IEA HP 実施協定(ヒートポンプセンター)ニューズレター 国内版 第 34 号(平成 26 年 7 月 (一財)ヒートポンプ・蓄熱センター発行) ニューズレター国内版は、IEA ヒートポンプ実施協定の事務局、ヒートポンプセンター(在:スウェ ーデン)発行の IEA HPC NEWSLETTER を日本語要約したものです。IEA HPC NEWSLETTER はヒートポン プセンターのホームページ http://www.heatpumpcentre.org/ 1 からダウンロードが可能です。 目 次 1. IEA HPC NEWSLETTER VOL.32 NO.2/2014 からピックアウト 1.1 巻頭言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 コラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.3 特集記事(1) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 1.3 特集記事(2) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.4 戦略的視点 8 1.5 Heat Pump News ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 2. 2.1 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ANNEXES(国際共同研究) On-going Annexes ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 2 1.IEA HPC NEWSLETTER VOL.32 NO.2/2014 からピックアウト 1.1 巻頭言 巻頭言 Foreword Mark van Stiphout Member of Cabinet of the Commissioner for Energy European Commission ヨーロッパのエネルギー政策は、EU内部のエネルギー市場に自足性と競合力をもたせること によって供給のセキュリティを達成しようとしている。エネルギーネットワークの構築やエネル ギーマネジメントを通じて、EU全体のエネルギー需要を削減しようと努力している。 冷暖房需要は、2010 年現在、最終エネルギー消費量の 47%を占めている。そのうち 80%以上 が、天然ガスを含む化石燃料による。化石燃料の依存率を減らすために、再生可能エネルギーの 活用や建物性能の向上が求められている。 そのような状況で、化石燃料の依存率低減のために、ヒートポンプへの期待が高まっている。 ヒートポンプを駆動する電気は再生可能エネルギーでバックアップできる。更に、蓄熱・蓄電と 結び付けられたヒートポンプは、発電と消費のバランス改善に貢献できる。このように、ヒート ポンプにはメリットが多い。本報の「ヒートポンプの研究のハイライト」では、北アメリカにお けるヒートポンプ技術を紹介する。 - 1 - 1.2 コラム IEA ETP 2014 ではヒートポンプによる省エネルギー達成を重視 IEA ETP 2014 Highlights Heat Pumps to Achieve Energy Savings beyond the 2 Degree Scenario Marc LaFrance Energy Analyst - Building Sector International Energy Agency (IEA) Paris, FRANCE IEA は、ソウルで開催された第5回クリーンエネルギー閣僚会議で、EPT(Energy Technology Perspective)2014 年版をリリースした。ETP の主な焦点は、地球の平均外気温が 2℃上昇するこ とへの対応である。 ETP は、EUと中国におけるエネルギーおよび CO2 排出量削減が示されている。これらの地域 ではヒートポンプと再生可能エネルギーの普及による化石燃料の削減が必要である。 2℃上昇時の解析結果によれば、ヒートポンプと再生可能エネルギーの普及により、EUでは天 然ガスは 30%削減、中国では天然ガスは 50%削減であった。なお、本解析では建物の外断熱等の 手法は含んでいた。2℃を超える上昇の場合、ヒートポンプのよる低減効果は、EUで 6%、中国 で 7%であった。 ヒートポンプの普及を促進させるためには、より多くの努力が必要である。