Forex 株式会社 ジャパン エコノミックパルス Market Insight 平成26年6月16日(月) 〒107-0052 東京都港区赤坂1-14-5 Tel 03-3568-2973 Fax 03-3568-2977 www.j-pulse.co.jp [email protected] リスク回避警戒も円戻り売り地合い持続 イラク情勢、FOMC、GPIF外債投資拡大など焦点 今週の為替相場はリスク回避の円高を警戒しつつも、基本的な円の戻り売り (外 貨の 押し 目 買い)地合 い の継 続 が予 想さ れ よう。週 間 予想 はド ル /円が 101.20-102.80円、ユーロ/円は136.80-140.10円。イラク不安が円高要因と なっており、欧州中銀(ECB)の追加緩和観測によるユーロ安、米長期金利の上 げ渋りによるドル安のリスクとあいまって、レンジ相場の中でも円高圧力は根強 い。一方で米FOMCや日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)運用改革に 伴う外債投資の拡大などがドル高や円安を促す余地をはらむ。 GPIF改革、株式投資増加に続いて外債も拡大余地 「GPIFの運用改革に関連して、4-6月の期末となる6月末にかけては、国内の 年金などによる外債投資が駆け込み的に増加する可能性がある」――。 ある官民ファンドの幹部はこのような見解を示す。GPIFは政府の改革方針によ り、9月以降にも年金資金の運用先を見直すが、来年4月からの新年度運用での日 本株、外債といったリスク資産の配分を少しでも増やすために、見直しの前提基 準となる今年6月末時点での運用資産で、「日本株や外債の保有資産を底上げさ せておく」(同)可能性があるという。 すでに日本株市場では、各種年金基金の運用での「お手本」となるGPIFの日本株 比率拡大を先取りする形で、5月から民間・公的の年金による日本株投資が拡大し てきた。東証の投資部門別売買動向によると、5月に年金などをバックとした信託 銀行の買い越しは+6873億円に及び、2009年3月(+7807億円)以来の高水準を記 録している。連動する形で外債運用に関しても、1)GPIF本体による投資拡大、2)追 随的な各種年金による投資拡大、3)株式投資を拡大させるGPIFの株安阻止(=円高 阻止)思惑――などにより、外債投資が増加していく可能性を秘めている。 過去の4-6月の「期末(6月末)ポートフォリオ調整」的な外債投資に関して は、財務省の週間・対外中長期債投資状況ベースで、2012年6月24-30日週に+1 兆3407億円、2010年6月20-26日週に+8620億円、2009年6月21-27日に+1兆 5316億円、2005年6月19-25日週に+1兆7716億円という大規模な買い越しが観測 された実績がある。あくまで市場動向が影響を及ぼしたほか、銀行による外貨調 達ベース(為替中立)のトレーディングが大きな割合を占めているが、今年度は 5月からの「信託系による大量の日本株投資」という実績があるだけに、リスク 資産の拡大に連動した外債投資の拡大は無視できない。 6月末にかけての外債投資に、大きな影響を及ぼすのが17-18日の米FOMCだ。 最新5月の雇用統計では労働参加率や賃金の低迷が持続しており、基本的には前 回通りの緩和姿勢の長期化が示される可能性が高い。しかし、米国の指標自体は 前回以降、寒波反動などで改善が相次いでいる。景気判断は上方修正の可能性が あるほか、ここに来てFRB幹部からは過度なリスクテイクによる局地バブルへの 警鐘発言が目立ち始めた。そのため、FOMC後の声明や議長会見では、微妙に「来 年後半以降の利上げ織り込み」を後押しさせるようなファイン・チューニングの 1 Market Insight 可能性が残されている。その他の注目ポイントは以下の通り。 <米国の「来年後半利上げ」と外債投資> これから7月の年後半入りに移行していくと、FRBによる利上げは「あと1年先 以降」と遠くはなくなり、国内の年金などによる中長期スパンでの外債投資と ドルの押し目買いを支援しやすい。すでに米国債市場では17-18日のFOMCを警 戒する形で、政策金利のFFに先行性を持つ2年債金利が急上昇してきた。直近最 低である5月20日の0.32%から6月13日には0.46%と5月2日以来の高水準となっ ており、底流部分でドルの底割れを回避させていく。 しかも米2年債金利は来年後半以降の利上げを織り込む形で、前年同月の水準 を上回る下限ゾーンの切り上がりトレンドが定着してきた。上昇ペースは緩慢 ながらも、前年比ベースでの米債金利の切り上がりは、ドル/円でも前年同月を 上回るドル高・円安トレンドの定着を支援していく。国内勢からすると、前年 比(=前年の決算比)での為替差損リスク後退が、為替リスクを取る形での為 替ノーヘッジ型による外債投資を漸増させ、それがドルなどの外貨の底固めを 後押しさせる余地を秘めている。 ち な み に ド ル / 円 の 前 年 水 準 は、昨 年 6 月 が 93.64 - 100.96 円 前 後、7 月 が 97.58-101.54円、8月が95.81-99.98円、9月が97.50-100.62円といったレン ジとなっていた。過去の米利上げ「1年前」局面では、前年同月のドル高値圏に 接近したり、割り込む局面ではドルの底値拾いの好機となってきた。先行き 「前年比での米債金利上昇」が続く限り、今回も前年のドル高値前後から下の レベルはドルの買い場として注目されよう。 <イラク情勢の緊迫化> 今週はイラク情勢の不透明感が、リスク回避の日米株安や円高の材料として 警戒されやすい。原油価格の高止まりが続くと、世界経済の減速不安につなが り、これまたリスク回避の円高を促す可能性を秘めている。 もっとも昨年以降、シリア情勢やウクライナ情勢などで局地的に地政学リス クが警戒される場面があったが、いずれも短期的な影響にとどまってきた。