ネットスーパーの現状 と 今後の展望について

ネットスーパーの現状
と
今後の展望について
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
1
1.ネットスーパーとは
❒既存スーパーが、実店舗販売とともにネット販売も
●実店舗での売上げ減少(下表)への対応などから2000年頃に登場
●インターネットの普及とともにサービスが広がりつつある
●時間的な余裕がない、家を留守にしにくい、購入商品が重く、嵩張り持ち帰り
にくい人などの需要を見込む
表 売上高の推移(主要業態別)[単位:兆円]
種別
百貨店
総合スーパー
コンビニ
ドラッグストア
通信販売
ホームセンター
小売業全体
平成13年
8.6
15.9
6.7
2.7
2.5
3.8
136.8
平成23年
6.2
12.7
8.7
5.6
4.7
2.7
134.0
増減
出所:商業販売統計(経済産業省)
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
2
2.一般的な仕組み
ネットスーパー
のWebサイト
注文情報
インターネット
注文情報
注文情報
注文情報
②受付
⑥受取り・
支払い
③在庫確認
①注文
消費者(会員)宅
④荷作り・出荷
実店舗(スーパーマーケット)または
センター(保管倉庫)
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
⑤宅配
①注文
⑥受取り・
支払い
消費者(会員)宅
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
3
3.ネットスーパーの現状
❒店舗出荷型の例
西友(首都圏、2000.5∼)、イトーヨーカ堂(2001.3∼)、イズミヤ(大阪・京都・兵庫、
2001.6∼)、イオン(2008.4∼)、ダイエー(2008.9∼)、マルエツ(首都圏、2003.9∼)、
東急ストア(首都圏、2009.9∼)、関西スーパー(兵庫、2009.10∼)など
❒センター出荷型の例
食品スーパーのサミット(東京、2009.10∼)、オレンジライフ(福岡)、フレスタ(広島)
など
❒取扱い品目数
種々、約1000点以上、多いところで約30,000点
❒注文商品の配送
生鮮食品などは即日配達、最短2∼3時間で
配達エリアは2∼5km(店舗出荷型)、∼10km(センター出荷型)
配達便数は1日あたり3∼5便、イトーヨーカ堂の場合、5便/日
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
4
参考 イトーヨーカドーネットスーパー(その1)
http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/kentokai/pdf/3_shiryo2.pdf
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
5
参考 イトーヨーカドーネットスーパー(その2)
http://www.maff.go.jp/j/jas/kaigi/kentokai/pdf/3_shiryo2.pdf
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
6
参考 サミットネットスーパー(その1)
http://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20120723_01_01.html
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
7
参考 サミットネットスーパー(その2)
http://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20120723_01_01.html
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
8
4.収益改善に向けた課題と対応策
収益性改善に向けた課題
❒需要の喚起および拡大
対応策
❒マーケティング戦略
ⅰ)会員数の拡大・・・・・・・・・・・・・・・・
・サービスエリア(商圏)の拡大
ⅱ)(同一会員の)利用頻度の拡大・・
・取扱い商品の拡充
❒注文処理容量の拡大
ⅰ)時間当たり処理件数の拡大・・・・
ⅱ)配送便数の拡大・・・・・・・・・・・・・
❒費用の削減
ⅰ)在庫削減、拠点作業の効率化・・
ⅱ)配送の効率化・・・・・・・・・・・・・・・
・Webサイトの刷新、スマホサイトの導入
