FIRSTプロジェクト「炭化珪素(SiC) 革新パワーエレクトロニクスの研究開発」

最先端研究開発支援プログラム
「炭化珪素(SiC)革新パワー
エレクトロニクスの研究開発」
木本 恒暢、奥村 元、松波 弘之
2014. 9. 3
本報告の概要
1. パワーエレクトロニクスの重要性
2. SiCパワー半導体による革新
3. FIRST-SiCプロジェクトの目標、体制
4. FIRST-SiCプロジェクトの成果
4-1 SiCエピ成長、欠陥低減
4-2 超高耐圧SiCデバイス
5. まとめ
2
パワーエレクトロニクスの応用分野
電力の流れ
インバータ家電
~10 V
DC→AC、AC→DC、DC→DC(電圧変換)、AC→AC(周波数変換)等の電力変換
電力の高効率利用とCO2排出量の削減
3
パワー半導体デバイス
パワーエレクトロニクスを支えるキーデバイス
市場:1.0兆円(2001) → 1.8兆円(2010) → 5兆円(2030) → 10兆円(2050)
高耐圧デバイス
104
Power
Transmission
Rated Current (A)
中耐圧デバイス
103
Traction
HEV/EV
低耐圧デバイス
102
101
DC-DC
converter
Server
PC
10
0
101
Automobile
Electronics
(ABS,
Injector)
Factory
Automation
Motor
Control
Home
Appliance
SW Power
Supply
SiCデバイス
のターゲット
AC
Telecom. Adaptor
HDD
102
電力変換時に
約10%が廃熱
(電力損失)
Lamp Ballast
103
Rated Voltage (V)
104
4
本報告の概要
1. パワーエレクトロニクスの重要性
2. SiCパワー半導体による革新
3. FIRST-SiCプロジェクトの目標、体制
4. FIRST-SiCプロジェクトの成果
4-1 SiCエピ成長、欠陥低減
4-2 超高耐圧SiCデバイス
5. まとめ
5
SiCパワー半導体の特徴
特性オン抵抗 vs. 耐圧
10
Si
1
SiC
0.1
10
100
1000
Conversion Capacity (VA)
On-Resistance (mcm2)
100
10000
Blocking Voltage (V)
高耐圧
低オン抵抗
10
9
10
8
10
7
10
6
10
5
DC Transmission
Large Factory
SiC
Bullet Train
10
4
10
3
UPS
THY. GTO
Si
Inverter
Electric
Vehicle
IGBT
BJT
Telephone
Line
Switching
Power Module
POWER-IC MOSFET
10
1
10
2
10
3
10
4
10
5
10
6
10
7
Operating Frequency (Hz)
高速SW
高温動作
電力変換損失の大幅な低減(高効率化)
冷却装置簡素化、超小型変換システム
6
様々なSiCパワーデバイスの位置づけ
SBD
PiN
Si
MOSFET
IGBT, GTO
Target of
this project
SBD
PiN
Near-Future
Target
100 V
300 V
MOSFET, JFET
IGBT, GTO
600 V
1.2 kV
4.5 kV
10 kV
SiC
20 kV
Voltage rating (V)
SiCユニポーラデバイス: 600 V ~ 8 kV 応用
SiCバイポーラデバイス: > 6 kV 応用
7
バイポーラ型SiCパワーデバイスの特徴
Current Density (A/cm2)
特性オン抵抗 vs. 耐圧
1 kV SBD
On-Resistance (mcm2)
100
500
10
400
1
Si
300
SiC
0.1
10
100
10 kV
PiN
1000
200
10000
Blocking Voltage (V)
100
デバイスを高耐圧化する
と、オン抵抗が急増
少数キャリア注入による伝導度変調効果
を活用するバイポーラデバイスが有望
10 kV SBD
0
1
2
3
4
Forward Voltage (V)
8
ターゲット:超高耐圧SiCバイポーラデバイス
電力系統制御
高圧直流送電
