7m高所より転落した18歳男性の一例

離島研修で出会った興味深い症例
与論徳洲会病院
赤穂 史帆
症例:18歳 男性
【主訴】転落
【現病歴】 同日AM8:40に7m高所より転落し、背部
を地面で打撲。拳大の石が多数ある土の地面であっ
た。頭部は打撲しなかった。目撃者なし。本人の助け
を呼ぶ声で、同僚が気づき、救急要請。
車椅子、食事自立、おむつ
【既往歴】 喘息
【社会/生活歴】
喫煙歴:15歳より10本/day
飲酒歴:機会飲酒
職業:ソーラーパネル設置業
【常用薬】なし
搬入時 VITAL SIGN
搬入時刻:9:10
血圧:131/75mmHg
脈拍:94回/分
体温:36.5℃
呼吸回数:13回/分
SPO2 100% 酸素不使用
JCS:0
primary survey
A:気道開通
B:頚静脈怒張なし 呼吸音清 打診左右差なし
C:橈骨触知可能 冷汗なし
FAST 腹腔内Free echoなし
D:GCS 15点 切迫するDなし
Secondary survey
頭部:外傷なし 出血なし
顔面:外傷なし 出血なし
眼球:異常所見なし パンダの目兆候なし
耳:出血なし、battle signなし
鼻:外傷なし、出血なし
口:外傷なし、出血なし
頸部:圧痛なし、頚静脈怒張なし、気管偏位、皮下気腫なし
胸部:呼吸音清、圧痛なし、打診異常なし
腹部:平たん、軟、圧痛なし、FAST陰性
骨盤:圧痛なし
四肢:外傷なし 異常感覚なし 右肘部擦過傷あり
背部:上位胸椎に圧痛あり CVA圧痛なし
胸
部
XR
搬入時血液検査
WBC 74.5 10^2/μ
RBC 480 10^4/μl
Hb 15.2 g/dl
PLT 22.2 10^4/μl
PT-INR 1.06
APTT 29.4 秒
Na 141 mEq/L
K 4.2 mEq/L
CL 102 mEq/L
GLU 100 mg/dL
GOT 233 IU/L
GPT 138 IU/L
LDH 628 IU/L
CPK 548 IU/L
γGTP 32 IU/L
ALP 372 IU/L
AMY 75 IU/L
BUN 15.7 mg/dL
CRE 1.1 mg/dL
CT
診断
#1 縦隔気腫
#2 Th6椎体骨折
#3 右肺胞出血疑い
怖くなってきた。
俺やばいんすけ?
うーん。正直どうな
んだろ?
1週間後・・・
先生、俺、柔道の授業受
けといてよかった!!
本当によかったね。
あと、煙草は自分のた
めにやめた方がいい
おれ、やめれるかな?
奇跡的に
生き延びたんだから、
身体大切にしなよ。
肺胞破裂
食道(消化管)穿孔
気管、気管支損傷
背が高く、細い
体型で思春期
の男性に多い
喘息との関連
が指摘されて
いる
基本的に予後
良好
発生率:1/8001/42000
2-15日で自然
軽快
SPM
症状と所見
突然の胸痛と呼吸困難
で発症
Hamman’s sign
頸部・上肢放散痛
頸部、鎖骨上窩の
皮下気腫
嚥下発声障害
斜頸
頸静脈の怒張
Triggers
考察
本症例は、外傷受傷後に発見された縦隔気腫
であるが、気管裂傷、食道裂傷は認めず、外傷
に起因して、肺胞が破裂し、特発性縦隔気腫と
同様の発生機序を併せ持った病態と考察した。
本症例は喘息のコントロールをされておらず、
かつ、喫煙患者であり、SPM予防のため、喘息
治療開始し、禁煙治療を紹介先に依頼した。