月刊 HRタイムズ Monthly Human Resource Times 株式会社アヴァンティスタッフ ニュースレター 16号 / 2014年5月 (毎月第2⽔曜⽇発⾏) HRタイムズでは、人材活用や人事労務に関する旬な情報を毎月お届けします。 次回改正で派遣法はこう変わる 先月号に引き続き、派遣法改正案のポイントをお伝えします。3回目となる今月号は、派遣受⼊期間制限の例外規定について説 明します。 派遣受⼊期間制限の例外 派遣の受⼊期間制限は、原則として派遣労働者個人と派遣先という2つの単位を基準とした規制に変わろうとしています。原則に 対する例外の内容について説明します。 例外① 派遣会社で無期雇用されている派遣労働者を受け⼊れる場合 例外② 60歳以上の派遣労働者を受け⼊れる場合 例外③ 現⾏制度において期間制限の対象から除外されている⽇数限定業務、⼀定の期間内に完了することが予定されている 業務(有期プロジェクト業務)、育児休業・介護休業の代替要員の業務へ派遣労働者を受け⼊れる場合 例外に該当すると、派遣労働者個人単位・派遣先単位とも受⼊期間の制限を受けません。 個人単位では、同⼀の派遣労働者を同⼀組織単位で3年を超えて受け⼊れることが可能となり、派遣先単位では、意⾒聴取の対 象から外れること(例外該当のみの派遣受⼊であれば、意⾒聴取⼿続きは不要)になります。 派遣受入期間制限 新旧制度⽐較 イメージ図 目次 1 • 次回改正で派遣法はこう 変わる • 平成25年度「能⼒開発基 本調査」より • 人事労務ニュース • 特集 – 優良派遣事業 者認定制度のあらまし • 人事総務 実務相談 Q&A • 編集後記 平成25年度「能⼒ 開発基本調査」より 今月号は、厚⽣労働省が毎年 実施して いる掲題調 査のう ち、 「個人調査」の「自己啓発」につい てお伝えします。 ●自己啓発を⾏った労働者 (%) ◇正社員 ◇正社員以外 44.3 17.3 ●⾏った自己啓発の実施⽅法 (複数回答)(%) 左列:正社員、右列:正社員 以外(以下同じ) ◇ラジオ、テレビ、専門書、イン ターネットなどによる自学、自 習 46.6 44.5 ◇社内の自主的な勉強会、研 究会への参加 29.5 29.4 ◇⺠間教育訓練機関の講習会、 セミナーへの参加 23.4 17.8 ◇通信教育の受講 22.2 11.6 ◇社外の勉強会、研究会への参 加 21.3 13.8 ●自己啓発を⾏った理由 (複数回答)(%) ◇現在の仕事に必要な知識・能 ⼒を⾝につけるため 87.7 79.3 ◇将来の仕事やキャリアアップに 備えて 56.8 39.9 ◇資格取得のため 35.4 28.1 ◇昇進・昇格に備えて 17.2 7.1 ◇転職や独⽴のため 6.3 9.3 人事労務ニュース ◆人材派遣会社に認定制度 秋から業界団体審査 処遇改善など100項目 人材派遣や請負、紹介などの企業で構成する一般社団法人・人材サービス産業協 議会(東京・千代⽥)は今秋、人材派遣会社を対象にした初の認定制度を設ける。 有識者でつくる第三者機関が派遣従業員の待遇改善やキャリア⽀援体制などを認定 する。来春にも⾒込まれる労働者派遣法の改正を⾒据え、適正な従業員管理を派遣 会社に促す。(2014/4/21 ⽇本経済新聞電子版) 2000年代半ば以降、「偽装請負」や「⽇雇い派遣」などをキーワードに、⼀部の派遣事業 者による違法⾏為が続々と発覚しました。派遣=不安定といったマイナスなイメージが定着 してしまったと考えられます。前回2012年の派遣法改正もそのような感情論が先⾏しての 規制強化ありきで実施されたと言えるでしょう。 悪質事業者の退出を促し、優良事業者を育てる取組みは、業界の自助努⼒としても⽋か せないと考えます。 ◆非正規労働者ら賃⾦格差などで賠償提訴 ◇ 13年4月施⾏の改正労働契約法で初の裁判 ・・・駅売店で働く非正規労働者ら4人が1⽇、売店を運営する・・・子会社・・・を 相⼿取り、正社員との3年分の賃⾦格差を含む計約4250万円の損害賠償を 求め東京地裁に提訴した。