電力変換(DC→ACなど)時に
約10%を熱として損失
(国内で 約800億kWh/年)
高速車両
高圧電源
現行のSi半導体素子の限界
(Siサイリスタ、Si PiNダイオード)
社会のニーズ:
SiC半導体による革新
G1
(1) 電力損失の低減と変換設備の
小型化
(2) 将来のスマートグリッド等の
高機能・安定な電力インフラ実現
C
A
G
G2
G3
K
G4
複数のSiサイリスタ
E
13 kV SiC IGBT
9
本報告の概要
1. パワーエレクトロニクスの重要性
2. SiCパワー半導体による革新
3. FIRST-SiCプロジェクトの目標、体制
4. FIRST-SiCプロジェクトの成果
4-1 SiCエピ成長、欠陥低減
4-2 超高耐圧SiCデバイス
5. まとめ
10
FIRST-SiCプロジェクトの目標
研究目標
(1) 13 kV – 20 A 級 SiC PiNダイオード
(2) 13 kV – 20 A 級 SiC IGBT
(3) 5 kV – 20 A, 250oCのスイッチング動作
(4) 上記を可能とする厚膜・多層エピ成長
(5) 上記を支える学術的基盤研究
11
超高耐圧SiCデバイス実現への研究課題
+
材料の課題
高温・高電圧に
耐える表面保護
理論耐圧達成に向
けた接合終端構造
(SiC半導体として最大の難易度)
デバイスの課題
高性能化のための
デバイス構造設計
Emitter
Anode
超高耐圧化のための
n-型, p-型厚膜エピ成長
p+
低オン抵抗化のための
キャリア寿命増大
n-blocking layer
n+-substrate
cathode
PiNダイオード
実装・回路の課題
JTE
信頼性・性能向上の
ための拡張欠陥低減
高性能化のための
多層エピ成長
Gate
pチャネルMOS
の移動度向上
SiO2
p+
p+
n-well
p-blocking layer
p-buffer layer
n-buffer layer
n+-substrate
Collector
pチャネルIGBT (単位セル)
・ 超高耐圧・高速スイッチング回路技術の確立
・ 高温・高耐圧絶縁封止技術の確立
12
研究開発体制
中心研究者:木本
共同提案者:松波、奥村
外部有識者委員
荒井和雄
菅原良孝
サブテーマ(2)
超厚膜・多層SiCエピウェハ技術
素子作製用
ウェハ供給
支援機関:産総研
研究支援統括 岡田
サブテーマ(3)
プロセス・超高耐圧SiCデバイス技術
サブテーマリーダー: 土田(電中研)
サブテーマリーダー: 福田(産総研)
電力中研、産総研、関西電力
産総研、富士電機、関西電力、東芝、新日本無線
・超厚膜、超高純度SiCエピ成長
・ドーピング制御と多層膜形成
・キャリア寿命向上、欠陥低減
物性評価用
ウェハ供給
素子特性の
フィードバック
欠陥低減、物性
制御の成果適用
・13kV級SiC PiNダイオードの作製
・13kV級SiC IGBTの作製
・デバイスの超高耐圧、高温動作実証
モデリング用
素子供給
MOS特性向上、回路設計
技術、シミュレータの提供
サブテーマ(1) SiCの欠陥・物性制御とデバイス基礎
サブテーマリーダー: 木本(京都大)
冬木(奈良先端大)、三浦(広島大)、赤木(東工大)、舟木(大阪大)、三菱電機、ローム
・SiC厚膜エピ成長層の欠陥評価と低減指針提示
・MOS界面の基礎研究と特性向上の指針提示
・SiC IGBTのデバイス、回路シミュレーション
・超高耐圧電力回路の設計指針提示
13
本報告の概要
1. パワーエレクトロニクスの重要性
2. SiCパワー半導体による革新
3. FIRST-SiCプロジェクトの目標、体制
4. FIRST-SiCプロジェクトの成果
4-1 SiCエピ成長、欠陥低減
4-2 超高耐圧SiCデバイス
5. まとめ
14
超高耐圧素子作製に必要なSiCエピ成長技術
定格電圧
600 V
1.2 kV
厚さ
(m)
ドーピング
(cm-3)
6
10
21016
11016
3.3 kV 25
4.5 kV 35
10 kV
80
20 kV 160
31015
21015
51014
21014
1014
1015
> 10 kV バイポーラデバイス実現に向けて
 厚膜 (> 100 m) の高速成長
 高純度 (ノンドープで < 1014 cm-3)
 多層エピ構造 (特にIGBT作製)
 長いキャリア寿命と低い欠陥密度 (特に基底面転位)
