Document 583102

1.需給動向
1-1.世界の需給動向
ゲルマニウムの主な用途は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を製造する際に使用される重合触媒、
光ファイバーへの添加剤(光ファイバードープ材)、赤外線サーモグラフィや熱線暗視装置に使用されるゲル
マニウムレンズである。その他、半導体材料、光ディスク用ターゲット材、太陽電池パネル等にも用いられて
いる。
世界の金属(精製)ゲルマニウムの生産量を表 1-1、図 1-1 に示す。2012 年の生産量は前年比 108%の
128t であり、中国の生産量が増加した。中国では、品質保証及び供給の安定性に強みを持つ大手生産者へ
の資源の集約が進んでいる。
表 1-1 世界の金属(精製)ゲルマニウムの生産量
中国
ロシア
米国
その他
2003
-
-
12
32
2004
-
-
4
83
2005
-
-
2006
-
-
5
86
2007
-
-
5
86
5
95
2008
100
5
5
30
2009
80
5
5
30
2010
80
5
3
30
2011
80
5
3
30
単位:純分t
2012 12/11比 構成比
90
113%
70%
5
100%
4%
3
100%
2%
30
100%
23%
合計
44
87
90
90
100
140
120
118
118
128
108%
出典: United States Geological Survey「Mineral Commodity Summaries Germanium」 World Refinery Production
※2007年以前の中国、ロシアの生産量はその他に一括されており、詳細は不明。
100%
(純分t)
160
その他
米国
ロシア
中国
140
120
100
80
60
40
20
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
図 1-1 世界の金属(精製)ゲルマニウムの生産量
-171 -
鉱物資源マテリアルフロー 2013
ゲルマニウム
(Ge)
1-2.国内の需給動向
ゲルマニウムの国内生産量は統計が存在しないため不明であるが、国内のゲルマニウムの主要用途は
PET 用重合触媒と、光ファイバードープ材の 2 つである。
表 1-2 にボトル用 PET 樹脂及び Ge 触媒需要量を、表 1-3 に光ファイバーケーブルの生産量及び Ge ドー
プ材需要量を示す。PET 用重合触媒にはニ酸化ゲルマニウムが、光ファイバードープ材には四塩化ゲルマニ
ウムが使用されている。
2012 年の PET 樹脂生産量は、前年比 105%の 610 千 t であった。ボトル用 PET 樹脂の需要は、ここ 6 年
ほど 600 千 t 前後で推移している。表 1-2 のGe触媒需要量は、PET 樹脂生産量に対してGe触媒を 0.00516%
添加した場合の推計値となっており、Ge 触媒需要量も 30t 前後で推移している。ただし、実際は PET 樹脂用の
二酸化ゲルマニウム系触媒は、PET ボトルの肉薄化による使用量減少や、相場高騰で安価なアンチモンやチ
タン等の代替材料の使用が増えていることで、需要が減少傾向にある。PET 重合触媒向けの二酸化ゲルマニ
ウムの国内生産企業は、三菱マテリアル電子化成 1 社である。
もう一つのゲルマニウムの主要需要先である光ファイバードープ材向けの主な国内生産企業は、三菱マテ
リアル電子化成及びトリケミカル研究所である。
2012 年の光ファイバーケーブルの国内生産量は前年比 128%の 44.6 百万 km であった。ゲルマニウムドー
プ材の需要量を前年比 128%の 24t と推計した。
金属ゲルマニウムは 100%が輸入品であり、主要用途は半導体ウエハ用材料及びターゲット材料である。
表 1-2 ボトル用 PET 樹脂及び Ge 触媒需要量(推計値)
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
471
550
571
577
599
602
593
ボトル用PET樹脂需要量(千t) 1)
24
28
29
30
31
31
31
Ge触媒需要(t) 2)
出典:1)PETボトルリサイクル推進協議会「ボトル用PET樹脂需要実績推移」、2)推計値
2010
601
2011
583
31
30
2012 12/11比
610
105%
31
105%
表 1-3 光ファイバーケーブル生産量と Ge ドープ材需要量(推計値)
2003
2004
2005
2006
15.1
17.3
21.2
26.9
ケーブル生産(百万km 1)
8.3
9.8
11.6
14.7
Geドープ材(t) 2)
出典:1)経済産業省「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計」、2)推計