・Webサイトへの誘導:実店舗やネット通
販との連携(O2O[2]戦略)
・高齢者対応の強化:PCを使わない注文。
電話・FAX、TV、タブレットの活用など
❒ロジスティクス戦略
・物流網の拡充
・店舗型からセンター(倉庫)型への移行
・実店舗閉店後の出荷業務など
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
9
5.最近の取り組み事例
項目
最近の取り組み事例
サービスエリアの拡大(宅配 ●イオン(県レベル広域型ネットスーパーの全国拡大、∼2014年度)、●西友(DeNAと連携、通販サイト立ち上げ、全国宅
範囲、店舗数)
配化、2013.6∼)、●ダイエー(店舗数拡大、50店舗に。∼2012年度)
アイテム数の拡大
ー
マ
●イオン(寿司、2012.2∼)、●イトーヨーカ堂(ネットスーパー専用の握り寿司、2012.3∼)、●西友(ウォルマート子会社か
らの直輸入品も、2013.7∼、大衆薬も予定)
ィ
既存サイト刷新・ ●西友(刷新、DeNAとの連携2012.11∼)、●マルエツ(仮想商店街サイトから自前サイトへ、2013.1∼)、●東急ストア(仮
想商店街サイトから自前サイトへ、2013.5∼)
ケ Webサイト 自前サイト化
テ 対応
スマホ向けサイト ●イオン(ポータルサイト「イオンスクエア」でスマホアプリ配信、2012.10∼)、●ダイエー(スマホからの注文も、2012.7∼)、
導入
●楽天マート(スマホ向けサイト、2013.8∼)
ン
グ Webサイトへの誘導・実店舗 ●イオン(ポータルサイト「イオンスクエア」立ち上げ(2012.8)、そこから誘導)、●イトーヨーカ堂(ポータルサイト「セブンネッ
戦 への誘導
トショッピング」経由で誘導、2012.7∼)、●イオン(貯めたポイントを実店舗で使える電子マネーWAONへ交換、2012.8∼)
略
電話・FAX活用の ●イオン(電話・FAXによる注文の導入、全国展開と合わせて)、●ダイエー(カタログ配布で電話注文も、2012.3∼)、●ユ
関
ニー(電話・FAXによる注文の導入、2012.10∼)、●楽天マート(カタログ配布で電話・FAX注文も。2012.7∼)
係 高齢者需 注文
要の取り
●サミット(TV活用の注文をNTT東日本と、2012.7∼。TV活用の注文をKDDIと、2013.4∼)、●ユニー(タブレットによる注文
込み
その他の活用
方法講習会、2012.9)、★DNP(音声による食品注文システム開発(2012.12)、実証実験後売り込み予定(2013.3∼))
その他
ィ
ロ
ジ 物流網の拡充
ス
テ
センター(物流倉庫)型出荷
ク の導入
ス
戦
略 便数の増加
●サミット(きめ細かいサービスの導入:基本食材をセットにした商品、せんたく便保管パック)
●イオン(ヤマト運輸や日本郵便の物流網を活用、国内全域でのサービス展開へ、∼2014年度)、●楽天マート(専用の物
流拠点網を拡充中:東京都、神奈川県、千葉県に6拠点、2013.3)、●イトーヨーカ堂(一部を専用の物流拠点化する店舗の
拡充、∼2015年度)
●西友(専用の出荷センターを導入、店舗なしの地域にも配送。2013.6∼)、●イトーヨーカ堂(店舗の一部(衣料品売り場な
どを縮小)をネットスーパー用物流センターに、首都圏2,3店舗、受注最大2000件/日に。∼2015年度)、●楽天マート(セン
ター型ネットスーパーへ参入(2012.7)。センターを6拠点に拡充、∼2013.3)
●イトーヨーカ堂(閉店後の夜間業務化、店舗一部の物流拠点化など、∼2015年度)、●サミット(深夜作業で午前便、その
他の便数を拡大、2011.9∼)
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
10
6.基本的に2つの出荷形態
【店舗出荷型】
❒店舗出荷型
注文受サイト
❒(配送)センター出荷型
ネットにて
注文し購入
配達
センター
店舗
実店舗に
て購入
【センタ出荷型】
注文受サイト
注文受サイト
ネットにて
注文し購入
ネットにて
注文し購入
専用センター
配達
センター
店舗
実店舗に
て購入
a)在庫箇所を共用
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
センター
店舗
実店舗に
て購入
b)在庫箇所を分離
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
11
7.在庫軽減に適した出荷形態は
❒以下の評価例より、案Bが在庫量の点
では最も有利である。
