • 発明の名称 :水溶性ポルフィリン誘導体と それらの製造方法 • 出願番号 :特願2014-9210 (2014/1/22) • 出願人 :国立大学法人 埼玉大学 • 発明者 :松岡浩司、石丸雄大、 鈴木美穂、幡野 健 16 お問い合わせ先 埼玉大学 アンビエント・モビリティ・インターフェイス研究センター 研究支援者(コーディネーター) TEL FAX e-mail 須田 均 048-714 - 2009 048-714 - 2009 sudakinn@mail.saitama-u.ac.jp 17
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