2007
29.8
2008
34.4
2009
34.4
2010
34.5
2011
34.8
16.4
18.8
18.9
18.9
19.1
2012 12/11比
44.6
128%
24
128%
2.輸出入動向
2-1.輸出入動向
表 2-1、図 2-1 にゲルマニウムの輸入量を示す。ゲルマニウムの輸出コードが「塊・粉・くず(金属ゲルマニ
ウム)」及び「製品その他」がバナジウム、ガリウム、ハフニウム、インジウム、ニオブ、レニウムとの合計であ
り、二酸化ゲルマニウムも二酸化ジルコニウムとの合計であることから、輸入量のみで図表を作成した。
2012 年のゲルマニウム輸入量は前年比 106%の 24.8t であり、二酸化ゲルマニウムの輸入量が、前年比
116%と増加した。二酸化ゲルマニウムは、3N レベルのものが輸入されている。
表 2-1 ゲルマニウムの供給(輸入量)
2009
8.1
16.0
24.1
2.0
2010
8.1
11.7
19.8
3.0
2011
5.4
17.1
22.5
0.9
31.1
36.7
48.8
98.7
65.3
33.6
26.0
出典:財務省貿易統計 ※素材は塊・粉・くず(金属Ge)、二酸化Ge、製品は製品、その他による。
※ゲルマニウムは輸出コードが他の鉱種と混在しており判別不可であるため、輸入のみで図表作成。
純分換算率:(2011年以前)二酸化Ge 68%、(2012年)69.4%
22.8
23.4
素材
製品
塊・粉・くず(金属Ge)
二酸化Ge
小計
製品、その他
合計
2003
1.5
19.6
21.2
9.9
2004
-
27.6
27.6
9.1
2005
0.5
27.3
27.8
21.0
ゲルマニウム
(Ge)
鉱物資源マテリアルフロー 2013
-172 -
2006
-
29.8
29.8
68.9
2007
18.2
32.7
51.0
14.3
2008
6.4
21.6
28.0
5.6
単位:純分t
2012 12/11比
4.5
84%
19.8
116%
24.3
108%
0.5
49%
24.8
106%
(純分t)
120
製品、その他
100
塊・粉・くず(金属Ge)
二酸化Ge
80
60
40
20
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
図 2-1 ゲルマニウムの供給(輸入量)
2-2.輸出入相手国
2-2-1.二酸化ゲルマニウム
二酸化ゲルマニウムの輸入相手国を表2-2、図2-2 に示す。カナダ、中国からの輸入量が全体の 87%を占
める。輸入された二酸化ゲルマニウムは PET 樹脂の重合触媒や、光ファイバードープ材として用いられる四
塩化ゲルマニウム精製に利用される。
表 2-2 二酸化ゲルマニウムの輸入相手国
2006
9.7
16.3
0.1
1.3
-
2.4
2007
13.4
16.2
-
2.2
-
0.9
2008
14.5
4.9
0.5
1.6
-
0.0
2009
13.0
1.9
-
1.1
-
0.0
2010
7.7
3.5
0.1
0.3
-
0.0
2011
9.0
6.1
1.0
0.8
0.1
0.0
合計
19.6
27.6
27.3
29.8
出典:財務省貿易統計
純分換算率:(2011年以前)68%、(2012年)69.4%
32.7
21.6
16.0
11.7
17.1
カナダ
中国
米国
輸
ロシア
入
ラオス
その他
2003
0.8
11.6
0.0
1.2
-
6.1
2004
3.1
12.7
0.2
1.1
-
10.5
2005
4.8
16.4
-
0.2
-
5.8
単位:純分t
2012 12/11比 構成比
11.6
129%
59%
5.6
93%
28%
1.5
144%
8%
0.8
96%
4%
0.3
204%
1%
-
19.8
116%
100%
(純分t)
35
その他
中国
カナダ
30
25
20
15
10
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
図 2-2 二酸化ゲルマニウムの輸入相手国
-173 -
鉱物資源マテリアルフロー 2013
ゲルマニウム
(Ge)
5
2-2-2.塊・粉・くず(金属ゲルマニウム)
塊・粉・くず(金属ゲルマニウム)の輸入相手国を表 2-3、図 2-3 に示す。主要な輸入相手国は中国であり、
全輸入量の 55%を占めている。金属ゲルマニウムは、レンズメーカーがゲルマニウムレンズの原料として輸
入している。
表 2-3 塊・粉・くず(金属ゲルマニウム)の輸入相手国
中国
米国
ラオス
輸 ベルギー
入 ロシア
ドイツ
その他
2003
1.5
0.0
-
-
0.0
-
0.0
2004
-
-
-
-
-
-
0.0
合計
1.5
出典:財務省貿易統計
2005
0.5
-
-
-
-
-
0.0
