新たな領域へ 踏み入った ローゼンウィンケル やアダム・ロジャース の

[Close Up Interview]
ジ ョ ナ サ ン・ク ラ イ ス バ ー グ:
1972 年6月 10 日、ニューヨーク
生まれ。4歳のときにマイアミに
引っ越すと、10 歳でギターを手に
し、マイアミ大学で音楽を 専攻。
'90 年代半ばにサード・ウィッシュ
というプログレ・ロック・バンドで
活 動 す る 一 方 で、'96 年 に 初 リ ー
ダー作『Jonathan Kreisberg Trio』
を発表した。当時はアラン・ホー
ルズワースのようなスタイルで
あったが、翌 '97 年に NY に拠点を
移すとストレートアヘッドなジャ
ズへと方向転換。ジャズ・ギタリ
ストとしての実質的なデビューと
なったクリスクロスからの2作目
『Trioing』を皮切りに、これまで通
算8枚のアルバムを残している。
新たな領域へ
踏み入った
ローゼンウィンケル
やアダム・ロジャース
の対抗馬
インタビュー・文:石沢功治
Text by Koji Ishizawa
通訳:川原真理子
Translate by Mariko Kawahara
先頃リリースされたジョナサンの通算8作目『One』が話題だ。なぜならば、完全ソロ・
ギター・パフォーマンスによる超力作となっているからだ。もちろん彼自身にとって初。
しかし本人に聞いてみると、
「今に始まったことではなく、ライヴで長年演ってきてるん
だ」というから驚いた。ここではその最新作『One』を中心に、併せて今号の特集である
ジャム・バンド・シーンについても短いながらもコメントをもらったので、お届けしたい。
『One』
Jonathan Kreisberg
オーヴァーダブ一切なしの
完全ソロ・ギター作
が、ジャケットの“No Use Of Loops Or
影響を受けているのはピアニスト、シン
Overdubs”(ループやオーヴァーダブは
ガー、もしくはオーケストラものだけど、
使っていません)という記載を読んで驚き
中には往年のソロ・ギター・アルバムも幾
Q:新作『One』は初の完全ソロ・ギター・
ました。
つかある。タック・アンドレスの『Reckless
アルバムとなりましたが、経緯を教えてく
JK:ライヴと同じセッティングでやりた
Precision』のフィーリングとグルーヴは大
ださい。
かったからね。それに私はピックと指弾き
好 き だ し、 も ち ろ ん ジ ョ ー・ パ ス の
ジョナサン・クライスバーグ(以下 JK):
を併用するんで、様々なタイプのアタック
『Virtuoso』も大好きだ。あとは、テッド・
実は、私は長いことソロ・ギターでもライ
や音を出すことが出来る。いろいろなアン
グリーンの『Solo Guitar』かな。でも、レコー
ヴをやってきててね。なぜか今になってそ
グルやサウンドでリスナーを音楽の旅に誘
ディング中は自分らしいことがやれるよう
れを残したいと思った。というのも、ギ
うよう心掛けたんだ。
にと、敢えてこの3枚のアルバムは聴かな
ターで何かクリエイティヴなことをやる
Q:5曲目「キャラヴァン」なんかマーティ
いようにした。お陰でこれまでとは違うタ
ための新たな道を見付けられる気がした
ン・テイラーを彷彿とさせてます。ソロ・
イプのポリフォニックな手法が用いられた
んだ。
パフォーマンスに於いて影響はありまし
と自分では思ってるよ。
Q:バーデン・パウエルの1曲目「オッサー
たか?
Q: 変 則 チ ュ ー ニ ン グ や カ ポ タ ス ト の 使
ニャの歌(Canto de OSHA)」はてっきり
JK:彼のことはあまりよく知らないけど、
用は?
ギター2本を被せてるんだと思いました
素晴らしいギタリストらしいね。私が主に
JK:
「ハレルヤ」ではカポを、「エスケープ・
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「録音中にアンプの真空管が機能しなく
なったけど、
サウンドの神様が
味方してくれた」
なかったな。繰り返されるベースラインの
にも参加してますね。3曲が '11 年のハン
上に様々な調性やキーを重ねていった。ブ
ガリーでのジャズフェス、3曲が翌 '12 年
ルージーなフレージングとチャールズ・ア
で NY のクラブ“ジャズ・スタンダード”で
イヴス(アメリカ現代音楽の作曲家)の多調
のライヴ収録です。アルバム発表の経緯は?