有期契約を理由に正社員との間に不合理な労働条件の 格差を設けることを禁じた改正労働契約法(2013年4月施⾏)を根拠とした 初めての裁判になる。(2014/5/1 毎⽇新聞) 前回の労働契約法改正では、無期労働契約への転換ルール(18条)が注目されていま すが、不合理な労働条件格差の禁⽌条項(20条)を争点とした初の訴えとのこと。仕事 内容は同じにもかかわらず、有期契約であることを理由とした賃⾦の格差や退職⾦の有無 が問題となっています。同種の主張は、今後ますます増えてくることが考えられます。 ◆解決⾦は100万円未満 厚労省・解雇事件を集計 個別労働紛争解決制度で 厚⽣労働省がこのほど明らかにした解雇に関する労働紛争における解決⾦額の集 計結果によると、個別労働紛争解決制度が取扱った事件では100万円未満が⼤ 部分を占めるが、裁判に掛かると約7割が100万円を超え、高額化していることな どが分かった。 (2014/5/5 労働新聞) あっせん等の個別労働紛争解決制度→労働審判→裁判の順に解決⾦額は上昇する傾 向にあります。なお、厚労省作成資料によると次のように整理できます。 ・あっせん等:8割以上が100万円未満(10万円以上20万円未満が約1/4) ・労働審判:約5割が100万円未満(1,000万円を超えるケースもあり) ・裁判:約7割が100万円超(50万円未満のケースもあれば、1億円超のケースもあり) また、解決に要する時間も、あっせん等、労働審判、裁判の順に⻑期化します。 ◆通常国会延⻑せず 集団的⾃衛権の今国会閣議決定、首相「期限ありきではない」 政府・⾃⺠党は7⽇、6月22⽇までの通常国会を延⻑しない⽅針を固めた。教 育委員会制度を改⾰する地⽅教育⾏政法改正案など、重要法案の成⽴にメドがつ いたため。(2014/5/8 msn産経ニュース) 次回派遣法改正案は、今通常国会において成⽴することを前提に、2015年4月1⽇の施 ⾏を予定しています。記事のとおり会期延⻑がないとすると、6月22⽇の会期末まで40⽇ 余り(5/9時点)。現時点で審議⼊りしていない派遣法改正案については、今国会で成 ⽴するかは微妙な状況にあると言われています。 臨時国会に持ち越しとなった場合、施⾏⽇も後ろ倒しになる公算が⾼く、その場合には、 2015年10月1⽇が⼀つの目安になると考えます。 2 特集-優良派遣事業者認定制度のあらまし 2⾯ニュース欄に掲載した人材派遣会社の優良認定制度について、制度の概要をお伝えします。 本制度のねらい 派遣会社の中から優良な企業を第三者である審査機関が認定するものです。派遣先企業や派遣社員にとって、派遣会社を選定す る基準としてもらい、業界全体の質向上を目指す取組みです。 なお、認定を希望する派遣会社からの申請の受付は、2014年10月以降の予定です。 認定基準 優良派遣会社の認定は、次に掲げる基準(抜粋)を⼀定以上満たす派遣会社に対して⾏われます。 Ⅰ 事業体に関する基 準 Ⅱ 派遣社員の適正 就労とフォローアップに 関する基準 Ⅲ 派遣社員のキャリ ア形成と処遇向上の 取り組みに関する基準 Ⅳ 派遣先へのサービ ス提供に関する基準 経営の安定性・健全性を 確保するための経営⽅針 及び社内体制が整備され ていること 労働条件、仕事内容、 必要なスキルを具体的に 説明することに努め、適正 な内容の募集採用を広く ⾏なっていること 派遣社員の仕事に対する 適性を総合的に判別する 仕組みがあること 派遣先の職種や事情に 応じて、派遣先のニーズを 満たすための仕組みがあ ること 業務の適正を確保するた めの社内体制が構築され、 適切に運用されていること 派遣社員の希望条件を 確認し、それに応じて的 確な支援ができる体制に あること 派遣社員の働きぶりやス キルについて評価とフィード バックを適宜⾏っていること 派遣先のニーズに合わせ た人選を迅速かつ的確に ⾏える仕組みが整備され ていること 各種労働関連法制に関 する内勤社員への教育が ⾏われていること 派遣社員からの仕事に関 