UPC2を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析

UPC2を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
Andrew Aubin
Waters Corporation, Milford, MA, USA
アプリケーションの利点
はじめに
■■
広範囲の脂溶性ビタミン製剤の迅速分析
脂溶性ビタミン製 剤の 分析は、オイル状または粉末 状の製 剤を充 填したカプ
■■
Waters® ACQUITY UPC2TM システムを用い、6 つ
の分析ではほとんどの場合、購入・廃棄処 理共に高価な溶媒(ヘキサン、 tert-
セル、もしくは錠剤であるが故に、しばしば困難な作業を伴います。これらの製剤
の 異 なる 脂 溶 性ビタミン 製 剤 の 分 析を
行いました。
■■
このシステムは、複数の装置や異なる技術
を用いることなく、広範囲な脂溶性ビタミン
製剤を分析でき、研究室における脂溶性ビ
タミン分析を大幅に合理化することが可能
です。
■■
マトグラフィー法が採用されています。他の分析技術としては、逆相液体クロマト
グラフィー、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、および比色分析
があります。脂溶性ビタミン分析に UltraPerformance Convergence ChromatographyTM
(UPC2)を用いることは、データの品質を維持しながら、コストと有機溶媒使用量
を削減し、分析時間の短縮と、環境に配慮したグリーンテクノロジーを実現する
唯一の方法です。本アプリケーションノートでは、ACQUITY UPC 2 を用いて図 1 に
示すビタミン A 、 ビタミン A + D3 、 ビタミン E 、 ビタミン D3 、 ビタミン K1、
それぞ れの 脂 溶 性ビタミン 製 剤につ いて
目的 物 質と医 薬 品 添 加 剤の 迅 速 な分 離に
成功しました。
■■
ブチルアルコール、酢酸エチル、ジクロロメタンなど)を使用する順相液体クロ
ビタミン A、ビタミン E、ビタミン K1 の異
ビタミン K2 を含む脂溶性ビタミン製剤の分析を行いました。これらの実験結果
は、UPC 2 がデータ品質に妥協することなく、現在使用されている分析技術のいく
つかの代替となり得る可能性を示しています。
有効成分
性体分離に成功しました。
1 カプセル /
錠剤あたりの量
ビタミン A
10,000 IU A
大豆油、ゼラチン、グリセリン、水
ビタミン A+D3
10,000 IU A
2000 IU D3
大豆油、ゼラチン、グリセリン、水
ビタミン D3
2000 IU D3
ヒマワリ油、ゼラチン、グリセリン、水
ビタミン E
400 IU E
大 豆 油、ゼラチン、グリセリン、水、 ウォーターズのソリューション
ACQUITY UPC システム
2
EmpoweTM 3 ソフトウエア
食用黄色 6 号レーキ、食用青色 1 号レーキ、
二酸化チタン
ビタミン K1
100 µg
ACQUITY UPC 2 カラムキット
ACQUITY UPC 2 PDA 検出器
添加剤
セ ル ロ ース、 リ ン 酸 水 素 カ ル シ ウム、
ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、
クロスカルメロースナトリウム
ビタミン K2
50 µg
セルロース、ステアリン酸マグネシウム、
シリカ
表1 脂溶性ビタミン製剤
キーワード
UPC 2、脂溶性ビタミン、ビタミン E、ビ
タ ミ ン A、 ビ タ ミ ン D3、 ビ タ ミ ン K1、
ビタミン K2
1
分析条件
装置:
サンプル調整
ACQUITY UPC 2
ACQUITY UPC 2 バイナリー
ソルベントマネージャ
サンプルマネージャ
オイル充填カプセル剤(ビタミン A、A+D3、D3)それぞれ 4 個の中身をイソオ
クタン 10 ml で溶解させました。ビタミン E カプセルは中身をイソオクタン 10 ml で
溶解させました。ビタミン K 錠剤は 8 つに砕いたものを 30 分間イソオクタンで
超音波抽出を行い、沈降後、一定量の抽出物を 1.0 μm ガラス繊維フィルターを
用いてバイアル瓶に直接ろ過しました。ビタミン K2 は、粉末充填カプセル8つの
コンバージェンスマネージャ
中身を出し、イソオクタンで 30 分間超音波抽出を行い、沈降後、一定量の抽