性をミックスさせて、徐々にホールトーン
JK:あれは私がプロデューサーを買って
のハーモニーで遠ざかっていき、元の旋律
出たんだ。ラッキーなことに彼のトリオの
に戻って解決する。
メンバーになって4年ほど経つんだが、ギ
Q:個人的には4曲目「スカイラーク」がフェ
グで録音した音源を聴いて、ロニーに「こ
イヴァリットでした。途中で転調していて、
れはアルバムにするべきだ」と言ったんだ。
そのハーモニーの色彩感たるやとにかく素
特に素晴らしい出来だった2回のギグから
晴らしい!
選曲して1枚の CD にしたというわけさ。
JK:サンクス! この曲には既にブリッジ
Q:オーソドックスなオルガン・トリオのス
の終わりのところに素晴らしい転調がある
タイルとは違って、実にコンテンポラリー
ので、2〜3日間かけて転調やら新しいハー
な演奏ですね。まぁ、あなたのギターが入
モニーやら、様々な方向性を試してみた。
れば当然でしょうけれど。
Q:レコーディングは順調でしたか?
JK:そうかい?(笑) ロニーと私のバッ
JK:ちょっとしたアクシデントがあった。
クグラウンドはかなり違うけど、でも、音
「ハレルヤ」の最後でハープ風のアルペジオ
楽に対する考え方はとてもよく似ている。
を 演 っ て い た と き、 フ ェ ン ダ ー Deluxe
先輩達をリスペクトしつつも、常に幅を広
Reverb の真空管の1つが正常に機能しなく
げて伝統に新しいものを加えていこうとし
なってね。でも、今回はサウンドの神様が
ている点に於いてね。
味方してくれた。よ〜く聴いてみると、逆
Q:ところで、ジョン・スコフィールドが
にそれが素敵で美しい鳴りの響きを加えて
新作『Uberjam Deux』で久し振りにジャム・
フロム・ロウワー・フォーマット・シフト」
くれてたんだ。あれはマジカルな瞬間だっ
バンドへ接近しましたが、お聴きになりま
ではとても変わったチューニングを使った
たな。
したか?
けど、それ以外の曲は全てレギュラーだよ。
Q:使用したギターですが、5曲目と9曲
JK:もちろん。ついこの間もロニー・スミ
Q:そのカポを使ったというレナード・コー
目ではインディアン・ヒルの Model OO-13
ス・トリオとジョンのウーバー・ジャム・バ
エン作の8曲目「ハレルヤ」の選曲には意表
スチール弦アコースティックとジャケット
ンドが一緒にプレイしたんだ。もの凄く楽
を突かれました。
には書かれていますが、4曲目「スカイラー
しかったし、ジョンのバンドのグルーヴは
JK:ジェフ・バックリィのカヴァーにとて
ク」でのアコースティックは?
半端じゃなかったよ。
も強烈な印象を受けたんだ。その後、多く
JK:コリングスの OM-3 だ。
Q:現在のジャム・バンド・シーンはどういっ
の人がプレイしてきたけど、残念ながらこ
Q:エ レ ク ト リ ッ ク は 長 年 愛 用 し て い る
た状況なんでしょうか?
の歌詞の洗練さと暗さを理解したり、また
Gibson ES-175 ですか?
JK:NY では、シーンごとに更に小さいシー
は上手く伝えられた人は殆どいなかった。
JK:そう、全てあれ。
ンに分かれていて、良いものであればどん
私はレナードの曲作りの意図とジェフのパ
Q:「ウィズアウト・シャドウ」のオルガン
なタイプのジャズも歓迎される。でも、こ
フォーマンスにリスペクトしたインスト・
のようなサウンドは、エフェクターの Hog
とジャム・バンドに於いてはこの街から出
ヴァージョンにしたかった。
ですか?
て行ったところでの方が流行っていると言
Q:「ハレルヤ」の伴奏を繰り返しながら、
JK:いや、あれは Micro Pog のディレイ&
えるだろう。例えばアメリカだったらス
その上で弾く旋律がアウトしていく場面
ヴォリューム・ペダルだよ。
チューデントタウン。そこにいる学生たち
はたいてい凄くオープンな考えの人達だか
(CD Time 03:48 〜)は実に面白かったで
ロニー・スミスのオルガン・
トリオ作
『The Healer』
ら、自分を大いに感動させてくれる音楽を
定したアプローチように聴こえたのですが。
Q:あなたはロニー・スミスのオルガン・ト
めているのもそれだと思う……ハングリー
JK:いや、リディアンは念頭に置いてい
リオ編成のアルバム『The Healer』('12 年)
な耳の持ち主達を、ね!
す。C メジャーの調性から距離を置きたく
なったんでしょうか? キーは C メジャー
ですが、私は A リディアン・スケールを想
常に求めている。ジョンが求めているのは
そういうものだと思うし、ロニーや私が求
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