-
2006
-
-
-
-
-
-
0.0
0.5
2007
7.8
0.2
-
0.1
0.0
0.0
10.2
-
2008
5.8
0.5
-
0.1
-
0.0
0.0
18.2
2009
7.4
0.1
-
0.1
-
0.0
0.6
6.4
2010
7.7
0.2
-
0.1
0.0
0.1
0.0
8.1
2011
3.1
0.6
0.6
0.6
0.2
0.3
0.1
8.1
(純分t)
20
単位:純分t
2012 12/11比 構成比
2.5
80%
55%
1.0
166%
21%
0.4
71%
9%
0.4
65%
8%
0.3
175%
6%
0.0
13%
1%
-
5.4
4.5
84%
100%
その他
18
米国
16
中国
14
12
10
8
6
4
2
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
図 2-3 塊・粉・くず(ゲルマニウム)の輸入相手国
2-3.輸出入価格
ゲルマニウムの輸入価格を表 2-4、図 2-4 に示す。2010 年~2011 年にかけ、二酸化ゲルマニウム、塊・く
ず・粉ともに輸入価格が大幅に上昇している。2012 年になり低下傾向となったが、依然として高止まりを続け
ている。これは、中国による買占めや国家備蓄が影響している。
表 2-4 ゲルマニウムの平均輸出入価格
2003
2004
42
-
280
360
2005
794
403
2006
-
509
2007
378
738
2008
1,254
985
2009
946
743
2010
778
583
2011
1,637
1,201
単位:$/kg
2012 12/11比
1,460
89%
1,149
96%
塊・粉・くず(金属Ge)
二酸化Ge
出典:財務省貿易統計
輸出入価格は貿易統計の貿易額を財務省による年間平均為替レートにより米ドルベースに換算し、年間平均価格を示した。
素材
ゲルマニウム
(Ge)
鉱物資源マテリアルフロー 2013
-174 -
($/kg)
2,000
塊・粉・くず(金属Ge)
二酸化Ge
1,500
1,000
500
0
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
図 2-4 ゲルマニウムの平均輸出入価格
3.生産者及び生産品目
日本における主要生産者及び生産品目は表 3 の通りである。
表 3 主要生産者及び生産品目
素材
企業名
精製二酸化Ge
四塩化Ge
○
-
○
○
-
三菱マテリアル電子化成
トリケミカル研究所
ティーディーワイ
出展:矢野経済研究所作成
製品
ウエハ、ターゲット
(金属Ge)
○
4.リサイクル
ゲルマニウムのリサイクル率は以下の定義により推計すると表 4 の通りであり、リサイクル率はゼロであ
る。ただし、レンズ等の製造工程中に出るくずは一部再利用されていると推定される。
リサイクル率
=(使用済み製品からのリサイクル量)/(見掛消費量)
見掛消費量
=(国内発生量)+(素材・製品の輸入量)-(素材・製品の輸出量)
※素材は塊・粉・くず(金属 Ge)、二酸化Ge、製品は製品・その他の合計値。
※ゲルマニウムの輸出数量を把握できないため、輸入数量のみ記載
表 4 ゲルマニウムのリサイクル率
区分
内訳
国内生産量
リサイクル
素材・製品 輸入-輸出
合計①
リサイクル量 ②
リサイクル率 ②/①
出典:財務省貿易統計
見掛消費量
2008
-
-
33.6
33.6
-
0%
2009
-
-
26.0
26.0
-
0%
2010
-
-
22.8
22.8
-
0%
単位:純分t
2011
2012
-
-
-
-
23.4
24.8
23.4
24.8
-
-
0%
0%
ゲルマニウム
(Ge)
-175 -
鉱物資源マテリアルフロー 2013
-176 -
国内生産あり
輸入
5 t
塊・粉・くず (金属Ge)
輸出入のみ
20 t
製造フロー
(国内製造あり)
輸入
二酸化ゲ ルマニウム
素材
-
製造フロー
(国内製造なし)
リサイクルのフロー
三菱マテリアル電子化成
トリケミカル研究所
輸入
国内主要生産企業
四塩化ゲ ルマニウム
国内生産
-
国内主要生産企業
三菱マテリアル電子化成
国内生産
精製ニ酸化ゲ ルマ ニウム
ゲルマニウムのマテリアルフロー(2012)
※製品の需要量=国内で生産又は国内に輸入された原料、素材の需要量であり、製品の輸出入量は考慮していない。
※純分換算率:二酸化ゲルマニウム69.4%、四塩化ゲルマニウム33.9%
直接の輸出入なし
亜鉛精錬副産物
原料
5.マテリアルフロー
ゲルマニウム
(Ge)
鉱物資源マテリアルフロー 2013
-
電子デバイス
その他
その他
半導体
光ファイバー
PET樹脂
ター ゲ ット
半導体ウエ ハ
光フ ァイバー ドー プ 材料
需要量
-
需要量
PE T樹脂重合触媒
製品・主要用途