カラムマネージャ
出物を 1.0 μm ガラス繊維フィルターを用いてバイアル瓶に直接ろ過しました。
PDA 検出器
カラム:
ACQUITY UPC 2 BEH
3.0 × 100 mm, 1.7 μ m
ACQUITY UPC 2 HSS C18 SB
3.0 × 100 mm, 1.8 μ m
ACQUITY UPC 2 HSS C18 SB
2.1 × 150 mm, 1.8 μ m
結果と考察
ビタミンA
魚肝油由来とラベル表示されたビタミン A 製剤には、添加剤として大豆油、ゼラ
チン、グリセリン、水を含んでいました。ビタミン A パルミチン酸エステルの
2 つの主要なピーク(シス体とトランス体の異性体、それぞれ 1.325 分と 1.394
分)は、添加剤の小さなピークとの良好な分離を示しました。添加剤のピークは、
データシステム: Empower3 ソフトウエア
図 1 に示すように、いずれも 2.0 から 2.5 分 の範囲内に溶出しています。この
分離では、アクティブバックプレッシャーレギュレーター( ABPR)を 2176 psi
分析条件:
各分析の詳細は、本アプリケー
ションノートの『結果と考察』に
すように、表 2 の分析条件を用いてビタミン A 酢酸エステルとビタミン A パル
ミチン酸エステルおよび、レチノールを容易に分離することができました。
1.394
記載。
に設定し、CO2 / メタノール(0.2% ギ酸を含む)比率 97:3 から 90:10 まで 3 分強
のグラジエントを行いました。分析条件詳細を表 2 に示します。図 2 に示しま
trans-vitamin A palmitate
0.40
AU
0.30
0.10
0.00
0.00
cis-vitamin A palmitate
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.325
0.20
1.40
1.60
Minutes
図1 ビタミンA カプセル成分の分離
2
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
1.80
2.00
2.20
2.40
2.60
2.80
3.00
カラム
ACQUITY UPC 2 HSS C18 SB, 3.0×100 mm, 1.8 μ m
流量
2.0 mL/min
グラジエント
97 : 3 から 90 : 10 3 分強
移動相 A/B
A:CO2 / B:メタノール(0.2 % ギ酸を含む)
検出器
UV 320 nm(補正 500 ∼ 600 nm)
注入量
1 μL
ABPR 圧力
2176 psi
カラム温度
50 ℃
0.609
1.392
1.450
表2 ビタミンAの分析条件
0.70
0.65
0.60
0.55
0.50
0.45
AU
0.40
0.35
0.30
Vitamin A
acetate
Vitamin A
palmitate
Retinol
0.25
0.20
0.15
0.578
1.323
0.10
0.05
0.00
-0.05
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
1.80
2.00
2.20
2.40
2.60
2.80
3.00
Minutes
図2 ビタミンA 酢酸エステル、ビタミンA パルミチン酸エステル、レチノールの分離
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
3
ビタミンA+D3
ビタミン A のみと同様に、魚肝油由来とラベル表示されたビタミン A + D3 製剤には、添加剤として大豆油、
ゼラチン、グリセリン、水を含んでいました。ビタミン A パルミチン酸エステルの2つの主要なピーク(シス
体とトランス体の異性体、それぞれ 2.626 分と 2.851 分で溶出)は、添加剤ピークより前に溶出します。図
3 で示されるような、製剤中の主な賦形剤原料や他の化合物とビタミン D3(コレカシフェロールは 6.862
分で溶出)との完全な分離を達成するためには、十分な分離効率を持つ長いカラムを使用する必要があり
ました。図 3 中の拡大図に示すように、このシステムによってビタミン D3 のピークを検出するための十分な
感度が得られました。
2.851
1.00
trans-vitamin A
palmitate
0.024
0.75
0.012
0.50
cholecalciferol
0.006
6.862
AU
AU