現 在に至るまで、日本での株高・円安の基本トレンドは崩れていない。さらにイ ラク不安による原油高に関しても、1)米国はシェール革命で原油の自給自足が 106 105 104 103 102 101 100 99 98 97 96 13週線の上抜け攻防が続く 6.20 6.06 5.23 5.09 4.25 4.11 3.28 3.14 2.28 13週線=102.16 円 バンド下限=101.15 信託銀行の日本株売買(東証・三市場) 国内勢全体の対外中長期債投資(財務省) 全体外債(右軸) 株式拡大 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 -10,000 -20,000 -30,000 ↑ Jul-14 Jan-14 Jul-13 Jan-13 Jul-12 Jan-12 Jul-11 Jan-11 Jul-10 Jan-10 Jul-09 Jan-09 Jul-08 Jan-08 Jul-07 Jan-07 Jul-06 Jan-06 Jul-05 Jan-05 禁無断転載・転送 2.14 信託株式(左軸) 億円 1.31 バンド上限=103.17 ※レートは16日時点 10,000 8,000 6,000 4,000 2,000 0 -2,000 -4,000 -6,000 -8,000 -10,000 1.17 1.03 12.20 12.06 11.22 11.08 10.25 10.11 9.27 円 106 105 104 103 102 101 100 99 98 97 96 ドル/円;週足ローソク足 13週移動平均を中央値 ボリンジャーバンド 億円 2 Market Insight 進み、抵抗力が強まっている、2)米国の原油輸出解禁を後押しさせる(米国の 経常赤字是正)、3)日本は夏季に向けて資源需要が高まる中で、原油輸入額が 一段と押し上げられる(日本の経常収支悪化)――といった事情により、ドル 高・円安材料となる側面も有している。 <米国の経済指標> 米国の指標は強弱混在が続いており、ドル相場の一方向のトレンド形成を促 す決め手にはなりにくい。今週も16日のNY連銀製造業景気指数と住宅市場指数 は 改 善、鉱 工 業 生 産 は 寒 波 反 動 の 剥 落 で 伸 び 悩 み、17 日 の 消 費 者 物 価 指 数 (CPI)は低迷、住宅着工件数は前月急増の反動減、19日の新規失業保険申請件 数とフィラデルフィア連銀景況指数は反動改善が見込まれるなど、指標内容に 一喜一憂の不安定さが続きそうだ。 <ECB緩和観測によるユーロ安とポジション調整> 欧州ではECBによる追加緩和観測がくすぶっており、ユーロは下落の圧力が根 強い。今週もECB幹部による緩和支持発言や欧州指標の低迷などが、ユーロ安の 材料として警戒されよう。 もっともユーロに関しては、ECB追加緩和を織り込む形で投機的なユーロ・ ショート(売り持ち)のポジションが急膨張してきた。最新6月指標となる17日の ドイツZEW景況指数などで「ECB緩和とユーロ安の一次効果」による上振れが見 られたり、ECB幹部の緩和支持発言が「賞味期限切れで実際の行動催促」へと移 行するようなら、ポジション調整によるユーロの自律反発を促す可能性があ る。欧州の国債金利に関しても、ドイツの30年債などは一旦の理論値面での下 限到達による下げ渋りが見られ始めた。 <利上げ観測通貨などの底堅さ> 前週の為替相場ではNZ中銀の利上げと今後の複数回の利上げ示唆がNZドルを押 し上げたほか、英国中銀総裁による利上げ前倒し発言がポンド高を促した。同時 に中国の減速一服や先行きの景気刺激期待、資源相場の上昇などを受けて、豪ド ルなどの資源国通貨も底堅さを見せている。その他、中国でも7月の米中経済対話 を控えて、人民元の低め誘導休止と通貨高の容認姿勢へと転じてきた。 今週はこうした通貨の短期調整的な下落や伸び悩みが警戒される一方、中長期 スパンでは押し目買い地合いが持続される。対円でも先高余地が残されており、 「イラク不安などによる円全面高」の圧力を減殺させる要因となりやすい。 米2年債金利の前年比変化幅(1年先行) ドル/円;現在の月中ドル安値、前年同月のドル高値 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -2.5 -3.0 現在のドル安値(右軸) 利上げ↑ ↑ 130 125 120 115 110 105 100 95 90 85 80 75 前年のドル高値(右軸) ↑ 前年ドル高値が サポートラインに Jul-14 Oct-13 Jan-13 Apr-12 Jul-11 Oct-10 Jan-10 Apr-09 Jul-08 Oct-07 Jan-07 Apr-06 Jul-05 Oct-04 Jan-04 Apr-03 Jul-02 Oct-01 Jan-01 Apr-00 Jul-99 Oct-98 Jan-98 % 2年債の前年比(左軸) 円 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ま せん。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの 情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの 内容は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあ たっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。 禁無断転載・転送 3
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