平成26年漁期イカナゴシンコ(新子)漁況予報 平 成 26 年 2 月 14 日 兵庫県立農林水産技術総合センター 水産技術センター 1. 産 卵 親 魚 の 調 査 結 果 産 卵 親 魚 の 調 査 は 、播 磨 灘 北 東 部 の 鹿 の 瀬 で 12 月 6 日 か ら 26 日 に か け て 延 5 回 実施し、採集は文鎮漕ぎで行った。 (1) 親 魚 密 度 文 鎮 漕 ぎ 1 曳 当 た り の 採 集 尾 数 は 54.0 尾 で 、 昨 年 の 0.3 倍 、 平 年 の 0.24 倍 に な っ た 。 年 齢 組 成 は 1 才 魚 が 75.2%、 2 才 魚 以 上 が 24.8%で 、 昨 年 と 比 較 す る と 2 才 魚 以 上 の 割 合 が や や 減 少 し た ( 表 1)。 表1 親魚密度(文鎮漕ぎ1曳当たりの採集尾数) 1才魚 年 2才魚以上 全 体 今 年 40.6尾 (75.2%) 13.4尾 (24.8%) 54.0尾 昨 年 126.4尾 (70.5%) 52.9尾 (29.5%) 179.3尾 平 年 164.4尾 (72.4%) 62.7尾 (27.6%) 227.1尾 (平年:1987~2012年漁期の平均値) (2) 親 魚 の 全 長 組 成 採 集 さ れ た 親 魚 の 全 長 組 成 を 図 1 に 示 し た 。 親 魚 全 体 の 平 均 全 長 は 110.1mm で 、 昨 年 の 98.9mm を 上 回 り 、 平 年 並 み の 大 き さ で あ っ た 。 1曳当たりの採集尾数 10 【今 年】 親魚密度 54.0尾 平均全長 □1才魚:99.3mm ■2才魚以上:142.7mm 全体:110.1mm 8 6 4 2 0 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 200 1曳当たりの採集尾数 40 【昨 年】 親魚密度 179.3尾 平均全長 □1才魚:87.0mm ■2才魚以上:127.3mm 全体:98.9mm 30 20 10 0 60 70 80 90 100 110 120 130 140 150 160 170 180 190 全 長 (mm) 図1 親魚の全長組成 -1- 200 (3) 産 卵 量 指 数 今 年 の 産 卵 量 指 数 は 0.96 に な り 、昨 年 の 0.44 倍 、平 年 の 0.23 倍 に な っ た( 表 2)。親 魚 密 度 が 昨 年 の 0.3 倍 で あ る の に 対 し て 産 卵 量 指 数 が 0.44 倍 に な っ た の は 、 親魚のサイズが大きかったためである。 *産卵量指数:総産卵量の目安となる数値。1 尾当たりの産卵量は親魚の大きさによっ て異なるため、毎年の親魚密度と全長組成から算出しています。 表2 産卵量指数(1987年漁期の産卵量を”1.00”とした場合の相対値) 年 1才魚 2才魚以上 全 体 今 年 0.41 (42.7%) 0.55 (57.3%) 0.96 昨 年 0.77 (35.6%) 1.39 (64.4%) 2.16 平 年 1.62 (39.4%) 2.49 (60.6%) 4.12 (平年:1987~2012年漁期の平均値) (4) 産 卵 盛 期 今 年 の 雌 親 魚 の 生 殖 腺 ( 卵 巣 ) 熟 度 指 数 は 12 月 17 日 か ら 24 日 に か け て 減 少 し た ( 図 2)。 24 日 の 調 査 で は 64%の 親 魚 が 既 に 産 卵 を 終 え て お り 、 残 り の 親 魚 も全てが完熟卵を有し、その多くは卵巣が収縮過程にあることから、産卵終了間 近 と 判 断 さ れ た 。そ し て 、26 日 の 調 査 で は 全 個 体 が 産 卵 を 終 え て い た 。ま た 、冬 型 の 気 圧 配 置 と な っ た 影 響 に よ り 20 日 に は 水 温 が 降 下 し て お り 、 こ れ が 産 卵 を 誘発した可能性が高い。 以 上 の こ と か ら 、鹿 の 瀬 に お け る 今 年 の 産 卵 盛 期 は 、昨 年( 12 月 14 日 か ら 20 日 前 後 )よ り 遅 く 、12 月 20 日 頃 か ら 始 ま り 25 日 に ほ ぼ 終 了 し た と 推 察 さ れ た 。 *完熟卵は産卵可能な状態の卵を指します。また、卵巣が収縮過程にあるということは 産卵中であることを意味しています。 35 30 1才魚(昨年) 2才魚以上(昨年) 1才魚(今年) 2才魚以上(今年) 生殖腺熟度指数 25 20 15 10 5 0 12/5 12/10 図2 12/15 12/20 12/25 12/30 雌親魚の生殖腺熟度指数の変化 (12月11日の調査では、2才以上の雌親魚が採集されなかったためグラフには掲載していません) -2- 2. 稚 仔 の 調 査 結 果 稚 仔 の 調 査 は 1 月 23 日 、24 日 、27 日 に 実 施 し た 。採 集 は 、表 層 か ら 底 層 ま で の 往 復 傾 斜 曳 き ( 口 径 60cm の ボ ン ゴ ネ ッ ト 使 用 ) に よ り 行 っ た 。 採 集 結 果 を 図 3 に 示 し た 。 