0.018
0.000
4.20 4.40 4.60 4.80 5.00 5.20 5.40 5.60 5.80 6.00 6.20 6.40 6.60 6.80 7.00 7.20 7.40 7.60 7.80 8.00 8.20 8.40 8.60 8.80 9.00
0.25
Minutes
cis-vitamin A
palmitate
6.862
2.626
cholecalciferol
0.00
0.00
0.50
1.00
1.50
2.00
2.50
3.00
3.50
4.00
4.50
5.00
Minutes
図3 ビタミンA+D3カプセル成分の分離
4
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
5.50
6.00
6.50
7.00
7.50
8.00
8.50
9.00
9.50
10.00
この分離では、CO2 / メタノール(0.2% ギ酸を含む)比率 99:1 から 90:10 まで 10 分強のグラジエントを行い
ました。分析条件詳細を表 3 に示します。
カラム
ACQUITY UPC 2 HSS C18 SB, 2.1×150 mm, 1.8 μ m
流量
1.0 mL/min
グラジエント
99 : 1 から 90 : 10 10 分強
移動相 A/B
A:CO2 / B:メタノール(0.2% ギ酸を含む)
検出器
UV 263 nm(補正 500 ∼ 600 nm)
注入量
1 μL
ABPR 圧力
2176 psi
カラム温度
50 ℃
表3 ビタミンA+D3とD3 のみの分析条件
ビタミンD3
ヒマワリ油由来とラベル 表 示された製 剤は、表 3 のビタミン A+D3 の 分析 条 件と同一 条 件で、カプセル
賦形剤材料からビタミン D3(コレカルシフェロール、6.867 分)を容易に分離することができました。
0.048
0.036
AU
0.024
cholecalciferol
6.867
0.012
0.000
0.00
0.50
1.00
1.50
2.00
2.50
3.00
3.50
4.00
4.50
5.00
5.50
6.00
6.50
7.00
7.50
8.00
8.50
9.00
9.50 10.00
Minutes
図4 ビタミン D3カプセル成分の分離.
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
5
ビタミンE
ビタミン E カプセル中のトコフェロール異性体 4 種 (d-α, d-β, d-γ, d-δ) をベースライン分離するために開発
された超高速グラジエント分析(分析時間 90 秒以下)のクロマトグラムを図 5 に示します。この分離では、
CO2 / メタノール(0.2% ギ酸を含む)比率 98:2 から 95:5 まで 1.5 分強のグラジエントを行いました。分析
0.489
条件詳細を表 4 に示します。
α-tocopherol
1.04
0.78
AU
0.763
γ-tocopherol
0.52
0.893
δ-tocopherol
0.26
0.695
β-tocopherol
0.00
0.00
0.12
0.24
0.36
0.48
0.60
0.72
Minutes
図5 ビタミン E カプセル成分の分離
カラム
ACQUITY UPC 2 BEH, 3.0 × 100 mm, 1.7 μ m
流量
2.5 mL/min
グラジエント
98 : 2 から 95 : 5 1.5 分強
移動相 A/B
A:CO2 / B:メタノール
検出器
UV 293 nm(補正 500 ∼ 600 nm)
注入量
1 μL
ABPR 圧力
1885 psi
カラム温度
50 ℃
表4 ビタミン E の分析条件
6
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
0.84
0.96
1.08
1.20
ビタミンK1
ビタミン K1 錠剤は、図 6 に示すように CO2 /(メタノール / アセトニトリル = 1:1 )= 99 : 1 のシンプルなアイソ
クラティック条件により完全分離し(RS>2.0)、明確なピークを生成しました。図 7 に示すように両ピークの
関連性を表すように UV スペクトル(極大吸収 246 nm)は類似しています。未確認ではありますが(分析
の際、各異性体の個別の標準品を使用できなかったため)、2 つのピークは、フィロキノン(ビタミン K)の