15
SiC厚膜の超高速エピ成長
13 kV級デバイス: 120 m 厚さ, ドーピング ~ 1014 cm-3
極めて平坦な表面
500m
RMS=0.20 nm
高純度: ND – NA < 1x1013 cm-3
M. Ito et al., Appl. Phys. Exp. 1 (2008), 015001.
(CRIEPI)
H. Tsuchida et al. Phys. Stat. Sol. (b) 246 (2009), p.1553.
16
エピ成長による超低抵抗p型SiCの形成
抵抗率のAl原子密度依存性
3
10
Resistivity (cm)
2
10
Cree bulk data
1
10
AIST data
0
10
This work
-1
10
-2
10
1E14
1E16
1E18
1E20
-3
Al concentration (cm )
1E22
Al密度: 1.5x1020 cm-3
抵抗率: 41 mcm
(従来のp型基板に
比べて1/10以下)
最新の成果:
 < 20 mcm
17
17
キャリアのライフタイムキラー欠陥の消滅
ライフタイムキラー欠陥: Z1/2センター (炭素空孔欠陥)
Z1/2センター消滅手法: (1) Cイオン注入+アニール
(2) 熱酸化
→ 欠陥密度 < 1x1011 cm-3
, 0.5h
DLTS Signal (fF)
10
8
Z 1/2 as-grown
6
4
2
EH 6/7
after oxidation
(1300oC, 5h)
0
100 200 300 400 500 600 700
Temperature (K)
L. Storasta and H. Tsuchida,
Appl. Phys. Lett. 90 (2007), 062116.
T. Hiyoshi and T. Kimoto,
Appl. Phys. Express 2 (2009), 041101.
18
キャリアライフタイムの大幅な向上と制御
ライフタイムの増大
ライフタイム制御
 ライフタイムキラー欠陥の消滅
 220 mの厚膜エピ成長
(厚さ220 mを欠陥フリー化)
 酸窒化膜による表面パッシベーション
(表面再結合の抑制)
 ライフタイムキラー欠陥の起源解明
(炭素空孔)
 低エネルギー電子線照射による炭素
空孔の選択的形成と密度制御
-PCD signal (a.u.)
電中研と連携
as-grown
酸化による点欠陥低減
o
after oxidation (1400 C, 48 h)
106
after surface passivation
26.1 s
表面パッシベーション
33.2 s
as-grown
1.1 s
105
0
10
20
30
40
50
60
70
世界に先駆けてn型、p型SiCのライフ
タイム制御を実現
Time (s) S. Ichikawa et al., APEX 5 (2012), 101301.
19
本報告の概要
1. パワーエレクトロニクスの重要性
2. SiCパワー半導体による革新
3. FIRST-SiCプロジェクトの目標、体制
4. FIRST-SiCプロジェクトの成果
4-1 SiCエピ成長、欠陥低減
4-2 超高耐圧SiCデバイス
5. まとめ
20
高性能SiCバイポーラデバ
イスを作製するための根幹
となる技術を確立
7
2
Forward
Voltage(100
at 100
A/cm
2) [V] [V]
順方向電圧
A/cm
高耐圧(~10 kV)PiNダイオードのオン電圧改善
6
素子活性領域
2.3×2.3mm2
3μm
7×1013cm-3,120μm
5
4
3
Standard
従来プロセス
Process
炭素イオン注入
Carbon
Implantation
/熱処理プロセス
(電中研 APL 2007)
ライフタイム増大プロセス
熱酸化
Thermal
Oxidation
プロセス
(京大 APEX 2009)
