KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL Ge-Snの状態方程式と圧力誘起相転移 相馬, 俊信; 加賀屋, 弘子; 森, 紀夫 物性研究 (1991), 56(3): 283-287 1991-06-20 http://hdl.handle.net/2433/94564 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 物性研究 5 6-3( 1 991-6) Ge Snの状態方程式 と圧力誘起相転移 秋 田大 ・鉱山 相馬 森 俊信,加賀屋弘子 *) 、紀夫 **) ( 1 9 9 1 年 3月 1 1日受理 ) ( 要旨) Ge S n系 に関す る α相 固溶体 の状態方程式が,擬 ポテ ンシ ャルに基づ く電子論 と仮想 xSnx固溶体 に関す る圧 力- 体積 関係 の計算結果 結 晶近似 を用 いて研 究 され る。 α相 Ge._ は原子濃度 Xの単調 関数で はな く,単体 βSnの場合 と逆 に圧縮下で結晶の軟化 を示すO 圧 力誘起 α β相転 移 に関す る Ge中の S nの固溶度 の影響 が計 算 され る。 a相 Gel_xSnx 固溶体 の形成が圧縮 下 で予想 され る r<0. 2の領域 で体積 の飛 び AD .は J につ いて非線 tは ほぼ一定 の ままで,転 移 の潜熱 型 的 に増加 す る。 転 移圧 力 P AEは Ge中の Snの固 潜 につれてわずかに増加す る。 $1.序論 圧縮下での合金系 における固体 の固溶度の増加 は物性科学 や物 質工学 の分野で興味あ る iと Geの固溶度 の実質的増加 は圧縮下で液相 か ら 課 題 となっている。 例 えば, Al中の S 急 令 す るこ とで得 られて きた [1] 。大気圧下で,Ge S n系 に関す る相互 の固溶度 は 1% 以 下で,S 卜S n系 はほ とん ど溶 け合 わない [2]。最近,仮想結 晶近似 (以後,VCAと略 して 表 わ す ) に基 づ く仮 想 的 固 溶 体 を想 定 して, 我 々 [3] は圧 縮 下 で の 原 子 濃 度 x<0. 2にお ける α相 固溶体 Ge l_x Snxの形成 を予測 した。本研究 において,我 々は擬 ポテ Aを用いて ンシ ャルに基づ く我 々の以前 の電子論 と不規則 な合金 に関す る VC 系 の圧力誘起 αβ相転移 と状態方程式 を研究す る。 *) To s hi nobuSOMA a ndHi r 。koKAGAYA * * ) Nor i oMORI( 現 藤倉電線 K. K. ) ー2 8 3- α相 Ge S n 相馬俊信 ・加賀屋弘子 ・森 紀夫 $2.定式化 VCAにおいて,不規則合金 は平均 的原子 ポテ ンシャルか ら成 る単一原子の周期的な格 子 に よって置 き換 え られ,局所 He i ne Aba r e nkovモ デ ルポ テ ンシャル [4] を用 いて VCAでの生のポテ ンシャル形状 因子 U芸 c A( q)は次の様 に与 えられる。 UE c A ( q) -( 1-I) UG b e ( q) +I・UE n ( q) UL ( q, -一 昔 ( 1) 空尉 ( ( ト UE , c os (q RL , ・ Ul ( 2, ここで,我々は以前 の研 究 [4] と同様 の表示 法 を採 用 し, iは Ge又 は Snであ る 。 Ge. _ x S恥 系 は VCA においてはⅣ族の元素の様 に単一原子の ダイヤモ ン ド型格子 を形成 し, 1) 式 中の平均 ポテ ン 仝結 晶エ ネルギー E は以前 の高次 の摂動論 に よって与 え られ る。 ( シャル U芸 c A ( q)を用いて濃度 x 一定の もとで体積 5 2の関数 として全エネルギー EV C A( a, I)は,次式の様 に与 えられ計算す ることが出来 る O EV C A( a,I)-El ( L 2 ,I) +E.( a,I) +E.( a,I) +E2 ( a,I) +Ec。V( a,I) ( 3) 平衡状態の体積 β。は零圧力状態 を満足す るように決定 され,次式の様 に与え られる。 I I- o dEV C A ( a, ) d` 2 ( 4) x a. ( I)か ら平衡格子定数 a. ( I) へ の変換 は E 2 . ( I)- t a. ( I) P/8の関係式 を用いてなされ る。 更 に,圧力 P( I)は結晶体積 D に関 して結晶エ ネルギー EV C Aの一階微分か ら得 られ,吹 式で与えられる。 P( I)- dEV C A ( a, I) ( 5) $3.計算結果 と検討 I) 最初 に,( 4) 式か ら与 えられる α相 Gel _ X Snx系の平衡状態 における体積 D. ( I)と a.( r d遮弊関数 [4]による結果が与 えられる。又, を Fi g.1及 び 2に示す。 ここでは,Hubba 2の領域 での破線 は圧縮下で さえ, α相 固溶体が存在 しない事 と対 これ らの図での ∬>0. 2 .( 1)とa. ( I)の 応す る。他の遮弊関数 によるものはほ とん ど同 じで,Fi g.1及 び 2中の L 5の ときの約 ±0. 2 a 、u.及 び±0. 0 0 2 A に留 まる。 ずれの最大値 は ∬ -0. 第二に,( 5) 式か ら与 え られる a相 Gel _ X Snx固溶体 に関す る圧力一体積関係 を Fi g・3に Snの状態方程式 に相 当す る。 