最も有効な手段は、 毎年売られている何百万もの電気加熱型給湯器をヒートポンプ給湯器に変えることである。日本 では、ヒートポンプ給湯器の普及が進んでいるが、他の地域では非常に低い。 米国では、ヒートポンプ給湯器の開発は進んだが、販売は制限されている。EUは、ヒートポ ンプ給湯器普及の主導的役割を担うべきであるが、現実には普及していない。これは、ヒートポ ンプ給湯器の価格がアメリカの4倍であるからだ。人口あたりの販売台数は日本の 1/40 である。 給湯器をヒートポンプ化することによって、エネルギー効率は3倍に上昇する。ヒートポンプ の性能を十分に発揮させるためにも、更なる努力が必要である。 - 2 - 1.3 特集記事(1) 北アメリカにおけるヒートポンプ研究のハイライト Highlights of North America’s Heat Pump Research Xudong Wang, Karim Amrane, USA この記事は、アメリカにおける最近のヒートポンプ研究について述べている。DOE(United States Department of Energy)によって進められているガス焚きの吸収ヒートポンプや、次世代 の低 GWP 冷媒について報告している。 (1)概要 アメリカでは、図1に示すように空気熱源ヒートポンプが一般的である。ヒートポンプは 1990 年以降、2005 年まで毎年増加していたが、2006 年以降減少し、2008 年以降経済が回復するに従 ってやや増加傾向にある。これまで、ヒートポンプについての研究は、効率向上が主体であった。 図2に示すように、過去 35 年間で、ヒートポンプの期間効率(SEER)はほぼ倍に向上した。 図1.アメリカにおける空気熱源ヒートポンプの販売台数の推移 図2.アメリカで販売された空気熱源ヒートポンプの期間効率の推移 - 3 - (2)ヒートポンプシステム アメリカでは、DOE(Department of Energy)の BTO(Building Technology Office)がヒート ポンプ研究のスポンサーになっている。 これらの研究の目標は、2030 年までにビルにおけるエネルギー消費量を 2010 年に対して 50% 削減することである。 ①給湯機能付き空気熱源ヒートポンプ オークリッジ国立研究所(ORNL)では、空気熱源ヒートポンプに給湯機能を付加した IHP (Integrated Heat Pump)を開発している。 IHP の概念を図3に示す。冷房時は、室内を冷房するとともに、排熱は給湯用温水を加温し、 室外機で大気に放熱する。暖房時は、水熱源もしくは空気熱源ヒートポンプとして機能する。開 発目標は、従来システムに対し、50%エネルギー消費量を低減することである。 アトランタにおけるプロトタイプ機の試験結果は、従来機に対して 54%エネルギー消費量を削 減した。 図3.IHP のシステムフロー ②ガス駆動多機能ヒートポンプ さらに、ORNL はメーカおよびガス会社と共同で、家庭用のガス駆動多機能ヒートポンプを開発 するプロジェクトを推進している。 多機能ヒートポンプは、ガスエンジンで圧縮機を駆動する。最適な効率を達成するために、高 効率ガスエンジン、圧縮機、発電モジュールおよびコントローラーを装備している。発電モジュ ールは部分負荷時および予備電力バックアップに電力をすべて供給し、それにより、ピーク電力 - 4 - 需要を縮小する。40 ガロン(150 リットル)の蓄熱槽を維持している間、冷房 COP は 1.3、給湯 を含めた COP は 1.5 が期待できる。 更に、BTO はガス焚きの空気熱源吸収ヒートポンプ、高効率な地中熱利用ヒートポンプの開発 を推進している。 ③作動媒体 R410A が蒸気圧縮式ヒートポンプの冷媒として一般的に用いられているが、GWP(Global Warming Potential)が大きいため、新たな冷媒の探索が行われている。 ・性能に与える影響 AHRI は、空調および冷凍用の低 GWP 冷媒の探索を推進している。11 台の空調機を用いて、低 GWP 冷媒に対してドロップイン方式の試験が行われた。結果を図4に示す。HSPF(Heating Seasonal Performance Factor)は良好であったが、SEER(Seasonal Energy Efficiency Ratio)はわずか に低下した。NIST(National Institute of Standards and Technology)は、低 GWP 冷媒の広範 囲な熱力学的評価を行った。 ・微燃性の評価 低 GWP 冷媒の候補は、ASHRAE によれば、A2L として分類される。