立体異性体ではないかと推測されます。分析条件詳細を表 5 に示します。
0.0104
trans-phylloquinone
2.226
0.0078
AU
0.0052
cis-phylloquinone
2.062
0.0026
0.0000
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
1.80
2.00
2.20
2.40
2.60
2.80
3.00
Minutes
図6 ビタミンK1錠剤成分の分離
カラム
ACQUITY UPC 2 HSS C18 SB, 2.1×150 mm, 1.8 μ m
流量
1.5 mL/min
アイソクラティック
A / B = 99 : 1
移動相 A/B
A:CO2 / B:メタノール / アセトニトリル(1:1)
検出器
UV 248 nm(補正 300 ∼ 400 nm)
注入量
2 μL
ABPR 圧力
1885 psi
カラム温度
50 ℃
表5 ビタミンK1の分析条件
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
7
0.0014
2.064 Peak 1
246.4
trans-phylloquinone
0.0012
0.0010
AU
0.0008
0.0006
0.0004
317.6
0.0002
393.6
0.0000
0.009
2.227 Peak 2
246.4
cis-phylloquinone
0.008
0.007
AU
0.006
0.005
0.004
0.003
0.002
324.7
0.001
391.2
0.000
210.00 220.00 230.00 240.00 250.00 260.00 270.00 280.00 290.00 300.00 310.00 320.00 330.00 340.00 350.00 360.00 370.00 380.00 390.00
nm
図7 2.064分と2.227分におけるビタミンK のUV スペクトル
8
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
ビタミンK2
ビタミン K2 は、メナキノン(MK)の側鎖部分の長さ(不飽 和イソプレノイド単位の数)違いで MK-3 から
MK-14 等様々な種類があります。この錠剤を CO2 / メタノール = 95 : 5 のアイソクラティック条件で分析した
ところ、図 8 に見られるように、主ピークが 1 本といくつかの小さなピークが見られ、MK-7 と同定しました。
この結果は、この製剤が主に MK-7 を含んでいるというラベル表示と一致しています。分析条件詳細を表 6
に示します。
0.008
1.388
menaquinone-7 (MK7)
AU
0.006
0.004
0.002
0.000
0.00
0.20
0.40
0.60
0.80
1.00
1.20
1.40
1.60
1.80
2.00
2.20
2.40
Minutes
図8 ビタミンK2 カプセルの成分の分離
カラム
ACQUITY UPC 2 HSS C18 SB, 3.0×100 mm, 1.8 μ m
流量
3.0 mL/min
アイソクラティック
95% A:5% B
移動相 A/B
A:CO2 / B:メタノール
検出器
UV 248 nm(補正 500 ∼ 600 nm)
注入量
1 μL
ABPR 圧力
1885 psi
カラム温度
50 ℃
表6 ビタミンK2の分析条件
UPC 2 を用いた脂溶性ビタミンカプセルの分析
9
結論
■■
ACQUITY UPC 2 システムは、6 つの異なる脂溶性ビタミン製剤
の分析に成功しました。
■■
それぞれの脂溶性ビタミン製剤を迅速に分析し、目的成分を
医薬品添加物から分離しました。
■■
ビタミン A、ビタミン E、ビタミン K1 の異性体分離に成功しま
した。
■■
このシステムは、複数の装置や異なる分析技術を用いること
なく、広範囲な脂溶性ビタミン製剤を分析でき、研究室にお
ける脂溶性ビタミン分析を大幅に合理化することが可能です。
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ショールーム
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©2012 Waters Corporation. Printed in Japan. 2012 年 09月 720004394JA PDF