1 地 点 当 た り の 平 均 採 集 尾 数 は 播 磨 灘 が 6.8 尾 、 大 阪 湾 が 10.0 尾 、 紀 伊 水 道 が 1.7 尾 に な り 、 各 海 域 と も 昨 年 の 値 ( 播 磨 灘 17.0 尾 、 大 阪 湾 11.4 尾 、紀 伊 水 道 3.0 尾 )を 下 回 っ た 。特 に 、播 磨 灘 の 4 地 点 で は 採 集 尾 数 が 0 尾であった。 各 海 域 の 稚 仔 の 全 長 組 成 を 図 4~6 に 示 し た 。播 磨 灘 と 大 阪 湾 で は 調 査 時 期 が 昨 年 よ り 早 か っ た こ と も あ り 、 平 均 全 長 は 播 磨 灘 が 10.4mm、 大 阪 湾 が 8.7mm に な り 、 昨 年 の 値( 播 磨 灘 11.5mm、大 阪 湾 13.1mm)を 下 回 っ た 。紀 伊 水 道 は 8.3mm に な り 、昨 年 の 値( 紀 伊 水 道 7.8mm)を 上 回 っ た 。ま た 、播 磨 灘 で は 全 長 6mm 台 、8mm 台 、13mm 台 に モ ー ド が み ら れ 、さ ら に 20mm 前 後 の 個 体 も 出 現 し て お り 、複 数 の 群が確認された。 上段:今年 (単位:尾/m2) 下段:昨年 0 11 0 4 32 28 6 43 0 4 3 4 0 4 1月23・24・27日 1月30・31日 15 9 5 70 6 3 20 8 10 3 6 1 2 74 1 9 2 1 1 0 11 1 3 2 3 2 1月23日 1月21日 図 3 稚 仔 の採 集 尾 数 -3- 6 3 7 6 20 5 1月23・24日 1月31日 13 6 頻度(%) 15 10 5 0 20 頻度(%) 【今 年】 1月23・24・27日 平均 10.4mm 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 【昨 年】 1月30・31日 平均 11.5mm 15 10 5 0 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 全 長 (mm) 図4 表層から底層までの往復傾斜曳きで採集された稚仔の全長組成(播磨灘) 20 【今 年】 1月23・24日 平均 8.7mm 頻度(%) 15 10 5 0 頻度(%) 15 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 【昨 年】 1月31日 平均 13.1mm 10 5 0 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 全 長 (mm) 図5 表層から底層までの往復傾斜曳きで採集された稚仔の全長組成(大阪湾) -4- 30 【今 年】 1月23日 平均 8.3mm 頻度(%) 25 20 15 10 5 0 頻度(%) 40 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 【昨 年】 1月21日 平均 7.8mm 30 20 10 0 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 全 長 (mm) 図6 表層から底層までの往復傾斜曳きで採集された稚仔の全長組成(紀伊水道) 3. 稚 仔 の 成 育 の 見 通 し 稚仔の成長速度は水温の影響を強く受け、水温が高いほど成長速度は速くなると 考えられる。今年の明石海峡部の水温は、1 月上旬は平年より低めだったが、1 月 中旬は平年並みで推移した。1 月下旬になると水温は横ばいとなり、昨年、平年を 上 回 る 形 で 推 移 し て い る ( 図 7)。 2 月 7 日に大阪管区気象台から発表された 1 ヶ月予報(一週目は低め、二週目は 低めか平年並み)から判断すると、今後の水温は平年より高めの値から徐々に降下 し、平年値に近づくと予測されることから、稚仔の成長速度も平年よりやや速めか ら平年並みになると考えられる。 14 今年 13 昨年 平年(H15~H24) 水温(℃) 12 11 10 9 8 7 1/1 1/6 1/11 1/16 1/21 1/26 1/31 2/5 2/10 2/15 2/20 2/25 図7 明石海峡部2.5m層日平均水温の推移 -5- 4. シ ン コ 漁 の 予 測 昨 年 は、産 卵 量 や稚 仔 の分 布 量 が少 なく、大 阪 湾 や紀 伊 水 道 では不 漁 であった。しかし、 播 磨 灘 で は 備 讃 瀬 戸 発 生 と み られる 群 れ の加 入 によ り、 西 部 で は 平 年 を 上 回 り、 東 部 で も 平 年 並 みの漁 獲 量 であった。 今期は昨年よりさらに産卵量や稚仔の分布量が少ないこと、備讃瀬戸の親魚量も 少ないこと(香川県水産試験場の親魚調査結果より)から “今期のシンコ漁獲量は、播磨灘では昨年及び平年を下回る、大阪湾、紀伊水道は 平年を下回り昨年並み”と予想される。 ( 平 年 の 指 標 : 標 本 漁 協 に お け る 1987~2012 年 の 2、 3 月 の シ ン コ 漁 獲 量 の 平 均 値 ) 注)シンコの網おろし日は各地区漁業者の自主的判断によるが、過去の経験から網 下ろしが早過ぎた場合には不漁になる可能性が高い。網おろし日の決定にあたっ てはこの点を十分に考慮されたい。 -6-
© Copyright 2024