これらの冷媒は、低い燃焼速 度があり、微燃性であるため、リスクアセスメントが必要である。リスクアセスメントの結果、 微燃性によるリスクは低いことが判明した。 ・環境に与える影響 さらに、低 GWP 冷媒は、LCCP(Life Cycle Climate Performance)も評価されている。 図4.低 GWP 冷媒の R410A に対する期間性能 - 5 - 1.3 特集記事(2) スウェーデンにおける家庭用地中熱利用ヒートポンプの CO2 排出量に与える影響 Effect of Residential GSHP System Design on CO2 Emissions in Sweden Jeffrey D. Spitler (USA), Mei Yung Wong (USA), Signhild Gehlin (Sweden) スウェーデンでは、家庭用地中熱利用ヒートポンプシステムは、電気空調の補助的な役割を担 う。地中熱熱交換器の大きさとヒートポンプ能力が電気消費量に強く影響する。ストックホルム の 121 の住宅を調べ、CO2 排出量を推定する方法を提案する。 (1)概要 スウェーデンにおける地中熱利用ヒートポンプ(GSHP)は、1970 年代から普及し始め、現在で は冬場の暖房負荷ピークの 60~70%を賄っている。本報では、地中熱利用ヒートポンプが CO2 排 出量に与える影響について報告する。 (2)評価方法 家庭の給湯負荷(DHW)はスェーデンのエネルギー庁の値を用いた。ストックホルムの 121 の住 宅の地中熱利用ヒートポンプに対して1時間ごとの電力消費量および CO2 排出量を模擬した。 ①ヒートポンプモデル スカンジナビア地方で使用される家庭用地中熱利用ヒートポンプをモデル化した。 ②熱交換器モデル 地中熱熱交換器 GHE(Ground heat exchangers)は、閉ループのシングルUチューブを用いて いる。 ③供試住宅 ヒートポンプの能力は 5~15kW、チューブの長さは 100~300mである。 ④気象データ IWEC(International Weather for Energy Calculations)のデータを用いた。 ⑤CO2 排出量 CO2 排出量(kgCO2/kWh)は、図1に示す 2010 年から 2013 年の値を用いた。 図1.スウェーデンにおける CO2 排出量 - 6 - (3)評価結果 ストックホルムの 121 の住宅の地中熱利用ヒートポンプに対して1時間ごとの電力消費量およ び CO2 排出量を模擬した結果は以下の通りである。 図2は、初期コストに対する年間 CO2 排出量の関係を示す。図3は、チューブ長さあたりの交 換熱量と年間 CO2 排出量の関係を示す。予想通り、ヒートポンプの能力を大きくし、チューブ長 さを長くすれば、CO2 排出量は減少する。 図2.初期コストに対する年間 CO2 排出量の関係 図3.チューブ長さあたりの交換熱量と年間 CO2 排出量の関係 (4)結論 スウェーデンにおける CO2 排出量の見地から、ヒートポンプ能力をより大きくし、チューブを より長く深くした最善の設計は、最も悪い設計よりも CO2 排出量を 30%減らすことができる。 - 7 - 1.4 戦略的視点 戦略的視点 Strategic Outlook Martin Forsén, Sweden 世界中の政府は、エネルギー効率の重要性、および再生可能エネルギーの利用拡大について、 徐々に理解し始めている。その変化は、気候変動や安全なエネルギー供給によって引き起こされ ている。しかし、エネルギー政策は、国によってかなり異なっている。 それにもかかわらず、新しい政策の選択肢は少ない。1 つは、機器や建物に係るエネルギー効 率に基準を設けることである。もうひとつは、エネルギー輸入の依存性を縮小することである。 米国はシェールガスの調査に力を注いでいる。しかし、ドイツは再生可能エネルギーの使用拡大 に力を注いでいる。 ヒートポンプに対する規制は、国によって異なるが、技術開発を進めることで、ヒートポンプ の市場が拡大することを期待する。 (1)はじめに 近年、北京を訪れるたびに、交通状況が悪くなっていくように感じる。自転車の数が減り、自 家用車の数が増えている。この現象は、中国経済が発展してきた一例である。しかし、エネルギ ー政策は依然として遅れている。 (2)スマートシティーとスマート機器 中国は急速に発展している。マッキンゼーによれば、中国は 2025 年までに 1500 万を超過する 人口を備えた 10〜12 の巨大都市を持つだろうと推測する。 その際、スマートシティーの考え方は重要である。