案C
案A
案B
案B
案A
注)案A:店舗出荷型
案B:センター出荷型(在庫箇所を共用)
案C:センター出荷型(在庫箇所を分離)
総在庫量
総在庫量
案B
センター在庫量
センター在庫量
案A
店舗在庫量
案B
案B
店舗在庫量
在庫量の累積(出荷間隔=3時間)
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
案C
C
在庫量の累積(出荷間隔=3時間)
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
12
8.案Aと案Bの評価結果例
表a
シミュレーションによる評価例(案A:案B)
案A)既存店舗出荷型
(Sa)
項 目
案B)既存センター出荷型
(Ca)
3時間毎の
出荷
5時間毎の
出荷
3時間毎の
出荷
5時間毎の
出荷
8021
8720
6898
6725
店舗総在庫量
3626
4213
2059
2059
センター総在庫量
4395
4507
4839
4666
15
15
15
15
20
20
22
21
店舗
4回
(5+10+11+2
=28個)
2回
(15+13
=28個)
5回
(3+1+3+2+1
=10個)
5回
(3+1+3+2+1
=10個)
センター
0回(−)
0回(−)
0回(−)
0回(−)
総在庫量
(個/96時間)
店舗への
補充
回数 センターへの
品切れ回数
(数量)
(注)店舗の発注から納入完了までの補充リードタイム=5時間
モマ第15回0718
ネットスーパーと今後の展望
ネットスーパーの形態と運用
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
13
9.案Bと案Cの評価結果例
表b
シミュレーションによる評価例(案B:案C)
案B)既存センター出荷型
(Ca)
案C)専用センター出荷型
(Cb)
項 目
3時間毎の
出荷
5時間毎の
出荷
3時間毎の
出荷
5時間毎の
出荷
6898
6725
8208
8155
店舗総在庫量
2059
2059
2059
2059
既存センター総在庫
量
4839
4666
3201
3201
専用センター総在庫
量
−
−
2948
2895
店舗への
15
15
15
15
22
21
14
14
−
−
15
15
5回
(3+1+3+2+1
=10個)
5回
(3+1+3+2+1
=10個)
5回
(3+1+3+2+1
=10個)
5回
(3+1+3+2+1
=10個)
0回(−)
0回(−)
両センターとも
0回(−)
両センターとも
0回(−)
総在庫量
(個/96時間)
補充
既存センターへの
回数
専用センターへの
品切れ回数
(数量)
店舗
センター
(注)店舗の発注から納入完了までの補充リードタイム=5時間
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
14
10.会員増に対応し得る配送方法の一案
❒マーケティング等の努力により会員数や注文が増加するのは良い。
❒しかし、宅配先が増え、配達完了までの時間や走行距離が増加し得る。
1日あたりの便数を守るためには、配達用車両やドライバが余計に必要となる。
❒拠点引き渡し方式(次のスライド)
個々の会員宅まで届けるのをやめ会員宅近辺の 商品引き渡し拠点までとする。
①会員宅近辺に「商品引き渡し拠点」を設置。複数の会員がそこを共用(シェア)。
②「引き渡し拠点」には、複数の注文者分の場所(例:コインロッカー)を確保。
−届けられた場所はメールやその他の方法で注文者には知らされる。
−その場所は注文者しか商品を取り出せないように工夫する。
③オンラインスーパーによる配送は、「引き渡し拠点」まで。
④注文者は、注文商品が拠点に届けられたら(注:メール等で確認)、自分が指定
した「受取拠点(引き渡し拠点)」まで注文商品を取りに行く。
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
15
11.拠点引き渡し方式のイメージ
注文商品受取り
引渡
拠点
配送ルート
⑤
①
出荷拠点
(ネットスーパー)
④
引渡
拠点
③
引渡
拠点
②
引渡
拠点
消費者
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
16
12.既存ネットスーパーの配送サービス例
表1
配送サービスの例
イトーヨーカドー
便の種別
締めの時刻
サミット
配送時間帯
便の種別
配送時間帯
1便
9:00
12:00∼14:00
午前便
2便
11:00
