クォンティフェロン TB ゴールド (QFT) 検査における「判定保留」の考え方 ■ 一般的な「判定保留」の考え方 臨床検査では、正常か異常かを判断するため、正常の状態で規準となる基準範囲を定めその範囲から測定値が外れた場合に 疾患の疑いがあると判断します。 一方、腫瘍マーカーの検査や感染症の検査においては、疾患が無い正常な場合での検査結果はほぼ下限値であり、異常の場 合には検査数値が上昇することが知られています。このような場合にはある一定値をカットオフ値と設定します。 このような基準値やカットオフ値は臨床検査の結果を簡単に判断するために有用ですが、実際の臨床においては患者の病態 とそぐわない場合があります。そのような場合、検査結果はあくまでも診断補助であるということを考慮して「判定保留」と いう範囲を設定します。 また、検査の測定値は、検査キット自体の性能、測定者の手技および被検者の生体機能等によって変動し、カットオフ値付 近での測定値の変動は疾患の判定結果に影響します。 従って他の検査結果および臨床所見も考慮して判定する必要がある場合には、測定値のカットオフ値付近に「判定保留」を 設定します。 つまり、「判定保留」とは、測定結果による真の疾患である者あるいは真の疾患でない者を見逃すリスクをなるべく回避する ために設定されたとも考えられます。そのため「判定保留」は、「グレーゾーン」ともよばれています。 ■ QFT 検査における「判定保留」の考え方 QFT は結核感染の診断補助であり、最終的には被検者の臨床的所見等を考慮して総合的に判断します。 (1) QFT のカットオフ値 0.35IU/mL は特異度を感度に比べより重視して決定され 、 それより低値領域の 0.1IU/mL 以上∼ 0.35IU/mL 未満の「判定保留」は、被検者の背景を (2) 考慮しながら既感染者の見逃しをできるだけ小さくするために設定されたものです 。 具体的には測定値が「判定保留」であった場合は、被検者の背景を総合的に考慮して 判断しますが、判定例が下記の参考文献 (2)(3) で示されています。 実際の判定にあたっては必ず専門家が、各被検者のリスク等に応じて個別に検討を行い慎重に措置を 講じる事になります。 1. 陽性と判定する場合:結核感染率が高いと推定される対象群 (2) (例:接触者健診で QFT 陽性率 15%以上あるいは陽性者数が 8 名以上であった集団 ) 2. 経過観察が必要な場合 ( 被検者が高リスクでない場合:1 ヶ月後再測定、 (3) 接触者健診の場合:3 ヶ月および / あるいは 6 ヶ月後の再測定 ) 3. 陰性と判定する場合:結核感染率が低いと推定される対象群 (2) ( 例;医療従事者の定期健診等 ) 参考文献 (1) 原田登之、樋口一恵、関谷幸江、他 結核 2004;79:725-735 (2) 公益財団法人結核予防会発行、現場で役に立つクォンティフェロン TB ゴールド使用の手引き平成 24 年度版 p33-42 (3) 吉山 崇:接触者健診における QFT の適用の限界と今後の対策 . 結核 . 2009; 84: 334 以上
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