する不満や苦情を派遣先 に伝え、その改善に取り組 んでいること 派遣社員のキャリア形成 を意識した仕事の紹介や 派遣先への働きかけを ⾏っていること 派遣先でのサービスの評 価を確認し、満足の向上 に取り組んでいること 個人情報保護⽅針(プ ライバシーポリシー)や個 人情報保護規程を有し、 社内での情報管理体制 が整備されていること 派遣社員からの満足度・ 要望等を把握し、満足の 向上に取り組んでいること 派遣元事業主として自ら 派遣労働者の福祉の増 進に取り組んでいるほか、 派遣先での福利厚⽣施 設の利用等について必要 な働きかけをしていること 派遣先が適正に派遣サー ビスを受けられるよう法令 について必要な情報を周 知し、法令遵守に協⼒し ていること 3 人事総務 Q1 A1 Q&A 実務相談 <派遣法-労働契約申込みみなし制度> 2012年改正の派遣法で新設された労働契約申込みみなし制度が2015年 10月より施⾏される予定と記憶しています。どのような制度で、次回派遣法改 正との関係はどうなのかなどについて教えてください。 ご質問のとおり、労働契約申込みみなし制度は、2012年改正により新設され た規定で、2015年10月1⽇の施⾏が予定されています。 次回派遣法改正案では、2012年の改正内容について⾒直しされないことと なっているため(※)、次回改正の如何に関わらず、2015年10月に施⾏さ れる予定です。 制度の概要は以下のとおりです。 派遣先が、次に掲げるいずれかの⾏為を⾏った場合、派遣先から派遣労働者 に対して労働契約の申込みをしたものとみなす制度です。派遣労働者が申込 みを承諾すれば、派遣先と派遣労働者間の労働契約が成⽴することになりま す。 ① 派遣禁⽌業務への派遣受⼊れ ② 無許可・無届の派遣会社からの派遣受⼊れ ③ 派遣受⼊期間制限違反 ④ 偽装請負 特に注意を必要とするのは③と④です。 ③については、次回法改正で大きく仕組みが変わろうとしています。新たな期 間制限の制度において、当制度の対象となる違反に該当しないような注意が 必要です。また、④については、発注者から受託会社の労働者へ直接指揮命 令が⾏われていないかを中⼼に、偽装請負と判断されないように契約や業務フ ローを再確認することが望ましいでしょう。 (※)⽇雇い派遣の原則禁⽌に関する例外要件(年収制限など)の⾒直 しなどは検討されることが予定されています。 株式会社アヴァンティスタッフ 本社 東京都中央区⽇本橋兜町6-7 ヒューリック兜町ビル 編集後記 今月もお読みいただきありがとうございます。 今年度からようやく優良派遣会社の認定制度がスタートいたします。(ようやく、という のは⺠主党政権時代に「事業仕分け」で廃⽌となった経緯があるからです。) 2⾯のニュース欄にも書きましたとおり、世間⼀般の「派遣」に対するイメージは決して良い ものと言えません。それには、業界としての発信が足りなかった⾯が大きいと感じています。 ⽇本人材派遣協会のアンケートによると、「当⾯希望する働き⽅」に派遣社員を選んだ 人は6割を超えています。社会的な地位の向上を望む声も聞かれます。⼀⽅で、「数年 後に希望する働き⽅」の回答では、正社員が最も多くありました。 派遣で働くことを希望する人には働きやすい環境を、正社員で働くことを望む人にはそ のためにできることを、希望に応じた支援をしていくことが、業界として最も求められてくるこ とになると考えます。(N) 本社代表 03-6703-8337 横浜支店 045-325-0211 大宮支店 048-645-6464 名古屋支店 052-229-1521 大阪営業部 06-6131-0602 九州支店 092-711-2181 Web サイト www.avantistaff.com HRタイムズに関するご意⾒、 ご要望はこちらまでお願いします hrtimes@avantistaff.com 4
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