中国では、スマートシティーに関連した企 業が 2013 年に 100 以上設立された。スマートシティーの市場は、2015 年までに 5000 億元に達す ると想定されている。ヒートポンプは、スマートシティー開発における重要な役割を持っている。 スマート機器は、太陽光発電や風力発電のような出力が変動し易い再生可能エネルギーの負荷 調整機能を持たなければならない。 スマートグリッドにおけるヒートポンプのスマート制御は、電力需要に対応する必要がある。ス マート制御において、コストの最小化と機器の高効率運転は必ずしも一致しない。将来、スマー ト機器は、より多くのIT技術を取り込む必要がある。 (3)Shanzhai 中国の会社は、コピー品の製造や、低コスト化だけでは競争することが困難になってきている。 生き残るためには、高品質で高機能な商品を提供する必要がある。 最も成功した会社のうちのいくつかは、オリジナルを越える高品質を実現している。中国の単 語「shanzhai」は、依然は模造品を意味していたが、近年は、オリジナルより機能性を備えた製 品を意味するようになった。それは器具およびコンポーネント生産においてますます一般的にな ってきた。 「BYD」は、模造品製造会社として 1995 年に 20 人の従業員でスタートしたが、今日では、バッ テリーと自動車の分野で 10,000 人以上を雇用するリーダー企業に成長した。 1991 年に設立された「Gree」は、今日では世界に 9 つの工場と 6,000 万ユニットの生産能力を - 8 - 有するエアコンメーカーに成長した。たとえ、R22 がまだ使用されても、R290 と R32 を使用して 環境に配慮した設備を有している。 中国は、1 億ユニットを超える世界最大のエアコン製造国として地位を固めている。しかし、 政府は給湯器に関心が移っている。 給湯器は機器効率に MEPS(Minimum energy performance standards)が採用されており、世界 的な傾向と見なすことができる。EU ではエコデザインが採用され、アメリカでは 2015 年以降、 50 ガロン(190 リットル)を超える給湯器に MEPS が適用される。スイスのクリーニング屋用ドラ イヤーにも MEPS が適用される。 国の規制が技術開発を促進する。ヒートポンプ技術が、空調以外の分野、例えば、電気自動車、 洗濯機、皿洗い機に導入されるであろうことは予知される。 (4)福島原発事故とシュールガス革命 電動ヒートポンプの競合力が、エネルギーの価格および電気の利便性に大きく依存することは 言うまでもない。 特定の国における電動ヒートポンプの市場競合力を分析する場合、有効な指標のひとつは、単 位熱量あたりのエネルギー価格(1 kWh あたりのエネルギー価格)である。エネルギー価格は、 期間成績係数(seasonal performance factor)に依存する。電気は CO2 排出量が少ないため、エ ネルギー源として選択される場合が多いが、予期せぬ事故や国の政策に影響を受けることがある。 2011 年の福島事故は、原子力発電の将来について議論を深める機会となった。ドイツとスイス は、原子力を段階的になくすことを決定した。ドイツは、段階的廃止を促進するために、再生可 能エネルギーの普及に努めた。スイスはドイツよりも原子力の比率が高いために、目標を達成す ることは厳しい。 同時に、他の国々は、原子力が正当なコストで安全に操作することができるという結論に達し た。フィンランドと英国は、原子力の使用を拡張することを決定した。 一方、米国のシェールガス生産は、天然ガスの価格に大きな影響を与えた。安価なシェールガ スの登場は、ガス焚きの温風炉からヒートポンプへ切り替えるべき機会を奪った。米国のエネル ギー自給率が向上することにもなった。しかし、米国のシェールガス革命は、再生可能エネルギ ーへの避けられない投資を遅らせるだけの短期的な解決策であるかどうかは、現時点で不明であ る。 ヨーロッパにおけるシェールガスの経済性は不明である。英国やポーランドにシェールガスが 大量に貯蔵されていることは認識されていたが、採掘の費用、インフラ、法的問題を理由に、シ ェールガスの採掘が見送られていた。 (5)おわりに エネルギー効率向上の世界的な動向を受け、ヒートポンプ技術は、暖房および給湯分野におい て、化石燃料の代替となる有力な解決策の 1 つとして位置付けられている。ヒートポンプは将来 のエネルギーシステムに重要な役割を果たす。 - 9 - 1.5 Heat Pump News <一般> ○米国の EPA が再生可能エネルギーを活用している企業 100 社のリストを公表 EPA(Environmental Protection Agency)の Green Power Partnership は、再生可能エネルギ ーを活用している企業 100 社のリストを公開した。 特に、インテルは、再生可能エネルギーをベースとした電気を 100%使用しており、既に7年 間が経過している。トップ 10 社には、他にマイクロソフト、グーグルおよびアップルが含まれて いる。 Source: www.epa.gov ○アメリカ人はエネルギー効率により積極的 テキサス大学の調査によれば、アメリカ人の 79 パーセントがエネルギー効率の優先順位が高い。 しかし、ほぼ 2/3 の国民が、政治的な「論争」がエネルギー効率向上の最も大きな障害であると 感じている。 2014 年 3 月に行われた UT のエネルギー世論調査(2000 人を超える米国住民の調査)によれば、 ほとんどの国民はエネルギー使用時の環境影響について関心を持っているが、エネルギー効率向 上の最も大きな動機は経済性である。 Source: powersource.post-gazette.com <政策> ○EU2030 年に向けた建物の省エネルギー性について 老朽化する建物ストックの省エネルギー性を高めることは、EUの重要な政策のひとつになる だろうとEUトップから発言があった。これらの記載された報告書は、EUが夏季休暇期間とな る 7 月に公表される予定である。 Source: www.euractiv.com ○エネルギー効率向上に向けた投資が「転換点」 ヨーロッパでは、エネルギー効率向上に向けて投資するか、資金不足で省エネを実施できない か、分岐点に到達したようである。 「私たちは転換点にいる。もし、エネルギー効率向上策を取らなかった場合、2020 年時点のエネ ルギー効率目標値を達成できないリスクを生じる。 」 Source: www.euractiv.com <作動媒体> ○日本の企業が空調機用の HFO ベースの低 GWP 冷媒を開発 旭硝子(AGC)は、NEDO と共同で HF、R410A に替わる低 GWP 冷媒として HFO1123 を発表した。新 冷媒の GWP は、R410A の 1/6、R32 の 1/2 と小さい。 Source: www.racplus.com - 10 - ○イギリスの F-gas 排出量がわずかに増加 イギリスの温室効果ガス排出量が 3.2%増加していることがわかった。イギリスの報告書によ れば、 2011 年の 5 億 6320 万トンの CO2 排出量から、 2012 年は 5 億 8110 万トンまで増加している。 これは、主として住宅用ガス消費量の増加(12.3%)および石炭による発電量の増加(5.9%)に 起因する。 Source: www.acr-news.com <技術開発> ○家庭用冷凍技術のブレイクスルー GE アプライアンス社(アメリカ)の研究者は、次世代の家庭用凍技術、磁気冷凍を開発してい る。その技術は、冷媒やコンプレッサーを使わず、現行品よりも 20%効率が高い。さらに、その 技術は、空調機を含む他のヒートポンプに適用することができる。 Source: www.acr-news.com ○アルミニウム製熱交換器が増加 これまで、アルミニウムフィンと銅管を組み合わせた熱交換器が一般的であった。しかし、銅 価格の上昇により、メーカはコストを下げる方法として、銅管の替わりにアルミニウムを採用す ることを始めた。 しかし、アルミニウムフィンと伝熱管の接合は難しく、漏れが生じた時の修理も難しい。この ため、アルミニウム製熱交換器の用途は限定されている。一方、アルミニウムの表面処理技術が 向上し、加工性や耐久性が向上してきている。 Sources: www.ejarn.com (news 1) and www.ejarn.com (news 2) <Markets 市場> ○ポーランドにおけるヒートポンプのハイライト ポーランドの経済産業省は、再生可能エネルギーから最終のエネルギー消費量を算出する方法 を公表した。この決定は、ポーランドの法律における最初の規定となる。これによって、ヒート ポンプが再生可能エネルギーから得られる熱量を求めることができる。 Source: www.ehpa.org ○フランスにおけるワイン冷蔵市場が拡大 GIFAM(フランスの家電メーカの協会)によれば、ワイン冷蔵市場は、フランスで急速に拡大し ている。ワイン冷蔵は、3つのタイプがある。第1はワインを冷却すること、第2はワインを貯 蔵すること、第3はワインの冷却と貯蔵を行うことである。 