Fi g.3の中の結晶体積 β 示す。Fi g.3で ∬- 1の鎖線 は β( I)は濃度 xに対応 して大気圧下の平衡体積 D. ( I)に相対 的に示 され,更に,絶対結晶体 積 D( I)への換算 は Fi g.4のデー タを用 いてな される。他 の誘電連弊関数 による Fi g.3の 圧力 P( I)のずれの最大値 は, L2 / 協. - 0. 9で約 ±0二 2 GPaに当たる 。 -2 8 4- 高温部で熱的圧力 Ge Sn系の状態方程式 と圧力誘起相転移 /′ ′ → ′ ′ / ′ ′ ′ ( . コ. D) ′ ′ ′ ′ ′ ′ ′ 。V (X) 0. 2 0. 6 0. 8 t Gel X l, う Fi g. 2 -2 8 5- 0. 2 0. 4 0. 6 0. 8 I t Sr l l 相馬俊信 ・加賀屋弘子 ・森 紀夫 の影響は無視 出来ず,単体 Geに関す る状態方程式の熱的圧力の定量的影響 [5]は, T 千1 0 0 0 K及 び 5 2 / / 滋. - 0. 9で約 0. 1 GPaに当 た る 。 しか し,計算上 の精度 と熟 的圧 力 は Fi g.3中の圧力ー体積関係 に関す る合金効果に対 して本質的でない。 Fi g. 3か ら,Gel _ x Snx固溶体 の圧力ー体積 関係 は原子濃度 x の関数 と して単調で はな Snに関す る結果 を用いて単純 に予測 した もの とは異 なる事がわか る0 く,単体 Geと βFi g.3における傾 向は定量的には次の様 に理解 される。Ge Sn固溶体が形成 される時,固 g.4に示す 溶体 中の Ge原子 は大気圧下の単体 Ge中 と比較 して体積膨張状態 とな り,Fi 様 にこの体積膨張状態の領域 は Snの原子濃度が増加す るにつれて広が る。 体積膨張状態 は負 の圧力に対応 し,軟化即 ち固溶体-の圧縮 の増加 をもた らす。他方,Snの原子濃度 J が大 きくなるにつれて体積圧縮状態の Sn原子の影響 は体積膨張状態の Ge原子の影響 _ x Snx固溶体 の庄カー体積 関係 は原 を庄倒 し, 固 溶体 の硬化 をもた らす。その結果,Gel 子濃度 X の関数 と して軟化 と硬化の問に境界 と して臨界値 rm を持つ0F i g.3で, xm- 0. 65における Gel_x Snx系の庄カー体積関係 も又示 される。 体積膨張状態の Ge原子 の影 Snx固溶体 の状態方程式 は xの広 い範囲で βSnの状態方程式 よ りも 響 は支配的で Ge._x 軟化 している事 は,単体 Geと単体 Snの間の圧力ー体積関係の曲率の違いのためである0 α相 Ge Sn固溶体 は約 Pt -1 0 GPaの圧力下で αβ相転移す る ( 計算値 に関 して は参 考文献 [3]を参照,又,例 えば単体 Geの実験値 に関 しては [6]参照 ) 。転移時の体 A D tは Fi g.5及 び 6にそれぞれ示す。Fi g.6で縦 積 の飛 び △Dt及 び転移 の潜熱 AE - R ー ′ 5 3. (x) I v ′ ′ ′ ′′ ′′ ′ ′′ ∫ ( P uVE E U) y 日 ._ = u n I「 S = ...目 し ● ● 0. ズ 3 T 4 姻 2 0. I ? Fi g. 5 Fl ' g.6 2 8 6 Ge Sn系 の状態方程式 と圧力誘起相転移 軸 の左側 の スケール は AE( I)に右側 のそれ は Pt ( I)に対応 す る。 Fi g.5及 び 6の中で, 2の範 囲での計 算 値 は仮 想 Gel_x Snx固溶体 の もの と対応 し, x- 0, 0. 5 原 子 濃度 r>0. 及 び 1の時 のエ ラーバ ーは遮弊 関数 の異 なる近似 に よるば らつ きの範 囲 を表す。 Fi g.5か ( I)は Xの関数 と して単調 で あ るが, Geと Snの直線 的 な補 間か らそ ら体 積 の飛 び △D. g.6か ら転移 の潜熱 AE( I)は転移圧 力 Pt ( ∫)の原子濃度 工依存性 れ る こ とが わか る。 Fi I)の増加 を を定 量 的 に反映 し, Ge中の Sn固漆 の効 果 は a相 の範 囲 で転 移 の潜熱 AE( もた らす。 本数値計 算 は東北大学 大型計算機 セ ンターACOS- 6S2000システム を用 いて 行 なわれた。 参 考 文 献㌔ nko .I .T.Be l a s h,0.I ・Ba rkal ova ndE.G・Po nya t o vs ki i ,Phys ・ l)V.F.De gt yar e va ,G.V.Chi pe 1 985) . St a t usSo l i di( a)89,K1 27( 2)M.Ha ns e n,Cons t i t ut i ono fBi na r yAl l oys ,Mc Gr a wHi l lPubl .Co. ,Ne wYor k( 1 95 8) ・ 6( 1 9 89) . 3)相馬俊信 ・加賀屋弘子 ・鎌 田謙一,物性研究 53巻, 2号,21 4)T.So ma ,Phys .St a t usSol i di( b)8 6, 2 6 3( 1 97 8) . 5)加賀屋弘子 ・相馬俊信 ・東海林直美,物性研究 4 9巻, 4号 ,432( 1 9 8 8) . 6)H.G.Dr i c ka me r ,Re v.S° i .I ns t r um.41 ,1 6 67( 1 9 7 0) . ー2 8 7-
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