オン電圧改善
オン電圧のばらつき低減
K. Nakayama et al., IEEE Trans. Electron Devices 59 (2012), 895.
21
大容量・超高耐圧PiNダイオードの作製
PiNダイオード (8 x 8 mm2)
順方向特性
逆方向特性
VF @ 40 A = 5.2 V (RT), 4.1 V (250oC)
VB = 13.7 kV
22
超高耐圧PiNダイオード (小素子でのデモ)
2
Current Density (A/cm )
140
120
100
80
60
40
20
p+型アノード
i-layer:
改良型空間変調JTE
w = 268 m
Nd = 1-2x1014 cm-3
n型エピ成長層
JTE length: 1050 μm
13 cm-3
Dose1:
(265
μm,1.80x10
1~2x1014
cm -2)
Dose2: 4.50x1012 cm-2
n+型カソード
VB > 26.9 kV
@ 1002 A/cm2
V
=
4.72
V
on
V (@ 100 A/cm )
VF = 4.72
2
2
9.7 mcm
RONR=on,diff
9.72 =mcm
0
- 1x10-3
-30
-25
-20
-15
-10
Reverse Voltage (kV)
耐電圧 26.9
kV
-5
0 2 4 6 8
Forward
Voltage (V)
23
超高耐圧SiC IGBT作製への技術課題
接触抵抗の低減
・ Simultaneous formation of ohmic
contacts for both p- and n-type
・ Low p-type ohmic contact
resistance
チャネル移動度(n, p-ch)の向上
High channel motilities and stability
of Vth are required for both p- and nch
JFET抵抗の低減
Trade-off between JFET resistance
and max. Eox depending on JFET
length and doping density of Current
Enhancement Layer
多層・厚膜・高純度エピ成長
・Control of doping concentration
・Low defect density
・Long carrier lifetime
低抵抗p+型コレクタ(キャリア注入層)
・Thinning the substrate
n-IGBT
p-IGBT
gate metal gate oxide
emitter
emitter
passivation film
contact
contact
n+ p+ n+
p+ n+ p+
JFET
region
channel stopper
n-well
p-well
n-layer
p-layer
JTE
n- drift region
field stop layer
(n+ buffer)
p+ substrate
(injector)
p- drift region
field stop layer (p+ buffer)
n+ substrate
(injector)
collector contact
24
大容量・超高耐圧 IGBTの作製
フリップタイプ nチャネル IE-IGBT
5.3mm角 n-IGBT 3”ウエハ
2.5e-05
LJFET=1.6m
ILEAK (A)
2.0e-05
5mm角チップで 30A 動作
Vg = 30V時(Vce = 7~10V間平均)
RonA,diff = 15
mΩcm2
1.5e-05
1.0e-05
耐圧 16 kV
5.0e-06
0.0e+00
-5.0e-06
10000
12000
Y. Yonezawa et al, IEDM 2013, #6.6.
14000
VCE (V)
16000
18000
25
本報告の概要
1. パワーエレクトロニクスの重要性
2. SiCパワー半導体による革新
3. FIRST-SiCプロジェクトの目標、体制
4. FIRST-SiCプロジェクトの成果
4-1 SiCエピ成長、欠陥低減
4-2 超高耐圧SiCデバイス
5. まとめ
26
まとめ
超高耐圧SiCバイポーラデバイス実現に向けて
1. 高速・厚膜エピタキシャル成長と欠陥低減
■ > 100 m, ドーピング制御 ~ 1014 cm-3 (n & p)
■ 基底面転位の低減 (BPD密度 < 0.1 cm-2)
■ 長いキャリア寿命の達成 (> 30 s)
2. 超高耐圧バイポーラデバイス
■ 13 kV – 40 A級 PiNダイオードの実現
■ 16 kV – 30 A級 IE-IGBTの実現
■ 250oCで 5 kV, > 20 A のスイッチング動作実証
27
謝辞
本研究は、総合科学技術会議により制度設計された
最先端研究開発支援プログラム(FIRSTプログラム)に
より、日本学術振興会を通して助成されたものです。
また、本研究の一部は、産業技術総合研究所のTIA
ナノ・パワーエレクトロニクス研究設備を活用して得ら
れたものです。
28