フランスにおけるワイン冷蔵の総数は現在 160 万ユニットであり、この2年間で総数の 28%が 設置された。 Source: www.ejarn.com - 11 - 2.ANNEXES(国際共同研究) 2.1 On-going Annexes (1)ANNEX 35 Application of Industrial Heat Pumps(産業用ヒートポンプへの適用) 本アネックスは、ANNEX13 とのジョイントアネックスであり、9 か国が参加し、幹事国はドイツ である。日本は参加しており、日本国内分科会主査は筑波大学の内山洋司教授である。 本アネックスの目的は以下の通りである。 ・市場調査およびヒートポンプ普及に対する障壁 ・ヒートポンプのモデル化および経済性評価モデルの構築 ・ヒートポンプ技術調査 ・ヒートポンプの適用およびモニタリング 本アネックスは、報告書をまとめ、本年 6 月に終了する予定である。なお、本アネックスの成 果は、モントリオールで開催された第 11 回 IEA ヒートポンプ会議で発表された。 (2)ANNEX 36 Quality Installation / Quality Maintenance Sensitivity Studies(据付時 およびメンテナンス時のヒートポンプ性能に及ぼす研究) 本アネックスは、4 か国が参加し、幹事国は米国である。日本は参加していない。据付時およ びメンテナンス時に、ヒートポンプの効率や能力にどのような影響を与えるのかを研究している。 本アネックスの最終報告は、本年 7 月の予定である。 (3)Annex 37 Demonstration of field measurements on heat pump systems in buildings – good examples with modern technology(建物におけるヒートポンプの現場計測の実施) 本アネックスは、4 か国が参加し、幹事国はスウェーデンである。日本は参加していない。実 際に設置されているヒートポンプの現場計測を行い、その値を省エネルギー性、CO2 排出量の算 出に反映させていく。本アネックスは、現在、最終段階にあり、本年 9 月に最終報告書がまとま る予定である。 (4)ANNEX 38 Solar and heat pump systems(太陽熱とヒートポンプシステム) 本アネックスは、11 か国が参加し、幹事国はスイスである。 日本は参加していない。本アネ ックスは、太陽熱とヒートポンプを組み合わせた暖房・給湯システム(「本システム」)である。 11 か国の 55 名の専門家が 2010 年~2013 年の 4 年間に 8 回の会議を行った。 主な結果は以下の通りである。 ・本システムの市場調査は、80 を超える会社に対して行った。 ・本システムのシミュレーションモデルを構築した。 ・現場の 32 の本システムを計測した。 ・2014 年の秋までに本システムの最終報告書をまとめる予定である。 ( 5 ) ANNEX 39 A common method for testing and rating of residential HP and AC annual/seasonal performance(住宅用ヒートポンプとエアコンの年間/期間成績係数の共通した 試験方法及び評価方法の確立) 本アネックスは、10 か国が参加し、幹事国はスウェーデンである。日本は参加しており、日本 国内分科会主査は早稲田大学の齋藤潔教授である。本アネックスは、現在、最終段階にあり、本 - 12 - 年 8 月に終了する予定である。 本年 5 月に開催された IEA のヒートポンプ国際会議で、本アネックスに係るワークショップが 開かれ、30 名が参加して活発な情報交換が行われた。Roger Nordman 氏、Wayne Reedy 氏、斎藤 教授らが講演した。 (6)ANNEX 40 Heat pump concepts for Nearly Zero Energy Buildings(ニアリーゼロエネル ギービルディングのためのヒートポンプのコンセプト) 本アネックスは、8 か国が参加し、幹事国はスイスである。日本は参加しており、日本国内分 科会主査は名古屋大学の奥宮正哉教授である。カナダとフィンランドが途中参加である。2012 年 7 月にスタートし、活動期間は 3 年間を予定している。本アネックスは、NZEB(Nearly Zero Energy Buildings)実現に向けたヒートポンプの改良もしくは調査を行っている。 本アネックスは、現在、タスク2およびタスク3(NZEB のためのヒートポンプのデザイン、シ ミュレーションおよび適切なヒートポンプ技術の開発)の段階にある。