J26 新奇な磁性体 Na2IrO3 の理論研究 〜いくら冷やしても “固まらない” 量子スピン液体か?〜 兵庫県立大学 電子の電荷・スピン・軌道自由度の絡み合いで現れる量子状態を利用した新機能性材料の探索が 盛んになされている。Na2IrO3 は、Ir 原子の電子に強いスピン軌道相互作用とクーロン相互作用が 働く為、 マヨラナフェルミ粒子を励起状態に持つ量子スピン液体に近いと云う予測がある事から、 近年、活潑に研究されている。 これまで、複数のモデルが提案されているが、熱力学量の解析から Na2IrO3 を記述するモデルを判断するのは困難である。 そこで本研究では、動的スピン構造因子を 計算し、非弾性中性子散乱実験と比較する事で、Na2IrO3 を記述するモデルを明らかにする。 Ir 5d5 の絶縁体 edge-shared Perovskite 構造: 低エネルギー状態: [2] 相図: 電子軌道の状態:eg 5d down spin t2g up spin crystal field [1] 1. 励起 “境界” の存在 2. 秩序化由来の散乱強度 ω [meV ] 粉末非弾性中性子散乱実験 実験結果の特徴 計算結果の評価 1. 励起 “境界” を再現 2. 散乱強度の特徴を再現 Γ 散乱強度 低 Y Y X Γ 高 各波数の関係 [1] S.K. Choi, et al., Phys. Rev. Lett. 108, 127204 (2012). Γ M spin-orbit int. Jeff Jeff N=24 1.5 有効スピン模型 まとめ 0.5 散乱強度 liquid 一般化された Kitaev-Heisenberg (KH) 模型 1 X Neel ϕ stripy 異方性の起原 2 0 Γ liquid zigzag FM 動的構造因子の計算結果 Γ’ 但、最近接相互作用のみの場合 Zigzag 相と スピン液体相が 隣接する 1 = 2 3 = 2 Jeff=1/2 Zigzag 反強磁性磁気秩序 Ir の積層蜂巣格子 or ω/J Na2IrO 3 これまで提案された Na2IrO3 に対する複数のモデルを用いて動的スピン構造因子を計算し、 結果を非弾性中性子散乱実験と比較した。 その結果、Y. Yamaji らが提案したモデルが最も 良く Na2IrO3 の動的性質を記述することを明らかにした。今回の結果は、 マヨラナフェルミ 粒子を励起状態に持つ量子スピン液体状態を実現する候補物質の探索や、第一原理計算と 物質設計の見地からも、有意義な知見であると考えられる。 Y ∝ 半径 X Γ J = 4.4 meV [2] J. Chaloupka, et al., Phys. Rev. Lett. 110, 097204 (2012). 第一原理計算に基づいた Y. Yamaji らの 相互作用パラメータによる動的性質は 粉末非弾性中性子散乱実験を再現。 KH 模型の最近接相互作用に加え、 長距離相互作用が重要になる。 [3] [3] Y. Yamaji, et al., Phys. Rev. Lett. 113, 107201 (2014). 兵庫県立大学大学院 工学研究科 菅・鈴木研究室 山田拓人
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