TLDを用いた 水晶体被曝線量の測定 宮崎わかばセミナー 久峩尚也 (同心会 古賀総合病院) 第61回 宮崎放射線技術研究会 背景 わかばゼミ 第59回 宮崎放射線技術研究会 『当院における茎状突起撮影』 古賀総合病院 第60回 宮崎放射線技術研究会 『視束管撮影についての検討』 金丸脳神経外科 X線の入射方向 (AP: 前後、PA: 後前)による水晶体への 被曝影響について議論された。 目的 入射方向を決定づける要因 z 水晶体の被爆線量 z ポジショニング (再現性・患者への負担) z 画質 (物理評価 ・ 視覚評価) z X線の線束と解剖学との関連性 など 今回、水晶体の被曝線量に着目して、視束管撮影と茎状突起 撮影の入射方向を決定するために、頭部ファントムおよびTLD (Thermoluminescence Dosimetry) を用いて、入射方向AP、PAで 水晶体の被曝線量を測定し、比較を行ったので報告する。 各撮影法の撮影条件 視束管撮影 茎状突起撮影 (金丸脳神経外科) (古賀総合病院) 管電圧 00700kV0 0000800kV0 管電流時間積 000200mAs0 00000320mAs0 撮影距離 01000cm0 0001650cm0 照射野 5×50cm2 17×170cm2 検討項目 2種類の照射野 (5×5 cm2、 17×17 cm2) 1) 管電圧を変化させた場合 (撮影距離 : 100cm 一定) ① 70 kV 200 mA 0.16 sec ② 80 kV 200 mA 0.16 sec 2) 撮影距離を変化させた場合 (80 kV 200 mA 0.16 sec 一定) ② 100 cm ③ 130 cm ④ 160 cm 使用機器 撮影装置 測定機器 TLD素子 : LiF:Mg、Ti (TLD-100Ribbon) TLD読み取り装置: アニーリング炉 : 電離箱 : 頭部ファントム : TLD測定システム TLD素子 (TLD-100 Ribbon) アニーリング炉 TLD読み取り装置 グロー曲線 測定範囲 線量測定手順 ‐ 1 (予備実験) 1. 全素子(75個)アニーリング (400 ℃×1 hr + 80 ℃×24 hr or 100 ℃×2 hr) 2. 放射線を均一照射 3. TLD読み取り装置で計測して感度分類 (2-3 %) を行う 4. アニーリング 5. 既知の線量を照射 6. TLDの計測値と線量を元に光量‐線量変換テーブル を作成 実験方法 (TLD素子の感度分類) 照射条件 : 80 kV 320 mA 0.5 sec X線管 平均値 (28.05 nC) を中心とした ±5 %領域に分類 24.03∼25.43 : 01 個 25.44∼26.84 : 13 個 26.85∼29.25 : 43 個 29.26∼30.66 : 15 個 ( 測定ミス 計 100 cm TLD素子 : 03 個) : 75 個 寝台 実験方法 (光量 ‐ 線量変換テーブルの作成 ) 照射条件 : 70 kV 200 mA 0.05、0.10、0.16、0.20 sec 80 kV 200 mA 0.05、0.10、0.16、0.20 sec (照射野 5×5 cm2、 17×17 cm2 ) X線管 X線管 100 cm 100 cm 電離箱 (0.6 ml) TLD素子 寝台 寝台 光量 ‐ 線量変換テーブル (照射野5×5 cm2) 70kV 200mA 100cm 80kV 200mA 100cm 0.00010 照射線量 (C/kg) 0.00008 y = 2E-05x + 1E-05 R 2 = 0.9981 0.00006 0.00004 y = 2E-05x + 3E-06 R 2 = 0.9949 0.00002 0.00000 0 1 2 3 発光量 (nC) 4 5 線量測定手順 ‐ 2 (本実験) 1. アニーリング 2. 目的の線量評価ポイントにTLD素子を配置して 放射線を照射 3. TLD読み取り装置で計測 4. 光量-線量変換テーブルから照射線量を算出 5. 照射線量を吸収線量に変換 実験方法 (TLD素子の配置) 眼窩部拡大 頭部ファントム TLD素子 5個の測定値のうち、最大値と最小値を除く3個の平均値 実験方法 (照射野) 視束管撮影 茎状突起撮影 5×5 cm2 17×17 cm2 : 入射点 入射点 : 眼窩中心 入射点 : 両眼窩の中心 実験方法 (管電圧を変化させた場合 ) X線管 撮影条件 70 kV 200 mA 0.16 sec 80 kV 200 mA 0.16 sec 100 cm 照射野 : 5×5 cm2、 17×17 cm2 頭部ファントム グリッド カセッテ 寝台 実験方法 (撮影距離を変化させた場合) X線管 撮影条件 80 kV 200 mA 0.16 sec 100 cm 130 cm 160 cm 照射野 5×5cm2、 17×17cm2 頭部ファントム グリッド カセッテ 寝台 結果 ‐ 1 (管電圧別) 1/10倍 5.0 1/15倍 5.0 1/20倍 4.0 吸収線量 (mGy) 吸収線量 (mGy) 4.0 3.0 2.0 2.0 1.0 0.0 0.0 80kV 視束管撮影 (5×5 cm2 100 cm) 1/20倍 3.0 1.0 70kV : AP : PA 70kV 80kV 茎状突起撮影 (17×17 cm2 100 cm) : AP : PA 結果 ‐ 2 (撮影距離別) 1/15倍 5.0 5.0 4.0 4.0 1/5倍 3.0 1/4倍 2.0 1.0 0.0 吸収線量 (mGy) 吸収線量 (mGy) 1/11倍 3.0 1/9倍 1/8倍 2.0 1.0 100 cm 130 cm 160 cm 視束管撮影 (5×5 cm2 80 kV) 0.0 100 cm 130 cm 160 cm 茎状突起撮影 (17×17 cm2 80 kV) 考察 1) 管電圧を変化させた場合 X線の線質 (透過性、後方散乱) の影響が変化した 2) 撮影距離を変化させた場合 ・ APでは、距離の逆自乗に基づいて、距離が短くなると 被曝線量が増加した ・ PAでは、TLD測定時の誤差により、距離を変化させた 場合の傾向が表れなかったと考えられた 臨床の撮影条件の場合 APではPAに比べて水晶体への被曝線量が増加する まとめ ・ 入射方向PAでは、水晶体への被曝線量が低減できる ↓ PA撮影が望ましい ・ 最適な撮影条件や入射方向を決定するために ↓ ポジショニング (再現性・患者への負担) 画質 (物理評価 ・ 視覚評価) X線の線束と解剖学との関連性
© Copyright 2024