しかし、途中参加のカナ ダとフィンランドはタスク1の段階である。 (7)ANNEX 41 Cold Climate Heat Pumps(寒冷地用ヒートポンプ) 本アネックスは、4 か国が参加し、幹事国は米国である。日本は参加しており、日本国内分科 会主査は早稲田大学の勝田正文教授である。本アネックスは、寒冷地に適したヒートポンプの調 査研究であり、2012 年 7 月にスタートした。 最初は、空気熱源ヒートポンプを研究対象とした。これは、外気温の低下に従って、効率や能 力が低下するからである。本アネックスの目的は、外気温が-7℃以下で性能発揮できるヒートポ ンプの提案である。これまでの日本の研究では、太陽熱とヒートポンプ給湯器を組み合わせるこ とで、期間効率が 5.0 と高いシステムが実現できる。なお、本アネックスに係る最終会議は、2015 年の国際冷凍会議中に横浜で計画されている。 (8)ANNEX 42 Heat Pumps in Smart Grids(スマートグリッドにおけるヒートポンプ) 本アネックスは、7 か国が参加し、幹事国はオランダである。日本は参加していない。本アネ ックスは、ヒートポンプがスマートグリッドに取り入れられるべき技術であることを発信するこ とを目的としている。2013 年 10 月に最初の会議が、2014 年 2 月にフランスで最初のワークショ ップが開催された。 (9)ANNEX 43 Fuel-driven sorption heat pumps(燃料駆動ヒートポンプ) 本アネックスは、6 か国が参加し、幹事国はドイツである。日本は参加していない。本アネッ クスは ANNEX34(冷暖房用熱駆動ヒートポンプ)の継続プロジェクトであり、2012 年 3 月にスタ ートした。2013 年 10 月にドイツで本アネックスに係る会議が開催された。 本アネックスは以下の 5 つのタスクから成り立っている。 ・Task A: Generic Systems and System Classification(システムの分類) ・利用可能な熱源と加熱システム ・既存市場と規定される境界条件 ・Task B: Technology Transfer(技術移転) ・新しい材料(耐食材料ほか) ・新しい要素技術(コンパクト熱交換器ほか) ・システム設計 ・Task C: Field test and performance evaluation(実証試験と性能評価) - 13 - ・標準的な測定方法/モニタリング方法 ・拡張された期間成績係数 ・Task D: Market potential study and technology roadmap(市場性と技術ロードマップ) ・外気温や建物構造を考慮したシミュレーション研究 ・技術ロードマップに対応した市場データおよび建物ストック ・Task E: Policy measures and recommendations, information(政策、情報) (10)ANNEX 44 Performance indicators for energy efficient supermarket buildings(ス ーパーマーケット向けエネルギーシステム) 本アネックスは、2 か国(スウェーデン、オランダ)が参加し、幹事国はオランダである。本 アネックスは、スーパーマーケット向けに実存するエネルギーシステムをマッピングし、それら のデータを収集することを目的とする。 スウェーデンでは、最初の会議は本年 2 月に関係者が集まって開催された。オランダでは、デ ルフト工科大学の学生がスーパーマーケットのデータ解析に着手した。なお、本アネックスの最 初 の 会 議 は 、 本 年 6 月 に ロ ン ド ン で 開 催 さ れ る 国 際 会 議 ( International Conference on Sustainability & the Cold Chain)で開催される予定である。 このニューズレターの効果的な活用のために、今後、改善を図っていきたいと考えており ますので、忌憚のないご意見、ご要望など下記事務局までお寄せ下さい。 事務局連絡先: (一財)ヒートポンプ・蓄熱センター 技術研究部 IEA ヒートポンプ実施協定 日本事務局 檜皮 武史、西山 教之 (TEL: 03-5643-2404/ FAX: 03-5641-4501/ e-mail: [email protected]、[email protected]) - 14 -
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