ナノ粒子の構造・状態解析の ための電子顕微鏡新技術 九州大学超顕微解析研究センター センター長・教授 松村 晶 2 収差補正高分解能電子顕微鏡 電磁レンズの不完全性: 収差 電子銃 E = 60~200 kV 透過像の空間分解能 d = 0.71Cs1/4l3/4 試料室 Cs : 対物レンズの球面収差係数 l : 電子の波長 Viewing window JEM-ARM200F@Kyushu University 球面収差補正器 d = 0.19 nm ⇨ 0.11 nm @ 200 kV 2 3 収差補正高分解能TEM像 @200 kV Raw image FFT pattern 空間分解能: 0.072 nm 原子分解能が達成 Specimen: Au [100] single crystal 収差補正高分解能STEM(HAADF)像 Raw image FFT pattern @80 kV Expand image of FFT 2 n m Specimen: Si [110] single crystal 空間分解能: 0.1 nm 中間加速電圧でも原子分解能が達成 4 収差補正高分解能STEM(HAADF)像 Specimen: Si [110] single crystal FFT pattern 5 @30 kV 004 (0.136 nm) Raw image Filtered image ■ Using Radial Difference Filter (HREM) 空間分解能: 0.136 nm 収差補正によって分解能の低下を抑えて加速電圧を選択できる 6 ナノ合金粒子の高分解能TEM観察 Icosahedral PVP 厚みは1nm程度 • 保護材(PVP)をある程度除去するとコンタミネーションの問題無く観察できる。 • 表面(界面)構造も明確に観察できる。 6 7 ナノ合金粒子の高分解能STEM(HAADF)像 2 nm 7 8 準安定 fcc Ru粒子の連続傾斜像 -50 ° -40 ° -10 ° 20 ° -30 ° 10 ° 0° 30 ° -20 ° 40 ° 50 ° 9 fcc多重双晶粒子の連続傾斜原子モデル 0° 10 ° 20 ° 30 ° 60 ° 70 ° 80 ° 90 ° 100 ° 120 ° 130 ° 140 ° 150 ° 160 ° 40 ° 50 ° 110 ° 170 ° 180 ° 結晶模型とイメージが一致 3次元形態、原子配列の解析 の可能性 10 X線による元素分析 従来のX線検出器 Si(Li)半導体検出器 検出部有効面積: 30~50 mm2 取り出し角 : 10~20 ° 検出立体角 : 0.1~0.3 sr 全立体角4p の1~3 % しか検出していない 測定の長時間化 試料ドリフトによる分解能低下 試料の損傷、脱元素 定量性の低下 N N 10 最小検出限界 11 分析電子顕微鏡X線測定の高効率化 取込信号量の拡大 検出器有効面積を100 mm2に拡大 検出立体角を 1 sr 級 (~8 %) 高速信号処理 シリコン・ドリフト型(SDD)検出器の採用 既存装置への装着、メンテナンス可能 従来型のサイドエントリー・タイプ 11 12 Cumulative gross count/106 30 mm2検出器との比較 (1) N Ka 100 mm2 (0.80 sr) ×~4.6 30 mm2 (0.19 sr) Frame number (512 x 512) Specimen:a DRAM device Mapping size:512 pixels x 512 pixels, 12 Probe current: ~2 nA, Instrument:JEM-2100(URP) 13 30 mm2検出器との比較 (2) 30 mm2 0.5 mm 30 mm2 0.5 mm 100 mm2 1 frame (~1 min) 100 mm2 10 frame (~10 min) R: N-Ka, G: Si-Ka, B: O-Ka 30 mm2 0.5 mm 30 mm2 0.5 mm 100 mm2 5 frame (~5 min) 100 mm2 20 frame (~20 min) Specimen:a DRAM device Mapping size:512 pixels x 512 pixels, 13 Probe current: ~2 nA, Instrument:JEM-2100(URP) 14 ナノ合金粒子の組成分布解析 Pd L Ru L 1 2 2 1 Pd L Ru L fcc Pd L Ru L fcc hcp 高効率化によって 微小体積のナノ粒 子からでも十分な 強度の信号を取得 定量性の向上 15 電子照射によるスパタリング・構造変化 Auナノ粒子 After 10 min スパタリングされ た単原子が分散 加速電圧120 kVでもAu原子がスパタリング 15 2 nm 16 粒子のTEM観察用支持膜 支持膜のみ 測定条件 エネルギー分散:0.05 eV/pixel 入射絞り: 2.5 mm 取得時間: 2 sec X 10 回 モード:STEM (2 nm x 2 nm) ナノ粒子 (d <10 nm) 支持膜上のPd-Pt合金粒子 カーボン支持膜 エラスティック非晶質炭素支持膜 厚さ: 15 nm ナノ粒子の体積が小さいためPd のシグナルが観察できない 16 C-K edge : 283.8 eV Pd-M4, 5 edge: 334.7 eV 17 ナノ粒子観察用支持膜 求められる性能 低バックグラウンド Low-Z(軽元素)材料 極薄膜(t〜nm) 支持膜としての構造安定性 十分な電気伝導性 グラフェン膜をTEM観察用支持膜に応用 17 18 ナノ粒子観察用支持膜の作製 QuantifoilTM TEM用支持膜上にグラフェン膜を貼付け 2. 1. 3. Quantifoil TEM支持膜上に2-イ ソプロパノールを一滴垂する。 5. TEM支持膜を基板上のグ ラフェンへ密着させる。 4. 上からシリコン基板をかぶせ、 圧着しながら、ホットプレートで 120℃で10分間加熱する。 純水と希硝酸で洗浄。 第2塩化鉄水溶液で金属 蒸着膜を溶解・除去。 19 低倍STEM観察@60 kV 孔 グラフェン アモルファスカーボン膜 10 mm 20 電子線照射損傷の加速電圧依存性 Cross Section for displacements (barn) C原子のはじきだし出し断面積 (Mckinley-Feshbachの式による) 18 Ed=20 eV , 温度効果は無視 16 14 12 10 7.8 barn 8 6 4 2 120 kV 0 0 50 100 150 200 Electron energy (keV) 120 kVでのダメージは200 kV の半分程度。 100 kV以下の加速電圧で観察しなくてはいけない。 21 ナノ粒子観察への適用 @80 kV Pdナノ粒子をエタノール分散後、液滴 @80 kV 通常の液滴を行ってもQuantifoilに貼ったグ ラフェンに損傷なし 低バックグラウンドのために、ナノ粒子を 覆っているポリマーもはっきりと確認できる 22 ナノ粒子観察への適用 @80 kV Pdナノ粒子をエタノール分散後、液滴 通常の液滴を行ってもQuantifoilに貼ったグ ラフェンに損傷なし @80 kV 低バックグラウンドのために、ナノ粒子の 内部構造や表面も明瞭に確認できる 23 ナノ粒子の高分解能解析の可能性 • ナノ粒子は、薄膜状態と比較して電子照射に よる損傷を受けやすい。 • 収差補正技術の発達により、分解能の犠牲 を抑えて観察対象にあった加速電圧の設定 が可能になった。 • グラフェンを支持膜に使うことによって低バッ クグラウンドの解析が可能になった。 • X線検出の高効率化によって微小体積の元 素分析能が大きく向上した。 お問い合わせ先 九州大学超顕微解析研究センター 松村 晶(まつむら しょう) Phone & FAX: 092-802-3486 E-mail: [email protected]
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