14:00∼16:00
1便
10:00∼14:00
3便
13:00
16:00∼18:00
2便
12:00∼16:00
4便
15:00
18:00∼20:00
3便
16:00∼18:00
5便
16:00
19:00∼21:00
ナイト便
20:00∼22:00
お得便
9:00∼17:00
−
−
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
−
8:00∼12:00
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
17
13.従来方式との比較のための評価モデル
(1)サービスエリア(右図)
配送拠点(出荷拠点)を中心として、半
径3kmの円とする。拠点引き渡し方式におけ
る拠点は、配送拠点から2km離れた所に、反
時計まわりに60度ずつずらした位置に合計6
箇所設置されているものとする。
配送拠点
引渡拠点(*)
注文者
(2)会員の分布
オンラインスーパーの会員は、サービス
エリア内において、中心から半径方向に
0∼3kmの間を、また、反時計まわりに
0∼360度の間を一様に分布しているものと
する。
1k
m
(*)注文者の最寄り受
取拠点
1k
m
1k
m
配送エリア
(拠点から半径3km)
(3)会員からの注文の発生
会員からの注文の発生間隔は指数分布に
従い、平均発生間隔としては、
2ケース(20分、10分)を考える。
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
18
18
14.従来方式との比較のための評価モデル(続)
(4)配送ルート
①個別宅配方式:配送拠点を中心として反時計まわりの順に会員個別に宅配するものとする。
下図左の例では、配送拠点→a→b→c→d→e→配送拠点。
②拠点引き渡し方式:会員の最寄り拠点を反時計まわりの順に配送するものとする。
下図右の例では、配送拠点→拠点①→③→⑤→配送拠点。拠点②、④、⑥はスキップ。
(5)配送の際の作業時間、配送距離
①個別宅配方式:商品配達時の会員宅での作業時間は一律0.2時間(=12分)/会員とした。
②拠点引き渡し方式:各拠点での作業時間は一律0.33時間(=20分)/拠点とした。
また、配送ルートにおける2点間の配送の距離は直線で評価。
a
③
b
1km
1km
②
④
1km
1km
1km
①
1km
e
c
⑤
⑥
d
個別宅配方式の配送例
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
拠点引き渡し方式の配送例
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
19
15.作業時間の評価例
各便の作業時間(注文間隔:平均20分)
各便の作業時間(注文間隔:平均10分)
❒各便あたりの作業時間は拠点引き渡し方式の方が小さい。
個別宅配方式では注文数全てについて個別に対応が必要、拠点引き渡
し方式では拠点のみでの対応でよい。
❒注文数と配送拠点数の差が大きくなる程、両方式の差は大きくなる。
注文間隔が平均10分の場合(右図)には、3∼4.5時間の作業時間と
なっており、2時間程度で届けようとすると車両やドライバを増やす
必要がある。
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
20
16.配送距離の評価例
各便の配送距離(注文間隔:平均20分)
各便の配送距離(注文間隔:平均10分)
❒各便あたりの配送距離については、方式間の優劣は認められない。
これは、注文者のエリア内での分布の仮定による。
−注文者(会員)は、サービスエリア内において、中心から半径方向に0∼3kmの間を、
また、反時計まわりに0∼360度の間を一様に分布していると仮定。
−この仮定によると、中心から遠ざかる方向へ一様に会員の分布が疎になっていくた
め、注文が配送拠点から遠くなるほど低い発生率となる。
−このため、すべての注文に個別に配送する場合であっても、配送距離が極端に増
えることはなく、むしろ拠点位置が決まっている提案方式よりも少なくて済む場合も
起こり得る。
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
21
21
17.今後:ネット通販との顧客獲得の競合化
長い
受け取り
までの時間
広い
ネット通販
配達
エリア
ネットスー
パー
取扱
アイテム数
多い
モマ第15回0718 ネットスーパーと今後の展望
流通経済大学 Ⓒ増田 2014
22